ブロンド少女は過激に美しく



  • 監督・脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ
  • 原作:エサ・デ・ケイロス『ブロンド少女の異様さ』
  • 出演:リカルド・トレパ、カタリナ・ヴァレンシュタイン
  • ポルトガル・フランス・スペイン映画 64分



なんでしょう、この見終わって心がざわざわする感じ、映画館を出て、空調で冷えたからだへなまぬるい風が心地よく当たり、節電で暗いビルの谷間へスターバックスが見えて、誰かとこの映画について語り合いたいような人恋しい気分になりつつ。

1時間ちょっとの短い作品。冒頭の電車の中で切符を切るシーンでいきなり5分くらい?の長回し。見ているこちらがハラハラしちゃうような時間の使い方、100歳超えの監督にはコワイものありません的なオーラで。

リスボンから郊外へ向かう列車。男は隣席に座った見ず知らずの女性へ身の上話を始める。伯父の店の2階で働いていた男は、道を挟んだ家の2階の窓から姿を見せた少女に一目惚れしたのだと。しかしそれがこんな結末になるとは、、。思わせぶりな男、興味を抱く隣席の女性。

こんな感じで後は回想録のように映像が差し込まれて行くのだけれど、隣席女性のキャラの強さが既に気になってしょうがない。ブロンド少女を発見する窓は余りにも近距離で、ほとんど同じ空間に居るような濃密度。はじめから少女は思わせぶりな目つきで、見てみないフリをする男の態度も白々しい。

全てに茶番ぽい雰囲気を覚えつつ、どんどん惹き込まれていく。この場合、自分は映画へリアリティを求めていないのだろうか。だけど目の前の映像はまぎれもない現実で、見ている僕らはそこから逃れられない。映画にとってフィクションとは何だろうか。そんなことも頭をよぎる。

話の展開は早い。伯父は結婚を許さず男を家から追い出す。狭い一室での困窮、絶望、出稼ぎ、騙されての借金。伯父は突然結婚を許す。そして指輪を買いに出かける男と少女、、。

ほんの短い作品へ、様々に映画的な豊かさが詰まっている。伯父が必要以上に結婚を否定する不条理な食事シーン、狭い一室が余りにもヒドイこと、少女の家の1階エントランスが、遥か向こうにまで続く立派な階段であること、海へ向かう斜面が都市となっているリスボンの夜景、そして昼景がせわしなく差し込まれること。

、、なんとも面白い映画でした。2011-06-23/k.m


カテゴリー-映画
最終更新:2011年06月24日 14:29