THE GREATEST BATTLE

蟹玉の降臨から、時は過ぎ、既に黎明に至ろうとしていた。
されど、未だ太陽は昇る気配すら見せず、世界は闇に包まれたまま。
今か今かと待ち続ける草木達は知る由もない。
この世界の太陽、及び月と数多の星は一夜にして滅び去ったのだということを。

そんな闇に包まれた世界の中、二人の人間が天空の城の玉座の間で天と地に分かれ対峙していた。
玉座にそびえる方、目の上できれいに切りそろえた前髪が目立つ執事服の少女が口を開く。

「一人で来ましたか、なるほど」

扉を潜ったのは5人、目の前にいるのは1人。
少女は瞬時にそれが意味することを理解した。

「私の足止めに最強の戦力を割き、後はゲートの破壊に向かいましたか」
「ああ」
「いいのですか? 数の差は誰にも覆せない。ライダーロワ最終回よろしく、ブッチギルンジャーもジエンドですよ」
「あの時残ったライダーは3人。彼らは4人だ。なら、勝つのは俺たちだ」
「ふふ、貴方の存在そのもののように出鱈目な理屈ですね」

余裕を感じさせる笑みを浮かべ、少女は玉座を立ち、悠然とした足取りで階段を降り行く。
彼女は、王だ。
殺し合う道化達を天井から見下ろしていた傲慢たる女帝。
その右手に3角に近い形をしたアイテムを握りしめて。
かつん、かつんと一歩ずつ、地へとその身を近づけていく。

「お願いだ、wiki管理人! もうやめてくれ!!」

男もまた階段を一歩一歩踏みしめて登りながら声を上げる。
彼の胸に飛来するのは自らが殺した少女と、救えなかった少女の面影。
彼女達と起源を同じくする少女と、彼は戦いたくはなかった。
けれど、男の悲痛な叫びを耳にしても、少女の歩みは止まらない。

「私は主催者です、影の繋ぎ師。退くわけにはいきません」

古今東西のパロロワの主催者達。
彼らはどれだけ自分が不利になっても決して退こうとはしなかった。
例外的な主催者としてよく名を挙げられる螺旋王やマルク、ピエモンBしかりだ。
逃亡も、対主催不殺宣言も、対主催化も。
全て、彼らが真に望んだことを叶える為の手段だったのだから。
最後までぶれることなく彼らは己を貫いた。
故に。
wiki管理人は退かない。
ここで書き手である彼女が逃げれば、他ロワの主催者に顔向けできない。
主催者として、書き手として。
最後まで主催者になり切るのだと。

「……わかった。なら、俺が、貴女を、倒し、このロワを、終わらせる!!」

階段の中ごろの少し開けた場で二人の視線が交差する。
されど彼らは正義の味方と、人殺しをも厭わぬ主催者。
その心が交わることは、ない。

繋ぎ師の腰に現れるは王者のベルト。
右手を天に、左手を地に。
両の手で円を描き、胸の前で十字に組む。

管理人が掲げるはエスプレンダー。
内封されていた闇が溢れ出る。
呼応し脈動するデビルラピュタガンダム。

「変んんんんんんっ、身んんんんんんんんっ!!」
「ゼストオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「とうっ!!」
「デュワ!!」

奇しくもポーズの後二人は共に天高く跳躍。
ラピュタを飛び出し、姿を変えた二人が戦場たる無人のロワ会場の大地へと降り立つ。
かくして仮面ライダー対ウルトラマンの夢の対決が始まる……。


▽ ▲ ▽


ゼスト化に伴いDG細胞の手より解放されたラピュタ。
その通路を駆けるブッチギルンジャーの幾多もの障害が立ち塞がる。
感電一人に蹴散らされたことに焦りを覚えた管理人の手で、デスラピュタロボに加え幾つもの戦力が追加されていた。
機体ともどもネシャーマ化されたGR1のあゆやニコロワのコイヅカ達。
不完全なレプリカとして蘇らされたシグナムやピエールといった各ロワのトップクラスのマーダーズ。
そんなwiki管理人に操られた死者と人形の洪水にたった4人で挑む男たち。
目指すゲートはまだ遠い。


▽ ▲ ▽


「はあああああああああああああああああああああっ!!」

変身と同時に巨大化した影の繋ぎ師が真っ直ぐに拳を突き出す。
仮面ライダーの脚力に加え、強化外骨格『アルレッキーノ』のバーニアを全開に蒸かしての踏み込み。
黒光りする鎧の背で靡くマフラーとフレアはその速度も相俟って羽を思わせる。

