熊の敷石




メールが使えなくなった。なぜか行き違いでプロバイダーに止められたようだ。回復したいが、昼間に連絡取る余裕がもてない。来週になってしまいそうだ。

そんなわけで堀江俊幸の「熊の敷石」を読んでみた。なんだこのやわらかな文体は。なかなか良いではないか。

それにしても時間軸の揺れ動く小説だ。冒頭の夢は2年ほど音信不通だった友人と再会して、その家主が旅にでていった後という状態の中で見ている。しかし友人もその部屋も実際に登場するのはずっと先で、音信不通だったことから順をおって物語は進みはじめる。さらに友人との再会の前にくり広がるエピソードへと入っていくのだ。

だから夢を見ていた場所があとから出てくる友人の部屋で、何となく繋がっていたことに気づきにくい構成になっている。何となく読んでいるからそうなのかもしれないが。

後で読み返してみてよく分かったことなのだが、最後に突然歯の痛みという記憶が目の前の現実となっていくシーンがあったのがだ、よく見れば冒頭にも歯の痛みについては触れているではないか。

これはちょっと手の込んだしくみで、少しずつ読み進んでいくようでは味わえないものだ。もっともそんなに長くない小説だからたいていの人は一気に読むのだろう。けれど「ちんたら」読んでいてもその不思議な時間軸は浮遊間でもって伝わってきていた。

それは心地よいリズムを与えてくれる。もしかして人間の記憶の構造を素直になぞっているからなのだろうか。確かに記憶が呼び起こされるときの無意識さを思えば、この揺れ動く時間軸もさほど突飛なものではない。

あまり深く考えずに流れを味わっていればかえって頭の中で共鳴されていくのではないか。もうちょっと他の作品でもそれを味わってみたいものだ。2004-04-19/k.m

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カテゴリー-小説
最終更新:2008年04月15日 01:45