※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「三十歳までなんか生きるな」と思っていた


  • 保坂 和志著
  • 出版 : 草思社


著作への印象は、最近まわりで目にするように、ちょっと説教くさく、上から目線的なものを感じてしまうけれど、やはりこの人の本を読むと、じっくり考えることの楽しさ、みたいなものを覚える。

最後のほうの「神」をめぐるフロイトの話も興味深かった。アニミズム、宗教、科学、という発展段階の話。環境問題や政治などについて陥りやすい思考の罠へ、慎重にとどまり考察するさまは、「各論」を省いた「総論」という罠への注意深さと重なる。それが小説ということか。

イングランドは未だに国家としてのイギリス(連合王国)ではなく、4つの国の集まりとしてワールドカップに出場しているといった話があって、それは日本もかつてあった地方の成熟を消失してまで、一つの国家として矯正されてきたことへの疑問的投げかけだった。

例えばここ数日メディアで話題になっている幸田未来の「失言」に端を発したバッシングが、とても見るに耐えない状況になってしまうのも、同調圧力の強い日本ならではだと、星野智幸も指摘している(言ってしまえばよかったのに日記)ような表れ方へ通じるのでは。

科学的発展段階とは、全てを分析しつくした世界で、グーグルの目指しているような方向(人間味の喪失)。一方でアニミズムとは全てのものに霊魂が宿るという信仰で、世界と自己の区別がなく、全てのものは平等に尊く自分と同じくらい大切にされる。

今の日本は、フロイトのいう「思考の全能」、著者によれば科学的発展段階の中へ今なお残っている客体化出来ない内省の全能感、あるいは利己的な意識の肥大化、なのだと思う。フロイトによればそれは精神病の原初形態だとしている。2008-02-07/k.m