ヴィスコンティの作品。 19世紀オーストリア支配下のベニス。 ヴィスコンティの作品はなんだか映像に重厚感をとても感じる。 貴族の華やかさと美しさ、反面人間の堕落ぶりと残酷さ。 二つの世界が常に隣り合わせな恋愛物語。
盛り上がる伯爵夫人の行く末には堕落の影が見えてくる。 すべてを捨てて行く夫人の勢いへ、いつも男達はうろたえ、受け止めきれずに裏切りや逃避的な行動になる。女性の激情あふれるこの作品へ、またしても男との世界観の差を見た気がした。
祖国の運命をかける男達の大事な軍資金も、自らの恋を貫く手段として使ってしまう夫人の激情ぶりは、いったいどこから来るのか。この時代に限らず女性のそんな姿を描く物語は多いように思う。
結局裏切った青年将校は、夫人に密告され銃殺される。 男は恋へ人生をかけることを恐れた。戦争の危険性からのがれ、夫人との情事へと向かう事へ後込みした。自らを支える社会的基盤からの離脱は、その男の存在意義すら奪ってしまうのか。男は社会性を捨ててまで恋に生きることはできないのか。
絶対的な自己を貫ける女性と、関係性の中でしか自己の存在を認められない男性。美しくも残酷な恋を描いた作品でした。99.11.21/k.m
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