パリのポンビドーセンターで開催され、その後ミラノ、マドリッドと世界巡回しているジャン・ヌーベル展を見に行った。オペラシティーアートギャラリーはすっかり隣接するNTTのICCギャラリーをしのいでいる。リベスキンド展(ICC)よりもこちら(オペラシティアートギャラリー)でやるほうが客も入るのではないか。
ジャン・ヌーベルのつくる建築を実際に見たのはパリにある幾つかだけで、ほとんどは写真でしかない。そのせいかとても映像的な印象ばかりで、流線型のフォルムと、黒く色っぽい反転したような空間、あとは本人の何とも強面なイメージ・・。
展示はすべでインクジェットプリント(だと思う)したドローイングを、真っ暗な空間へ浮かび上がるようにスポットライトが当てられ、ポジフィルムに囲われたようななかを歩かされる。足下がおぼつかないほどに暗がりだが、彼の建築をおさめたドローイングは、そんな暗がりがとてもしっくりとくるものばかりだ。
真っ白でミニマムな空間が一方でそこらじゅうを取り巻く中、ジャン・ヌーベル展には外の景色が飛び込んでくる真っ黒な空間ばかりがある。白さは浮遊感かと思う反面、緊張感を人に強いる攻撃的な面もある。暗がりはどこか恐怖心を誘うようで、そこへ差し込む風景や色などを、とても艶やかに見せる。
なによりも展示空間がジャン・ヌーベルの特徴をよく表していて、メディアを通しての映像的なイメージはさらに増幅された。一方でこのように、外からの景色と光に執着させる空間が、影のない真っ白なものにたいしてとても本来的で古典的なものにも感じられた。2003-11-03/k.m