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呪いのゲーム 「第二章」

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呪いのゲーム 「第二章」






             呪 い の ゲ ー ム










   それは








   10年前にこの世から消えたはずの












         恐 怖 の ゲ ー ム









             今




























               再 び 蘇 る ――

「ねぇ亜子、今日の合コン行くよね?」


「え?」



放課後の、友達と2人だけの静かな教室

突然、合コンの話に友達がきりだした。


あたしの名前は、白井 亜子 (しらい あこ)

高校1年生

趣味 なし

特技 なし



でも 1つだけ特別なモノを持ってる

それは




  霊  感





あたしの家系は、みんな霊感が強い。

死んだおばあちゃんは、イタコだった。

あたしの霊感をみんな認めてるから、よく肝試しに連れられる。

今回の合コンも、それらしいことがあるようだ。


「ほらぁ、おとといメールしたやつ。亜子、可愛いのに彼氏いないなんてもったいないよ?」


あたしに馴れ馴れしく話すのは、田島 由愛 (たじま ゆあい)

2ヶ月前、イケメン彼氏と別れてから、男に飢えているようだった。


由愛は、あたしをなんとしても連れて行きたいみたい。

すっごく必死だ。


「ね、亜子も行くよね?相手の男の子達、結構イケメンだよ~」

「へぇ・・・・・・じゃあ・・・行くよ・・・」

「ほんとに!?やった――!」


ああ

また、断れなかった。

本当は、嫌なの。

みんな、あたしの霊感が目当てなんだから・・・。


「じゃあさっ、今日の夜にメールするねー!」


満面の笑顔で言うと、由愛はスキップをしながら教室から出て行った。





夕食を終え、居間で家族とテレビを見ている時だった。


♪♪~♪~♪~


携帯の着メロが鳴った。

ほとんど、鳴ることのない携帯。

この着メロを聞いたのは、久しぶりだった。


パチンと携帯を開けると、「新着メール1件」との文字。

おおかたの予想はついてる。

ほら、やっぱり


由愛だ。



------------------

From 田島 由愛

Sub やッッほ(o>∀<o)

合コンにつぃてのぉ知らせでィす(★'ε`人)0
○月×日にミスドで夜6時ヵラだぉ↑↑
女の子のメンバーゎ由愛と亜子と七海だょッ★☆
まぢ彼氏つくるヵラぁぁぁ 藁
ミスドまで3人でぃっしょに行こッッ≡3

------------------


6時からかぁ・・・

取りあえず、あたしは返信した。


------------------

To 田島 由愛

Sub Re:

わかったー(^0^)ノ
何時に待ち合わせする?

