監督のミヒャエル・ハネケは、1942年ドイツ、ミュンヘン生まれ。オーストリアのウィーン大学在学中には哲学、心理学、演劇を学ぶ。カンヌ国際映画祭にとても強い監督。『ベニーズ ビデオ』は衝撃だった。
オープニングもそうだけど、それが「監視された映像」だというのは、与えられた文脈であって、映像からはうかがえない。その事実を巧みに利用して見る側を惑わせる映画だ。
それは人物間の内面を繊細に描くとか、ストーリーの緻密さで惹きつけるとか、いわゆるサスペンス映画とは違った魅力だ。アルジェリアとフランス、中産階級と移民。パリ暴動など最近でも話題なだけに、この地域の抱える困難について、「監視された視線」はとても考えさせる映像だと思う。
映画を見て考えるというのは、結局これら映像そのもの、というか視点の構造というか、映されたままの印象なんだと思う。ラスト近く生家での「隠された記憶」が表情まで捉えきれない遠景であるのは、生々しさをフレームの中へ納めてしまうような文脈と切り離せないように。 2006-10-30/k.m
カテゴリー-映画
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