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ロンドン・パリ旅行記/2000年1月29日-ロンドン」(2009/03/06 (金) 15:22:04) の最新版変更点

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***2000年1月29日-ロンドン &image(sen3.JPG) 朝からカムデン・タウンへ。比較的ロンドンの若い人に人気のストリート・マーケット。観光客も多く混雑する名所にもなっている様子。デビット・チッパーフィールドをはじめ、建築家やデザイナーのスタジオも多い。まだ早い時間のせいか、あまり人はいなかったが、屋台では、おいしそうなソーセージを焼き、露天のようなお店が多く、昔の原宿駅前の雰囲気に近い感じがした。 &image(sen2.JPG) ロンドンは、個人的にはハイテック建築のイメージが強い。ハイテックといえば、ロジャースやフォスター、ピアノ等を思い浮かべるが、なによりウォータールー駅をデザインした、ニコラス・グリムショーの印象が強い。ここでは、88年の作品、セインズベリー・スーパーマーケットと住宅の複合施設が見られる。ハイテックスタイルというと、古い建物の多いヨーロッパでは、いささか唐突な存在感が気になる。雑誌では、既存の町並みとの折り合いの付け方まで、分からないので、この建物もそのあたりが気になっていた。 ここは、あまり高層の建物がなく、とても落ち着いた町並みだ。セインズベリー・スーパーマーケットも道路向かいのテラスハウスと軒高をあわせ、スパン割にもヒューマンスケールを感じさせる。しかし、まるで吊り橋のレームを思わせるようなテンション加工は、ちょっと大げさな気もする。そのぶん、売場の大きな空間は無柱となっているが。裏側が、水路に面している。そちらの外観は、住戸ごとに分節されたデザインとなっており、水辺によいリズムをつくっていた。人によって受ける印象は違うと思うが、思っていたほど違和感を感じない。やはり、規模による違和感の方がインパクトを感じるからだろうか? ---- &image(zoo03.JPG) カムデン・タウンからほど近い所に、ロンドン動物園がある。20世紀を代表する、世界的な建築物の技術面のパートナーとして、オヴ・アラップ・パートナーズの名はあまりにも有名だ。世界各国に支社を持つが、やはり拠点であるロンドンにおいての活躍はめざましい。このロンドン動物園も、アラップの作品が多い。都心の動物園と言うと、上野動物園と比較してしまうが、冬の午前中とは言え、ちょっと寂しい感じだ。まばらな家族連れの中、広大なリージェンツ・パークを歩き、門をくぐる。 &image(zoo05.JPG) やはり、ルベルトキンをリーダーとする、テクトン・グループとの共同設計による、ペンギンプールが気になった。今回は、時間との勝負みたいな感もあり、目的のモノを目指していく気持ちは大きい。ペンギンプールは奥の方に位置し、そこを目指す途中に、きょうみ深い建築がる。そこはゾウのパビリオンだったが、中はまるで教会建築の様だ。トップライトからそそぐ、柔らかい光は、詩的な空間をつくっていた。 問題のプールは、コンクリート・スパイラルシェルスロープのイメージが強かったが、それ自体、楕円形の建築物として、完結されている。リニアで軽快な表情は、とても1934年の作品とは思えない新鮮さがあった。しきりに写真をとっていると、ロンドン子達が大勢駆け寄ってきて、ペンギンを一生懸命写真に撮っている。ペンギンなど気にもしていなかった自分が、ちょっとおかしいのではないかと思えた。ここには、有名な鳥小屋もある。テンション構造によって、空中に浮かんだ鋼管フレームへ張られたネットとで構成されている。鳥小屋という感じには見えず、構造模型のような明快なオブジェだ。 ---- &image(aa01.JPG ) Northern線にて南下し、Tottenham Court Roadへ。