------------------


こんなやりとりが続いて、あっという間に合コンの日になった。

待ち合わせ場所に行くと、既に2人居た。


由愛は可愛い姫系の服

七海はお姉系でセクシーな服

2人とも、化粧にもかなり力が入っていた。

その点、あたしは

系統さえわからない、地味な服。

思いっきり浮いていることがわかった。


「なんか・・・2人とも、かなり頑張った?」


あたしがそう訊くと


「そりゃあね~!リアルに彼氏欲しいから~」


2人とも、嬉しそうに答えた。


ミスドの中に入ると、家族連れが特に多くて、熱気がすごかった。

突然、1つのテーブルに座っている人達がこっちを向いて手を挙げた。


「あ、あそこだ!」


由愛と七海は素早く反応して、可愛らしく歩きながら手を挙げている人達の方で向かった。


「ごめんなさ~い、待たせちゃってごめんね」

「ううん、全然いいよ」


由愛の言うとおり、相手の男の子達はなかなかのイケメンだった。

でも、あたしは男に興味はなかった。


「よろしくおねがいしまぁ~す」


由愛と七海は可愛らしい声で言った。

男の前での態度の変わり様には、呆れたをこえてさすがだと思った。

「じゃあ、俺らから自己紹介するよ」


向かい側に座っていえる男の子達は、あたし達から見て右から順々に口を開いた。


「・・・っと、オレはK高1年の土屋健吾(つちやけんご)です!部活はサッカーで・・・す、はい。よろしくっ!」

「イエ――イ!!」


みんな拍手をした。

七海と由愛は特に可愛らしく、大きな声で。

土屋君は頬を少し赤らめた。

かなりシャイなご様子。


「同じく、K高校1年の紺野陸(こんのりく)でぇ~すっ!部活はバスケだよん!馬路盛り上がろっ!」

「イエ――イ!」


快調にVサインをあげる紺野くん。

恥ずかしがり屋そうな土屋くんとは違って、目立つのが好きみたいだ。


「俺は、S高1年の山本大輝(やまもとだいき)です!学校は違うけど、2人とも中学が一緒で・・・。テニス大好きでテニプリ目指してます!よろしく!」

「あははは!よろしくねー!」


大輝くんも目立つのは好きみたいだ。

わざとなのか、前髪の先だけが赤く染まっている。

おしゃれセンスは大輝くんが一番良さそう。


「じゃあじゃあ~由愛から自己紹介するねっ」


一番端に座っていた由愛が手を挙げた。


「えっとぉ、T高1年の田島由愛ですっ。部活は吹奏楽でぇ、フルート吹いてますっ」

「おおお~~!」


男の子が歓声を上げた。

どうやら3人は由愛がお狙いなようだ。


「ただ今彼氏募集中でぇす!誰か優しい人、なってほしいなっ」

「え?じゃあ俺がなるしっ!」


即座に紺野君が手を挙げた。

「え~?ほんとにぃ?」と由愛は嬉しそうに言った。


「待ってよ!まだ七海自己ショしてないよぉ?」


七海が口を挟んだ。


「あたしはぁ、T高校1年の実喜七海(みきななみ)ですっ!部活は陸くんと一緒のバスケでぇ、料理が得意なんだ。よろしくねっ」

「まじで?部活一緒じゃん!じゃあ今度一緒にバスケやろっ」


紺野君がそう言うと、七海は嬉しそうに「じゃあアド教えてね」と言った。

その光景を、由愛は少し怒こった感じで見ていた。


「じゃあ・・・次は1番端の子だね!」


大輝君はあたしを指さした。

「・・・え?あたし・・・?」


あたしはかなり戸惑った。


「そうだよ、亜子の番。早く早くっ」


由愛がせかす。


「・・・2人と同じで、T高1年白井亜子です。部活は入ってないし、趣味も特技もありません・・・よろしく・・・」

「イ・・・イエーイ!」


全員の笑顔が引きつっているのがわかった。

やっぱり、あたしには場違いなんだ。

早く帰っちゃおうかなー・・・


突然「あっ!」と言うと、大輝君は再びあたしを指して、由愛に訊いた。


「ねぇねぇ、もしかしてこの子が噂の霊感少女?」



ズキン


心が痛んだ。



そんなあたしに気づきもせずに、由愛は答える。


「そうだよ~。この子の霊感まじすごいからぁっ!この子のおばあチャンはね、イタコだったんだって」

「へぇ~」


興味があるのか、大輝君はじろじろとあたしを見る。

「別に普通の子と変わんないけどなぁ・・・」と呟いた。

そして、満面の笑みで


「あのさ、俺今日面白いヤツ持ってきたんだよね~。ちょっと後でそれ見てよっ!」


その瞬間

刺すような気配を感じた。

かつてない、とても強い気配――


その気配は、大輝君の鞄から放っていた。

なんだろう・・・

何か、とてつもなく悪いモノな気がする――
それから数十分

焼き肉を頬ばりながら、とてもいいテンションだった

あたし以外の5人は。

時折、男の子があたしに何か質問するけど

あたしが答えると、返す言葉もないのか、「あ・・・そう」と言って由愛や七海の方に顔を向ける。

ああ

無理にでも断ればよかった

合コンなんて 初めてだけど

こんなものだなんて・・・

あたしには 本当に場違いすぎる・・・

『お腹が痛い』

そう言って帰ってしまおうか

そう思っていたその時










          「  呪いのゲームって知ってる?  」








突然、大輝くんがみんなに訊いた。


「え?何それぇ、由愛知らな~い」


すぐに由愛が食いついてきた。

それに続いて、七海も


「あ、それ知ってるー!なんかさぁ、10年前に消えたとか言って復活したやつでしょ?」


「亜子ちゃんは知ってる?」


大輝くんは笑顔で訊く。


「知らない」


さらりと答えると


「じゃあ、由愛ちゃんと亜子ちゃんに教えてあげるよ」


突然真剣な表情になり、机に両肘をついて話し始めた。




今から40年前――
今から40年前

ある女子学生が、変死体で発見された。

女子学生の部屋は散らかり放題、窓や押入、引き出しなど、ありとあらゆる『入り口』にガムテープが何重にも貼ってあった。

このような変死体は、女子学生の家の周辺で広がった。

そうして調べているうちに、あることがわかった。

このような死亡者は、3日前にあるゲームをやっていたこと


それが、 呪 い の ゲ ー ム


ある男の元で作られた、1本のソフトだった。

呪いのゲームの噂は、あっという間に広がり、テレビでも話題になった。

しかし、誰一人として、そのゲームの内容を知らない。

なぜなら、このゲームをクリアした者は1人しかいないから。


ゲームをもらったら、必ずやらなければならない。

そして、ゲームを最後までクリアしなければならない。

ゲームをやり終えたら、必ず次の人に回さなければならない。

もし、クリアできなかったり、回さなかったり・・・1つでも怠ったりしたら――

            3 日 後 に 死 ぬ 。

いつの日か、そんなルールと一緒に、ゲームは北海道から沖縄の間をぐるぐると回っていた。

そして30年前

1人の少女が、これ以上ゲームの犠牲者が出ないよう、自らが最後の犠牲者で終わるよう、

ゲームを壊し、欠片を川に投げ捨てた。

その少女の遺体は、これまで以上にとても無惨だったと言う。

さぞかしつらい死に方だっただろうと・・・。

しかし、この勇敢な少女のおかげで、ゲームは無くなった。

しばらくの間は、ゲームの犠牲者は出ることはなかった。

しかし

再び、ゲームは復活し、日本中の人々を恐怖に陥れた。

何故 復活した?

