2000年1月31日-パリ2日目



どうやら明日はゼネストがあり、地下鉄やバス、タクシーですらほとんどつかまらないそうだ。とりあえず動きやすい今日の内に比較的外側へ行こうと、まずはコルビュジェ財団ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸へ。途中キュビズム的ファサードの建物を見つつ迷いながら到着。コルビュジェのピュリスム的純粋幾何学の構成を、ピロティや連続水平窓などの新しい建築言語によって造られた最初の例として位置づけられている。

銀行家ラ・ロッシュ邸の玄関を入ると3層吹抜けホールがある。今でこそモダニズムの構成として珍しくない造り。3階まで上がって行きながら様々な角度で展開する。新しく空間を構想する時のような、素直な興奮に見舞われる。ギャラリーへと降りるスロープ、さほど大きくない住宅だが視線が様々に抜けていく。広がりと連続感。



ここからはしばらく歩いた。マレ・ステヴァンスによる1927年の住宅。エクトル・ギマールの1898年集合住宅。後者の作品にはアールヌーヴォーの装飾が細かく施されている。改修中だった。セーヌ河をミラボー橋越しにキャナル・プリュス・テレビが見える。リチャード・マイヤー設計の作品を間近で見るのも初めてだ。

ニューヨークに活動拠点を置き、コルビュジェのモチーフが共に見られることから「ニューヨーク・ファイブ」と呼べれていたメンバー達。中でもコルビュジェの作風に近いとされていたリチャード・マイヤー。彼がアメリカの建築家として、もっとも安定した人気を確保しているのも、その作風にあるからだろう。膨大な敷地の大半を庭としているおかげで、白い外壁と豊かな樹木とのコントラストが美しい。




キャナル・プリュス・テレビは80年代から開発されたシトロエン公園の入り口に位置する。ここでは3000戸の集合住宅、オフィス、病院などが計画された。中でも集合住宅には目を引かれるものが多い。パリではあらゆる所で集合住宅の建設が進められているが、どれも美しいデザインだ。日本の博多や幕張での雰囲気と同様の建物が多く見られる。見本となっているようだ。



ここから環状バスで国際大学都市を目指す。40ヘクタールの敷地には37の寮館があり、世界120カ国から集まった学生5500名を収容している。スイスとブラジル学生会館を見る。共にコルビュジェの作品。中でも建設技術への追求が目覚ましい作品だ。技術的側面はもっぱらパートナーのジャンヌレの才によるものだが、彼の名はあまり語られない。

ファサードも間仕切りもすべて乾式構法で、軽やかに浮いている。ピロティやホワイエの彫塑的な美しさは迫力。対照的な二つの構成は絶妙なバランスでそこに存在していた。ブラジル館へ行くと改修工事中。足元は仮囲いでよく見えず上部のみ。こちらはコンクリートフレームで、スイス館とは対照的。近くにはアンリ・ゴーダン、ブルーノ・ゴーダンによるセバスティアン・スタジアムがある。


再びバスへ乗り、ベルシー2へ。パリ市の東端。環状道路と、セーヌ河と並行する道路の交点に位置するショッピン・センター。レンゾ・ピアノは、いかに運転しているスピードで建物を視覚認識させるか、というテーマで臨んだ。

ステンレス・スチール・パネルは直接雨を防いでおらず、保護材としている。ハードな表情と違って内部は集成材の梁と、全面に設けられたトップライトからの光が柔らかい空間をつくる。地下パーキングを含めると延べ10万平米というから、すごい規模。近くにはドミニク・ペローの工業センター、ミッシェルW・カガンのパリ市立技術・行政都市などがある。



しばらくバスへ乗りパリ中心部を目指す。途中、ベルシー公園、リヨン駅、アラブ世界研究所、オルセーなどの前を通り、コンコルド広場で降りる。パレ・ロワイヤル地下街で、オスカー・ニーマイヤーの逆さピラミッドを見て、ルーブル美術館へ。こちらはI.M.ペイによるピラミッド。広場から見るそれは、少し大きすぎる感じがした。純粋透明なガラスにこだわっている。外からは光を反射して物量感があり、内部は光を透過するためにガラスの存在をほとんど感じない。

逆さピラミッドの方が仮構の美しさがある。広大な美術品を見るのは今回は断念。駆け回って来ているのでカフェで休憩。今後のルートを練る。まるで大きな駅かと思うほど人の多い美術館ホール。



バスでエッフェル塔へ。徐々に日が暮れていく時間。パリの夜景を見るためエレベーターに乗る。地上から約280メートルの第3層へ62フラン払って上る。半分ほどさがった第2層のほうが、外部へ出られるので良い。

士官学校からジャイヨ宮への軸線を確認。今夜目指すレストランと、近くの日本文化会館も確認した。再び地上から、暮れかかりライトアップされた巨大な塔を見上げる。大きさからは想像出来ないほど繊細な装飾。パリの表徴として圧倒的な存在感。その後、日本文化会館を見学してアンヴァリッド・ドームそばのレストランで食事。

最終更新:2009年03月06日 13:42