対するwiki管理人は不動。
棘に覆われた無骨な鎧を纏う繋ぎ師とは違い、彼女は一切の防具を身につけてはいなかった。
全裸としか現わしようが無い姿だが、僅かたりとも力弱さも卑猥さも感じられない。
何故なら稲田瑞穂の顔をした真聖久遠たる今の彼女は神だからだ。
完全無敵の存在に身を飾る服も、守る鎧も、不要也。

繋ぎ師の一撃を右腕一本で容易く掴む管理人。
ならばとばかりにゲル化してロックを外す繋ぎ師を、反撃の衝撃波が襲う。

「さあ………歌いなさい、ゼスト! 禁じられた歌を! 停滞する世界を破壊し、新生へと導くその歌を!」

空高く浮かび上がったゼストがその口を開く。そして――――――

「ラァァァアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーー……!!」

紡がれるは破壊と創生の歌。
パロロワ界を調律せんとする歌が文字通りD-5の空をガラスのように砕きつつ、繋ぎ師が立つE-5の大地を打つ。

「眼には眼を、音楽には音楽をだっ!!」

物理攻撃が効かない身体とはいえ、衝撃でバラバラに吹き飛ばされれば再生までに隙は生じる。
故に繋ぎ師はゲル化を自ら解除し、右腕に現れた暗黒龍召機甲ブラックドラグバイザーにカードをベントイン。

―― TRICKVENT ――

電子音と共に繋ぎ師が分身する。
その数、なんと八人。
迫りくる女神の歌声に、各自手にした異なる楽器を打ち鳴らす。
太鼓に弦楽器に管楽器と一見出鱈目な組み合わせによる演奏。
人はそれをオーケストラと呼ぶ。

「音撃重奏・響天動地!!」

ゼストの歌声が天に遍く響くものならば、繋ぎ師軍団による合奏は大地を揺るがすものだった。
重く響く太鼓の音を中心に、弦楽器と管楽器が間奏を務め、途切れることなく音波が発生。
束ねられ天上へと放出された衝撃の余波に、大地が悲鳴を上げ砂塵と化す。

「ラァァァアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーー……!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

空と大地の狭間でぶつかり合う歌と曲。
世界の枠を軋ませる両者の一撃のその傍らで、天に黒き翅が舞い、地に黄金の光が走る。
するとどうしたことであろうか?
砕け散った筈の空が、消滅した筈の大地が、再び本来の姿と質量を取り戻したのだ。

ぎりぎりまで粘るつもりの管理人と、仲間を守ろうとする繋ぎ師。
両者ともに敵を滅ぼすことは望んでも、世界に負荷が掛かり、結果崩壊して全滅することは望んでいない。
しかし、眼前の敵の力はどこまでも強大で出し惜しみする隙など存在せず。
破壊と創生を両立しつつ戦うことを二人は選んだのだ。

生と死を繰り返す世界の中で、鬩ぎ合う力と力。

「アアアアアァァァ……」
「いよおおおっ、っはあああああああああ!!」

時が進むにつれ、徐々に繋ぎ師が押していく。
神と化したWiki管理人は呼吸など必要とはしない。
が、歌という人の文化を用いて闘っている以上、息継ぎしないわけにはいかないのだ。
その隙を突かれ、清めの音を全身に受けたゼストの歌が、遂に止まる。

「スカイキイイイイイイイック!!」

追撃とばかりに分身を解いた繋ぎ師が飛翔し、必殺の蹴りを放つ。
だが、その一撃は体勢を立て直したゼストにより、思わぬ手段で防がれることとなる。
ゼストは自身を錐揉み状に回転させ、キックをかわし、カウンターの右拳を繋ぎ師へと打ち込んだのだ。

「っな!?」

キック殺し。
wiki管理人とは何の縁もない筈の仮面ライダーに登場する怪人の技そのものだった。

「先程のオーケストラ、『S』で始まらないライダーの技がいくつか見られました」

巻き込んだビルを倒壊させつつ、F5エリアまで吹き飛ばされた繋ぎ師を悠然と見下ろしつつwiki管理人は語る。

「恐らく進化したことで貴方は名前に縛られず全ライダーの力を使えるようになった。違いますか?」

自身も響天動地によるダメージを受けていた筈だが、白銀のボディには傷が一つも残っていなかった。
代わりとばかりに目立つのは、先刻までなかったはずの身体を走る黒いライン。
真聖久遠よりだった外見はたったそれだけの変化で光の巨人を思わせるものとなっている。
無論、666が健在な今、ディスレブを吸収したわけでは無い。
これは、もっと別の方法による進化だ。