それは


ソフトは 1本ではなかった。



              2 本 あ っ た の だ――

「・・・で、そのソフトが今流行ってるってこと?そんなソフトまじであるのぉ?」

由愛は子どものようなきらきらした瞳を大輝に向けた。

「流行ってわけでもないけど・・・最近ここら辺にまわってきててさぁ・・・てかぶっちゃけ、今俺が持ってるわけ」

「え!?」

あたしは思わず声を上げた。

暗く、思い雰囲気で、しかも霊感少女ののあたしが大きな声を上げたから、5人は驚いて一斉にあたしを見た。

由愛は面白そうに訊く。

「なに?なんか感じたの?」

「・・・感じた・・・よ・・・。自己紹介の時から・・・大輝くんの鞄・・・から・・・」

待って

このソフト かなりやばいよ

青ざめたあたしの顔を見て、由愛は嬉しそう笑って

「大輝くん、ソフト出してよ」

って。

当然、というように、大輝くんは鞄の中からそれらしいモノを取り出した。

その瞬間、刺すような気配は強くなった。

体に刃物が刺さるようで・・・痛い

待って

ほんとにやばい

関わらない方が 絶対良い

由愛は耳元で「どう?感じる?」と囁いた。

面白半分に訊く由愛に相当腹が立ったけど、そんな余裕はない。

そして、思わず

「それ・・・やばいよ。何処から手に入れたの!?」

あたしの勢いに大輝君は驚いたようで、少し間をおいて言った。

「・・・え・・・?フツーにダチからだけど?」

「その友達・・・普通じゃなかったでしょ?顔・・・」

「・・・んー・・・確かに・・・かなりやつれてたなぁ」

ほらね

このゲーム・・・憑いてるよ

しかも かなりやばいヤツ・・・

今すぐにでもどこかに捨てた方がいいけど

駄目なんだよね

 捨 て ら れ な い ん だ よ ね

七海が口を開いた。

「亜子がこんなに言うんだもの・・・かなりヤバイんだよ。それさぁ、捨てなよ」

「無理だよ。だってこれ、もらったらやんなきゃいけないんだろ?」

「あ・・・そっか・・・」

せっかくの合コンの雰囲気が台無し

みんな 暗い顔してる

特に 大輝くんは・・・。

そして

1人だけ面白そうに笑うのは

由愛

由愛はただ こういう展開が大好きな女の子なだけなんだけどね

とにかく

早く あのソフトから離れなきゃ

「・・・ごめん・・・あたし・・・帰るね・・・」

あたしは立ち上がると、鞄を持って足早にお店を出た。

あまりにも急なことだから、あたしを止めることなく、みんなポカンと口を半開きにしていた。

いつの間にか、外は真っ暗になっていた。

空には星がきらきらと輝いている。

・・・店の外に出ても まだあの気配・・・感じるよ



もしかして

ソフトに憑いてた『モノ』

お持ち帰りしちゃったかも・・・

「・・・あー・・・最悪ぅ・・・」

大きなため息をついて、夜空を見上げる。

なんて綺麗なお月様なんだろう

写メで撮りたいくらい

でも

今は そんな気分じゃない・・・

なんだか・・・涙が出てきた

目の奥から じわじわと暖かい涙が溢れる

行かなきゃよかった

断れば良かった

霊に関することがあるって わかってたのに

馬鹿・・・あたしの馬鹿・・・

あたしが存在に気づいてること 『あいつ』がわかっちゃったんだ

だから 憑いてきちゃったんだ

今までにないくらい やばい奴なのに・・・

「亜子――!」

後ろから、聞き慣れた声が聞こえる。

振り向くと、七海と由愛が居た。

「亜子、大丈夫?すごい気分悪そうだったから・・・」

七海は、あたしの肩に手を置いた。

だけど

七海の優しさが 何故かすごく腹が立った。

「・・・じゃない」

「え?」

「・・・大丈夫じゃないよ・・・どうせあたしは霊感が売りなのよ!友達として合コンに呼んだわけじゃないんでしょ?怖い系のことするから呼んだだけでしょ?」

「・・・っそれは・・・待っ・・・」

「もういいよ!断らなかったあたしが馬鹿だった!そのせいで・・・そのせいであいつに・・・最悪だよっ!」

「ちょっと・・・亜子ぉ!」

力一杯、家に向かって走った。

もちろん、背後からはあの気配がする。

どうしよう・・・

おばあちゃんが居たら・・・どうにかなっただろうに・・・
気がついたら、自分の部屋のベッドの上に寝ていた。

頬に触れると、涙でまた濡れていた。

あの気配は 今も感じる

やっぱり 連れてきてしまった

あたしは、霊感が強いから

霊の姿や声、感情もわかる。

だから、ただの『透けてる人』と考えているだけで

生きている人間と、ほとんど別とは考えていない。

だから、今回のように憑いてくることがあっても、さほど気にしなかったのに

でも・・・今回は違う。

いつもなら、憑いてきた霊の性別、外見、年齢、性格、その霊の一生・・・

手に取るようにわかるハズなのに

何故か、今回のモノはわからない。

感じるものは

真っ黒な影と 刺すような気配。

もしかしたら あたし

嫌でも あのゲームと関わることになるのかもしれない――

あれ?

いつの間にか、周りの景色はがらりと変わっていた。

真っ白の空間

そこに、ぽつんと立ちつくすあたし。

何もない白い空間をひたすら歩く

歩いていると、目の前に白い扉

何者かに導かれるようにに、その扉を開けると

・・・人?

扉の向こうに、人影が見えた

あたしは、ゆっくりとその人影に近づく

どうやら、あたしと同じ年代の男の子のようだ。

髪の毛はつんつんで

前髪の先だけ 赤くて

そう

大輝くん。

大輝くんは、あぐらをかいて座っている

股に肘を置き、何かを両手で持って

口を半開きにして、一点をじっと見つめている

その瞳は、とても真剣で

時折、唇を噛んだり、目を大きくしたり

目の下には、うっすらと浮かぶクマ

「何してるの?」

大輝くんに訊く。

だけど、大輝くんは答えない

こっちさえ、見てくれない

「ねえ、大輝くん?なにしてるの?」

今度は、もう少し強い口調で訊いた。

それでも、大輝くんは何も言ってもくれない
大輝くんの目が、だんだん怖い目つきになる

何かを持つ両手は、震え出す

何を見たのか、目を大きくして

息も、どんどん荒くなって

そして――


「うぐわあああああああああああああああああああ!!!!!!!」

        狂 っ た か の よ う に  叫 び 出 す 。

「・・・え!?大輝くん・・・?」

どうしたんだろう

何があったんだろう

     「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙・・・!!!!」

大きな両手で頭を抑え、ひたすら叫び、転げ回す大輝くんを目の前に

あたしは・・・何もできなくて――

転げ回る大輝くんは、あたしの目の前でぴたりと止まった。

ゆっくりと、目を開ける大輝くん

その瞬間

合った。

あたしと 大輝くんの目が

ほんの一瞬だけ。

その瞬間

大輝くんは

 見 て は い け な い も の を 見 た か の よ う に

ものすごい形相をして――

「・・・はぁっ!」

気がつくと、自分の部屋のベッドの中だった。

カーテンの隙間から、太陽の光が差す。

ああ・・・

夢・・・だったんだ・・・
ほんとに 夢だったのだろうか

夢にしては やけにリアル・・・

「・・・あー・・・」

あたしは、額に手を当てた。

せっかく寝たのに、疲れが残っている

むしろ、昨日より溜まった感じ

♪♪~♪~♪~

朝っぱらから、携帯の着メロが鳴った。

「・・・・・・誰だよー・・・」

乱暴に携帯を取った。

今度は、メールじゃなくて電話だった。

ピッ と機械音が部屋に響く。

「・・・もしもし~・・・?」

【もしもし?亜子?】

電話の相手は、七海だった。

七海の声を聞くと、気分が悪くなった。

昨日のことが、まだ心の中で整理されていないから・・・

「・・・・・・なんか用・・・?」

【ねえ、亜子・・・っぅ・・・どーしよ・・・】

七海の声が震えてる

そう思った瞬間、七海は泣き出した。

「何で七海が泣いてるの?泣きたいのはこっちなのに」

【・・・だ・・・だって・・・っ・・・ひっく】

ただ泣きじゃくる七海に、あたしはしびれをきらした。

「泣いてないでさっさと言ってよ!どーしたわけ?」

【・・・ごめっ・・・あの・・・ね?だいきくんが・・・だいきくんが・・・







              ・・・死んだって・・・】


                 「 え? 」

え・・・?

