personal note内検索 / 「講談社現代新書」で検索した結果

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  • インタビュー術!
    インタビュー術! 講談社現代新書 永江朗 著 \700 カテゴリー-エッセイ 関連リンク #related 対話について興味がある。以前設計という作業がすべて対話を通じて成立しているものだと言うようなメモを書いた。エスキースは自分との対話であるとか。それはコミュニケーションとも言い換えられる。頭の中だけでつくられるモノなどなく、すべて出されたモノとの対話によって生まれていくのだと思う。モノをつくる楽しみとは、そのような対話の楽しみとも言えるのではないか。 「つくる」という言葉自体にはそんなゼロからカタチへの「経過」を見落としてしまいそうな雰囲気がある。そもそも「つくる」という行為の魅力はまさに「つくっている」最中に存在する。出来上がった達成感と引き替えに、最大の楽しみも終了してい...
  • 「ひらきこもり」のすすめ
    ...代の仕事論 講談社現代新書 渡辺浩弐著 \680 インターネットという手段を得て、僕らの生活は確実に変わりつつある。その瞬間、その感情をプレゼンしておく。そして発信される。同時にストックされる。全ての情報が等価に並べられる。時系列や感情の優劣に関わらず、キーワードによって検索される。そしてある時発見されることによって、別の組み合わせが発生する。何度もヒットする内に付き合いがはじまる。これらどれもに大きな可能性が含まれている。 この著作はネットを利用しているあらゆる人にポジティブな思考を与えるだろう。誰もが想像し得る世界はすぐそこにあるが、誰もがそれに気づくまでにはまだ何段階かのステージを踏む。ひらかれたデジタル時代の活きる術を教えてくれる著者の語りようはあまりにも清々しい。 生活がそのままクリエイティブな行為となる。それがイン...
  • 「世間」とは何か
    「世間」とは何か 講談社現代新書 阿部 謹也著 680円 「世間」とは何か? この問いかけの意味することはなんだろうか?。それを意識したり対象化したりした経験のある者であれば、思う「ところ」もあるのではないか。社会人であることと、世間にもまれることが、ほぼ同様に語られていることを考えてみても。言葉の厳密な定義はよく分からないが、「社会」と「世間」の差と言われれば、それをになう共同体の大きさや、関わり合いの大きさの違いなどが浮かぶ。 けれど「世間」という言葉には嫌悪感に近いなにかをも感じる。それは僕にとって、否定的な意味での大人社会である。よく言われるような、「合意を前提に置いた馴れ合いの議論」などの談合的な態度から、欧米との比較を批判的に扱ったものへのそれではない。むしろ日常に置いて、人を道徳的判断とか、常...
  • 演劇入門
    演劇入門 講談社現代新書 平田オリザ 1998.10 \660 劇作家が自らの演劇理論を優しく解説 演劇についての経験も知識もほとんどなく、ただ漠然と映画を見て感じる「演じること」について興味を持っている程度で、平田 オリザがどんな劇団でどんな演出を手がけているのかも知らなかった。ただそれでもこの著作は僕にとって、とても楽しめた。より一般的で普遍的な立場からそれらを語ろうという著者の試みが、幅広い視野を与え、「新書」の位置づけとしても十分な読み応えがある、まとまりを持っているからだろう。 ここで扱われている「リアル」や「コンテクスト」自体が、日頃から興味をそそるテーマであり、時代性という流れにも十分に当てはまる考察である。人と人とが向き合い、その関係性から自らの混沌たる内面を引き出す。こ...
  • スペイン-ポルトガルを探る場所-書物編
    ...辿る 出版社:講談社現代新書 著者:関 哲行 スペイン関連情報を求めていたら、この著作ではいきなり秩父霊場を回った作者の思い出からはいっていた。それがサンティアゴ巡礼へとつながり、スペイン巡礼史へと至る。あまりの路線変更に戸惑いながら、奥の深さへ恐れ入った。というか余り入り込めなかった。ただ、その後幾つか先を進むに至って、また興味がもてるようにもなってきた。 ところで、レコンキスタ(失地回復運動)のとき、スペイン側は「サンティアゴ(聖ヤコブ)!」と叫んで団結したようだ。けれどこれはキリスト教からみた回復であって、イスラムから見たら奪われたことになる。イスラム支配下のトレドでは、キリスト、ユダヤが共存して文化を成熟させた時代もあったようだ。 ポルトガルを知るための50章 出版社 明石書店 著者:村上 義和 このシリーズは結構重宝していて、広く浅...
  • レイアウトの法則-アートとアフォーダンス
    ...どこに生まれるか』(講談社現代新書)、『アフォーダンス』(岩波書店)、他。 私たちは身のまわりの環境をどうやって理解しているのか? いままで普通に見えていた「モノゴト」が、これを読むとがらっと変わってしまうようだ。もちろん変わったのはこちら側の認識で、物自体はなにも変わらないのだから、それはもう仏教の言語系にもちかかったりするのだろうか。しかし長年親しんできた認識をちょっとかじった程度ではなにも変えることなど出来ない。 何年もそこにかじりついて得られた著者の見えている場所の、そのエッセンスの何滴かでももらえればよい。その程度。むしろ記述の妙として楽しめられればよくって、実はそれすらも頭の理解が追いつかなくってもどかしい。何年か前に読んだ「知性はどこに生まれるか」のほうが分かりやすくって興奮した覚えがある。もう一度読み直そうか・・。 ...
