「文化装置」という言葉は、建築の分野でもよく、コンセプトなどを表した文章で見かける。「お祭り広場」とか、「コモンスペース」の機能性を説明するときなど。
しかしこの本で取り上げている、「タブー」がいかに文化を形成する装置として機能しているかを、納得させられるほどの説得力をもった「文化装置」は、建築に於いては存在しないだろう。
筆者は文化人類学や民族学を通して、いかに人類が自らの生活に「タブー」をつくって来ているかを示している。その種類たるは、本当に様々で、それだけ読んでも人類の複雑さを垣間見れて楽しい。
フロイトやレヴィ・ストロースなどで知られる、近親婚のタブー。民族や宗教によって規定している食に関するタブー。あるいは、日本に古くからある「言い伝え」や「迷信」などにでてくるタブーなど、それらすべてに共通の存在理由を探って行く。
「境界」、「リーメン」、「グレーの領域」など様々な興味深いキーワードが出てくる。
人間は、はっきり区別できないもの、日常と非日常の間でさまようものへ、タブーのレッテルを貼って行くことで、世界を認識していく動物なのだ。 99.09.02/k.m
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