大輝くんが・・・ 死 ん だ ?

ちょっと待ってよ

突然すぎだし

七海のいたずら?

【なんか・・・健吾くんから電話あって・・・で・・・大輝くんが・・・】

「・・・嘘でしょ?七海、あたしをからかってるんでしょ?」

【違うよっ!こんな酷い嘘つくわけないしっ!・・・亜子はそんなにあたしが嫌い?】

「・・・ごめん」

そうだよね

いくらなんでも、七海がこんな嘘つくわけない

昨日のことがあったって言っても、疑いすぎちゃったね

【・・・大輝くんね・・・夜中に2階の自分の部屋の窓から飛び降りたっぽくて・・・打ち所悪くて病院で亡くなったんだって・・・】

「・・・そう」

【でね・・・大輝くんの部屋のゲーム機に・・・ささってたんだって・・・あのソフトが】

「・・・ソフト・・・」

あ の ソ フ ト

それって・・・
            【  呪いのソフトが・・・  】

七海の言葉を聞いて、頭が真っ白になった。

じゃあ

あの夢は

ただの夢ではない――?

【・・・ねぇ亜子・・・大輝くんが死んだのは・・・あのソフトのせいなんでしょ!?】

七海も声が、突然強くなった。

【きっとゲームオーバーだったんだよ!それで・・・頭が可笑しくなっちゃったんだよ!そうなんでしょ?】

そうなんでしょ?って

そんなの、あたしにもわからないよ

【・・・やだ。もし、あのソフトがあたしに回ってきたら・・・いや・・・いやあああああ!!!】

「ちょっ・・・七海!?」

ブツッ

電話は、切れてしまった。

大輝くんが・・・あのソフトで・・・

七海も言うとおり、あのゲームをやって、正常ではなくなって、飛び降りてしまったのかもしれない

夜中に見た、あの夢・・・

どうも、偶然ではなさそう

何故

あの時、大輝くんはあたしを見て、恐ろしい顔をしていたんだろう

何故・・・?

違う。

あたしじゃない

あたしを見ていたんじゃない

大輝くんが見ていたのは――







 あ た し の 後 ろ

え・・・?

大輝くんが・・・ 死 ん だ ?

ちょっと待ってよ

突然すぎだし

七海のいたずら?

【なんか・・・健吾くんから電話あって・・・で・・・大輝くんが・・・】

「・・・嘘でしょ?七海、あたしをからかってるんでしょ?」

【違うよっ!こんな酷い嘘つくわけないしっ!・・・亜子はそんなにあたしが嫌い?】

「・・・ごめん」

そうだよね

いくらなんでも、七海がこんな嘘つくわけない

昨日のことがあったって言っても、疑いすぎちゃったね

【・・・大輝くんね・・・夜中に2階の自分の部屋の窓から飛び降りたっぽくて・・・打ち所悪くて病院で亡くなったんだって・・・】

「・・・そう」

【でね・・・大輝くんの部屋のゲーム機に・・・ささってたんだって・・・あのソフトが】

「・・・ソフト・・・」

あ の ソ フ ト

それって・・・
            【  呪いのソフトが・・・  】

七海の言葉を聞いて、頭が真っ白になった。

じゃあ

あの夢は

ただの夢ではない――?

【・・・ねぇ亜子・・・大輝くんが死んだのは・・・あのソフトのせいなんでしょ!?】

七海も声が、突然強くなった。

【きっとゲームオーバーだったんだよ!それで・・・頭が可笑しくなっちゃったんだよ!そうなんでしょ?】

そうなんでしょ?って

そんなの、あたしにもわからないよ

【・・・やだ。もし、あのソフトがあたしに回ってきたら・・・いや・・・いやあああああ!!!】

「ちょっ・・・七海!?」

ブツッ

電話は、切れてしまった。

大輝くんが・・・あのソフトで・・・

七海も言うとおり、あのゲームをやって、正常ではなくなって、飛び降りてしまったのかもしれない

夜中に見た、あの夢・・・

どうも、偶然ではなさそう

何故

あの時、大輝くんはあたしを見て、恐ろしい顔をしていたんだろう

何故・・・?

違う。

あたしじゃない

あたしを見ていたんじゃない

大輝くんが見ていたのは――







 あ た し の 後 ろ

え・・・?

大輝くんが・・・ 死 ん だ ?

ちょっと待ってよ

突然すぎだし

七海のいたずら?

【なんか・・・健吾くんから電話あって・・・で・・・大輝くんが・・・】

「・・・嘘でしょ?七海、あたしをからかってるんでしょ?」

【違うよっ!こんな酷い嘘つくわけないしっ!・・・亜子はそんなにあたしが嫌い?】

「・・・ごめん」

そうだよね

いくらなんでも、七海がこんな嘘つくわけない

昨日のことがあったって言っても、疑いすぎちゃったね

【・・・大輝くんね・・・夜中に2階の自分の部屋の窓から飛び降りたっぽくて・・・打ち所悪くて病院で亡くなったんだって・・・】

「・・・そう」

【でね・・・大輝くんの部屋のゲーム機に・・・ささってたんだって・・・あのソフトが】

「・・・ソフト・・・」

あ の ソ フ ト

それって・・・
            【  呪いのソフトが・・・  】

七海の言葉を聞いて、頭が真っ白になった。

じゃあ

あの夢は

ただの夢ではない――?

