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「せんだい」へ建築視察-2001

お盆休みを利用して仙台へ建築視察に行ってきました。

発端はやはり「せんだいメディアテーク」を見たい思いでした。けれど結果的には仙台市を中心に、宮城県にここ数年続々と竣工した「公共施設」を見ることが出来ました。それらを通じて、開かれた公共空間の最先端を実感し、市民生活をサポートする公共資産の明るい未来をのぞむことが出来ました。

一泊二日という短いスケジュールでしたが、朝早く東京を発ち、次の日の夜遅くまで仙台に居たので、まる二日間滞在したことになり、予想以上に多くの建築を見ることが出来ました。

初日は仙台市内に絞り、地下鉄とバスを利用して3つの施設を見学。次の日はレンタカーを利用して、松島から名取市まで5つの施設を見学しました。初日の行動によって、車では感じ得ない仙台の街の大きさ、郊外ニュータウンの存在、起伏と緑の多い多様な都市の概観を感じることが出来ました。

この街は東京のような、巨大化ゆえに単一機能の集合体が出来、目的により街を使い分けていくようなやや倒錯した状況とは違います。一カ所にまとまり、徒歩圏でつながった中に多様な表情が混在し、それでいて道路がゆったりと整備されているので、窮屈さもない、とても安定した都市風景をもつ街だと思いました。

けれどもそれらが小さい故の姿であって、すでに泉区のような「郊外ニュータウン」の存在を見ても、仙台周辺が東京都心の複製となるべく開発が始まっているようにも見え、都市がインフラへ費やす投資と維持管理費の大きさを考えて見ても、現在の大きさはすでに過剰に思え無くもないです。

せんだいメデイアテーク

二日の間、3回もこの施設にきた。今回の目的であるいじょうに「場」のもつ魅力に引き寄せられたからだろうか。あるいは見ておかねばならないという、なにか責任のようなものもあったのかも知れない。■その出来映えや透明感の達成度から言えば確かにコンペ時とは違う結果かも知れないが、コンセプトの生成とコンテンツの充実度、市民のリアクション、体感出来うるわずかな経験からいっても、この施設が今までに経験したどの公共施設よりも、より自分の身体的、精神的な面で共感できたものは無かったと思う。■この建築ほどコンペから竣工までの6年間、そして現在に至るまで、語られ議論された建築を同時代として感じたことはない。イメージの段階で、ある共有意識を生みだし、それが一人歩きしていた。あるいは現場をオンタイムで見せ、毎号GAでも取り上げていた。公共建築が本来の社会性を獲得していく状況を目の当たりにした事件である。■しかし実際にこの建築を経験して、あのメディアテークが素直に現前している状況に、ある種の安心感と開放感に満たされた。それほどに単純だった。鉄板の溶接されたスラブがそのまま仕上げになっていることや、13本のチューブが騒然と立ち上がっていることなど、全く気にもとめずに、あたかも公園の中か自宅のベッドの上でのように、くつろいで本を読んでいる人たちの多いこと。間仕切りのないワンルームには、ただチューブがわずかに空間を文節しているだけだ。MPG工法のダブルスキンは奥行きの深い透明感をつくり、そばにくっついても不安を感じさせない。ガラス張りであるという緊張感を与えない。それらがみな安心感を与えているのだろう。 ■(追記)この写真のように、メディアテークではくつろいで本を読んでいる人がたくさん居ました。最先端のメディア渦巻く建築空間で、紙媒体を楽しんでいる状況を見ました。「くつろぎ」の度合いは、「メディアと触れ合う新しい形をデザイン」出来ていることを表しているのだと思いました。東京にはこの「くつろいで本を楽しめる」公共施設がどれくらいあるのだろうかと疑問に思いました。どでかいホールひとつつくるのなら、地域図書館を5つくらい増やしてほしいです。東京なら経済のレールに乗せながら、それが実現できる街であると思います。

仙台文学館

1)元々はプライベートな庭園であった広大な緑。そこへ地形を極力さわらないよう(切り土の少ないよう)計画された施設。素っ気ない外観も、谷間へ掛けた橋をイメージさせるただろうか。■2-3)内部には二つの正円ヴォイドがある。一つは谷間へ光を落とし入れ、内部からそれを望むべくラウンジが取り巻いた外部空間ヴォイド。二つ目は、谷間へ降りていくための吹き抜けホールを内包した、インテリアのヴォイド。後者は空間の連続性と庭園との連続性を考慮したものと思われる。この谷間が、さかんに遊べる親水公園であれば、建築的回遊性をさらに魅力ある提案へと昇華させたのではないか。■僕らが訪れたときの谷間は、静かだが、ただの大きなピロテイーであるという印象のため、庭園の流れを逆に断絶させているように感じられた。それゆえに前者の外部空間ヴォイドがより象徴的にデザインされていれば、この建物の全体性が確立されたのではないだろうかと思う。やや稀薄な空間構成に感じたのも、そのあたりに由来するのだと思った。

宮城県立図書館

■1)長さ200mもに及ぶ宇宙船のようなこの図書館は、郊外ニュータウンの森に浮かんでいる。バスを降りてまず見えてくるのは、妻側のみ。森の茂みの中へ形態が消えていくので、その奥行きの深さはアプローチからはほとんど分からない。バスがこの高台を登りだすころ一瞬シルバーの船体がみえるくらいだ。■2-3)だがエントランスをくぐるとすぐにターミナルステーションのような空間に出合う。3層吹き抜けのエスカレーターが走っている図書館など初めて見た。池袋の東武デパートにある屋外アプローチを思い出した。あそこにも、動線の規模の割にやや大げさな吹き抜けエスカレーターがある。■4)長さ200mの最上階ほぼ全域をワンルーム開架書架としているので、まさにコンコースを思わせる規模だ。天井は外観に出ている局面に波打つフォルムをなぞった感じ。照明の計画などSF映画にそもまま使えそうだ。■ただこれほどのスケール感を持った空間なのに、不思議と落ち着きがある。この感じはどこから来るのだろうか。おそらくそれは、仕上げ素材の種類が少なく、全体がほぼ無文節に連なり、陰影のみを空間の構成としている点にあるのだと思う。■パリのグランプロジェにも、この手の落ち着きを感じるものが多かったように思う。それは原さんが、京都駅などの巨大プロジェクトを通じて、スケールへのスタデイーがものすごく成熟されているのでは無いかと思った。

