冒頭から可笑しな空気。断片的な映像。奇妙な女子高校生たち。神経質な父親。セクシャリティーを誘うカット割。ルイス・ブニュエル作品のようなシュールさ。まもなく父親が焼身自殺(?)をはかり、それすら単なる不条理喜劇的演出の一部でしかないように放浪の旅が始まる。
イギリスのトラデシショナルな衣装をまとい砂漠を放浪する姿はコスプレのように滑稽だ。旅をする2人が事態を飲み込んでいないまま日常から放り出されたように現実感がない。汚れないブラウス。くじけない子供。都合よくあらわれるオアシス。どれも現実に想定される深刻さをあえて回避させるように、構成されているようだ。
そのパロディー感は、周辺に登場するキャラクターへよりいっそう色濃くあらわれる。アボリジニの少年は絵に描いたような原住民として2人を受け入れ、途中差し込まれる他の部族らは、父の焼死体ですらカカシのように扱うのだ。死も日常の一部であるか、または人間はモノの一部でしかないと言うかのように。
これは全てに意味のある世界から、ほとんどが名づけられていない混沌へシフトしてしまったという悲劇を仮想現実としてしか受け入れられないだろう深刻さでもって、暗に感じさせるのではないか。しかしやがてこの混沌が、恐怖の対象から変化していく。既成概念のない少年は素早く馴染み、少女のほうもアボリジニへの感情を通して開放されていく・・。
執拗に樹木を写し、そこへ女性の身体をメタファーとして感じさせるカットなど、コミカルですらある演出にも全てハイレベルな映像美が維持されている。とても映画らしい楽しみとして充実感を覚えた。池で泳ぎまわる美しい少女の映像は、本能のまま生き動く野生達を捉えた視点と同じものから生まれ出ているようだ。冒頭の強引さといい、監督の描きたいものがとてもはっきりとしていて清々しい作品。2005-02-27/k.m
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