「wiki管理人、お前は……っ!!」

身を起こしつつ、マイティアイ・Ωによりゼストを解析した繋ぎ師が、驚くべき結果に唸る。

――進化の秘法@DQ4、超魔生物@ダイの大冒険、改造手術@昭和ライダーetc。

本来スパロワ出典のゼストには使われていない筈の強化技術がこれでもかと使用されていたからだ。

「うふふふ! 驚きましたか? 貴方が全ライダーの力を使えるように、私は全ロワに由縁のある力が使えるのですよ!」

あははははははははは!!
自らの得た力を誇り、wiki管理人が笑う。
素晴らしいと。
これこそが衰退へと向かいうるパロロワ界をあるべき道に導く力だと。

「今の私はゼストを超えたゼスト! 超神を超えた超神!! ライダーロワ風に名乗るのならそう……」

ハイになったWiki管理人は一度大きく翼を羽ばたかせ、大声で名乗りを上げる。
未だフォーグラー内部で戦う者や、ラピュタ内部に潜ったブッチギルンジャーにも刻まれるようにと。

「エクシード。エクシード、ゼストオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

瞬間、その背の翼から放たれた何千何万もの刃が、繋ぎ師を飲み込んだ。



▽ ▲ ▽


イクシードゼスト。
告げられた名にブッチギルンジャー達は敵の強大さを再確認する。
しかし、彼らは繋ぎ師の救援には向かわず、ゲートへの道を閉ざす者達の排除に専念する。
ナコト写本を手にしたフランドールレプリカにより齎された大破壊から仲間を庇ったチートブルーはもう居ない。
それでも彼らは未来の自分を信じ、課せられた役目を果たさんとペースを落とすことなく進み続ける。


▽ ▲ ▽


数は、力だ。

獄符「千本の針の山」。
ゲート・オブ・バビロン。
シン・ヴァルセレ・オズ・マール・ソルドン。
ブラック・レネゲイド。
アンリミテッド・ブレード・ワークス。

パッと思い浮かぶだけでも、幾つもの剣を降らせる技はこれ程にもある。
wiki管理人は躊躇することなくいっそ過剰ともいえるこれら全ての特性をさっきの一撃に詰め込んだ。
そこまでしなければ倒せないと踏んだからだ。
いや、違う。
正しくは、そこまでしても、倒せない。

一陣の風が吹き抜け、舞い上がっていた砂塵を晴らす。

影の繋ぎ師は攻撃前となんら変わることなく、大地に雄々しく立っていた。
変わったのは彼では無く、空の方だ。
永遠に続くと思われていた夜の闇は。
本来天に座している地の星の空の主に掃討されていた。
即ち、無数の月と太陽に。

「月は東に、日は西にとは言いますが、これは……!!」

wiki管理人の眼を極光が焼く。
繋ぎ師をあれしきのことで倒せるとは思っていなかったが、彼が取った無限の剣への対抗策は彼女の想像を遥かに上回るものであった。
繋ぎ師は次元を切り裂き召喚したのだ、己が力の源である太陽と月を。
それも一つや二つでは無くいくつもいくつもいくつも。
こうなってはどれだけダメージを負ったとしても、致命傷でない限り、繋ぎ師は一瞬で再生する。
そもそも存分に陽と月の加護を得た今の繋ぎ師に叩き落とされずに命中した剣はごく僅かしかなかった。

「おばあちゃんが言ってた、太陽と月が無いならある場所から持って来ればいいって」
「どんなおばあちゃんですか!! ってか人それをドロボウと言うのですよ!!」

星をも盗む大泥棒顔負けのことをやってのけた繋ぎ師に、突っ込みを入れる管理人。
繋ぎ師は、彼女が未だ眩しさにやられ隙を晒しているうちにカリスアローを連射してくる。
瞬時に編んだフォトンストリームの盾が全弾弾くも、管理人は接近を許してしまう。

