ジョゼと虎と魚たち


  • [監]犬童一心
  • [原]田辺聖子(角川文庫)
  • [製]久保田修ほか
  • [脚]渡辺あや
  • [音]くるり

田辺聖子の小説を映画化。ごく平凡な大学生の青年と足の不自由な女の子のお話。音楽はくるり。イメージ・フォトは佐内正史、イメージ・イラストはD。スタイリストは伊賀大介。

素晴らしい作品!。今年のナンバーワンだ(まだ2つしか見ていないけど)。

犬道一心監督の作品は初めて見た。池脇千鶴は前作にも出演しているようだ。関西「のり」な作品。ちょうど予告上映で行定勳監督「きょうのできごと」が流れていたが、どうにも田中麗奈のわざとらしい関西弁が耳についた。確かに柴崎友香の小説はあのやわらかい言葉の響きがなんとも緩やかな空気をつくっていて心地よいが、あれじゃあ・・。

と言うのもこの「ジョゼ・・」はまさに関西「のり」で、その徹底ぶりは素晴らしく、随所に笑いが満載して細かいギャグもさえている。あくまでも「べた」な関西ではない。軽やかなんだけど、十分に笑える「空気」のようなのり(すごく個人的なイメージだが)。

橋口亮輔監督の「ハッシュ!」がそうだったように表面にあふれる「笑い」と、それぞれの人物がかかえている「孤独」とが、テンポよく繰り返される。次第に「孤独」が背後に隠されたままの「笑い」へ、痛ましさを覚えなんとも切ない気分にさせられるのだ。

妻夫木聡はここ数年目の離せない役者で、あの「何にも考えていない」空っぽ感はすごい。窪塚がロマンチックな色をもってしまっているのに対して、妻夫木にはなにも引っ掛かることのない透明さがある。この作品でもそれは発揮されていて、「障害者」というある種の生々しい言葉でもって弟がジョゼをそう呼んでいたのに対して、妻夫木と池脇との前半のからみにおいては、「そのこと」をまったく意識させなかった。

これはすごく重要な部分で、少しでも妻夫木がそれを意識させてしまえば、池脇への感情が何とも薄っぺらいものへ変わってしまう。彼は意識させないことによって、「孤独」が背後に隠されたままの「笑い」という緊張感を達成させているのだ。またこれは、「図々しさ」と「繊細さ」を合わせ持った池脇の演技からも補強される。

両者の共演によって、まれにみる完成度を得られた作品。絶対に必見!。2004-01-18/k.m


カテゴリー-映画

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最終更新:2009年03月18日 02:05