  • ファウスト
    ファウスト 講談社 2003.9 933円 太田克史編集長インタビュー 人気レーベル「講談社ノベルス」と文芸誌『メフィスト』でおなじみの講談社から新書サイズの新雑誌『ファウスト』が創刊 ノベルス系はまったく読んでいなかったと思う。この雑誌が入門編となればと思って買ってみた。今日現在、編集後記しか読んでいない。けれど意気込みが伝わってきて面白そうな雑誌だ。舞城や京極など、どおしてノベルス系の作家は次々に新作をだすのだろう。何年かぶりの保坂さんとはずいぶんと違う。そういったスピード感がこれらの基本なのだろか。そんなところも興味があった。とにかく遠慮がちな所へ踏み込むにはもってこいの創刊かもしれない。今年はなんだか文芸誌が熱いなぁ。2003-09-05/k.m ドリル・ホール・イン・マイ・ブレイン/舞城王...
  • フラット革命
    フラット革命 佐々木俊尚 出版社:講談社 著者の書いているように、これまでは決して批判されない存在だったマスメディアの報道に対して、ブログの世界からさまざまなかたちでアンチテーゼが提示されつつある現実は確かに感じる。 元全国紙記者であった著者は、このようにマスメディアと読者というヒエラルキーのない「フラット化した関係」の中での、「マスメディアの苛立ち」をリアルに表現する。けれど、一体どれだけの人たちがそのような「現場」へかかわっているのだろう。 自分も身近な知り合いを思う限りネットへの関わりは大きく、正直これほど乖離を感じるジャンルはないと思っている。けれどこの著作にあるようなネット上の事件にたいしては、ほとんど知りえなかった。 だとすれば、著者の表現したい「フラットな言論空間」というものへ、どれだけの人々が関わっ...
  • 軽いめまい
    軽いめまい 金井美恵子 \533 講談社 カテゴリー-小説 関連リンク 2003年ベスト 金井美恵子の小説をはじめて読んだ。最近の女性作家ブーム(そんなものがあるのか分からないが、結構取り上げられているようにも思う。)のなかで、あまり気にしていなかったので手に取るキッカケもなかった。小説は本当に読んでみるまでその印象は想像の出来るものではない。これは映画も同じで、宣伝で植え付けられた印象ほどあてにならないものはない。 専業主婦の生活を延々と描き、前後に続く無限の繰り返しの途中を切り取ったかのような構成で、なによりもだらだらと続く長い文章がそれを特徴づけている。かぎかっこのない会話、主人公の一人称な語りとそれを俯瞰している作者の視点、さらにキーワードに注釈を与えるような参照、すべてがヒエラルキーのない平坦な文章としてまざりあっている。 ...
  • 大竹昭子
    大竹昭子(おおたけ・あきこ) imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 1950年東京生れ。上智大学文学部社会学科卒業。 1979年からニューヨークに滞在。 82年に帰国し、本格的に文筆活動を開始。 さまざまな分野についてルポ、批評、エッセイ、ショートストーリーを執筆中。写真も撮る。 『バリの魂、バリの心』(講談社文庫)紀行的バリ島ガイド  『踊る島バリ』(共著・パルコ出版)バリ島の音楽舞踊家の聞書き  『熱帯の旅人』(訳書・河出書房新社)バリに暮らしたアメリカ人音楽家の生活誌  『透きとおった魚』(文芸春秋)沖縄についての紀行エッセイ  『アスファルトの犬』(住まいの図書館)ニューヨークと東京の嗅覚的都市探検  『眼の狩人』(新潮社)日本の戦後写真家の活動の軌跡をたどりつつ、写真とはな...
  • 熊の敷石
    熊の敷石 堀江敏幸[著] 出版社:講談社 価格:520円 メールが使えなくなった。なぜか行き違いでプロバイダーに止められたようだ。回復したいが、昼間に連絡取る余裕がもてない。来週になってしまいそうだ。 そんなわけで堀江俊幸の「熊の敷石」を読んでみた。なんだこのやわらかな文体は。なかなか良いではないか。 それにしても時間軸の揺れ動く小説だ。冒頭の夢は2年ほど音信不通だった友人と再会して、その家主が旅にでていった後という状態の中で見ている。しかし友人もその部屋も実際に登場するのはずっと先で、音信不通だったことから順をおって物語は進みはじめる。さらに友人との再会の前にくり広がるエピソードへと入っていくのだ。 だから夢を見ていた場所があとから出てくる友人の部屋で、何となく繋がっていたことに気づきにくい構成になっている。何となく読んでいるからそうなのかもしれないが...
  • グランドフィナーレ
    グランドフィナーレ 阿部和重(著) 講談社:群像12月号 群像12月号に掲載されている新作を読んだ。シンセミア以降の作品をこんなにも早く読めるとは思っていなかったのでそれだけで感激なのだが、今回の作品によって何か新たな方向性のようなものを見られたこともまたよかった。 この小説では一見するとロリコンの主人公が自らまねいた困難へ苦悩している姿が延々と描かれているようでもあった。けれど同時に吐き出されているものが、紛れもない現代時評であることも確かだろう。 それは米同時多発テロやチェチェン独立派とみられるイスラム武装勢力がモスクワ中心部の劇場を占拠した事件や、バリ島の繁華街で連続して爆発が起こり外国人観光客を含む百数十人もの被害者を出したテロなどといった実際の事件を持ち出していることや、幼児ポルノ規制や自殺サイトや地方都市周辺の郊外化と...
