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クリフトのアリーナへの想いはPart6 542 :【伏兵現る】1/3:2006/11/22(水) 11:34:13 ID:W/oUYed30 魔界への扉に一歩一歩近づくにつれ敵の強さは否応無しに増し、ソロたち一行は生傷が絶えなくなってきていた。 「べホイミ」 先の戦闘で傷を負ったブライに回復魔法を施しながら、ソロは決断を迫られていた。 このまま次の街まで進むのか、それとも――――撤退か。 ルーラを使うのは容易いが、前の街に戻るという事は今日進んだ分の距離が無駄になると言う事でもある。それはとても悔しい事であると同時に、ソロたちのやる気を大きく削ぐ事でもあった。一度切れた緊張感を、気力を取り戻すのはなかなかに大変な事だ。それがわかっているだけに、『撤退』の一言は重い。まして、目指す街まであと少しというところまで来ている状況を鑑みれば、そんなに簡単に決断を下す事はできない。 しかし、引き際を誤ればそこに待ち受けるのは『死』だ。 あと僅かな道程だからといって、そこに危険が潜んでいないとも限らない。 思わぬ伏兵に出会ったとき、対処するだけの体力を持ち合わせていなければソロたちの運命は、須らく『死』。 勇者として、一行の要としてのソロの重責は、大きい。 ソロの迷いを見抜いたのか、ブライが肩をぽきぽきと鳴らしながら、努めて明るい口調で告げた。 「これから先は、さらに敵が強くなりましょうぞ。となれば、戦闘の要は『回復』……ミネア殿は既に精神力を使いきっておるようじゃし、後はクリフトの阿呆とソロ殿の精神力次第ですな」 いかがじゃな? 言外にそう問われ、ソロは己の体力を測る。 疲労感を感じないといえば嘘になるが、それなりには闘えるように思える。魔法を発動させるための魔力・精神力の方も何とかなりそうな気はする。 しかし、自分は回復専門ではない。 「ま、クリフト次第かな」 そう結論付け、同じく戦闘で傷を負ったアリーナの治療にあたっているクリフトに視線を移し―――ソロは盛大に溜息をついた。 敵が強くなれば、どんなに優れた防具でも壊れたり破れたりするのは道理。 事実、かなりの重装備を纏っているソロでさえ、先の激しい戦闘では鎧の一部が破損し、まったくの無傷とはいかなかった。となれば、いくら卓越したすばやさを誇ろうとも、ソロに比べて格段に軽装備で闘うアリーナの防具が無事でいられるわけもなく……。 「きゃあ、クリフト、大丈夫?」 ソロの視線の先で、回復魔法を施していたクリフトが鼻血を噴いて倒れた。 アリーナが怪我を負った場所は太腿。 常なら、かなり高い守備力を誇る網タイツに覆われているはずのそこは、無残にも切り裂かれ白い太腿が露になっている。 中途半端に破れた網タイツ。 そこから覗く白い肌。 それは、普段色気といったものと無縁なアリーナを官能的に演出していて……。 流れ落ちる鼻血にクリフトの精神力の欠片を見て取ったソロは、ほんの一瞬だけ天を仰ぐと馬車に待機していた者たちにこう告げた。 「撤退するぞ~」 『いいか、ソロ。伏兵というものはな、思わぬところに潜んでいるんだぞ』 そう教えてくれたのは村一番の手練であった剣の師匠だったか。 あの頃の自分にはその意味がよくわからなかったのだが、今なら少しだけわかる気がする。 だから、声に出して呟いてみた。 「アリーナには、明日から守りのルビーを装備してもらうか」 本日の進軍において伏兵となったのは、紛れもなくアリーナの『破れ網タイツ』だった。                                       (終) 
クリフトのアリーナへの想いはPart6 542 :【伏兵現る】1/3:2006/11/22(水) 11:34:13 ID:W/oUYed30 魔界への扉に一歩一歩近づくにつれ敵の強さは否応無しに増し、ソロたち一行は生傷が絶えなくなってきていた。 「べホイミ」 先の戦闘で傷を負ったブライに回復魔法を施しながら、ソロは決断を迫られていた。 このまま次の街まで進むのか、それとも――――撤退か。 ルーラを使うのは容易いが、前の街に戻るという事は今日進んだ分の距離が無駄になると言う事でもある。それはとても悔しい事であると同時に、ソロたちのやる気を大きく削ぐ事でもあった。一度切れた緊張感を、気力を取り戻すのはなかなかに大変な事だ。それがわかっているだけに、『撤退』の一言は重い。まして、目指す街まであと少しというところまで来ている状況を鑑みれば、そんなに簡単に決断を下す事はできない。 しかし、引き際を誤ればそこに待ち受けるのは『死』だ。 あと僅かな道程だからといって、そこに危険が潜んでいないとも限らない。 思わぬ伏兵に出会ったとき、対処するだけの体力を持ち合わせていなければソロたちの運命は、須らく『死』。 勇者として、一行の要としてのソロの重責は、大きい。 ソロの迷いを見抜いたのか、ブライが肩をぽきぽきと鳴らしながら、努めて明るい口調で告げた。 「これから先は、さらに敵が強くなりましょうぞ。となれば、戦闘の要は『回復』……ミネア殿は既に精神力を使いきっておるようじゃし、後はクリフトの阿呆とソロ殿の精神力次第ですな」 いかがじゃな? 言外にそう問われ、ソロは己の体力を測る。 疲労感を感じないといえば嘘になるが、それなりには闘えるように思える。魔法を発動させるための魔力・精神力の方も何とかなりそうな気はする。 しかし、自分は回復専門ではない。 「ま、クリフト次第かな」 そう結論付け、同じく戦闘で傷を負ったアリーナの治療にあたっているクリフトに視線を移し―――ソロは盛大に溜息をついた。 敵が強くなれば、どんなに優れた防具でも壊れたり破れたりするのは道理。 事実、かなりの重装備を纏っているソロでさえ、先の激しい戦闘では鎧の一部が破損し、まったくの無傷とはいかなかった。となれば、いくら卓越したすばやさを誇ろうとも、ソロに比べて格段に軽装備で闘うアリーナの防具が無事でいられるわけもなく……。 「きゃあ、クリフト、大丈夫?」 ソロの視線の先で、回復魔法を施していたクリフトが鼻血を噴いて倒れた。 アリーナが怪我を負った場所は太腿。 常なら、かなり高い守備力を誇る網タイツに覆われているはずのそこは、無残にも切り裂かれ白い太腿が露になっている。 中途半端に破れた網タイツ。 そこから覗く白い肌。 それは、普段色気といったものと無縁なアリーナを官能的に演出していて……。 流れ落ちる鼻血にクリフトの精神力の欠片を見て取ったソロは、ほんの一瞬だけ天を仰ぐと馬車に待機していた者たちにこう告げた。 「撤退するぞ~」 『いいか、ソロ。伏兵というものはな、思わぬところに潜んでいるんだぞ』 そう教えてくれたのは村一番の手練であった剣の師匠だったか。 あの頃の自分にはその意味がよくわからなかったのだが、今なら少しだけわかる気がする。 だから、声に出して呟いてみた。 「アリーナには、明日から守りのルビーを装備してもらうか」 本日の進軍において伏兵となったのは、紛れもなくアリーナの『破れ網タイツ』だった。                                       (終) 

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