「フォトンストリームが、ウルトラマンガイアだけのものだと思うな!!」

―― 143 ENTER Blade Mode ――

フォトンブラッド流動回路<フォトンストリーム>を内蔵した砲身から黄金の光が吹き出し刃と化す。
赤と黒と白で彩られた柄を握り、繋ぎ師はフォトンフィールドフローターを起動して上空へと舞い上る。
ライダーロワ1stで終ぞ陽の光を浴びることの無かったその剣の名は、奇しくもフォトンを壊す物――フォトンブレイカーと言う。

「ブレイカアアアアアアアアアア、エエエエエエエエエエエエエエエエエンド!!」
「っく、っがあああああ!!」

一閃。
攻守においてまさに最強の矛であり最硬の盾でもある筈のフォトンシールドが、バターの如く容易く引き裂かれる。
盾だけでは無い、繋ぎ師の繰り出した斬撃はゼストの右腕ををも斬り飛ばしていた。
痛覚こそ遮断しているものの、腕を斬り飛ばされたという事実にショックを受け思わず叫び声を上げてしまう。
その痛みすら心地よいとwiki管理人は思う。

「私を、舐めるなああああああ!! 殖装!!」

地に落ちた右腕が闇に解けて消滅。
同時にコアメタルの機能を兼ねたカラータイマーが輝きゼストの腕が再生する。
ゼスト本体が再生能力を失ったのなら外部から補えばいい。
そう考えてKyonで有名な0号ユニットを装着していたのだ。

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄あああああッ!!」

両の手に形成した光子の刃で怒涛の連続突き。
再生するのならその速度を上回って攻撃すればいい。
wiki管理人が行きついたのはシンプルかつベストな答え。
だからこそ繋ぎ師もまた同じ答えを出していた。

―― FINAL VENT ――

「来い、ベノスネーカー!!」

突如、繋ぎ師の背に暗紫色の大蛇が現れ、鎌首を持ち上げる。
その動きに合わせて繋ぎ師もバク転の要領で蛇の口元へと跳躍。
身体をしならせたベノスネーカーに打ち出された繋ぎ師は一本の矢となり拳の壁に激突。
負けじと宙で身を捻り壮絶な連続蹴りを見舞う!

怒涛のごときお互いの猛攻。相手だけを見つめ、全力で攻め続ける。
下がることは今は不要。ただ、前に出て証明するのみ―――己の信念を!

繋ぎ師の左足が上からゼストの右腕を砕く――ゼストはフォトンを纏った左の拳を叩き込む。
右足が消滅するも再生。そのまま脇腹を狙う――復元した右腕でガード。生成した光の剣で切り飛ばす。
斬り払いによりガードが空いた隙を逃さず左足を撃ち込む――抉り取られた左半身から触手を生み出し、波状攻撃を仕掛ける。
回復した両足で片っぱしから蹴り落とすとともに足からタキオン粒子の刃を発生――首が宙を舞うもコアメタルは無傷。故に実質ゼストは無傷。
三千六百分の五秒が経過。チャージを終えた砲身を向ける――腕に光を貯め交差すると共に胸部装甲の下部器官を展開。

「天上天下光王一撃必殺砲!!」
「メェガ、スペシウムスマッシャー!!」

破壊・被弾・再生のエンドレスワルツを破壊・勝利のマーチとすべく、刹那に稼いだ時と距離で真の必殺技を二人は撃つ。
鎧の戦士の巨砲より迸るは全てを飲み込む極光の洗礼。
超越せし女神が生み出すは百万度を超えた悪魔の熱線。
黒と白の破壊光線がせめぎ合い、世界を無色に染め上げる。

スパーク。

爆ぜるビックバン級のエネルギーを物ともせず、再度ぶつかり合う二人。
絶対的な攻撃力と無限の再生力を兼ね備えた彼らの戦いはまだまだ終わりはしない。


▽ ▲ ▽


ラピュタの壁を穿つ破壊の嵐に、ラピュタごとチートブラックとイエローが揺さぶられる。
明らかに城の耐久力を上回っていた威力だったが、繋ぎ師が直撃寸前にタイムベントで直撃前に時間を戻し、
破壊力の大半は続けてwiki管理人が撃ち出したイレイザーヘッドにより、既に最終回を迎えたニコロワの舞台へと逸らされた。
ラピュタだけなら自分達を巻き込んででも破壊された方が良かったが、そうなると自然とフォーグラーも滅んでいた。
心の中でネコミミスト達の無事を祈りつつ、戦いを再開する二人。
チートシルバーは殿として残り、今も巨大化して敵を一人で食いとめてくれている。
今日は俺と俺とでダブルライダーだな。
そう言って二人は笑みを交わし。
遂にゲートのある部屋へと辿り着いた。