  • プラスティック・ソウル
    プラスティック・ソウル 阿部和重著 出版 : 講談社 発行年月 : 2006.3 『グランドフィナーレ』以来なので1年半ぶりくらいに阿部和重の小説を読んだ。けれどこれは『シンセミア』よりも以前に書かれたようだ。特に彼の分岐点とかって言われるような作品のようだけど、それほど分析的に読むわけではないので気にしない。 そもそも「主体の分裂」など、彼の批評性に注目した書評は多いけど、何故そうなってしまうのかよく分からない。確かに語り手が突然変わったり、二重に話していたり、トリッキーな構成は目立つ。けれど小説がそれほど行儀の良い書かれ方をされている読み物だとは思えないし、もっと不可解なものも多い。 むしろ阿部和重の小説は読んですぐに彼の作品と分かるようなスタイルがあって、それを支える形式的な中に批評性があるのだと思う。だから...
  • 現代アート入門の入門
    現代アート入門の入門 山口裕美 (著) 光文社新書 ¥750 インテリアに関心があって、部屋をセンス良くまとめたいという人は多いと思う。関連雑誌の多さからもうかがえる。通信販売から無印良品、そして大塚家具から目黒通りまで。どんどんセンスアップされ、ライフスタイルも変わっていく。 アートはどうか。インテリアの仕上げとして現代アート作品を考えている人も多い。印象派の人気が根強い日本だが、雑誌の提案する工業製品で囲われたシンプルなインテリアには合いにくい。やはり現代アートではないか。そこで雑誌はアートのある部屋を提案するが、ウォーホールなどの型にはまったものばかり。日本にもアーティストはたくさんいる。 この著作はそんな状況の中で日本のアーティストを紹介し、アートのある生活を伝道すべく書かれている。村上隆や宮島達男、川俣正や森村泰昌程度にしか現代アート状況を知らず、...
  • 煙か土か食い物
    煙か土か食い物 舞城王太郎著 ノベルス 講談社、2001.3 ¥1,000 正直、舞城王太郎はこれで4つ目なのだけど、単行本1冊とあとは文芸誌に載っていたやつ2作だし、まだよく分からない作家だった。唯一まとまったもの「阿修羅ガール」はかなり不可解な小説だし、賛否両論大きいし、感覚的にもかなり無理して読みきった。その後の「我が家のトトロ」や、「ドリル・ホール・イン・マイ・ブレイン」はそれなりに読めたが、まだ「分かろう」という思いが先行して、「楽しみ半分」という気分でもあった。 そんな訳でもう一歩入り込めない作家だが、その割りに評判がいいのだからやっかいだ。別に己の感覚に合わないものは放っておけばいいじゃないかと思うのだが、何か自分の知らないところで重要な楽しさを逃してはいないかとの貧乏性に突き動かされた。どうやら面白いと話題...
  • アメリカの夜
    アメリカの夜 阿部和重 講談社文庫 この小説が僕に訴えてくるモノは意外と大きかった。 一つには自意識過剰なこの主人公にたいする感情移入だった。コンプレックスのかたまりの中から日常をいかにくぐり抜け、あたかも自分はそのようなしがらみからは自由な存在であると振る舞い、どこか涼しげな顔をして、けれどもつらいものはツライ、がむしゃらなことは素直に顔に出す、そんな人を見て、それが意外とうまくいっている光景を目の当たりにするほどに、一体自分のコンプレックスほど不毛なことなどないではないか、と不自由な存在でしかない姿を思い浮かべることも頻繁にあることを意識させられるのだった。 それが過剰に表現されるほどに、あるいはそう感じながらこの小説を読むことで、なおいっそう現実の滑稽さを認識する手助けになる、とても「実用的」な物語であること、それを...
  • さようなら、ギャングたち
    さようなら、ギャングたち 講談社文芸文庫 高橋源一郎〔著〕 \1,100 1997.4 作家の文体が独創的な場合、それを評価するにも独創的でなければうまくいかない。特にこの作品を高く評価する言葉は興味をそそる。戸惑いを生む読後感、長編というつながり、笑えたり、感心したり、退屈だったり、哲学だったり。様々に振る舞う姿は、まるでなにかから逃げ回るかのようだ。ただそれに開放感を覚えるほどの抑圧を共有しているはずもなく、それは作り手にも言えることだろうか。 阿修羅ガールが3部構成になっていて、この作品とちょっと重なって見えるのは、それが同じように戸惑うからばかりではない。そして同じように高く評価する言葉が興味深く飛び交う、それもネット上で激しく見かけるのも、文学が次のステージを求めているからだろうか。時代性にあった何かが文学に求められるだけではきっとこんなに評価は高くない...
  • ランドマーク
    ランドマーク 吉田修一[著] 出版社:講談社:群像 ホームドラマ!を見た。あの「ちゅらさん」を書いた岡田恵和の脚本だ。最近の堂本剛の長髪がいったい何を意味するのか、はたして彼はどこを目指しているのか、その疑問は日に日に増すばかりだった。長い髪ばかりではない。けっこう「ふっくら」してきている。アイドルとしてギリギリではないか。そこまでリスクを背負う意味とは一体何なのだろう。 けれどこのドラマを見て思った。かれは金八先生になりたいのだ。あの長髪は武田鉄矢だったのだ。事故で家族を根こそぎ失ってしまった人々がやがて寄り添うように疑似家族をつくっていく。しかしそこには否応なしに世間の冷たい眼差しが差し込む。常識だとかの既成概念の前では被害者は徹底して被害者の道を歩まされる。哀れみと言う名の排他性でもって共同体から駆除されていくのだ。 ...
