告白


  • 湊 かなえ (著)


連作短編で視点の変わる1人称バトン構成はよく見かけるけれど、告白というタイトルのように、ある事件の関係者がそれぞれの立場で特定の相手に向ける語りかけとして使われていて、とてもはまっている。

この構成だと一つのエピソードに対して、同時に複数の人間が関わった場合に起こる認識の違いが明確に表現できる。結果的に事件を詳細に浮かび上がらせる。少年犯罪という、それ自体に世代間の断絶がたくさん含まれているテーマも際立っている。

各者のモノローグはまったく噛合っていない部分が多く、人的リスクの多くはこういった思い込みによるものだと言われているようだ。意識の差は、そのまま社会問題につながる大きさには感じられない稚拙なものばかりなのに、結果として見えてくる姿はワイドショーを賑わす事件だ。

ミステリーとして読むよりも文学的に感じられるのは、このような批評性が含まれているからだろうか。一方で認識の差が生み出す「どんでん返し」はエンターテイメント性の高さを発揮しているし、終わり方なんかは決定的だと思う。2009-02-05/k.m

カテゴリー-小説
最終更新:2009年04月15日 19:30