ここでは、古くはアーキグラムから、コールハースやリベスキンド、ザハ・ハディットなどの数多くの有名建築家を世に送り出してきた、AAスクールを訪ねる。ベッドフォード・スクエアという広場に面した、普通のタウンハウスの中にあるため、なかなか見つからず、苦労した。やっとの事で見つけ、中にあるカフェで休憩しようと思ったが、土曜のため休み。 &image(aa03.JPG) 想像していたイメージとのギャップに戸惑う。余りにささやかな学校だ。どちらかと言えば、専門学校といった感じ。実際にそうなのだろうが、なぜあんなに豪華な講師陣がそろうのだろう。とは言え、イギリスで最古のデザイン学校だったはず・・。AAについて、あまり知らなかったことに気付く。 わずかに学生がいた。地下の工場では、木を切り刻む学生、中庭に面したスタジオで、なにやらドローイングをする学生。ちいさな講義室が幾つかあったが、きょうは授業もない様子。英会話が達者なら、学生に色々と聞いてみてかったが、あまりひと気がないこともあり、断念。せめて本屋が開いていたならと思った。 ---- &image(brimu.JPG) 近くには、ロンドン大学や大英博物館がある。大英博物館では、現在中庭の大規模な改築が進んでいる。設計はフォスター・アンド・パートナーズ。グレートコートと呼ばれるこの中庭に、ラティスシェルのガラス屋根をかける一大事業。完成間近で、内部が見られず残念。来年には、素晴らしい空間がみられるのだろう。外から見ると、大きなクレーンが、グレード1のこの建物を、襲うかの様な勢いで、工事が進んでいる。 内部では、この事業の展示と、寄付を募っていた。大規模なこの博物館は、特別展示以外は無料だ。個人のコレクションから始まった博物館は、ロンドンの有力な大土地所有者達の力で大きくなった。特にエジプトに関するコレクションは、すざまじい数だが、これは元々フランスが抱えていた品々を戦利品として、イギリスが獲得したものらしい。ヨーロッパに広がる美術品ひとつとっても、戦争の影が見えてくる。 それにしても、正面の8本のイオニア式円柱は、アカデミックな迫力を出している。 ---- さらに駆け足で、ロンドンを巡る。ヨーロッパの街を歩いていて、歴史的なものに触れるとき、ほとんどが戦争に関係している事に、改めて驚かされる。つぎに訪れた、壮大なトラファルガー広場もまたしかり。元々島国のイギリスは、日本と同じように、数々の侵略から逃れた。しかし、ナポレオンのイギリス征服を断念させたネルソンと、その勝利を記念してつくられたこの広場を見て、いかにその戦争の勝利が、イギリス人に喜ばれていたかが伺えるようだ。 その後のパリでのどの広場よりも、このトラファルガー広場のインパクトは大きかった。高さ50メートルあまりのネルソン記念柱と、それを十分見渡せる広さをもつ迫力は、パリでは見られなかった。もちろん、連続した眺めは、パリの都市計画には及ばないが、ひとつの広がりとしては、こちらの方が勝るだろう。 ---- &image(national01.JPG) 「建築の複合性と対立性」で知られる、ロバート・ヴェンチューリ。その代表作でもある、ナショナル・ギャラリー、セインズベリィ館。1990年に建てられた、ポストモダニズムの代表建築家による、歴史的背景と、都市的文脈を考慮した建築。難しいテーマと場所性にたいする提案はどうであったか。そこには、奇抜なデザインも、大胆な提案も見られない。一建築家の慎重な態度が見られる。もちろん言論達者な建築家による、様々な言及はあるだろう。建築を形成するものが、目に見える奇抜さばかりでなく、人々のイベント、行為、個性などの集合体でもある事は、自明だ。 しかしそんな、都市的な解釈を要する意味付けまでを、短時間の訪問により感じることは難しい。ロンドンの街、そしてそこに生活する人々に感じられる、トラファルガー広場の様な存在と同様なものとなって初めて得られる、建築の感動というものも確かにあると思うが。少しでもそこに馴染もうと、カフェで休憩する。