  • 現代イスラムの潮流
    現代イスラムの潮流 宮田 律著 集英社 英仏のアラブ支配は大戦後の1920年、サンレモ会議で国際的に認定された。かくて今日のイラク、ヨルダン、パレスチナは英、シリアとレバノンは仏の委任統治領となった・・・。 パリを旅行したときの楽しみの一つにアラブ世界研究所を見る事があった。ジャン・ヌーベルほかの設計でコンペに入選した作品で、1987年パリに竣工した建物。最大の特徴は、南側のファサード。アラブ文化特有の幾何学模様のパターンで、カメラの絞り機能を応用したダイヤフラムが圧巻だった。 かつて列強時代に支配していたアラブ世界に関する研究機関がこうしてパリに存在するいきさつは複雑なのだろう。当然アラブ世界への影響力を保持したいフランスの思惑はあるのだと思う。このようにヨーロッパとイスラム世界はきってもはなせない関係があるのだが、日本とのそれは希薄だ。 この本にはイ...
  • アフターダーク
    アフターダーク 村上春樹/著 講談社 2004/09/07 ●感想が難しいので枠付けをしてみた 登場人物の内面がほとんど会話でしか分からないまま、いったい誰に感情移入していけばよいのか迷った。かといって殺伐とした空気を伝えたいのかと思えば、深夜の出会いがあまりにも豊かすぎる。そこで物語を強引に2つのパターンに枠付けして、今回の小説を解釈し直してみた。 ●以下の「2パターン」に物語りの見方を(限定的に)設定し、それらに沿って振り返ってみた。 ●1)姉妹が主人公:世間にスポイルされた姉とその影でひっそり引きこもる妹のすれ違いドラマ ●2)高橋が主人公:ナルシストな男が、当たり障りのなさを装って自身を饒舌に語り自己陶酔していくドラマ ●1)、この小説の特徴として都市を俯瞰するような視点や、浅井エリ...
  • ネオリベラリズムの精神分析
    ネオリベラリズムの精神分析 なぜ伝統や文化が求められるのか 光文社新書 樫村 愛子 (著) 僕らは自分の生きている時代や世界を理解したいと常に思っていて、その欲求は今の時代に文学やら映画などを造る、創造的な動機付けの意味を了解したいことと同義のように思える。 かつて、安定した世界像=「大文字のA」のあった時代には、その対象へ向って書くことの出来た非公開の日記も、現代の細分化され共有の困難な、その場限りの世界像=「小文字のa」に対しては特定の「コメント」や「足跡」のように承認行為を得られるネットの公開日記は必然の道具でもある。 この時、重要なキーワードがジャック・ラカン(精神分析家)の提示した「現実」という概念で、それは決して見ることの不可能な世界を意味し、このことは同時に僕らが目の前の「世界」を見るとき、自己の幻想(勝手な解釈)を通じてしかそれに触れる...
  • ネオリベ現代生活批判序説
    ネオリベ現代生活批判序説 著者・編者・訳者:白石嘉治・大野英士編 出版社:新評論 2005年10月 価格 2310円 「ネオリベ」という言葉の響きやこの本を読んでいる中で抱く印象は、かつての労働者階級による闘争的な空気が再び起こっているかのような緊張感だ。 けれど事態はそれほど単純ではないようだし、一体自分にはこの状況が理解できているのか、またはこれから先の進捗に間違った判断はしないか、そもそも「かつての闘争」なんて言える様な歴史理解すら出来ていないのではないか。 一方で、漠然とした不安を抱えながら生きているのが現代社会のバランス感覚なのであって、真実を理解しないまま表層の空気のみを感じ取るナイーブさだけが発達してしまっているのだろう。なんていう冷めた自分もいる。 「かつての闘争」が失敗し、イデオロ...
  • 「愛国」問答
    「愛国」問答 「愛国」問答 これは「ぷちナショナリズム」なのか 香山リカ著 福田和也著 \720 中央公論新社 2003.5 ナショナリズムという問題はじわじわと浸透している。言葉の定義からすれば本来のそれとすれ違っているのかもしれないが、とにかく話題に上っているし、日常生活で口にする言葉の中へも定着していく感もある。関連した本もたくさん出ている。大きな本から、比較的読みやすい新書まで様々だ。この状況はとにかくも日本で比較的タブー視されてきた領域への議論を色んなカタチで生産させる契機になっているのだろう。 この領域においてはかなり引き出しの差がある二人の対談だと思うが、一方でこういった状況こそがナショナリズムという言葉を取り巻く「今」をとても反映しているのだろう。香山氏の切り出しに対して福田...
  • 供述によるとペレイラは……
    供述によるとペレイラは…… アントニオ・タブッキ 須賀敦子訳 白水社 新書 \880 カテゴリー-小説 第1次世界大戦後、ポルトガルには暗殺、クーデター、インフレなどの様々な苦難が満ちていた。世界的にも苦難からの救済として、独裁政権が生まれていた。イタリアのムッソリーニ、ドイツのヒットラー、スペインのフランコ。ポルトガルでは経済学の教授であるサラザール博士が大蔵大臣として経済を立て直し首相に就任。その後36年に渡りその地位を維持し、独裁者となる。表面上はファシストでなくとも、教育や出版、言論には厳しく秘密警察も存在していたという・・。この小説はまさにその時代に生きていたある新聞記者を描いている。大手をやめ、リスボンの小新聞社の文芸主任をつとめているペレイラ。 主人公のペレイラは変わらない日常を生きることにより、知識人としての国家への矛盾意識、体制的な社会への思...
  • 飽きる力
    飽きる力 生活人新書 河本 英夫 (著) 河本英夫さんはオートポイエーシス論で有名な方。その魅力的な響きへ惹き込まれ何度かチェレンジするものの、未だ難しくて理解できないオートポイエーシス。けれどこの新書を通じて少しだけ分かってきたような気がします。 これは悩ましい大人たちへの指南書なんだと思った。禅の思想にも近いような。難しい理論を展開する人が時々新書を通じて平明な言葉で、けれど決して要約するのではなく視点を少し変えて説明してくれる、そんな良書です。 無理な頑張りは続かない、努力したのに自分が疲弊してしまって、結果が出ない場合は責任まで取るはめにも、、。渦中にいない時だからこういった危険性に納得できる。一方で渦中に自覚してこそ効果大なのが「飽きる力」。難しいな。 「飽きるとは、次への選択のための隙間を拓き、異なる努力モードに気づくこと。」がむしゃら...
