SPA!の映画評で中原昌也がいつになく自虐ネタも入れずに褒めちぎっていた作品だったので、ずっと気になっていた。なんとか新宿武蔵野館にて見ることが出来た。予想以上に素晴らしい作品だった。はじめから終わりまで笑いっぱなしで、最後には泣けてしまう。まさにこれぞエンターテイメントだ。素晴らしい。
リチャード・リンクレイターの作品はまだ3つしか見ていないがどれも面白かった。その緻密な演出力は初のメジャー作品においても確実に発揮されていた。ロックに夢中になった時期を持つ者であれば、この「お約束」満載の映画へ目の眩む思いのはずだ。
先生役という設定上、上からの視点というか説教じみた展開の末、子供との触れ合いが待っている。そんな予測も立ってしまう。けれどはなから教師など目的ではなかった主人公が、パートナーとして子供達を口説いていく、そして最後には全く対等に励まされてしまう。そんな見たこともない学園ものだった。
ロックという音楽がもっていた反抗精神。いまの時代ではちょっと恥ずかしくて口にもしないような「まっすぐさ」でそれを信じている主人公。実はロックですら何も発散出来ない「不自由な時代」を切実に描いたとても社会派な作品でもあった。
どんなにがんばって学歴をつけても、先のない未来を見せられるばかりのウソ社会。むしろ安全に生き延びるためのユートピアとして階級社会の再建を目指す親達。カタルシスの吐き場はもっぱら教育者。画面の中で特異に写る人物こそが正常な精神を保持しているのだと語る映画。大笑いした後に現実へ帰る人たちの表情はどこか複雑ではなかったか。2004-06-09/k.m
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