ここはとても落ち着いていて、広場を眺めていると、大勢の人で賑わっているエネルギーを、まるでTVで垣間見ているかの様な、静かな空間だった。 ---- &image(sackler01.JPG) &image(sackler02.JPG) 歩いて、ロイヤル・アカデミーまで行く。バーリントン・ハウスの大階段は、多くの人で賑わっていた。階段を上がった左手に、ロイヤル・アカデミー会員サー・ノーマン・フォスター設計による、サックラー・ギャラリーがある。トップライトにより、部屋全体がとても明るく、17世紀の建物に挿入された、ガラスの階段は、インテリアだが、外部空間にいるかの様な錯覚に陥る。 ---- その後、ピカデリーサーカスより、15番のバスに乗り、ロンドン塔を目指す。途中、セント・クレメント・テーンズ教会、王立裁判所、セント・ポールズ大聖堂などが見られ、さながら、ロンドンの街を東西へ走る観光バスのようだ。ロンドン塔付近へ近づく頃には、日が暮れ始めていた。川沿いへ近づくと、風が強くなる。強風に吹かれながら、タワーブリッジと、ロンドン塔を眺める。ローマ帝国時代、この場所へ築かれた砦が、ロンドンの原点だ。その後の歴史に置いて、国事犯の監獄および処刑の場として、血塗られた事を思うと、夕暮れの風景も、なにやら重々しい雰囲気を醸し出しているようだ。 ---- &image(lloyds.JPG) 徒歩で、ロイズ・オブ・ロンドンへ。ハイテック建築の最高傑作と言われた、建築コストの大きさでも有名な建物。8日前から予約をすれば、内部の見学も可能の様だが、なにぶん、ここへこられるかも分からない、スケジュールのため、場所を確認する程度。ほとんどを、隣地の建物に囲われているため、あまり近寄っても、全体が分からない。付近はシティと呼ばれる、世界の金融の中心地。イングランド銀行や、王立取引所など、石張りの壮麗な建物が多い。土曜日なので、有名な門番達は見られず。 ---- すっかり日は暮れてしまったが、ロンドンは今日だけなので、地下鉄でBlack friars駅行き、ブラックフライアーズ鉄橋を渡り、建設中のテートギャラリ近代美術館を目指す。80年代に稼働を止めた、火力発電所の外壁を残し、内部へ新しい構造体を挿入する提案で、ヘルツォーク・アンド・ド・ムーロンの設計だ。数年前から話題のスイスの建築家による、大規模なプロジェクトで注目を集めている。5月に完成予定と言うことで、こちらも大英博物館同様、ちょっと早いタイミングで残念。 しかし既にテムズ河へ向けて、「ライトビーム」と呼ばれる、ガラスの箱がライトアップされている。煙突とあわせて、とても迫力ある眺めだ。外部から伺える限り、ほとんど内部は出来上がっている様だ。すぐ前に造られる、フォスター設計の「ミレニアムブリッジ」とあわせて、完成後に是非見に来たいものだ。 ---- バスを乗り、ウォータールー駅を横目で見て、ウェストミンスター・ブリッジの手前で降りる。徒歩で橋を渡る。ビッグ・ベンのある国会議事堂や、市庁舎を望めるこの橋からの眺めは素晴らしい。市庁舎手前には、観覧車が設置され、さらに夜景に迫力を出していた。周りの人達も皆、橋の途中で記念撮影をしている。 ---- Westminster駅から地下鉄を乗り、St james's Park駅へ。Westminster駅は、新しく斬新な感じだった。ここから本日最後、ロジャース設計のチャンネル4を目指す。すっかり夜も更け、人通りも少なくなる。付近にアーミー&ネイヴィもあり、銃をもった軍人が見張っていたりと、ちょっと怖い雰囲気。 15分くらい歩き、やっと見つける。半円状にくぼんだ、ガラスのエレベーション。日のある内にじっくり見たかったが、夜景も近未来的な雰囲気で良い。こういったテレビ局などの、メディア業界にあうデザインではないだろうか。しきりに写真をとっていると、中から大きな警備員らしい人が出てきたので、そそくさと退散。他にも見学らしい数人が、話かけられていた。 &image(tem.JPG) #pulldown_jump(ロンドン・パリ旅行記,ロンドン・パリ旅行記/2000年1月28日-ロンドン,ロンドン・パリ旅行記/2000年1月29日-ロンドン,ロンドン・パリ旅行記/2000年1月30日-ロンドン→パリ移動日,ロンドン・パリ旅行記/2000年1月31日-パリ2日目,ロンドン・パリ旅行記/2000年2月1日-パリ3日目,ロンドン・パリ旅行記/2000年2月2日-パリ最終日 ) ---- カテゴリー-[[建築]]、[[旅行]]