  • タブーの謎を解く
    タブーの謎を解く 山内昶 ちくま新書 「文化装置」という言葉は、建築の分野でもよく、コンセプトなどを表した文章で見かける。「お祭り広場」とか、「コモンスペース」の機能性を説明するときなど。 しかしこの本で取り上げている、「タブー」がいかに文化を形成する装置として機能しているかを、納得させられるほどの説得力をもった「文化装置」は、建築に於いては存在しないだろう。 筆者は文化人類学や民族学を通して、いかに人類が自らの生活に「タブー」をつくって来ているかを示している。その種類たるは、本当に様々で、それだけ読んでも人類の複雑さを垣間見れて楽しい。 フロイトやレヴィ・ストロースなどで知られる、近親婚のタブー。民族や宗教によって規定している食に関するタブー。あるいは、日本に古くからある「言い伝え」や「迷信」などにでてくるタブー...
  • アーティスト・ファイル2011―現代の作家たち
    アーティスト・ファイル2011―現代の作家たち 国立新美術館 2011年3月16日(水)~6月6日(月) 国立新美術館のアーティスト・ファイル2011がとても良かった。2週間ほど前、震災の影響でガラガラのため、いつもより落ち着いてみることが出来たからか、、。以下は気になった4人の作品について。 バードヘッドの写真が中国の現状を素直に現しているのだとすれば、驚くほど自由で活き活きとしたもので、そこには若者たちの今を写した正しさがあって、一方で捉えきれない部分もあるのだろうと思わせながらも、写真を楽しんでいるエネルギーが溢れていて、それだけで充分に見ごたえがあった。 プラスチック製のストローを用いたタラ・ドノヴァンの作品は雲のように掴みどころがなく、同時に物質感が強い。マイラー・テープを壁一面に繁殖させたような作品は普遍的なオーラさえまとい、インスタレ...
  • カルチュラル・スタディーズ
    カルチュラル・スタディーズ カルチュラル・スタディーズ入門 ちくま新書 261 上野俊哉・毛利嘉孝著 740円 2000.9 実践カルチュラル・スタディーズ ちくま新書 345 上野俊哉・毛利嘉孝著 740円 2002.5 ナショナリズムを考えるとき、それが遠い世界の話として身近に感じられないもどかしさがある。以前読んだ「アメリカ政治の現場から」(渡辺将人)では、移民社会での政治状況がいかにアクチュアルにそれらの問題と対峙させられているかを物語っていた。黙っていれば特にマジョリティーの立場を脅かされない日本人である自分が、積極的に介入させられる時代が何れ訪れるのかの脅威すらない。 そんな中この著者は・・「何か楽しいことや面白いことをだらだらやっていくなかで、苦し...
  • 20世紀の精神
    20世紀の精神 20世紀の精神 多木浩二 平凡社新書 多木さんの文章をまとまって読んだのは、これが初めて。 書物案内と言う物ではなく、いかにして20世紀の精神が築かれてきたかを、6冊の著作を通して探っていこうとする書物でした。 読書人ならば常識化している本らしいですが、読書人ではない僕にとっては、名前は聞いたことあるけど実際には読んでいないものばかりです。それでも、フロイトやソシュールは本人の著作ではなく、解説本的なものはいくつか読んだこともあります。難しい本を分かりやすく解説したものは、善し悪しはあれど、それ自体も一つの思索的なものなので、入りやすい分好きです。 思索的なものを読んでいて楽しいのは、難しい中に時々はっとするような考えを発見するときです。発見するといても、どこかでその時気にしているよ...
  • :近況-2005-2-2006-1
    2006-01-12 リア王●岩波文庫/シェイクスピア (著)/野島 秀勝 (翻訳)/映画『乱』の映像と重ねて読んでいたからか、すごく面白かった。さすが黒澤。さすがシェイクスピア。例えばボリス・ヴィアン『うたかたの日々』にインスピレーションを得た映画『クロエ』のように(新旧めちゃくちゃw)、この作品はイワユル原作モノとは違う、あくまでもオリジナルだと思った。テクストはあくまでもイメージだ。原作に忠実な映画なんて基本的にありえない。それにしても。翻訳ものは苦手なんだけど、これはとても美しい日本語のリズムだ。激しい罵倒がまるで妖艶な歌のように響く。憎しみ合うさまが濃密に絡みつく。全てが夢のようにリアルではかない感じだ。 2006-01-11 買いすぎ●最近、本屋へ行くたびに何か買ってしまう。今月は文芸誌が面白そうだったし、とか。文藝と新潮2冊。星野智幸の自作解説は面白かった。小...
  • 沖縄「戦後」ゼロ年
    沖縄「戦後」ゼロ年 目取真俊著 生活人新書 沖縄戦から六十年。戦後日本の「平和」は、戦争では「本土」の「捨て石」に、その後は米軍基地の「要石」にされた沖縄の犠牲があってのもの。この沖縄差別の現実を変えない限り、沖縄の「戦後」は永遠に「ゼロ」のまま。(書籍紹介文) 沖縄戦のことや基地の問題など、なんとなくは知っていてもそれについて真剣に考えたり、誰かと話し合ったりすることなどなかった。そんな僕らの態度が、一方で沖縄に生まれ、家族らの戦争体験を聞いて育った人たちから見れば、日本の安全保障が、ある意味で彼らの犠牲の上に成り立っていることへの、無自覚な黙殺でしかないことを、この本を読んで知った。 著者は一貫して僕ら本土の人間と彼らとの間にある「温度差」を強く批判している。ここ数年の「癒しの島、沖縄ブーム」が意図的にお膳立てされ、これらの問題を隠蔽し、それに乗...
