輝ける明日

フォーグラー内部の、とあるエリア。
C.M.超展開はデフォなのか?は、自分で用意した椅子に腰掛け参加者を待ちかまえていた。

(誰も来ない…。)

無表情で、お茶をすする超展開。そのとき、彼女のポケットの中で携帯電話が鳴った。

「……はい。」
「私です。ガチホモです。」
「……何?」
「人外さんと愛媛さんの死亡が確認されました。すでにニコロワの書き手は私とあなたの二人だけです…。」
「……そう。」
「ナナシさんからの連絡によると、名無しさんもリタイアしたそうです。
 この短時間ですでにジョーカーが3人死亡…。予想以上にまずい戦況です。」
「関係ない。私は私の任務を全うするだけ。」
「心強いお言葉ですが…。そんなあなたにバッドニュースです。
 対主催の中で最もやっかいな男が、このままだとあなたの持ち場に到着します。
 何なら私もそちらに向かいますが…。」
「必要ない。むしろ私一人の方がいい。」

ガチホモの提案をきっぱりと断ると、超展開は一方的に通話を切断する。

(何も問題はない…。今度こそ、しっかりと足止めしてみせる。)

彼女は一度、足止めという任務に失敗している。いや、それは成功してはいたのだ。
だが彼女は、「必要最低限」の時間しか稼げなかった。
それは彼女にとって、苦い記憶に他ならなかった。

(相手が強いというのならかえって好都合…。それだけ足止めの価値が上がる…。
 来るなら来るといい。最後に笑うのは私たち…のはず…。)

◇ ◇ ◇


「くそっ、まだ他のみんなとは合流できないのか!」

影の繋ぎ師は、走り回りながら思わず愚痴をこぼしていた。
彼の能力を使えば、はぐれた仲間の位置を探ることなど簡単だ。
だがわかるのは「位置」だけであり、「行き方」まではわからない。
混沌としたフォーグラーの中、繋ぎ師は仲間の位置はわかっているのにそこに到達できないというジレンマに悩まされていた。

「…おおおおおおお!!」

そんな彼の耳に、突然謎のうめき声が聞こえてくる。
繋ぎ師が振り向くと、そこには猛スピードでつっこんでくる金ぴか親父の姿があった。

「ギャ、ギャグ将軍!一体何が!」
「ええい、どけ、繋ぎ師!さもなくば止めろ!」

必死に叫ぶ将軍だが、あいにくその声が繋ぎ師に届いた時にはすでに手遅れだった。
そのまま、将軍は思いっきり繋ぎ師に激突する。

「くっ…。済まぬな、繋ぎ師。操作方法がわからなくての。怪我はないか?」
「ええ、大丈夫です。しかし、何があったんですか?」
「それがのう…。」

将軍は繋ぎ師に、先程の名無しとの戦いについて話す。

「なるほど、そんなことが…。」
「うむ…。」
「どうします、戻りますか?俺のマイティアイ改なら、今のDIE/SOULさんの位置を探ることも…。」
「…いや、やめておこう。戻ってしまっては、余を逃がしたダイソウの気持ちを踏みにじることになりかねん。
 我らは先に進もうぞ。なに、旅の扉とやらに到着すれば、ダイソウもそこで笑って待っておるに違いない。」
「……わかりました。先を急ぎましょう。」

口に出しかけた言葉を飲み込み、繋ぎ師は再び歩き始めた。

「おっと、そう急ぐな、繋ぎ師よ。余はデイパックを持っておらんのでな。
 ノートパソコンとフライングアタッカーを、お主のデイパックに入れてもらってもよいか?」
「かまいませんが…。むしろ、フライングアタッカーはしまわずに使った方がいいのでは?」
「残念だが、さっきの激突で壊れてしまったようだ。魔王の持っておる技術手袋なら修理できると思うのだがな。」
「なるほど。じゃあ仕方ありませんね。」

