こうして現代に描かれた昭和天皇に接することで、僕らはなにを見たことになるのだろうか。しかもイッセー尾形の演技でロシアのソクーロフ監督により描かれたその姿を。映像を通じて初めて接する世代も多いだろう中で。
緊迫した時代の空気ではなく、濃密なワンシチュエーション・ドラマの閉塞感。アラヒトガミとしてのオーラではなく、挙動不審で米兵にチャップリンと呼ばれる姿。人間宣言という時代の転換点ではなく、一人の男が手放した重荷。そんなふうに見えた。
だからこそ、歴史は後追いでしか生まれないというか、その場に居合わせたらこんな感じでしかないだろうという妙な「リアル感」はヒシヒシと感じる。マッカーサーがヒロヒトに葉巻の火を直接移すシーンにドキッとしてしまうように。2007-03-25/k.m
カテゴリー-映画