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水族



  • 星野 智幸 (著)
  • 小野田 維 (画)


まず私が50枚ほどの短篇を書きます。その文章を読んで、今度は小野田さんがテンペラの絵を描き、私がそれらを見てさらに小説の細部を膨らませ、完成させたのでした。私の頭の内部の、まだイメージになっていないものを、絵として描いていただいたような、不思議な体験でした。(「言ってしまえばよかったのに日記」より)

絵本のようなやさしい雰囲気の漂う小説だが、まるで僕らが環境問題に対処できないまま、近い将来、地球が水没した先に、人類がなおも強かに水棲人として生き延び、わずかな罪悪感からいたずらに陸棲人である主人公を生き延びさせしかもその姿を動物園の猿のごとく観賞する。そんな現実を痛烈に批判したようなSFではないか。

けれど終盤までじわじわと主人公を脅かす影がチラチラかすめるのに、描かれる世界はとても幻想的で艶かしく、決してノスタルジアとは違う魅力で満ちている。やがて水が飽和状態になり、主人公を襲うが、それは解放への合図という、まるでニルヴァーナのように(以下は主人公が見た景色の感動的な描写)。

極楽鳥が薔薇のつぼみを食って、おつむに薔薇の花を咲かせた。食われたつぼみの跡にハチドリが極彩色の糞を落とし、サイケデリックな花が開く。

それは太陽だった。太陽までもが、水中で光っているのだ。その表面は金色に毛羽立っていて、よくよく見るとマリーゴールドが咲き乱れている。 2009-01-27/k.m

カテゴリー-小説