将軍の説得に納得し、繋ぎ師は渡された支給品を自分のデイパックに収める。

「それにしても、奇妙な光景だのう。RXとジャーク将軍が肩を並べて歩いておるとは。」
「シャドームーンとジャーク将軍と考えれば…。それでもまだ少し奇妙ですかね。」
「まあ、この際外見などどうでもよいわ。共に、打倒主催者の志は同じ。仲良くやろうではないか。」
「ええ、ライダーロワの、たった二人の生き残りですしね。」

言葉のキャッチボールをかわしながら、歩を進める二人。
やがて、彼らは広い空間にたどり着いた。

「ここは…。」
「採石場…か…?」
「その通り。ライダーロワ書き手の墓場としては、最適でしょう?」

思わず二人の口から出た言葉に、答える声が一つ。

「貴様は…!」
「さっきのジョーカーか!」
「そう…。ニコロワ書き手、C.M.超展開はデフォなのか?…。あなた方の相手をさせてもらう…。」

抑揚のない声で名乗ると、超展開はすぐさまスペルカードを取り出す。

「あなた達相手に、戦力の温存など愚の骨頂。最初から全力で行く。
 弾幕符『ニートの軍勢』。」

超展開の宣言と同時に、周囲が異空間に置き換えられていく。
もはやそこは、採石場ではない。かといって、これまでの彼女のフィールドである東方三国志の世界でもなかった。

「何だ、ここは!」

変化にとまどい、辺りをきょろきょろと見渡す繋ぎ師。周囲に存在するのは、宇宙にも見える漆黒の空間。
足下には、七色に輝く道が走っている。

「ニコニコRPG最終ダンジョン、虹の道…。ここなら360°全方位からの攻撃が可能…。
 そしてここは、設定上ニコニコの中枢部…。私の軍勢が100%実力を発揮できる…。」
「なるほど…。そっちにとって圧倒的に有利な状況というわけか…。」
「臆したか、繋ぎ師。」
「まさか!」
「うむ、それでこそ我がライダーロワの同志よ!」

超展開に鋭い視線を向ける、繋ぎ師と将軍。
その超展開の後ろでは、すでに集結したニコニコの英雄たちが攻撃の合図を今か今かと待っている。

「行きなさい。」
「行くぞ!」

どちらからともなく、決戦の火蓋は切られた。

先陣を切るのは、体育倉庫へ介入しようとするグラハム・エーカー。
しかしSRXのパンチ一発で沈む。
続いてヤンデレの妹が不気味に迫るが、ギャーグミドラに変身した将軍が容赦なく切り捨てる。
ガチムチの兄貴が繋ぎ師に組みかかるが、すぐに投げ捨てられる。
フタエノキワミ、アーッ!と叫んで突撃してきた左之助は健闘したが、最後は将軍に吹き飛ばされた。
ボン太くんスーツに身を包んだふもっふ第1方面軍も、冷熱ハンドで丸焼けと氷漬けにされる。

「ぬるいわ!今更この程度の連中で我らを倒せると思ったか!」

エア本さんを切り伏せながら、将軍が勝ち誇った声をあげる。
その横では繋ぎ師が変な動きのスザクを叩き落とし、返す刀で最終鬼畜司会者と良純とみさおをまとめて撃破していた。

「まだまだ…。」

しかし、超展開に焦りはない。多くの英雄が倒されたとはいえ、それは全体からいえばほんの一部。
彼女の軍勢は、まだまだ残っている。
ウマウマを踊るオンドゥル王子とカブトが。ルルーシュが。夜神月が。
⑨が。やたらうざい表情のてゐが。ゆっくり饅頭が。
実況と共に登場する真田ヴィータが。IKUZOが。TDNが。
はっぱ隊が。ヤンマーニが。コンバット越前が。
忍たま軍団が。大量増殖したはちゅねミクが。魔王アナゴが。
そして、最後尾で悠然と構えるドナルドが。

