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-星野智幸・著
-すばる /6月号に掲載
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10歳でみなしご寮、20歳で独身寮。適齢期に結婚して子供一人つくれば「市民権」を獲得、二人目を授かれば永久市民として承認される。子供は10歳でみなしご期を向え親元をはなれ寮に入れられる。以後繰り返し。
脱市民とはそのまま脱社会を意味し、子供を作らなければ追放され兵役送り。みなしご寮でも思想的に疑われれば追放。耐え切れず自殺してもその行為は無かったことにされ、脱市民として追放されたものとされる。つまり「抵抗すら」存在しないのだ。
近未来SFのようでもあるけれど、少子化問題、ワーキングプア、監視社会、携帯ID制など、リアルな細部は今の実態を違う角度から眺めただけのようでもある。映画『マイノリティー・リポート』よりもはるかに近い気がする。
現実をフィクションの中へ閉じ込め、そうすることによって切実なリアルとして再現する。星野智幸の小説はいつもそのように痛々しい。痛みとは同時代性として読む側へ降りかかってくる訴えのようでもあり、小説の芸術性が生み出す副産物なのでは。2007-05-13/k.m
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