本が燃えるときの温度が華氏451だと言って、主人公の消防士(モンターグ)はそれを燃やす。サンダーバードのパロディーを見ているかのような、チープなSF映画だ。
全体主義的な世界で、読書を禁止された国民を皆、「いとこ」と呼ぶ。これを「ともだち」と変えれば言われている対象は違うけど「20世紀少年」のようだ。とにかく、そのむごい法規を守っているのが消防隊。全て耐火材料で燃える家はなく、燃やす主体が彼らなのだ。たしかに炎を扱うのだけど。
メタファーとして割り切っているのか、SFを記号として以上にリアル感のない道具としていることへかえって衝撃を受ける。家の建具はオートドアなのに、電話は妙に旧式だ。徹底しているのはそのチープ感のほうで、すべてが嘘っぽい空気に包まれている。
嘘のベールがはがされる瞬間はラストの理想郷だ。ユートピアこそが映画のなかで一番現実味を持つという見事に逆転した演出ではないか。口授し記憶していくことで、1冊の本を生きる。無限の著作を与えられた現代よりも、はるかに幸福な本との出会いが描かれている。2004-08-13/k.m
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