「戦いは始まったばかり…。」

将軍と繋ぎ師に襲いかかった。


「大丈夫ですか、将軍!」
「心配など不要だ、繋ぎ師!この程度で音を上げていて、新生クライシス帝国の大統領が務まるか!」

繋ぎ師の心配に、強気な返答を返す将軍。だが、息が上がってきているのは誰の目にも明らかだ。
かくいう繋ぎ師も、決して余裕のある状態ではない。あまりの敵の多さに、仙豆で回復させたエネルギーが再び底をつき始めている。

(くそっ、このまま持久戦を続けていたのでは不利だ…。)

繋ぎ師の脳裏を、一瞬焦りがよぎる。その隙をついて、てつ改が彼に襲いかかった。
だが、繋ぎ師をかばうようにドラグブラッカーが出現。てつ改をはじき飛ばす。

「そうか…。お前もいたんだったな、ドラグブラッカー!」

繋ぎ師の言葉に、ドラグブラッカーは大きくうなずく。

「よし、行くぞドラグブラッカー!」

ドラグブラッカーに掴まり、繋ぎ師は大きく飛翔。そして、足を突き出しながら落下に転じる。

「スーパー……スカイキーック!!」

敵陣ど真ん中に落下する繋ぎ師。その衝撃だけで、ニコニコ軍団の大半は闇の彼方へと吹き飛んでいった。
そう、大半は。

「らん☆らん☆るー☆」

最後の一人、教祖様とも崇められる道化師が奇声と共に拳を振るう。
着地直後で反応が遅れた繋ぎ師は回避できず、拳をまともにくらいよろける。

「ドナルドは嬉しくなるとつ…。」

決め台詞を口にしようとしたドナルドだが、それは途中で遮られる。
ギャグ将軍が、彼の口を押さえたからだ。

「戦闘中におしゃべりは、ほどほどにしておけ!」

将軍のサーベルが、ドナルドの眉間を貫く。
こうして、ニコニコ最強クラスのはずの道化師は、あっけなく散った。

「この結果は予想外…。」

壊滅した自軍の有様を見て、超展開はぼそりと呟く。

「ふん。切り札は最後まで取っておくものだ、ということよ。
 貴様がこの技を発動させるのは3回目!
 そう何度も繰り返して使えば、新鮮味が落ちるのは当然。
 新鮮味が落ちた技は、自然と威力も落ち破られやすくなるものなのだ。
 だからこそ仮面ライダーをはじめとするヒーローたちは、新必殺技を編み出すのだろうが!」

勝利を確信し、自信に満ちた声で将軍は言う。
だが、それを聞いても超展開は顔色一つ変えていなかった。

「勘違いしないで…。予想外なのはこんなにも早く全滅したということについて。
 新技なら、ちゃんと用意している。」
「何!?」

超展開の右手に握られるのは、新たなスペルカード。

「気づいていなかったでしょうね。ここまであなた達と戦わせたニコニコの軍勢の中に、ニコロワ参加者が一人もいなかったということに。」
「それが何だっていうんだ!」
「こういうこと…。笑笑符『ニコニコ動画バトルロワイアル』。」

宣言と共に、時空がゆがむ。超展開の背後に現れたのは、二人の、いや二匹のピエロ。
言わずと知れたニコロワの主催者、マルクとピエモンである。
だが、ニコロワの彼らとは決定的に違う点が一つ。彼らの額には、「P」の文字が刻まれていたのだ。
彼らは、厳密にはマルクとピエモンではない。
数多くの支援動画を作成し、絵版でも活躍する大御所、マルクP。
ロワ終盤になって現れた期待の新星、ピエモンP。
ニコロワが誇る支援動画職人たちこそが、彼らの正体である。

