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イタリア旅行記/2000年12月27日


12月27日ヴェネツィア3日目。ヴェネチア3日目。今日は祝日も終わり、イタリアの都市機能も通常通りであることを期待して、やや足を延ばすことに決めていた。ヴェローナへ向かう。「イタリアは大きな都市よりも、小さな街こそよい。」何度もこの国を訪れている事務所の所長が言っていた通り、ヴェローナへ着き、その街の美しさへ驚いた。この国で初めて落ち着きと美しさを持ち、それでいて都市としての活気も見られる街へ来たのだと思った。

程良く広がりを持ち、軒のそろった石畳の道をあるく。この街には川が蛇行している。川沿いに歩きながら、スカルパのカステルベッキオ美術館を目指す。どことなくパリのセーヌ側沿いにも似ている町並みだ。
カステルベッキオは古いお城と言う意味で、そこを美術館としてスカルパが改修をした。リノベーションを得意とするこの建築家の作品をじっくりと見られるというだけで、すでにやや興奮気味だった。

小さくとも堀の深さとあわせると以外とダイナミックなスケールを内包している城だった。もとより城とはそういった物なのかも知れないが、ヨーロッパで城を見学るすのもこれが初めてだった。そのお城が今でもいきいきとして見えるのは、スカルパの改装のためだろう。どこからが彼のデザインかが分からないほどにさりげなくなじんでいるが、そこにははっきりと空間を形造るものがあった。

トイレへの導入の壁が、スチールのムレームに縁取られ漆喰で塗られている。あたかも屏風のように軽やかであったこと。石積みの重厚で洞窟のような空間へ、スチールで組まれた手すりと、大理石の踏み板を持つ階段、そしてわずかに光を注ぐためにあけられた開口部へ施されたスチールの格子。それらには、どことなく和風建築の持つ陰影と、同じ質のものを感じる。暗いことがこれほど贅沢な空間をつくるのかと思った。

ブリッジから見下ろした時の、ペイブの構成された姿が、僕の中でのスカルパを感じる大きな箇所だった。このように、僕らのような建築ファンは、美術館にくる目的がその作品には無いため、全く見ているところが違っていて、不信に思われそうな時も多い。もちろんこのような有名な建築では、そのような人は多いのだろうけど。実際そのあと、ヴェローナ銀行へ行きたくて、販売のお姉さんへ訪ねると、とても慣れた調子で地図をくれたものだ。

美術館のまえのカフェで食事を済ませ、ヴェローナ銀行を目指して歩く。途中アレーナの壮大なスケールや、車のCMにでも出てきそうな美しい町並みに見とれる。小さな広場へ面して建つスカルパの増築による銀行。やや不連続にあけられた丸(実際には微妙に楕円形だ。)窓が独特のリズム感を出している。一つ一つ雨水を導くためのディテールがスカルパらしい。こういった細部がスカルパらしさを積み重ねているのか。

槇文彦さんがスカルパを評して言っていた、優れた建築作品には、それらの作品がつくられた時代に生きた多くの建築家、あるいは建築以外の人々が意識のうえで潜在的に表現したいと思っていながら顕在化しえなかった「何もの」かを一撃のもとに露にるす行為だ、ということ。壁面の構成された姿は、まぎれもなく現代の僕らへ、何ものかを印象づけていた。内部へ入れないのが残念だ。

スカルパ気分でいっぱいになりつつ、次の街ヴィツェンツァへ行く。この街は、文豪ゲーテをも夢中にさせた、ルネッサンス時代の建築家パラディオの作品がいっぱいある。ロトンダは夏期のみの公開らしい。それでも、テアトロオリンピコが是非見たくてきたのだが、着いたときはすでに閉館20分前、おまけのこの旅行お約束の失敗である、バスの乗り間違えをしてしまって見られなかった。またひとつ残念な結果を増やしつつ、この街もこじんまりとして美しいことを感じる。

ヴェローナよりもさらに小さな街だが、こちらの方が堂々としている感じを受けた。このあたりが日本では見られにくいことではないだろうか。街の個性を大事にし、自立した文化を造っている感じがした。もちろん一瞬の訪問なので、感じるという程度だけど。パラディオ大通りという中心があり、彼の作品が多く建ち並ぶ。

すこし奥へ入ったところへ、代表作のバシリカがある。すっかり日が落ちてしまい、細部まで見渡せないが、1階に店舗が入り夜でも普通に使われている施設であることが分かる。そしてヴェネチアへ戻ると7時近い時間だった。夕飯の食べられる時間がちょうど7時からなので、その前にヴェネチアングラスのよいお店と評判のところを目指したが、あいにくすでに閉まっていた。7時半まで開いているとガイドブックへは書いてあったが、7時前に閉まっていた。

イタリアでは、店で働いている人も、僕ら観光客と同じように食事が取れるようになっている。すべての店が閉まるころ、リストランテが開くからだ。7時近くはあわただしい。有名ブランド店もはいるサンマルコ近くの商店街はみなそろって店じまいを始めていた。よく見ると玄関ドアに水が浸入しないようにステンレスのついたてを立ち上げている。たしかに今日は少し雨が降っているが、むしろ雨など関係ないのだろうか、満潮を迎えると浸水するのだろうか。

ホテルに戻るとロビーまわりの椅子がみな上げられていた。フロントのおじさんもよく見ると、長靴を履いている。どうやら今晩は確実に浸水してくるようだ。これが水の都ヴェネチアなんだと、実感した。通りにも60センチくらいの高さで足場が造られていた。足場を造っている市の職員らしき人々が、のんびりとした雰囲気のこの街で、一番働いているような気がした。



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