  • 過防備都市
    過防備都市 五十嵐太郎:著 中公新書ラクレ 昨年から「自由を考える」東浩紀・大澤真幸(著)とか、「不自由」論 仲正昌樹(著) とか「プチナショナリズム症候群」香山リカ(著)など、9・11前後のセキュリティー社会の動きや、愛国心を謳歌する若者へのズレなどを憂う著作の延長線上にあると思う。 これはもともと建築系の雑誌「10+1」などで連載されていたものだ。セキュリティ意識が恐怖を再生産するという悪循環を分かりやすくまとめている。 建築の設計をしていてもセキュリティの問題はここ1年くらい関心が高い。周辺でも泥棒などの被害に合う人が多くなった。一方で、この本に象徴されるような「恐怖をあおる社会」なるものが、近年顕著になっていることを痛感する。 もうひとつ象徴しているのは、このような著作のように「情報のパッケージ」を最大の売...
  • 保坂和志
    保坂 和志 (ほさか かずし) #ref error :ご指定のページがありません。ページ名を確認して再度指定してください。 1956年生まれ。 早稲田大学卒業後、西武コミュニティ・カレッジで講座企画を担当。 93年に脱サラし、本格的著作活動に入る。小説家になることにしようと決めたのは、高校3年生の夏休み。30歳を目前にして尻に火がつき、本気で小説を書くことに。 90年『プレーンソング』(中公文庫)でデビュー。『季節の記憶』(中公文庫)『世界を肯定する哲学』(ちくま新書)『カンバセーション・ピース』(新潮社)   保坂さんのHP:http //www.k-hosaka.com/   関連リンク この人の閾 カンバセイション・ピース プレーンソング 季節の記憶 <私>という演算 コメントをぜひ...
  • ヤバいぜっ!デジタル日本
    ヤバいぜっ!デジタル日本 ハイブリッド・スタイルのススメ (新書) 高城 剛 (著) 優れた小説は読むそばから創作意欲がわく、みたいなことを保坂和志は書いていたけれど。この本もまさに読んでいるうちにクリテイティブな衝動に駆られる。例えばスタイルを提案していくことが重要とか書いてあったけど、建築でもそんなことを良く考える。住空間を作ることは生活スタイルを提案すること。 じゃあスタイルを提案ってなんだろうか。僕らは材料や空間の持つ力を知っているつもりなので、そこから感じられる心地よさとか。それはどうってことない程度かもしれないけど、意外とその普通な所に大事な部分は多く隠されていることは他の事へも共通した視点。 生活スタイルへ意識的な生活はスタイリッシュ。結局そんなことかもしれないけどw。形から入ることが馬鹿に出来ないように。空...
  • 日本の難点
    日本の難点 宮台 真司 (著) こういった本を読むと思うのは、何故政治家はもっと政策について分かりやすく伝えようと努力せず、何故メディアはそれらをフォローすべく噛み砕いた議論をせず、何故僕らはそんな社会を受け流してしまうのだろうかと。 けれど新聞やニュースへ少しは意識して接しているにも関わらず、知らないことばかりか知っていたつもりの事柄も、こんなふうにつながっているのだという驚き。それは結局どこかで説明されていても、見て聞き流す程度ではまったく分らないほど社会は複雑さを増していて、上辺の分かりやすさへ翻弄されているのだと自覚するひと時。やがてまた不理解の海へ流されて行くのかという不安も既にマヒしてきた。 望むことや出来ることは、「世の中をよくするにはどうすれば」を学ぶためこれらの本を読むのではなく、少しでもこの「システムが行き渡ってしまった」ポストモダ...
  • 環境問題入門
    環境問題入門 ベーシック 環境問題入門 (新書) 小林 辰男 (著), 青木 慎一 (著) 恐らく自分が生きているうちに経済成長とのバランスとか言ってられないくらいに深刻化すると思われる環境問題。 新聞やらTVやらであおられるだけで、まとまった知識など何もないことを最近感じて幾つか本を購入。中でもスタンダード情報として定評のある(調べた限り)この本から読んでみる。 前半を読んだだけで、「TVを見る時間を減らす」とか「ウォシュレットをやめる」などの個人的対策とは違う次元で、何兆円ものお金をどう振り回すかの話が続く。環境問題はお金の問題でもあるようだ。 二酸化炭素の削減は、既に省エネ率の高い日本で行うコストの何十分もの小ささで実現できる国が多い。他国で削減支援し、日本の削減分に置き換える方法や、同じようにコストを配分す...
  • 写真
    今までに取り上げた写真関連リスト 近況-2004-4-2004-6 MenuBar Self-Reference ENGINE photographers #039;gallery なぜ、植物図鑑か アンリ・カルティエ=ブレッソン サイト・グラフィックス展 シルバーウィークにアレコレ・感想4つ フォトグラファーの仕事 マーティン・パー写真展 ランドスケープ 柴田敏雄展 ヴォルフガング・ティルマンス展 写真展と写真集メモ 写真新世紀-2006 土田ヒロミのニッポン 映画と写真は都市をどう描いたか 最近の冬 東京国立近代美術館の写真作品 野口里佳の展示を見て 銀座で写真展2つ 写真-覚書 2013-07-16 片山博文「Facts in Flatness 」■アンドレアス・グルスキーが写真をデジタル加工し、コンセプチュアル性を高めているのに対し、彼は写真...
