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1Q84






  • 村上春樹/著
  • 新潮社
  • 2009/5/29



まとまりなく、感想。当然ネタバレとなっていますw。

登場人物達はみな生い立ちに強烈なトラウマを抱えコミュニケーションの齟齬をきたし生きにくさに繋がっている。思春期を宗教集団の厳しい規律の中で育ち、そこから抜け出し精神の解放を望みながらも、身体に埋め込まれた生き方が消えない青豆。父親の養育に不条理さを覚え、記憶の中だけの倒錯した母親像に救いを求める天吾。カルト教団のリーダーを親に持ち、10歳でそこを抜け出し、彼女の語った不思議な体験記が出版されベストセラーとなる深田絵里子。

連合赤軍以降、タブー視される政治思想の中でかえって先鋭化してく日本的な背景とともに、そもそも思想自体が内面化されやすいコミュニケーションの構造を持っていて、分散型ネットワークとなって1990年代から急速に進化した情報技術革新の手前を描くことは、これらの諸問題が当時から変わらずあって、あたかもアーキテクチャによる環境変化がもたらした訳でないことを言っているようだ。問題は以前からあり、現在は見えにくくなっているだけだと。

多くの謎を残して、多くの登場人物が途中退散した状態で終わることは、解釈を呼びそれだけ物語として開いているように思う。かえって細部の充実が目立ちサイドストーリーを消費させる。また、アナロジーを使って自身の宗教的な振る舞い、取り巻く世界自体を語るカルト教団のリーダーと、リトルピープルという存在で世界の構造を語ろうとする作者が重なるように、登場人物達は幾つもの対比的な鏡のように写り合い、重層的な語りとなっている。そもそも自身の物語として世界は形成されているように、現実と物語の間に明確な境界がないことも繰り返し語られる。

熱心な村上春樹の読者ではないので過去の作品と比較出来ませんが、登場人物達を分析したり、何かの繰り返しだとか指摘し合ったり、この小説でまたコミュニケーションが広がるのも、魅力の一つなんでしょうか。2009-06-16/k.m


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