パーク・ライフ


  • 吉田修一
  • 文芸春秋
  • 2002.8
  • \1,238
  • 実は文芸春秋で読んだのですが、すでに単行本出ていたのですね。

プチ・幸せ・ライフ!

実は公園が好きだ。引っ越しを考えるときいつも近所に図書館と公園があるかのチェックをする。実際は二つとも叶わない場合が多い。もっともそれをメインに考えている訳ではなくって、駅に近く、街が使いやすく、建物が気に入った上での「オプション」のような欲張りだった。それに実際、公園で「のんびり」と過ごした経験などほとんど無く、そんな時間がほしいという願望の「あらわれ」として地図を眺めているだけなのかも知れない。だからこの小説は実際に公園へ足を運ばない「自称・公園好き」の僕には、まさに望むべきものだった。

こんな自分の生活を「パーク・ライフ」などとは決して言えないが、ここに描かれている全ては、どこかでヴァーチャルに繰り返されていたようにも思う。日比谷公園という超都心の公園。主人公が俯きながら園内を歩き、いつものベンチでカッと目を開け見上げるときに飛び込んでくる大都会の公園風景。いつか文京区役所そばの公園で、ふっと見上げた先に後楽園の観覧車が目に飛び込んで来たときの目眩にも近い感覚を思い出す。

執拗に繰り返される細かな描写。何も起きない小説とは、常に何かを期待させる空気で満ちている。公園でなくとも人の姿をボーッと見ながら物思いにふけることは楽しい。そうだ、「パーク・ライフ」とはきっとこの小説に見られるこまかな描写の数々、それら「思考の断片」にまみれて暮らす「小さな幸せ」そのものを言い表してるのだ。

2002.09.14 /k.m


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最終更新:2008年04月11日 08:07