【・・・ねぇ亜子・・・大輝くんが死んだのは・・・あのソフトのせいなんでしょ!?】

七海も声が、突然強くなった。

【きっとゲームオーバーだったんだよ!それで・・・頭が可笑しくなっちゃったんだよ!そうなんでしょ?】

そうなんでしょ?って

そんなの、あたしにもわからないよ

【・・・やだ。もし、あのソフトがあたしに回ってきたら・・・いや・・・いやあああああ!!!】

「ちょっ・・・七海!?」

ブツッ

電話は、切れてしまった。

大輝くんが・・・あのソフトで・・・

七海も言うとおり、あのゲームをやって、正常ではなくなって、飛び降りてしまったのかもしれない

夜中に見た、あの夢・・・

どうも、偶然ではなさそう

何故

あの時、大輝くんはあたしを見て、恐ろしい顔をしていたんだろう

何故・・・?

違う。

あたしじゃない

あたしを見ていたんじゃない

大輝くんが見ていたのは――







 あ た し の 後 ろ

そうだよ

あたしの背後を見てた。

その瞬間

刺すようなあいつの気配が、さらに強くなった。

一瞬で全身に立つ、鳥肌。

ああ

わかる

間違いなく、居る。

 あ た し の す ぐ 後 ろ に 。

振り向かなくても・・・わかるのに

振り向かずには、居られなかった。

振り向くと、そこには黒い影があった。

黒い影を見た瞬間

キーンという酷い耳鳴りと同時に、あたしの脳裏に映像が浮かび流れた。

あたしの脳裏に浮かぶ映像――

古い、2階建ての一軒家

壁は黒ずみ、何かの植物の蔓がたくさんへばりついていた。

その家には

ヒゲだらけの男と

黒く、長髪の女

そして

男の手には

呪いのソフト――

「――・・・っ」

耳鳴りが止むのと同時に、脳裏に流れる映像もぱたりと消えた。

なんなんだろう

さっきの映像は

あの男の人と 女の人・・・

そして 呪いのソフト

もしかして

呪いのソフトを作った男の人って――・・・
1週間後――

合コンをした翌日から、七海は学校を休み続けていた。

由愛は、大輝くんの死を酷く嘆いていたが、もうすっかり立ち直っていた。

七海からは、あの電話以降、何も連絡が来ていない

こっちから電話をかけてみても、携帯はずっと電源が切れた状態

そんな七海がやっと学校に来たのは、それから3日後だった。

顔はやつれ、目の下にはどす黒いクマ

血の気のない、死人のような顔だった。

髪の毛もぼさぼさで、制服もシワだらけ。

あたしは、七海を見た瞬間、嫌なモノを感じた。

それで、もうわかった

七海は、やってしまったんだ

  呪 い の ゲ ー ム を 。

きっと、陸くん辺りから回ってきたんだ・・・。

周りの女子は、七海の変わり様に酷く驚き、悲しみ、涙した。

でも、あたしは

涙さえ・・・七海に近づきさえしなかった。

七海に声を掛けたかった

『大丈夫?』って訊きたかった

でも できなかった。

七海から出る 嫌な気配を感じてしまったから

『近づいてはいけない』と

体の全ての細胞が 悲鳴をあげていたから

       七海がもう長くないことも・・・すぐにわかった
翌日

今日は、やけに早く学校に行った。

8時30分からホームルームが始まるのに、7時30分に学校に着いた。

何故か、早く起きられた

いや、起きてしまった。

誰もいない教室に1人たたずむ

友達の机に、太陽の日差しが温かくあたる

なんだか、微笑ましい光景だった

早く学校に行くってのも良いな・・・

そう思って机の中に手を入れた瞬間

何かに触れた。

硬い、四角いモノ

それに触れた瞬間

 恐 ろ し い 程 嫌 な 気 配 を

 感 じ て し ま っ た 。

なんで さっきまでこの気配に気がつかなかったんだろう

あたしは 何に触れてる?



もしかして

もしかして

もしかして

え・・・?

待ってよ・・・

ヤだよ

予感は的中した。

震える手の中にあるもの

              呪 い の ソ フ ト

「きゃああっ!!!」

思わず、声を上げてしまった。

なんで?

ナンデアルノ?
頭が混乱してる

自分に 回ってくるとは思ってもいなかったから

冷静になって考えた。

机の中にあるということは、昨日の帰りのホームルーム以降に入れられたんだ。

誰が入れた・・・?

放課後に教室に残ってる生徒なんてたくさん居る

その中の誰か・・・

いや

そんなこと 考えなくたってわかるハズ

このソフトを持っている人は

健康ではない人なんだから

普通に考えて
              七海だよ。

何も疑わなかった。

七海しかいないもん

七海しか、考えられないもん

「・・・くそっ!」

七海が犯人だとわかった瞬間

目の奥から、涙が溢れるのを感じた。

だってだって

このソフトが回ってきたってことは

『貴方は死にます』

そう言ってるのと同じ・・・

クリアできる自信なんてない・・・

七 海 が 憎 い 。

ナンデアタシナノ?

ドウシテアタシニソフトヲ渡スノ?

授業どころではなかった。

今にも倒れそうな程ふらついた足取りで教室から出ると、靴も履き替えずに学校を出た。

あたしは 何処へ向かって歩いている?

何処を目指してる?