  • 「不自由」論
    「不自由」論 「何でも自己決定」の限界 ちくま新書 仲正昌樹(著) 価格:700円 アドルノとホルクハイマーとの共著「啓蒙の弁証法」に対する解釈が「分かりやすく」て面白い。ならず者が出世して上流社会の一員となったが、昔の仲間を殺害して自らの「過去」の痕跡を抹消する・・。まるで中居正広の主演している「砂の器」そのものではないか。 文明化されればされるほど、文明を背後から支える野蛮な暴力を上昇させていくのが「啓蒙の弁証法」らしい。確かに日本国憲法の「健康で文化的な最低限の生活」という用語にはものすごい野蛮性が隠されているように見える。潔癖性も、食品の安全性も、ますます野蛮性を増すばかりではないか。 アーレントの「人間性」に関する解釈も「分かりやすく」て面白い。我々は(奴隷制によって確保された非人道的な犠牲の上に...
  • フランス映画史の誘惑
    フランス映画史の誘惑 中条省平著 集英社新書 0179 \760 映画を見るのには体力がいる。2時間近い間(最近では3時間超えも多い)じっとして集中力を高めなくてはいけない。緊張感をたもち流れをつかみ、時に監督の意図を読み、時にシチュエーション独自の空気を読み。そのようにしてある「ふんぎり」のようなものを必要とすからだ。それでも映画には魅了される。いや、それだからとも言える。 字幕はさらに体力を要する。絵と文字を同時に追い、両者の伝える像を一瞬にして読みとる能力。では日本映画は楽かといえばそうでもない。字幕の要らないぶん、また描かれる環境、人物が身近な存在だけに、感情の細部に至るまで徹底して読んでしまうから、かえって疲れるのだ。そしてまた魅了される。 フランス映画は特にやっかいだ。絵と字幕のコンビネーションへさらに...
  • ホンマタカシ ニュー・ドキュメンタリー
    ホンマタカシ ニュー・ドキュメンタリー Takashi Homma New Documentary 会期:2011年4月9日[土]─ 6月26日[日] 会場:東京オペラシティ アートギャラリー [巡回情報] 2011年1月8日[土]─ 3月21日[月・祝] 金沢21世紀美術館 http //www.kanazawa21.jp/ 2012年7月15日[日]─ 9月23日[日] 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 http //mimoca.org/ 吉田健一は「東京の昔」で昭和40年代頃から見た昭和初期の東京について書いていて、すでにその頃の「今」は銀座が銀座でなくなっているといった表現をしていて、椹木野衣はホンマタカシ展の図録で時代は郊外化を避けられず、むしろ彼の写真はそれを絶命的に行っていると書いている。どちらも面白い。 両者は興味深く共鳴している。その時代を生きる...
  • 凶気の桜
    凶気の桜 凶気の桜 新潮文庫 ヒキタクニオ著 2002.9 \552 カテゴリー-映画 関連リンク #related 渋谷を描いた小説で、ここまでバイオレンスなものは読んだことが無く、むしろ「渋谷系」という表現から僕が思い浮かべるのは、暴力とはほど遠い「マッタリ」とした空気のほうだ。「現代のとらえ所のない若者の無気力感」という門切り型な解釈をそこに当てはめれば、あたかも渋谷の街がそれらを体現しているようにも見える。 しかしこの小説ではそんな若者を徹底して嫌う立場を取っている。現代の情けない日本を一番象徴している存在でもあるかのような、嫌悪感たっぷりに。そして「ナショナリスト」という右翼的な意匠を取っていることは、成熟した社会が作り出す空気として、世界中で巻き起こされてもいる「動き」をあらわしているのではないだろうか。 反動とも言えない小競り合...
  • イタリア旅行記/2000年12月28日
    イタリア旅行記/2000年12月28日 12月28日最終日のヴェネチア。昨日の浸水で、朝食をとるホテルのリストランテが閉鎖されていた。椅子はテーブル上にのせられ、床はまだ濡れていた。部屋まで運んでくれたので、食べることは出来た。ほんとに手のかかる街だ。頻繁に水が押し寄せてくるというのに、建物のエントランスには立ち上がりが無い。もちろんその方が僕らには使いやすいが、住んでいる人たちには大変なことだ。 今日はマルコポーロ空港からミラノへ戻り、夜の飛行機で成田へ向かう。最終日になって、天気がよくなった。ずっと曇り空の下でしかイタリアを見ていなかったので、街の見え方が違っていた。ヴェネチアの街もなんだか活気づいている。帰りは、サンタルチア駅を使わずに、ローマ広場でバスに乗った。ここだけはヴェネチアの中でも車の走れるところだ。ホテルからすぐのこの広場ですら、船上バスを利用しないと来られな...
  • 「彼女たち」の連合赤軍
    「彼女たち」の連合赤軍 「彼女たち」の連合赤軍サブカルチャーと戦後民主主義 角川文庫 大塚英志〔著〕 \667 70年代からはじまった消費資本主義的な社会現象が、その時代に生きていた男女の行動へどのような影響を与え続けていたのか、そんなテーマに沿って、連合赤軍の悲劇をたどっている。 この著作によって、70年代、80年代の流れ、そしてバブル崩壊へと続くあたりまでの現代日本への変化していく構造を読みとれるような気がした。バブル崩壊後も早10年以上経つ。そろそろバブル後自体も、この著作のように「歴史的」に分析してくれるものが登場するのではないだろうか。 ここで与えられた男女に関する分析は、現代への様々な視点へと繋がっていく可能性があるように思う。特に「自己表現」という焦燥の果てに・・と題された、「フェミニズムのよ...
