軽いめまい




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金井美恵子の小説をはじめて読んだ。最近の女性作家ブーム(そんなものがあるのか分からないが、結構取り上げられているようにも思う。)のなかで、あまり気にしていなかったので手に取るキッカケもなかった。小説は本当に読んでみるまでその印象は想像の出来るものではない。これは映画も同じで、宣伝で植え付けられた印象ほどあてにならないものはない。

専業主婦の生活を延々と描き、前後に続く無限の繰り返しの途中を切り取ったかのような構成で、なによりもだらだらと続く長い文章がそれを特徴づけている。かぎかっこのない会話、主人公の一人称な語りとそれを俯瞰している作者の視点、さらにキーワードに注釈を与えるような参照、すべてがヒエラルキーのない平坦な文章としてまざりあっている。

読んでいると一瞬どこまで話がすすでいるのか分からなくなり、なによりもストーリーと言えるような構成も感じられないのだから、この先の展開がどうのと言うよりも、この会話がいつ終わるのだろうといった、息のつきどころを探してしまうのだった。

これは一見退屈な小説でもあり、またそれは確信犯的に演出されたものでもあろうと感じる。時折どきっとする批評眼で話している主人公の夏実という主婦の「主婦らしからぬ素振り」の中に、退屈な日常という表層と、どきっとする感覚が同居しているバランスが自分の送っている普段の生活のそれと非常に近いようでもあって、きっとこの共時的な感覚が、この小説を面白くさせているのであり、やはりそれは退屈さと切り離せないように思う。
2003-03-21/k.m

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最終更新:2008年04月15日 01:49