***2000年1月29日-ロンドン &image(sen3.JPG) 朝からカムデン・タウンへ。若い人に人気のストリート・マーケット。観光客も多く混雑する名所にもなっているようす。デビット・チッパーフィールドをはじめ、建築家やデザイナーのスタジオも多い。早い時間のせいか余り人はいなかったが、屋台ではおいしそうなソーセージを焼き、露天の店が多く昔の原宿駅前の雰囲気に近い。 &image(sen2.JPG) ロンドンと言えば、ハイテック建築をイメージする。ロジャースやフォスター、ピアノだけでなく、最近ではウォータールー駅をデザインしたニコラス・グリムショーの印象が強い。ここでも88年の作品、セインズベリー・スーパーマーケットと住宅の複合施設が見られる。ハイテックスタイルというと、古い建物の多いヨーロッパではいささか唐突な存在感が気になる。雑誌では既存の町並みとの折り合いの付け方まで分からないので、この建物もそのあたりが気になっていた。 周辺はあまり高層の建物がなく、とても落ち着いた街並みだ。セインズベリー・スーパーマーケットも道路向かいのテラスハウスと軒高をあわせ、スパン割にもヒューマンスケールを感じさせる。しかし、まるで吊り橋のレームを思わせるようなテンション加工は、ちょっと大げさな気もする。そのぶん売場の大きな空間は無柱となっているのだけど。裏側は水路に面している。そちらの外観は住戸ごとに分節され、水辺に軽快なリズムをつくっていた。人によって受ける印象は違うだろうけど、思っていたほど違和感はない。規模によるものの方がインパクトを感じるからだろうか。 ---- &image(zoo03.JPG) カムデン・タウンからほど近い所にロンドン動物園がある。20世紀を代表する世界的な建築物の技術面として、オヴ・アラップ・パートナーズは大活躍している。世界各国に支社を持つが、やはり拠点であるロンドンにおいて、めざましい。この動物園にもアラップの作品が多い。都心の動物園と言うと上野動物園と比較してしまうが、冬の午前中とは言えちょっと寂しい感じだ。まばらな家族連れの中、広大なリージェンツ・パークを歩いて門をくぐる。 &image(zoo05.JPG) ルベルトキンをリーダーとするテクトン・グループとの共同設計による、ペンギンプールを目指す。時間との勝負みたいなスケジュールを組んでしまったため、目的のみへ向かう気持ちが大きい。しかしペンギンプールは奥の方に位置し、そこを目指す途中に興味深い建築がる。ゾウのパビリオンだったが、中はまるで教会建築のようだ。トップライトからそそぐ柔らかい光は、詩的な空間をつくっていた。 問題のプールはスパイラル・シェルで出来たスロープのイメージが強かったが、それ自体楕円形の建築物として完結されている。リニアで軽快な表情はとても1934年の作品とは思えない新鮮さ。しきりに写真を撮っていると、ロンドンっ子達が大勢駆け寄りペンギンを一生懸命写真に納め始めた。主役のペンギンなど気にもしていなかった自分が、ちょっとおかしいのではないかと思えた。ここには有名な鳥小屋もある。テンション構造によって空中に浮かんだ鋼管フレームへ張られたネットで構成されている。鳥小屋には見えず、構造模型のように明快なオブジェだ。 ---- &image(aa01.JPG ) Northern線にて南下し、Tottenham Court Road。アーキグラムから、コールハースやリベスキンド、ザハ・ハディットなど数多くの有名建築家を世に送り出してきたAAスクールを訪ねる。