ただ そこ道がある限り 歩いてるという感じ

涙を拭くことさえ 瞬きさえ忘れていた

これから学校へ向かう 何人もの学生とすれ違った

逆方向を歩くあたしを みんな不思議そうに見つめていた

いつの間にか 大通りに出ていた

仕事に向かうサラリーマン

学校に向かう学生

その人達で 道はうめつくされていた

何処を見ても 人、人、人

そんな人混みの中のある一点を見た瞬間

あたしの瞳がきらりと光った。

黒い、長髪の女性――

脳裏に浮かんだ、あの時の女性そのものだった。

黒髪の女性は、スルスルと人混みに逆らって器用に歩いていく

「・・・ま・・・待って・・・」

あたしの瞳には、もうその人しか映らなかった。

夢中でその人を追いかけた。

誰かにぶつかろうが、それで罵声を浴びられようが、構わなかった。

やっと大通りから抜け出し、住宅街に入った。

女性は、30メートルほど先で歩いていた。

ツヤのある綺麗な黒髪は、腰ぐらいまであり

全身、黒いワンピース

真っ赤なパンプスを履いていた。

コツコツと、パンプスの音を響かせながら歩く女性

その女性には、常人と違うオーラのようなものがあった。

女性は、ある一軒家の前でぴたりと足を止めた。

その女性が足を止めた一軒家も

あたしがあの時見た、蔓がへばりついた古い一軒家――

女性は、アタシの方に振り向くと、微笑んだ。

「いらっしゃい、貴女が来るのをずっと待っていたのよ」
薄暗い、室内

窓には真っ黒なカーテン

不気味な植物が生えた植木鉢がたくさんあった。

あたしは、そこにあるソファに座るよう、うながされた。

あたしが座ると、隣に女性が座り、口を開いた。

「・・・可哀相に、貴女も選ばれてしまったのね」

心臓が飛び出すぐらい、大きな衝撃が走った。

この女性の言葉の意味が、すぐにわかった。

「・・・呪いの・・・ソフトのこと・・・ですか?」

のどから必死に声を絞り出す。

女性は、悲しい笑みを浮かべ、頷いた。

「でもね、七海ちゃんを恨んじゃ駄目。彼女も可哀相な一人なんだから」

「・・・でも・・・」

そんなこと言ったって

七海、憎いよ。

殺したいくらいに憎い

七海だって可哀相な一人

そりゃ わかるよ

わかるけど・・・

ん?

ちょっと待った

あたし・・・この人と初対面のはず

なぜ、この人は知ってるの?

あ た し が 呪 い の ソ フ ト を 持 っ て る こ と も

七 海 か ら 渡 さ れ た こ と も

あたしは、ゆっくりと女性の顔を見た。

女性は、嬉しそうに微笑み、言った。

           「  私の名前は 武知 亜里砂  」
「ありささん・・・ですか」

「そう、覚えておいてね」

「はぁ・・・」

しばらく、沈黙が続いた。

時計の音だけが、薄暗い室内に響く。

沈黙を破ったのは、亜里砂さんだった。

「・・・そのゲーム・・・本当に恐ろしいから、覚悟した方がいいわよ」

「え?」

あたしの鞄をじっと見つめながら、亜里砂さんは言った。

鞄の中にソフトがあること・・・わかってたんだ

亜里砂さんは、遠い昔を思い出すかのような・・・懐かしそうな瞳を向けて言った。

「あたしもね・・・10年前、そのゲームをやったのよ」

「・・・え?」



亜里砂さんもやったの?

じゃあ

じゃあ 何で生きてるの?

いや

呪いのゲームをやって、必ず死ぬわけではない

クリアしてソフトを回せば、生きていられる

でも

このゲームのクリア者は、たった1人のはず

じゃあ

もしかして

           亜 里 砂 さ ん が ・ ・ ・

あたしの顔を見て、亜里砂さんは嬉しそうに微笑んだ。

そして

「 そうよ。あたしが唯一のクリア者なの 」

         唯 一 の ク リ ア 者 ―――



こんな人が・・・クリアした?

誰もクリアできなかった・・・あのゲームを?

こんな・・・美人で、細くて、モデルさんのようにスタイルが良くて・・・

見るからにそんな感じの人じゃないのに・・・

亜里砂さんは、話を続けた。

「・・・でもね、クリアすればとても良いモノが貰えるわ。あたしもそれを貰った・・・。おかげでその瞬間から人生がとても楽しいの」

「・・・それは・・・何なんですか・・・?」

亜里砂さんは、一度口を閉じた。

形の良い、真っ赤な唇がとても鮮やかに見えた。

数十秒後、口を開いた。



                     「 予知能力よ 」

「 予知・・・能力?」

「そう。予知能力」

嘘だ

予知能力なんて・・・ありえない

嘘だよ

でも

亜里砂さんの目は、嘘を言っているような目ではなかった。

とても真剣だった。

「・・・あたしの親友も・・・10年前にこのゲームをやって死んだわ」

亜里砂さんは、視線をあたしから床に移した。

悲しそうに話し始めた。

「小さい頃から一緒の・・・大好きな友達だった。これからもずっと一緒に居たかった。このゲームをやっている時は、本当に無我夢中でやったわ。

そして、クリアした。その瞬間に、何か新しい感覚が備わったのを感じたの。そう・・・それが予知能力。
その瞬間、わかったわ。あたしの一生の全てが・・・10年後の今日、貴女があたしの前に現れることも」

「・・・」

「あたしだけじゃない・・・。わかってしまったの、親友の・・・由香の未来も。
あたしの期待していた未来ではなかった・・・絶望的なものだった。それなら、いっそのこと、由香にあのソフトを渡して殺してしまおうと思ったの。そして・・・由香は死んだ。
悲しかった・・・本当に悲しかった。あの時由香に冷たい態度を取ってしまったのは、由香への悲しい思いをまぎらわす為・・・」

亜里砂さんの目に、うっすら涙が浮かんでいた。

本当に悲しそうで・・・

突然顔を上げ、天井を見つめながら微笑んだ。

「でもね!今は悲しくなんかないの。この能力で救われたことがたくさんある。何より、誰も知らない未来をあたしだけわかっていることが快感なの。」

「・・・えっ・・・じゃあ・・・」

じゃあ

 あ た し の 未 来 も わ か る ?

あたしは、そんな目を亜里砂さんに向けた。

あたしの目を見て、亜里砂さんは悟ったのか、にっこりと微笑んだ。

「当然、わかるわ」

やっぱり・・・

あたしの未来がわかるんだ!