▽ ▲ ▽


どれだけの時間、互いの力をぶつけ合ったことだろうか。
wiki管理人は笑みを浮かべていた。
これだ、と。
これこそがロワだと。

書き手ロワ2ndが始まって以来、ずっと、ずっと、彼女は見てきた。
天空の城から地を這う者達を。
殺し合いに興じ、または否定し、あるいは翻弄される書き手達を。
しかしそれは決して虫けらを嘲笑う王の視線を以てでは無かった。
農民たちが馬鹿騒ぎするのを羨ましそうに見つめる、しがらみに縛られた孤独な王。
同じ王としての例えならこちらの方が真実を良く表していた。
殺し合いに混じりたいとは一見酔狂な考えに思えるかもしれない。
けれども、wiki管理人もまた書き手としての思い出を持つ人物なのだ。
参加者達が描く命という名の物語を収集し、読めば読むほど彼女の中の自分も混ざりたいという気持ちは大きくなっていった。

紡ぎたい、自らの物語を。

理想はあった。
円熟期に入ったパロロワ界を救いたいという全てを賭けてまで実現したい願い。
誰が何といおうと彼女はパロロワを愛していた。
自身が全ての罪と汚名と罰を引き受けてまで、悪魔の計画を実行する程に。
そして計画の成功には自身の目的が悟られないよう表舞台に出ることを控える必要があって。
だから冷静になれるよう、自らの書き手としての大部分を占めるGR1stとアニロワ2ndの分の思い出を切り離して、参加者として送り込んだのだ。
肥大化しだしたGR2ndの分もまた、七氏の力を借り後付け設定を施してまで分離させた。
それでも。
wiki管理人に残ったロボロワ書き手としての、ksk書き手としての、ラノオルタ書き手としての、SRPG書き手としての思い出が。
訴え続けていたのだ。

これで、いいのかと。
参加者として生き足掻きたくは無いのかと。

何度も、何度も、何度も。
wiki管理人は度重なる誘惑に耐えた。
ある時は強引ともとれる大量のジョーカーを召喚することで、表に出ることの損害をプラマイゼロにし。
ある時は読み手に化けて感電の動向を探りつつ血を啜り、殺し合いで傷つくことへと想いを馳せ。
またある時は回収したミニサスペリアの持つ殺し合いのメモリーを、疑似体験し自らを慰めていた。

そんな、まどろっこしいこととも、もうお別れだ。

「うふふふふふ、あはははははははは!! そうですよ、これでこそラストバトル!! それでこそ影の繋ぎ師!!」

眼前には彼女の全てをぶつけ得る強大な敵。
ここに来たのが繋ぎ師以外の誰であっても、無傷のwiki管理人とは渡りあえなかっただろう。
全ロワ最強のラスボスと名高いゼストをも上回るイクシードゼスト。
その相手をまともに務めることができるのは、全てをぶっちぎる彼を置いて他に居ない。
つい数秒前まで海で興じていた水中戦は危なかった。
水の民とマリントルーパーの力を全開にして戦ったが、マーキュリー回路の前にあっさりと敗退してしまった。
自らが書いたことのあるロワ以外の由縁のものは完全には使いきれないとはいえ、ああも秒殺されるとは。
そのことに怒りを浮かべるどころかwiki管理人は笑みを深くした。

「最早、圧勝ではつまらなすぎる!!」

ロワの醍醐味とは何か?
何が起きるか、誰が生き残るかがわからないところだ。
wiki管理人は楽しんでいた。
自らの命が脅かされているのに、そのことを最も楽しんでいた。
傍観者であり続けなければならなかった彼女は、今確かにロワに書き手として登場人物として、物語に参加できていることを実感しているのだから。
ダイダルゲートの起動ボタンは読み手に預けた。
wikiに収録された話しか読めない管理人とは違いK.K.は無制限である程度先読みが効く。
予想外の事態が起きるにしろ、ダイダルゲートが破壊されるにしても、K.K.なら一歩先んじてフィードバックを終わらせられる。
これで心おきなく戦える。
ロワを正す者としての彼女の仕事はもう終わったのだから。
後はラスボスとして立ちはだかるのみ!!