ベッドフォード・スクエアという広場に面した普通のタウンハウスにあるため、中々見つからず苦労した。やっと見つけカフェで休憩しようと思ったが、土曜のため休み。 &image(aa03.JPG) イメージとのギャップに戸惑う。余りにささやかな、どちらかと言えば専門学校。実際にそうなのだろうが、なぜあんなに豪華な講師陣がそろうのだろう。とは言えイギリスで最古のデザイン学校だったはず・・。AAについてあまり知らなかったことに気付く。 わずかに学生がいた。地下の工場では木を切り刻む学生。中庭に面したスタジオで、なにやらドローイングをする学生。ちいさな講義室が幾つかあったが、きょうは授業もないようす。英会話が達者なら学生に色々と聞いてみてかったが、あまりひと気がないこともあり断念。せめて本屋が開いていたならと思った。 ---- &image(brimu.JPG) 近くにはロンドン大学や大英博物館があり、中庭の大規模な改築が進んでいる。設計はフォスター・アンド・パートナーズ。グレートコートと呼ばれる中庭に、ラティスシェルのガラス屋根をかける一大事業。完成間近で内部が見られず残念。来年には素晴らしい空間がみられるのだろう。外から見ると大きなクレーンが、グレード1(歴史的価値)のこの建物を襲うかの様な勢いで、工事が進んでいる。 内部では事業の展示と寄付を募っていた。大規模な博物館だが特別展示以外は無料だ。個人のコレクションから始まった博物館はロンドンの有力な大土地所有者達の力で大きくなった。特にエジプトに関するコレクションはすざまじい数だが、これは元々フランスが抱えていた品々を戦利品としてイギリスが獲得したものらしい。ヨーロッパに広がる美術品ひとつとっても戦争の影が見えてくる。それにしても正面の8本のイオニア式円柱は、アカデミックな迫力。 ---- さらに駆け足で巡る。ヨーロッパの街を散策し歴史的なものに触れるとき、ほとんどが戦争に関係している事へ改めて驚かされる。つぎに訪れた壮大なトラファルガー広場もまたしかり。元々島国のイギリスは日本と同じように、数々の侵略から逃れた。しかしナポレオンのイギリス征服を断念させたネルソンと、その勝利を記念してつくられたこの広場を見ていかにその戦争の勝利が、イギリス人に喜ばれていたかが伺える。 パリの広場よりも、このトラファルガー広場のインパクトは大きかった。高さ50メートルあまりのネルソン記念柱を十分見渡せる広さをもつ迫力は、パリでは見られなかった。もちろん連続した眺めはパリの都市計画には及ばないが、ひとつの広がりは、こちらが勝るだろう。 ---- &image(national01.JPG) 「建築の複合性と対立性」で知られる、ロバート・ヴェンチューリ。その代表作でもあるナショナル・ギャラリー、セインズベリィ館。1990年に建てられた。ポストモダニズムの代表建築家による歴史的背景と、都市的文脈を考慮した建築。難しいテーマと場所性にたいする提案はどうであったか。奇抜なデザインも大胆な提案もない。一建築家の慎重な態度が見られる。もちろん言論達者な建築家による様々な言及はあるだろう。建築を形成するものが、目に見える奇抜さばかりでなく人々のイベント・行為・個性などの集合である事は明白だ。 そんな都市的解釈を要する意味付けまでを、短時間の訪問で得ることは難しい。ロンドンへ生活する人々に親しまれる、トラファルガー広場のような存在と同様なものとなって、初めて得られる建築の感動というものも確かにあると思うが。少しでもそこに馴染もうとカフェで休憩する。とても落ち着いて広場を眺めていると、大勢の人で賑わっているエネルギーをまるでTVで垣間見ているかの様な、静かな空間だった。 ---- &image(sackler01.JPG) &image(sackler02.JPG) 歩いてロイヤル・アカデミーまで。バーリントン・ハウスの大階段は多くの人で賑わっていた。階段を上がった左手にロイヤル・アカデミー会員サー・ノーマン・フォスター設計によるサックラー・ギャラリーがある。