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パンチドランク・ラブ


  • 監・製・脚:ポール・トーマス・アンダーソン
  • 製:ジョアン・セラーほか
  • 出:アダム・サンドラー、エミリー・ワトソン、フィリップ・シーモア・ホフマン、ルイス・ガスマン
  • 2002米/東宝東和・95分 ・恵比寿ガーデンシネマ

ポール・トーマス・アンダーソンの新作!。前作「マグノリア」の力の入った演出と打って変わって、気の抜けたつくりだ。かといって面白さはむしろ成熟していて、巨匠の貫禄すらうかがえる傑作ではないか。

映画はある緊張感を必要とし、特に冒頭の20分くらいに対してそれは、作品の流れを掴むために最大に作用する。起承転結の少ないものは延々と続くその緊張感へ疲労し、眠くなってしまうことも多い。反面プロットの少ない小津映画のような作品は、冒頭からそのような空気が感じられて、流れを掴むことよりもただ感じるままに見ようとするようになっていく。

この作品は後者のタイプで、冒頭にものすごいクラッシュシーンが有るところが、一見するとそれを疑う展開を予想させるが、最後までそれに意味が与えられる訳でもなく(いや実際は何かの付箋になっていたとしても)、不可解なものが挿入されること自体にあまり執着されない見方が与えられるのだ。

だから見る者へ次の展開を待ち望むような高揚感を与えるのではなく、映像とサウンドの組み合わせや、主人公のセリフや行動の一つ一つを落ち着いて見続ける安定したリズムを与えてくる。実際それに合わせるように、冒頭のつかみから、現代アートなカラフルコラージュが流れるオープニング、いろんな雑音の混じった奇妙なBGMなど、それぞれはとても凝ったつくりになっていながらも、媚びるような演出ではなく結びつきに自然な抑制があって、それは時折爆発する主人公のキレぶりと共鳴する要因ともなり、同時に笑ってしまうような回避的演出にも見えるのだった。

スパーマーケットで商品が一面等価に並ぶ姿、それをゆっくりスライドさせて、あるものをつかむシーン。7人のうるさい姉たちが次々に電話を掛け、登場するときも次から次へと小出しにやかましさを出すシーン。彼女の部屋を探すアパートの廊下を走るシーンで、「こんなにないだろう」的な、EXITの数とそれを強調するアングル。ハワイで巡り会えて抱き合う逆光のシルエットは感動的で、次の瞬間「そんなにいないだろう」的な行き交う人の数がまた巧妙なずらしを与えて。どれも映画的な楽しさばかりで、それはストーリーだとか展開だとかを追うのとはちがった興奮を生む。

主人公は、最初に新調した青い背広から、結局最後までそれ以外の姿では登場しない。エミリー・ワトソン演じる恋人はいくつも衣装を変えるのだけれど。それは主人公を覆う世界の時間と場所の変化を曖昧にし、一日の話にも、ハワイという場所のパロディー感にもつながっていた。一方でそれは、恋愛という空間の具体性なのかも知れないが、二人の人物が持つ雰囲気がそれに十分にマッチしていて、奇妙なのにとても幸せな気分にもさせられる映画だ。2003-08-10/k.m


カテゴリー-映画


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