「天上天下光王無双爆砕剣!!」
「精霊脚うううううううううううううう!!」

ここ数分で何万回も繰り返した攻撃の応酬に飽きることなく胸を高鳴らせ、wiki管理人は自分自身のバトルロワイアルを書き続ける。
いつしか主催者として取り繕っていた口調は、彼女本来のものへと戻っていた。


▽ ▲ ▽


無限再生を続ける後藤戦と物理的限界を超えた怪力神父ハックルボーン。
正親町天皇による核ミサイルを防ぎきったチートブラックとイエローの前に、最強の矛盾コンビが姿を現す。
まともに戦えば、時間を浪費するのは目に見えていた。
どうする?
イエローがブラックに問う。
こうする。
ブラックは行動を以て答えた。
ガシリと暴れる二人の怪人を抱え、ラピュタの壁を突き破り、空に身を投げ出すブラック。
残されたイエローは一度眼を閉じた後、ゲートへとボルテックシューターを向ける。
そんな彼に最後の刺客が立ち塞がった。


▽ ▲ ▽


ZX式錐揉みシュートで起こした竜巻の檻でゼストを捕え、地に引きずり降ろす。
空ではゼストに利があるが大地では仮面ライダーの方が上だ。
繋ぎ師は一気に攻勢に出る。

―― FINAL VENT ――

「ドライブディバイダアアアアアアアアアッ!!」

牛よりもヤギやトナカイに外見は近いレイヨウ型モンスターの大軍が一斉にwiki管理人へと殺到する。
されどその牙は一つたりとも届くことなくギガゼールの首は斬断された。
DQロワ版皆殺しの剣。
漆黒の炎に包れた伸びゆく刀身が、モンスター達の命を一つ残らず刈ったのだ。
更にwiki管理人のターンはまだ終わってはいなかった。
皆殺しの名に恥じず影の繋ぎ師までも断ち切らんとする。
咄嗟にH-5エリアの大地を畳返しの要領で剥ぎ取り、楯として斬撃を防ごうとするも魔剣の勢いは止まらない。

「薙ぎ払え、星ごと奴を!! 一閃 星薙の太刀!!」

業ッ!!
限界まで伸ばされたゼストのサイズに合わせ巨大化した皆殺しの剣がG-3、H-4の地表ごと大地の楯を削り行く。
まずいと判断した繋ぎ師は楯を捨て跳躍。
空中から必殺の蹴りへと動作を繋げようとして。
見た。
彼が楯を棄てたように、剣を捨てる女神の姿を。
何故?
答えは一つ、刀身を振り切るまでに晒すことになる隙をキャンセルする為だ。

「大地手裏剣!!」

加えて格闘ゲームやテイルズシリーズにおいて、キャンセルとは次の技を一切の間もなく連ねることを意味する。
あらゆるロワの力を宿したイクシードゼストは、星薙の太刀で切り離した大地を銀河手裏剣に見立てて繋ぎ師へと投擲したのだ。
繋ぎ師もむざむざやられるつもりはなくカードをベントイン。
だが、顕現したゴルドフェニックスは、直後主を襲う手裏剣を壊す間もなく黒き不死鳥に喰らい殺される。
続けてサバイブ化したドラグブラッカーもしかり。
シン・クリア・セウノウス バードレルゴと相討ち、その役目を終えた。

「攻撃動作中に別の行動を、しかも二重でこなすだとッ!?」
「ボスキャラにはよくあることですよ、影の繋ぎ師!!」

RPGのラスボスは腕や足が本体とは別にHPが設定されており、一個一個が別行動することはざらにある。
現にスーパーヒーロー作戦においてゼストの羽にも適用されていた。
そしてボスキャラのもう一つの定番もゼストは備えていた。
二回行動。
大地というあまりにも巨大な質量兵器でカウンターを入れられ宙でバランスを崩した繋ぎ師。
wiki管理人が狙い撃つなら今を置いて他には無かった。

「パロロワ界の古き因果に滅びを! 新たなる始まりを! これが―――― 」

新たに肩に生み出した4本の腕がH-2、3、7、8エリアの大地を巻き上げ宙で掻き混ぜる。
インフィニティ・ビックバン・ストーム。
本来なら銀河を二つ対消滅させることにより、宇宙開闢の力ビッグバンにも匹敵するエネルギーを放つ技。
予約被りのtu4氏により宇宙が破壊された今、代用されるはロワの大地。
大地と銀河。
一見あまりにもスケールが釣り合っておらずwiki管理人のやっていることは愚行に思える。
しかし果たしてそうだろうか?
この書き手ロワの舞台にはあらゆるロワの因子が、そして参加者達の生と死が沁み込んでいる。
多くの書き手が血と汗を注ぎ綴られた世界の数々が、その何千倍の読み手を魅了した物語が、高々銀河に劣ると?

