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**文藝/2003-冬号 &image(http://www.kawade.co.jp/img/cover_l/97662.jpg) -2003年10月7日発売 -【特集】藤沢周  -対談×豊川悦司×魚喃キリコ他 -第40回記文藝賞発表 ***『黒冷水』:羽田圭介 今年は3作受賞で、盛りだくさんだ。まずは「黒冷水」から。他の2作の倍、400枚というボリューム。しかも高校生(あの綿矢さんをしのいで最年少受賞)。ここまでくると出版社の作戦か?とも思ったが、読んでみて納得の力作。斉藤美奈子さん言われるように、ぐいぐいと読ませる。 テンポよく進み、兄弟間の内面を執拗にこまごまと練り上げるしつこさはとても小説的だと思った。こまかな背景描写に頼らず、完結に積み上げていくところなどは、[[シンセミア]]にも通じる(単によんだばかりのためかも)。 僕は男兄弟がいないので、この作品のような状況は経験できない。しかし全く無経験ということではなく、むしろ酷似、とまではいかないまでも・・心当たりはある。中学から高校にかけて擬似兄弟的なつきあいをしていた親戚がいた。これ以上書きたくないのでこの件は封じるとして・笑。 かなりドキッとさせられる場面が多い。偶然にも[[321]]さんも経験者だった?。ひょっとして誰もが心当たりあることが散りばめられているのかも知れない。家族とはそのような存在である。いっぽうでこう定義されたかのようでもあった。それを高校生にしてやられてしまうのだから。 終盤から兄の後輩が前面に出てきて話にフィクション性と緊張感が重なって行き、それがどこか「まとめ」ようとする動きにも見え、ちょっと戸惑いながら読んでいけば、ああそうきたかという。しかしさらに続きはあって「裏返し」ながら終わりに向かう。このあたり、しぶとさと狙いがちょっとうかがえた。今後も楽しみな方。2003-11-08/k.m ***『オアシス』:生田紗代] 引き続き家族小説。ただこちらはずいぶんとマッタリ。全てがそのペースで行くかと思いきや、母がちょっと異物的に登場する。もちろん果てしなく家族愛で結ばれた中での異物なので、あまりそわそわせずに読めてしまう。 けれどこのバランスというか関係性というのが、昭和の中での「小津作品」がそう思わせるように、心地よく乾いた付き合いぶりを見せてくれる。「黒冷水」ほど激しくはないが、「オアシス」的家族関係も僕にとっては極端だ。 現実とは自分の中でいつも中庸を装うのかもしれないが、コチラ側へ振り込んだ家族像というのは、最近の小説的ベースのひとつなのだろうか。こまかいギャグ的セリフや固有名詞が多いもの、これらをまとまって括りたくなる特徴だ。 けれど嫌いじゃない。むしろ吉田修一を好む理由の一つとも重なっている。 これも'''自然な(制度的な)共同性が崩れた後の人工的(再帰的)な共同性を構築する実験という主題'''(偽日記)なのだろうか。そうかも。家族ですら、あるいはこそ、「(制度的な)枠組みから外れていくこと」を描かれるよう望まれているのかもしれないし。2003-11-11/k.m ***『魔女の息子』:伏見憲明 とってもナイーブな内面描写・自己分析で、そのやわらかな文体は3作の中で一番大人っぽい。確かに一番大人だし。ゲイな性描写は(自分が)慣れていないせいか結構強烈で、それはある意味「やわらかさ」を裏切るというか、裏付けるようにも思えた。 恐らく自伝的だと審査員・田中康夫が言っていたせいか、妙にそのあたりは反応してしまうのだけれど、フィクションであることには変わりなくって、程度の差こそあれ3作ともそうなのだろうし。 夫をなくした母の老いた恋、敏腕編集者の孤独な恋、そして主人公の・・周りを取り巻く様々な恋愛のかたちと自己承認のあり方など、考えながらあえいでいる著者の姿に一方では共感しつつ、冷静に距離を置いてながめてもいる。 ライターは「書けてしまうこと」が一種の病みたいなことを、保坂さんがどこかで言われていたように思うが、実際に小説へと向かう気持ちというのがこの作品に入っているのだとすれば、その部分を自伝的だと捉えて読めば面白いのだろう。2003-11-15/k.m ***『お金をあげるからもう書かないで、と言われればよろこんで』:[[中原昌也]](新作短編) おお!これは久々のヒット!。笑える。マンガ! 慎太郎! マンガ! 慎太郎! マンガ! 慎太郎!・・とかw。読んですっきりしたー。2003-11-15/k.m ***コメントをぜひ -[[k.m]]>[[321]]さんの感想[[●:http://www.phloor.com/20031108.html#p02]]。SIZE(10){2003-11-08 (土) 22:07:56} -[[321]]>リンク先、アンカ付きのものに変えさせてもらいました。/「これ以上書きたくない」っていう感じ、よく分かりますw。その類の普遍性(綿谷作にも当てはまるけど)って不思議ですね。SIZE(10){2003-11-08 (土) 22:18:10} -[[k.m]]>有り難うございます。'''兄弟の冷戦'''って、いや家族内のそれらってホントウに閉塞感で満たされていてどうにもならない息苦しさを感じていました。いま思うとどうってことないようにも・・。これらを日常の普遍性としてすくい出す所に小説家の表現力とかってあるのでしょか。SIZE(10){2003-11-09 (日) 01:09:15} -[[k.m]]>それにしても今日見つけたのでさっそく張り付けてみたけれど、各々装幀はどうでしょうか・・。ちょっと印象と違う気も。綿谷さんのはまぁいいと思ったけど。あぁオアシスはちょっといいかも。SIZE(10){2003-11-18 (火) 00:16:08} -[[321]]>黒冷水、角川ホラーみたいですね。「黒」だし。SIZE(10){2003-11-18 (火) 01:34:00} -[[k.m]]>確かに・・。そして魔女の息子はどうしてあれなのだろうか。SIZE(10){2003-11-19 (水) 00:53:47} -[[朔游]]>「魔女の息子」今頃読みました。ナイーブな内面と強烈な性というのは、ゲイの在り方そのものに思えます。彼らは大抵人当たりがよく親切ですが、かなりの確率で「童貞の性豪」です。SIZE(10){2004-01-08 (木) 13:36:11} -[[k.m]]>なるほど、'''ゲイの在り方そのもの'''ですか。そういえば新しい[[文藝>文藝/2004-春号]]に伏見さんのインタビューが載っていますね。これから読みます。SIZE(10){2004-01-09 (金) 01:10:08} ---- カテゴリー-[[雑誌]]、[[小説]]

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