トップライトにより部屋全体がとても明るく、17世紀の建物に挿入された、ガラスの階段は、インテリアだが、外部空間にいるかの様な錯覚に陥る。 ---- その後ピカデリーサーカスより、15番のバスに乗りロンドン塔を目指す。途中セント・クレメント・テーンズ教会、王立裁判所、セント・ポールズ大聖堂などが見られ、ロンドンの街を東西へ走る観光バスのようだ。ロンドン塔付近へ近づく頃には日が暮れ始めていた。川沿いへ近づくと風が強くなる。強風に吹かれながらタワーブリッジとロンドン塔を眺める。ローマ帝国時代この場所へ築かれた砦が、ロンドンの原点だ。その後の歴史に置いて、国事犯の監獄および処刑の場として、血塗られた事を思うと、夕暮れの風景も、なにやら重々しい雰囲気を醸し出しているようだ。 ---- &image(lloyds.JPG) 徒歩でロイズ・オブ・ロンドン。ハイテック建築の最高傑作と言われ、コストの大きさでも有名。8日前から予約をすれば内部見学も可能のようだが、なにぶんここへこられるかも分からなかったスケジュール。場所を確認する程度。ほとんどを隣地の建物に囲われているため、あまり近寄っても全体が分からない。付近はシティと呼ばれる世界金融の中心。イングランド銀行や王立取引所など、石張りの壮麗な建物が多い。土曜日なので有名な門番達は見られず。 ---- すっかり日は暮れてしまったがロンドンは今日だけなので、地下鉄でBlack friars駅、ブラックフライアーズ鉄橋を渡り、建設中のテートギャラリ近代美術館を目指す。80年代に稼働を止めた火力発電所の外壁を残し、内部へ新しい構造体を挿入する提案。ヘルツォーク・アンド・ド・ムーロンの設計。数年前から話題のスイスの建築家による大規模なプロジェクトで注目を集めている。5月に完成予定と言うことでこちらも大英博物館同様、ちょっと早いタイミングで残念。 既にテムズ河へ向けて、「ライトビーム」と呼ばれるガラスの箱がライトアップされている。煙突とあわせて迫力ある眺めだ。外部から伺える限りほとんど内部は出来上がっているよう。すぐ前に造られるフォスター設計の「ミレニアムブリッジ」とあわせて、完成後に是非見に来たいものだ。 ---- バスを乗り、ウォータールー駅を横目で見て、ウェストミンスター・ブリッジの手前で降りる。徒歩で橋を渡る。ビッグ・ベンのある国会議事堂や、市庁舎を望めるこの橋からの眺めは素晴らしい。市庁舎手前には、観覧車が設置され、さらに夜景に迫力を出していた。周りの人達も皆、橋の途中で記念撮影をしている。 ---- Westminster駅から地下鉄を乗り、St james's Park駅へ。Westminster駅は、新しく斬新な感じだった。ここから本日最後、ロジャース設計のチャンネル4を目指す。すっかり夜も更け、人通りも少なくなる。付近にアーミー&ネイヴィもあり、銃をもった軍人が見張っていたりと、ちょっと怖い雰囲気。 15分くらい歩き、やっと見つける。半円状にくぼんだ、ガラスのエレベーション。日のある内にじっくり見たかったが、夜景も近未来的な雰囲気で良い。こういったテレビ局などの、メディア業界にあうデザインではないだろうか。しきりに写真をとっていると、中から大きな警備員らしい人が出てきたので、そそくさと退散。他にも見学らしい数人が、話かけられていた。 &image(tem.JPG) #pulldown_jump(ロンドン・パリ旅行記,ロンドン・パリ旅行記/2000年1月28日-ロンドン,ロンドン・パリ旅行記/2000年1月29日-ロンドン,ロンドン・パリ旅行記/2000年1月30日-ロンドン→パリ移動日,ロンドン・パリ旅行記/2000年1月31日-パリ2日目,ロンドン・パリ旅行記/2000年2月1日-パリ3日目,ロンドン・パリ旅行記/2000年2月2日-パリ最終日 ) ---- カテゴリー-[[建築]]、[[旅行]]

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