否。

否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否
否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否
否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否
否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否
否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否否

断じて否!!

「ゼスト・ファイナル・ビックバン・ノヴァアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

創世の産声を上げ、渦巻く光が耐えきれなくなり自壊する四本の腕から解き放たれる。
其は世界の雛型。
古き世界を押しつぶし、上書きする新たな世界そのもの。
まず世界より音が失われた。
声高らかに叫んだ技名も繋ぎ師に届くことは無い。
次に失われたのは色だった。
灰色に染まった人、空、建物。
単一色で塗りつぶされた世界はいつしか己が輪郭も忘れ解けて溶ける。
灰色の海。
肌をなぜる風も、鼻孔を擽る香りも存在しない死の世界で。
最後に失われたのは。

「……っ!!!!」

命、だった。
避けようと懸命に空を駆けようとする繋ぎ師。
が、彼の身体は意に反して一歩も動くことは無かった。
動くという概念が破壊されていたから。
逃げ場になる空間が飲み込まれていたから。
相殺しようにも白紙に帰した世界ではありとあらゆる事象を起こすことはできなかったから。
何一つ抵抗することは許されず、世紀王は、創世の御技の前に、あっけなくその最後を遂げ――



世界よりも速く新生した。



「っ何!?」



創世に全てのエネルギーを注ぎ込んだことで、巨体を維持できなくなったwiki管理人の眼に映ったのは灰色の狼へと転じた影の繋ぎ師の姿。
ゼストを強化させるにあたり様々なロワ参加者を調べ上げたwiki管理人はその名を口にする。

「ウルフオルフェノク!?」

あるライダーの正体たる死をも超えた人類の進化形態の名前を。


▽ ▲ ▽


ローズレッド・ストラウス。
ガンガンロワを停滞に追い込んだ元凶とまでされているチート吸血鬼王。
剣の一振りで直径数百mの物体数千~数万個以上を破壊し、射程は数千km以上。
マッハ20以上のビームすら余裕でかわし、驚異的な再生能力までも備えている。
それでいて、魔力によりコンピューターをもハッキングできるという正に房性能ここにあり、だ。
多くのネタキャラの怨念により生み出された彼と、彼が率いるミラーモンスター軍団の前に、遂にチートイエローは膝を着く。
左腕は斬り落とされ、自慢の装甲も罅だらけで。
けれど、砕かれた仮面から覗く瞳には未だに闘志の炎が燃えていた。


▽ ▲ ▽


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

ウルフオルフェノクの身体で色と音を取り戻しつつある空で宙返りをしつつ、繋ぎ師は瞬時に思考する。
眼下に広がる世界は彼が死ぬ前と一変していた。
ひたすら続く白い荒野に聳え立つ何本もの六角形と四角形に彩られた石柱。
白と言える範疇で複雑なグラデーションがなされた柱の森は見る角度により趣を変える。
そんな地上の光景に反して空を覆うのは一面の黒。
繋ぎ師が呼び寄せた太陽や月も送還され、今の空には一切の光源は無い。
白と黒が織りなすコントラストと浮遊階層が織りなす幾何学模様もあって圧巻と評するしかない景色だった。

残念ながらこの場で絶景に浸る人間は一人も居ないのだが。

死を避け得ないのなら死ねばいい。
死んだ後に生き返って勝てばいい。
相変わらずぶっちぎった出鱈目な理論の元、死を超え、オルフェノクして新生した繋ぎ師が新世界を前に最初に思ったことは一つ。

よかった。

変わり果てた世界の中、異様な視力を誇る眼で変わらず浮かぶ天空の城を見やる。
wiki管理人は過度の興奮状態に於いてもきちんとラピュタには味方識別マーカーを付加していたのだ。
結果この新世界になんら損傷を受けることなくラピュタもまた存在していた。

