ストイックなスタイル、装飾を排したフォルマリズムとして認識されているロベール・ベッソンの作品。今回はじめて見た。さらに要素を切り詰めた作家としてジャン=ストローブとその妻ダニエル・ユイレの作品も上がるが、こちらも未見。タイトルもシンプルなら演出も素っ気無い。
どこかで聞いたことある話だと思えば「罪と罰」だった。そう見れば途端にチープにも感じてしまう。なぜならプロットだけ抽出したようにも見えてしまうから。映画を活劇として見るか、芸術として見るか好みの問題はあるけど、前者を省いて後者はありえないと思う。だとすればやはりこの映画での見所はスリの場面に凝縮されているのではないか。
主人公の服装がいつでも同じだとか、シチュエーションが3つくらいだとか、登場人物が極端に少ないだとかは、装飾を排したというよりもむしろ「罪と罰」からくるようにも思うが、スリ場面の画面構成やテンポなどはまさに余計なものを排除した極小の美意識を感じられる。
ハリウッドの過剰なテクノロジー投入映画に対して、ミニマリズムや抽象表現主義が今また注目されているのだとすれば、それは表現の奥に含まれる物語性への再考でもあるのだろう。表現だけにこだわれば、ハリウットのそれと何ら変わらないことになる。
時代的状況があまりにも違うけど、今またスリという映画をリメイクしたとき、このミニマムな構成をCGという武器を抜きにして再構築する「もの好き」なプロデューサーもそれにお金を出すスポンサーもいないのだろう。ならば、ブレッソンを見る以外得るものはないのではないか(←自分への課題)。2004-06-13/k.m
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