医学部生達の青春偶像劇。この映画を見ていると、学生時代の思い出にひたってしまう。それが全く違うものであっても、そこに流れている進撃さ、残酷さ、愛おしさのようなものが青春そのものであって、その言葉にしっくりとはまるのがやはり学生時代に存在していたと思えるからだろう。
綴られた幾つもの挿話にはけっして繋がりはなく、学生達の日常をただ傍目に見ているだけのようにも感じる。世間の軋轢にすり減らされていない無垢な情熱と、未成熟な人間性によって、とても「熱い」ドラマが生み出されていく。それが他愛もない日常だからこそ共感を呼び起こし、懐かしさのようなものを感じる。
学生達はみな悩み、苦しんでもいる。等身大の日常として医療の知識と実践との狭間を行き交う。全共闘が医学部生からはじまったのも、そんな等身大な思考で人を救う医学とその社会システムとの矛盾へぶつかっていったからなのだろうか。この映画にもビラ配りをする学生が出ている。
学生寮のなかで熱く語り合い、激しく議論の矢を向け、残酷なまでに自らの正当性をアピールする学生、その傍らで無関心を装い、将来への迷いを隠しきれない主人公。そこにはただ稀薄なだけの集団ではなく、常に様々な役を演じるように自意識にあふれ、分厚いコンプレックスに押しつぶされそうに生きている姿がある。その生々しさは青春偶像劇であることを忘れさせるようにリアルでもあり、見ていて不思議な共同意識すら芽生えてきそうだ。エンディングにはなにか別れの寂しさすら感じてしまう、20年以上前の作品なのに。2002.02.03k.m
カテゴリー-映画