本当に、良かった。
ネコミミストさん達が無事で本当に良かった。

透視するには余裕こそ無かったが彼らなら大丈夫だと繋ぎ師は信じる。

続けて強化外骨格にアクセス、自身も含めて損傷をチェック。

――強化外骨格、99%、損傷。マイティアイ以外使用不可。
――及び、世界新生に際し、各ロワ世界、及び死者スレとの繋がりが初期化。
――復帰までに少々時間がかかると断定。
――各ロワ因子も全て消滅済み=その間ゼスト・ファイナル・ビックバン・ノヴァ使用不可。
――及び死者スレとの繋がり断裂=アルレッキーノス、沈黙。残存エネルギーでは、一度の起動が限度。
――ウルフオルフェノク化したことによりアルレッキーノ時と比べて身体能力、大幅に低下。巨大化、不可。

問題ない。
こちらを見上げるwiki管理人も今や人間サイズにまで縮んでおり、身体もボロボロだ。
ガイバーユニットによる再生も働いていないことからするに、あの一撃でほとんどのエネルギーを使いきったのだろう。
ゼスト自身は極度に脆い。
異世界から負の心をくみ上げるディスレヴすら凌ぐ、この世全てのロワの死者の怨念の力。
どれだけゼストの肉体を強化しようとも、それ以上に器を満たす力の量を増やせば、やすやすと制御できはしまい。
力の制御と、自由に動ける過度の拘束のない肉体。
エクシードゼストの体は、スパロワ本編同様、極限のバランスの上に成り立っているのだ。

故に。
再生能力を失った今、wiki管理人はウルフオルフェノクでも倒せる!!

右足を真っ直ぐ伸ばしつつ重力を味方につけコントロールメタルごとゼストを貫くコースで急降下。
アルレッキーノスとしての力をこの世界と現実世界を切り離すのに温存しなければならない以上、使える技は限られていた。
だから、賭ける。
最もシンプルで、最も数値的には弱くて、それでも繋ぎ師達が憧れたヒーローの象徴たるその技に。
全ての仮面ライダーの原点たる必殺技に。

「ライダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

wiki管理人もまたラスボスとして最後まで足掻こうというのか。
残る全ての力を振り絞り左右の手刀を十字形に交差する。
スペシウム光線。
ライダーキックと特撮で双璧を成す必殺技のポーズに。

だが、遅い。
蹴りのモーションに移行済みの繋ぎ師に対して、wiki管理人はやっと発射態勢に入ったところだ。
このまま行けばほんの僅かにだが、キックの着弾の方が、光線の発射よりも速い。

繋ぎ師の脳裏をロワで過ごした一日と少しの日々が駆け抜ける。

現実世界からの仲間達……
明るく直向きで、愛と正義と熱血に生きた若きエース漆黒の龍。
独自のペースに引き込まれてばかりだったけど、いざという時は頼りになったギャグ将軍。
出あうことも叶わなかったけど、精神世界で助けてくれたTHE FIRST、まとめキング、仮面ライダー書き手、欝のエル。

この世界の仲間たち……
ふざけていて、スケベで、人一倍仲間想いだったディーことギャルゲロワ版最速の人。
何度もぶつかり合っていたけれど、その心は誰よりも強い絆で結ばれていたバトルマスターと蟹座氏。
飄々としていて、暴走がちな自分をいつも諫めてくれた速筆魔王LX。
怖い思いをさせてしまって、でも心の弱さに負けかけた自分を応援してくれたクールなロリスキーと恋人の地球破壊爆弾No.V-7。
そして弱きものを守る剣で、自分達の志を受け継いだ新たなライダーの物語の紡ぎ手たる衝撃のネコミミスト。

次々と浮かんで行く大切な人々よ。
救えなかったtu4氏や煩悩寺、熱血王子達に、顔すら見ることのできなかった他の参加者達よ。
見ていてくれ。
この一撃で、俺が、閉じる。
殺し合いという悲劇の幕を!!

「キィィィィィィィィィィィィィイイイイイクッ!!」


▽ ▲ ▽


光が、見えた。
小さな、小さな、光だった。
ここを狙えと訴えるかのように瞬く、綺麗な黄金の光だった。
消え逝く身体よ、動け、動いてくれ。
引き金を引くだけでいいんだ。
頼む、ボルテックシューター。
闇を切り裂き、光を……


▽ ▲ ▽


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最終更新:2010年12月28日 18:52
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