  • 嫌オタク流
    嫌オタク流 著者:中原昌也、高橋ヨシキ、海猫沢めろん、更科修一郎 出版:太田出版 中原昌也が絡んでいるだけで買ってしまうのだけど、オタク向けの本のようだ。とはいえ、「オタク事情には門外漢」の高橋ヨシキと中原昌也が、「その世界の方」の海猫沢めろん、更科修一郎と対談した内容で、「現代オタク事情」について色々と知ることの出来るものだった。 特に海猫沢、更科の語るオタクメンタリティーなるものがとても突っ込みどころ満載で、あまりにも予定調和的な行動原理に言及されてしまう彼らのイメージに正直驚いた。それは「どうでもいいよ」と言ってしまうようなものばかりで、中原昌也もほとんど投げ出していた。 彼らのように、一定のコードに萌え、そこから逸脱せずに小さな「差異」を極限まで消費し続ける姿とは、ある意味で現代をとても象徴している。そして幼児ポルノ、近親相姦、障害者萌えなど、言葉で表...
  • 宮崎誉子
    宮崎誉子(みやざき・たかこ) 「アルファベット・クッキー」《文藝 2003年夏号》 「ポップコーン」《群像 2003年6月号》(現代小説・演習 第六回・第二部) カテゴリー 作家 コメントをぜひ。 名前 コメント
  • クロエ
    クロエ 2001日本/サンセントシネマワークス 監督・脚本:利重剛 製作:塩原徹/長瀬文男/仙頭武則/松下晴彦 脚本:萩生田宏治 撮影:篠田昇 音楽:今野登茂子 出演:永瀬正敏/ともさかりえ/塚本晋也/松田美由紀/鈴木卓爾/福崎和広/西島秀俊 シアターイメージフォーラムへ来たのは初めて。高崎さんの設計した建築は、思ったほどこじんまりして、彼の作品であるのかも疑わしい。やはり都心の過密した与条件の中で個性を出すには、現代建築に許されたボキャブラリーはもはや狭いものなのかと思った。 小説「うたかたの日々」を利重監督は現代日本の架空都市に舞台を移して表現した。冒頭に「この映画は原作の忠実な再現ではない」といった「うたい」があったが、むしろ意匠を変え、舞台を変えたこの作品には、充分に...
  • 若者のすべて-ひきこもり系VSじぶん探し系
    サンプリングされた若者の態度が空しい 著者: 斎藤環 \1,400 出版:PHPエディターズ・グループ サイズ:四六判 / 238p 発行年月:2001.7 精神科医である著者が様々な若者へのインタビューを通して、現代の若者論を印象論や価値判断から自由な形で展開する。著者は医学博士爽風会佐々木病院勤務。専門は思春期・青年期の精神病理学。著書に「社会的ひきこもり」など・・・。 雑誌「広告」にて掲載されていた頃、東浩紀氏の執筆と合わせて、とても面白い企画ばかりが目立っていた。バックナンバーを探して買い集めてしまったほどだった。今回単行本になって、あらためて読みなおしてみても、その面白さは変わらない印象だった。 精神分析とサブカルチャーをからめて論じた著者の試みは、社会学と風俗をからめている宮台真治を初めて読んだ...
  • ベルリンを舞台にした映画
    ベルリンを舞台にした映画 ベルリン、僕らの革命 監督: ハンス・ワインガルトナー 出演: ダニエル・ブリュール, ジュリア・ジェンチ レボリューション 6 監督: グレゴー・シュニッツラー 出演: ティル・シュヴァイガー, セバスチャン・ブロムベルグ ベルリンを舞台にした映画をさがして2本見た。どちらも以前借りようと思いつつ見送っていたものだった。偶然なのか2本とも同じような内容で、ここから現代のドイツが抱えている問題なんかも見てしまってよいのだろうか。 「贅沢は敵だ」と、資本主義やグローバリゼーションを批判する若者達の青春ドラマ。そのテイストでどちらもまとめられている。青春映画だから清々しさとほろ苦さが中心にあるのだけど、消費社会批判も真面目に構築されている。...
  • 「屋上庭園」展
    「屋上庭園」展 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 2008年04月29日 ~ 2008年07月06日 東京都現代美術館 アーティストは、自身の作品に対しての思い入れを、どのように消化させるのだろう。作家にとっての作品とは、作り手が共にした時間の蓄積を抜きには語れない。それは飼い主がペットに対して抱く感情の転移、もしくは植栽に語りかける庭師と同じような構造かもしれない。 収蔵作品の中からテーマに応じて学芸員がパッケージングしたこの企画は、「屋上庭園」という切り口で作品を解釈し、それらを通じて現代を捕らえようとしているのだろうか。庭造りの中で芽生えてくる感情の連鎖とその蓄積を、作品に対するそれのように喩えているのだろうか。 実際には「大地から切り離された...
  • 多重化するリアル
    多重化するリアル 心と社会の解離論 (ちくま文庫) (文庫) 香山 リカ (著) 著者は「リアリティ喪失」の問題を考えるきっかけとして、離人症性障害を取り上げる。以下、定義を引用。 1)自分の精神過程または身体から遊離して、あたかも自分が外部の傍観者であるかのように感じている持続的または反復的な体験。 2)離人体験の間、現実吟味は正常に保たれている。 3)離人症状は臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。 4)離人体験は、精神分裂病、パニック障害、急性ストレス障害、またはその他の解離性障害のような、他の精神疾患の経過中にのみ起こるものではなく、物質(例:乱用薬物、投薬)またはその他の一般身体疾患(例:側頭葉てんかん)の直接的な生理学的作用によるものでもない。 上記の症例は解離性障害...
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