知りたい

あたしの未来を。

知りたい

あたしは、ゲームをクリアできるのかを――

あたしが口を開いた瞬間、亜里砂さんは口を開いた。

「でも・・・駄目。教えられない」

「・・・え?・・・な・・・ぜ・・・?」

「あたしの楽しみがなくなってしまうからよ。あたしはね、誰も知らない未来を自分だけが知っているということが快感なの。みんなが操り人形のように、あたしの見えている未来の通りにぽんぽん動いてくれる・・・それを見ると可笑しくって、楽しくって」

「・・・・・・」

「・・・だからね、亜子ちゃんもその中の1人なの。あたしの楽しみの1つなの・・・だから教えられないわ」

「・・・そう・・・ですか」

とても腹が立った。

あたしが呪いのソフトを渡されたことに酷く怯えているのに

もしかしたら ゲームオーバーになって死んでしまうかもしれないのに

そういう犠牲者達の運命を 亜里砂さんは前々から知っていながらも教えない

教えないどころか・・・きっと笑いながらその様子を見ているに違いない

そして 今あたしが考えていることも面白がって見ているに違いない

ああ・・・考えただけで腹が立つ!

こんな家 早く出て行こう!

「どうもお邪魔しました。帰ります」

ソファから立ち上がり、亜里砂さんにお辞儀をすると、足早に玄関の方へ歩いた。

しかし、部屋のドアを開けた瞬間

 「・・・おやおや、お客さんかな?」

             え!?

ドアの向こうに人が居ることに、気がつかなかった。



気配も何も感じなかった・・・

普通なら、どんなに静かに近づかれてもすぐに気がつくのに・・・

顔を上げてドアの向こうに立つその人を見ると

心拍数が一気に上がるのを感じた。

その人も

あの 脳裏に浮かんだ ヒゲだらけの男――
「ああ・・・榎木(えのき)さん、休憩ですか?」

ヒゲだらけの男を見るなり、亜里砂さんはそう言って微笑んだ。

男も、亜里砂さんに微笑み返す。

「ああ。もうすぐ完成するんだよ、あのソフトが」

ソフト?

その言葉を聞いて、時が止まったかのようにかたまった。

多分・・・呼吸さえ忘れていたと思う

亜里砂さんは嬉しそうに笑った。

「本当ですか!?やっと完成するんですね。あたしもやってみたいなぁ」

「ふふ・・・君にクリアできるかな?」

「きっとできますよ。だって1の方はクリアできましたし・・・10年前のあたしより、今のあたしの方がもっと余裕でクリアできそうな気がするんです」

「じゃあ、後でやってみるといい・・・呪いのソフト2を最初にやる記念すべき人が君だとはね」

             呪 い の ソ フ ト 2

「嘘!?」

頭で考えるより先に、言葉が先に出てしまった。

突然出したあたしの大声にも関わらず

2人は知っていたかのようにゆっくりと視線をあたしに移した。

まあ、亜里砂さんは知っていたんだけどね・・・。

榎木というヒゲだらけの男は、あたしを見つめてこう言った。

「おや?何処へ行ったかと思ったら・・・君に憑いていたんだね」

「・・・え?」

榎木さんは、あたしの鞄をちらりと見ると、再びあたしを見つめ

「・・・そうか!ソフトも君が持っているのか。いやぁ。嬉しいねぇ」

そう、嬉しそうに笑いながら言った。

なんで知ってるの?

なんでソフトを持ってること・・・知ってるの!?

亜里砂さんは予知能力でわかるだろうけど

このおじさんにそんな能力はない・・・はず

それに・・・『呪いのソフト2』って

このおじさん・・・何者――?

そんなあたしを見て亜里砂さんは面白そうに笑った。

そして、榎木さんのところに歩み寄った。

「・・・亜子ちゃん、紹介するわね。この人は榎木隆介(えのきりゅうすけ)さん。












   呪 い の ゲ ー ム を 創 っ た 人 よ 」
呪いのゲームを・・・創った・・・人・・・

そうか

この人が・・・そうなんだ

亜里砂さんの親友を殺したのも

大輝君を殺したのも

七海があんなになってしまったのも

ぜーんぶ

この人のせいなんだね

怒りがこみ上げてきた。

全ての原因はこの人だから・・・。

この人を殺したいくらい

 憎 い 。

憎しみと同時に、涙も溢れる

肩を震わせながら、必死に声をはり上げた。

「・・・どうして・・・どうしてこんなゲームを創ったんですか!?あたしの知り合いも・・・あなたの創ったゲームのせいで死にました!時機に友達も死にます・・・っ!
あなたのせいで何人死んだと思ってるんですか!?あんたは・・・あんたは最悪の殺人者だ!!」

思ったことを全て隠さず口に出してしまった。

何人・・・このゲームを創った人を憎んだだろう

何人・・・このゲームのせいで尊い命がなくなってしまっただろう

何人・・・このゲームのせいで涙を流しただろう

この人に ゲームの犠牲者と同じ目に遭わせてやりたい。

大分時間が経ってから、榎木さんは静かに口を開いた。

「何の為に創ったかって・・・?僕はこの人間だらけの世の中に何か面白いことをやりたかった、ただそれだけだよ。
ああいうのを創るとさぁ、人間の醜い部分がむき出しになってね・・・それを見るのが面白いんだよ」

「人間の・・・醜い部分・・・?」

「そう。あのゲームを手にしてゲームオーバーになった者は、他人のことなんか一切考えずにあのソフトを回すだろ?
他にも色々あるけどね・・・最終的には自分のことしか考えてないんだよ。みんな綺麗事ばかりさ」

「・・・」

「・・・だけど、10年前にソフトを壊したあの子には天晴れだね。なかなか勇気のある女の子だったよ」
榎木さんはテーブルに置いてあるコーヒーに目をやると、ゆっくりとコップに手を伸ばし、飲み干した。

