山下敦弘監督の作品をまさかDVDで見られるとは思わなかった。「リアリズムの宿」公開の影響だろうか。ともかくTUTAYAの新作コーナーにこの「どんてん生活」を見てちょっと感激した。なにをそんなに惹きつけられるのだろうか。自分でもよく分からないまま興味だけは尽きず、見逃していた映画にまたあえた満足感で見るのだった。
特にどうと言うわけでもない。あっさりしたものだ。けれど「カウリスマキ風」と語られるらしいが、そんな趣はある。アメリカン・ニューシネマの雰囲気もある。あの時代の倦怠感にいまの日本が近いのだろうか。成熟した社会と不景気の風が作り出す脱力感。登場人物達がなんとなく集まっていて、お互い心の内は明かすことはなく、それでいて何かを伝えたい。そんなもどかしさが漂う。
パチンコ屋へならぶ光景は時々朝に見かける。自分もあそこに並んでいるのかも知れない。そんな風に思うこともある。けれど同じ顔ぶれでいても、きっと輪に入れないだろうし、どこかで拒むのだろうかとも思う。何かを目指すでもなく、ただ日常をやり過ごすことを日課としているような生活。熱い者を拒み、それでいて共感を求める。もうひとつの、でもあり、今そうなのかも知れない、とか・・。
随所に小さな笑いがあって、暗い映像のなかで明かるさを感じるのだが、ベースに流れている部分はけっして笑っていないように見える。そう見ている自分を、もう一度外から見ている気分だ。ラストの花見はそんな「はかない」人間関係を浮き彫りにしている象徴的な場面だ。花吹雪にまみれた沢山のごちそうと、表面の笑いに満たされた細い関係とが、セリフの無いままただ続くのだから。2004-04-18/k.m
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