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終着の浜辺


  • J・G バラード (著)
  • 伊藤 哲 (翻訳)


変革をとなえ、晴々しく新大統領となった09年。ドルを基軸とした国際通貨制度は遂に崩壊すると言われはじめている。歴史的大統領の誕生を囲む世界的な祝賀ムード。通貨基軸破綻による米英の急速な弱体化と世界の不安定化。そして戦争や暴動の勃発。

両極端の言説がうごめく師走ムードの中、買ったまますっかり放置していたJ・Gバラードの本を手に取った。いくつもの短編に描かれている終末思想。来年への不安を冷たいフィクションの中へ引き込んでいく吸引力と共に凍結したい気分で読む。

気がつくと主人公たちは悲劇的な世界の中にいて、緻密な描写で積み上がっていく終末的空間はみるみるとこちら側まで覆い尽くしていく。けれど中心に居る登場人物たちは誰もそこから逃げ出そうとはせず、やがて同調するように破綻していく世界を突き進んでいく。

それは意識的に溶け込んでいるようでもあり、逃げ出せないことすら気づくことなく没入していくようでもある。しかも必ず非・破綻世界とのパイプは繋がっていて、救済者だったり、常識人が何らかの抵抗を促す場面がある。

それでも主人公たちは終末へ魅了されるかのように、後戻りできない世界を進む。まるでそこだけが楽園であるかのように。これほど魅惑を与える出来事が今、現実に起こりつつあるのではないか。そんな危険な思考に溺れそうになってしまう。2008-12-09/k.m


カテゴリー-小説