「やっぱり亜里砂くんの入れるコーヒーは旨い」

そう言って亜里砂さんに微笑んだ。

亜里砂さんも嬉しそうに微笑み返し、榎木さんの隣に寄り添った。

榎木さんは亜里砂さんの肩に手を置くと、再び口を開いた。

「・・・ソフトはね、最初から2つ回ってたんだ。」

「え?」

「2つとも全く同じソフトだよ。みんな1つしかないと思ってたみたいだが・・・亜里砂くんの親友がやったことは無駄ではない。少なからず犠牲者を減らせたからね」

亜里砂さんの親友の話が出ると、亜里砂さんは遠くを見つめるような目をしていた。

昔を思い出すように・・・床をぼーっと見つめていた。

そして、口を開いた。

「由香のような子が現れれば、日本中の国民はソフトの恐怖から解放されるわ。今亜子ちゃんが持ってるソフトと・・・最新版のソフトを壊せばね」

・・・ソフトを・・・壊す

「亜子ちゃん、ちょっとおいで」

亜里砂さんは、あたしの手を引いて部屋を出た。
亜里砂さんは廊下の奥にある部屋のドアを開けた。

真っ黒のカーテンが窓を覆っていて、完全に日光を遮断された真っ暗な部屋

パソコンの画面の光で、なんとか周りが見られる感じ

「さあ、亜子ちゃん・・・入って」

亜里砂さんはそう言いながらドアの横であたしが入るのを待つ。

だけど

だけど

だけど

 入 れ な い

この部屋から・・・感じる

七海に感じたもの・・・

七海から感じた時よりも とてつもなく強い

今すぐこの家から逃げ出したい

危険すぎる

ヤバイヤバイヤバイ

この気配のせいなのか

あたしの後ろに憑いてるモノも妙に騒ぎ出す

背後の気配と目の前に広がる嫌な気配

 逃 げ 場 が 無 い 。

ヤバイヤバイヤバイヤバイ

まじでヤバイ

そんなあたしの様子を、亜里砂さんは楽しそうに見ていた。

亜里砂さんの中では、これも予知通りのことなんだ・・・。

そして、あたしに訊いた。

「・・・感じるの?」

「感じすぎます!ここ、やばいです!帰らせてください!!」

即座に答えた。

それほどヤバいよ

霊感全然ない人でも・・・この嫌な気配は感じるはず

それほど強いもん

亜里砂さんはクスクス笑った。

「・・・へぇー!そんなに感じるんだぁ。亜子ちゃん、本当に霊感とかそういう系優れてるのね」

「・・・そういう家系です!いいから帰らせてください・・・!」

「フフ・・・ここでね、呪いのソフトをつくってるのよ」

            え

此処が

此処が呪いのゲームの製作所・・・

そうか

どうりでこんなに嫌な気配がある訳だ

そうしている間に、無理やり部屋に押し入れられた。

部屋にはいると、部屋の気配も、あたしの背後の気配もさらに増す

あまりの気配で・・・気が可笑しくなっちゃいそう

ヤバイ・・・

あたしは過労自で亜里砂さんに訊いた。

「あたしを此処に入れて・・・何か意味があるんですか?」

「もちろん。まあ、正確に言うと・・・貴女に憑いているものをこの部屋に入れたかっただけ」

「・・・え?」

「貴女に憑いてるモノ・・・それはゲームオーバー者を殺す役目の霊・・・」

「・・・やっぱ・・・り・・・」

「亜子ちゃんなら薄々分かってると思ったわ。・・・その霊が貴女に憑いたってことはね・・・貴女を気に入っちゃったのよ」

「・・・波長が合ったからじゃないですか?」

「それもあるわ。だけど、貴女は普通の人以上に優れているモノがある。ずば抜けて優れてる」

「・・・何が言いたいんですか?」

亜里砂さんは一度口を閉じた。

そして、満面の笑みで再び口を開き、言った。

「亜子ちゃん・・・私たちを一緒に呪いのゲームを 広 め な い ? 」

「 はぁ? 」


   呪 い の ゲ ー ム を 広 め る ?
な・・・

「何言ってるんですか!?日本を潰したいんですか!?」

亜里砂さんの神経が、信じられない

あり得ない

あたしがどんなに睨んでも

あたしが何を言っても

亜里砂さんには無駄だって分かってた・・・

「別に・・・日本を潰したいわけじゃないわ。ただ広めたいだけ。日本中・・・ううん、世界中に」

「せ・・・かい中・・・?」

「地球の歴史に残るくらい・・・大きなモノにしたいの。私達の存在を大きくしたいの」

「・・・そんなことさせない・・・そうなる前に警察に通報するから!」

「警察?あははははははっ!警察ですって~!?」

亜里砂さんは腹を抱えて笑った。

お淑やかな亜里砂さんのイメージが崩れた瞬間だった。

「警察なんてね~・・・こんなソフトで人が死ぬなんて『ありえないこと』としてるのよ?このソフトの呪いが本物だってやっと気づく人はゲームオーバーでどうせ死んじゃうもの。無駄無駄」

「・・・・・・」

「亜子ちゃんは霊感がすっごく強いから、ゲームをやる前から呪いの強さが分かってるもんね。亜子ちゃん・・・ここからが貴女の運命の別れ道よ」

「・・・え?」

「ゲームの関係者になれば、命を助けてあげるわ。関係者にならなかったら・・・それはそれでいいけど、ゲームをクリアしなきゃ命は助からないわよ。・・・どっちを選ぶ?」

ゲームの関係者になれば・・・生きていられる

ならなければそのまんま・・・クリアしなきゃ命は助からない


生きた心地もしないまま帰宅した。

あの後、亜里砂さんはこう言い残して部屋から出て行った。

『まあ・・・今すぐ決められることじゃないわよね。明後日またここにおいで。

 待 っ て る か ら 。 』

「はー・・・もう・・・いやっ!」

自分の部屋に入るなり、目の前に転がっていたぬいぐるみをおもいっきり投げ飛ばした。

鞄を乱暴に置き、ベッドに飛び込んだ。

『ゲームの関係者になれば、命を助けてあげるわ。関係者にならなかったら・・・それはそれでいいけど、ゲームをクリアしなきゃ命は助からないわよ。・・・どっちを選ぶ?』

亜里砂さんの言葉が頭の中で何回も繰り返される

どうしよう

ドウシヨウ

ちらりと鞄に目を移した。

あの嫌な気配でいっぱいの鞄

本当なら・・・触れたくない

今すぐにでも燃やしてしまいくらいの鞄

だけど

「・・・わずかな可能性にかけること
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