森山大道 「I. レトロスペクティブ 1965-2005」 & 「II. Hawaii」




  • 東京都写真美術館
  • 2008年05月13日 ~ 2008年06月29日


ハワイの撮影風景をとらえたドキュメント映像があって、何でもカメラで追いかけている素朴な森山大道の姿だった。やっぱり、と思わせる土着的な部分がハワイにはあって、アメリカの荒涼とした空気とか、モノクロ写真に刻まれていく記録はその撮影現場の雰囲気からは想像できないほど深かった。

タテとヨコの写真には何か決定的な差があって、前者がより近景で細部を大胆にとらえているのに対し、後者はより空間的にパースペクティブを強調しながら画面を作っている。ハワイの展示でもヨコの続く部屋とタテの部屋とに大きく分かれていて、はじめはあまりそれに気づかなかったけれど、ムービーを見ていると使い分けが必然的に思えた。

ヨコには当然ロードムービーのような空間力があって、好きな写真が多いのだけれど、タテのほうがドキッとさせる緊張感に満ちた作品が多い。レトロスペクティブにあった粒子の粗い物質感たっぷりの写真よりも、軽やかでスタイリッシュなものが『ハワイ』には多く、表現形式が変わらないからこそ、かえって時代の空気を素直にトレースしているように思えた。 2008-05-25/k.m

カテゴリー-展示
最終更新:2008年08月14日 23:29