松島ヨットハーバー

■1-2)そのやや奇怪な形態の割りに、仕上げ材料の土着さからたたずまいは大人しく、道行く人達もほとんど気にとめていなかった。内部空間も連続性に配慮されているが、規模の小ささから難しい感じがした。■3)反面外部空間の連続性はものすごい。もっとも、インテリアの存在しない倉庫が、そのフォルムを伸びやかに見せいている役目を果たしているからだろう。ぐるりと外部を一周しながら、その表情の変化にわくわくさせられた。そして意外と大きな施設であったことを海側へ廻ったときに感じた。たたずまいの大人しく感じた道路 側は、そう意図することによって、より海側のダイナミズムとのコントラストを表現しているのではないだろうか。

ふれあいエスプ塩釜

■長谷川逸子さんのこの手の施設を見学するのは今回で4つ目だ。学生時代に見た湘南や墨田区、そして富山の絵本館。新潟をまだ見ていないがのが気になる所だが、ここでも建築家の成熟した技術を見ることが出来た。■基本構成は富山に通じるが、その回遊性、大小空間の組合わさり方など、歩き回るごとに事件のように次から次へ驚かされることの多い建築だ。サーキュレートしていく連続性は、(実物はまだ見ていないが)クールハースに学ぶことがやはり大きいのだと思うが、このきめ細かい空間造りは長谷川さん独特な持ち味ではないだろうか。湘南のあの緻密な組立方が、見事に昇華して完成度を増したのだと思う。■らせんを登り切る最上階に1.5層ほどの階高を持つ小さなラウンジが一番よかった。屋上庭園も子供達で賑わっている。ただ日差しをとても眩しそうに見守るお母さんのための、あずま屋なんかがあればいいのにと思った。

東北歴史博物館

■アプローチの巨大さが、建築のもつ貫禄以上に権力的と思えるほどの印象を与える。コンペで気になっていたのだが、非公開の学芸員施設部分方が大きく、ゾーニングが外観から分かる程度だった。導入は円形のホールがソリッドに立ち上がっている。上部には児童施設コーナーがのっかっている。そのボリュームをガラスで囲い、外観のシンボルとしている。■ここでは昼食をとった。レストランは、広大な人工池に面してとても贅沢な空間となっている。ただ、全体が打ち放しの力強さとやや重たい空間なので、無彩色で明るい、あっさしとした雰囲気を求めていたのだが、内装がパープル系のスタッコで、高級感とも違い、胸がいっぱいになる思いだった。

宮城スタジアム

■松島行きの高速道路から、山の上に建つこのスタジアムの銀色の大きな屋根が見えていた。近づくと、とても立派な施設群を持つ運動公園の中で、廻りはとても眺めの良い山並みだ。国体の予行演習中で、管理施設棟の見学が出来なかった。■下から見上げた時の状況が、ここまですごい迫力であるとは、写真からは想像できなかった。何段にも積み上がる観客席を支える打ち放しのフレームには、金属パネルで囲われた階段が挿入され、青空とのコントラストは、どこかSF映画の宇宙ステーションを思わせるようだ。■この開かれた構造体は、東京ドームや国立競技場のような、大きな壁面を外へ向けたスタジアムとは全く違う迫力を与えている。近未来の巨大ハイウェイの下を歩いているような、山の中にいながら都市的な感覚を味わう。

名取文化会館

■今回見学した公共施設がどれもみな沢山の人で賑わい、空間の回遊性を練られた建築が多い中、この建築は異色に思えた。■マッシブで軽やか。分節され、それでいてトリッキーなスケール感。それらすべては、完成度の高い施工性と材料の納まりへのフェティシズム的なこだわりから得られる職人技だ。■ちょうど展示換えの為に休館日であって、人で賑わうシーンが見られなかったのがより象徴的に思えた。職員がいたので、内部を見学する事もできた。目地のないホワイトコンクリートの内壁はトラバーチンを思わせ、より抽象的な材料の扱い方で空間がとても柔らかく感じる。プラスターボードの天井も、厚みを持った面として扱われているので、チープさが無い。■ガラス張りのエントランスホールの外では、自分の姿を映しながら、高校生がダンスの練習をしていた。

コメントをぜひ

  • DJ・TOOKIO>おいしいところ見まくりですねー。写真、ポイントおさえてうまく撮れてますね。ただ、感想はすこしお約束って感じですな。批判すべきところはしてもいいと思いますよ。詳細はまた後ほど。2003-09-07 (日) 09:20:05
  • k.m>恐れ入ります。これは2日間の割にはよく動きました。出来ればDJ・TOOKIOさんの批判などお聞かせ下さい。2003-09-07 (日) 18:46:12
  • DJ・TOOKIO>2日間ですかー!恐れ入りました。よく細かく見ておられますね。うーん、批評、批判は緻密にしなければいけませんので少し時間を頂けたらと(苦笑)ただこれだけきちんと観察されておられるのであれば東北歴史、、などはもう少し感じた事などおありでは、と思った次第です。2003-09-07 (日) 22:06:18
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