ハッシュ!



橋口監督は確かゲイとしてカミングアウトしている。監督・原作・脚本とマルチに関わっているこの作品は、まさに監督の人生観が大きくにじみ出たものに仕上がっているのだろう。

たまたま昨年「シナリオ」という雑誌でこの映画の脚本を読んでいた。現代小説のように、日常生活を綴った場面の多い描写だった。様々なシーンが連鎖しているのが脚本に出ていて、映像のための本とはこのように構成とデザインとが入り込んだハイブリッドな読み物なんだ、と楽しんだ。とは言え、今日見た実際の映画には「既視感」はともなうモノの、全く想像を超えた面白さと感動があった。

3人の登場人物達は、ハッキリと・・・人間の本来的な「孤独」を心に刻んで生きている。その「共通点」が後になって友情を生んだのだろう。男2人と女1人という典型的な「三角関係」。このシチュエーションで繰り広げられる物語のなんと多いことか!。ただこの映画における3人の関係は少し複雑だ。なんたってゲイ2人と子供が欲しいだけの神経衰弱した女性1人なのだから。もとより恋愛感情の生まれようのない状態からはじまった三角関係。嫉妬を抱くのは男のほう。それも勝裕(田辺)の優柔不断な性格が原因の誤解が生んだもの。

3人の「からみ」はとてもコミカルでテンポが良い。そうやってすっかり「くつろいで」油断していると、グサッと心に響くシーンが来て思わず泣いてしまう。まさに「笑って泣ける」ドラマだ。そこには自分の立つ位置の見えない殺伐とした現代社会の刹那があり、関係性という他者を向かい入れる行為の持っている残酷さと生きる希望が混ざったリアリズムとがある。

この映画で特に素晴らしいのは「朝子」演じる片岡礼子である。遠くを見つめる彼女の表情には深い絶望があり、笑い転げる無邪気さには、そこから這い上がろうとする希望とがある。心の「振幅」をここまでリアルに表現する役者ってなんてスゴイんだろう。

3者が繰り広げる人間模様は、世界の映画人を魅了し、既に30カ国での公開が決まっていると言う!。日本のリアルが世界の普遍に訴えることが出来る映画とは・・やはり素晴らしいものだと思った。 2002.04.28k.m



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  • aile>ご無沙汰してます。 先日、ようやくビデオで観ました。久しぶりだったせいもあり、ストーリーのゆるゆるした進み具合が私には、すごく重かったです。片岡礼子見たさに借りたビデオでしたが、「鬼火」の頃のが好きだったかも。(偶然ですが、役名が同じ「朝子」だした!)2004-02-17 (火) 01:17:18
  • aile>だした → でした (赤面)2004-02-17 (火) 01:18:49
  • k.m>片岡礼子さんは魅力的ですよねー。僕は結構あの「軽さ」が好きな映画でしたけど。「鬼火」とか観てないなー。2004-03-01 (月) 19:45:14
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最終更新:2009年02月10日 01:26