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介護入門


  • モブ・ノリオ (著)
  • 価格: ¥1,050 (税込)
  • 出版社: 文藝春秋

介護をする生活を通して見えてくる世界。親戚への、介護者達への憎悪を通して見えてくる世界。それは恍惚としたドラッグの経験を通して語られる。祖母への想い。家族への愛情。それらは一連なりのメロディーとして語られる。


ラップのようなリズムで暴力的な言葉が連なり、YO、ニガーと続く。介護とは無償の決断なのだろうか。血の絆を信じるとはいったい自己を捨てるということか。祖母を在宅介護するとは・・。


仮にこの小説が介護など興味も現実味もない人達へ向かって放たれた過酷な体験記だとすれば、芥川賞を取ったことによりその使命は果たされたかもしれない。けれどこれはフィクションだ。ドキュメントではない。なので僕らはこれを読んで笑い飛ばし、くだらない駄作だと突き放すことも許されているはずだ。


しかしどうだろう。作中、主人公が叔母を思う存分憎むことを許されたように、また祖母を苦しみながら介護する自己を思う存分「救い」へ導くことが許されたように、読む側はそこへ思う存分「共感」していくことは出来ても、その他のリアクションへ口を閉ざすことを強いられているようでもある。


暴力的な言葉は、その出自がことごとく正当であるがゆえに笑えない切実さとして写る。ドラッグだってそうだ。過酷な介護労働から精神のバランスを保つための「正当」さがある。小説の中では十分に洗練された生き方として主人公を見ることに繋がるのだ。これもフィクションとしての特権かもしれない。著者はたとえ現実に即していようが、書かれたモノのフィクション的作用へ無自覚ではないはずだ。

だからこれを読んでも素直に感動出来ない。それは作中、主人公が嫌った叔母の「ようになりたくない」という想いと決して矛盾しないはずだ。2004-08-12/k.m


カテゴリー-小説