「二人ともお願い。」
「任せるのサ!」
「たやすいことだ。」

二人がそれぞれの翼と腕をかざすと、彼らの頭上にスキマが出来上がる。
そこから次々と姿を現すのは、ニコロワで数々のドラマを生み出してきたキャラクターたち。

「さあ、覚悟はいいか?」
「全軍突撃なのサ!」

マルクPの号令で、参加者たちは繋ぎ師と将軍へ攻撃を開始する。
対主催もマーダーも関係なく、彼らは一つの嵐となって眼前の敵へ襲いかかった。

暗黒長門が先陣を切って攻撃の雨を浴びせ、レヴァンティンを持った朝倉人形がそれに続く。
キョンの妹がドジリスを召喚して超伝導サンダーフォースを発射すれば、古泉はふんもっふ!と●を飛ばす。
レイジングハートを手にした霊夢がディバインバスターで周囲を焼き払い、アリスの上海人形が追撃を行う。
うどんげの弾幕と魔里沙&お覇王のダブル覇王翔吼拳がさらに叩き込まれ、萃香は素手で殴りかかる。
さらにチャイナブラボー閣下とやよいクリーチャーが打撃の嵐を浴びせ、亜美と日吉のボブ術が繋ぎ師たちを吹き飛ばす。
圭一とレナが鋸と鉈で華麗にX斬りを決め、狂気の詩音が金属バットで殴りかかる。
L5富竹は機関車タックルを敢行し、魅音は遠距離から拳銃を連射する。
ピカチュウの電撃がフシギダネの弾幕と組み合わされて相手を翻弄し、闇サトシは笑いながらロールバスターを連射する。
ピッピは指を振り続け、様々な技を繰り出す。
こなたは「コナタノキワミ、アーッ!」と叫んで突貫し、つかさはスーパーヤンマーニタイムで鬼狩柳桜を振るう。
外山と永井先生がスクラップ&スクラップをかまし、毒蛾幼女ひろくんはカオス光線を見舞う。
海馬社長は本編ではかなわなかった究極嫁による粉砕!玉砕!大喝采!を心ゆくまで行い、AIBOとATMのダブル遊戯はブラックマジシャンとブラックマジシャンガールを召喚して攻撃。
HA☆GAはゴキボールやコカローチナイトで、地味に攻め続けていた。
ロックマンとロールが遠距離から銃弾を連射し、エアーマンはエアーシューターを放つ。
さらにTASさん、KAS、友人の夢のトリプルマリオがコンビネーション攻撃。
息つく間もなく、阿部さんのゲイ・ボルグがうなる。
ピコ麿と琴姫はよくわからない陰陽師的な攻撃を放ち、えーりんは王者の剣で斬りかかる。
ニートは息を切らしながら、塊を投げつけた。
メガシードラモンに進化したゴマモンのサンダージャベリンと、オメガモンのガルルキャノンが炸裂する。
カービィはストーンの能力を使い、上空から二人を押しつぶしにかかる。
ティアナとなのはの魔法が雨霰と降り注ぎ、とどめとばかりにイチローのレーザービームが大爆発を起こしても攻撃は終わらない。
削除番長が包丁で斬りかかり、ヨッシーが赤甲羅を食べて炎を吐く。
YOKODUNAのGENKIDAMAとおじいちゃんのクレイモアが爆発し、その影でひっそりとムスカが拳銃を撃つ。
スパイダーマンが情け無用の攻撃を浴びせ、ドラえもんがごっすんごっすん釘を打ち込み、水銀燈が羽根を飛ばす。
ぶるあぁぁぁぁぁ!と叫んで、アイスデビモンが銃剣を投げる。
キョンや道下など戦闘力に欠ける参加者はまとめてnice boat.に乗り込み、その武装で攻撃に参加する。
とどめに、ハルヒが操る神人とコイヅカが操るジアースがその巨大な腕を振り下ろす。

文章にするとこの長さだが、実際にはここまで3分強である。
いかに怒濤の攻撃であるかが、おわかりいただけただろう。
歴戦の強者である繋ぎ師と将軍も、この猛攻の前にはさすがにボロボロになっていた。
というか、生きてるだけ奇跡である。

「繋ぎ師よ…動けるか…。」
「何とか…。」
「しかし解せぬ…。数では先程までの軍勢の方が上だったはず…。質もそれほど上がったとは思えぬ。
 なぜここまで攻撃力が上がっておるのか…。」

ギャグ将軍が口にした疑問。超展開は、それにはっきりとした答えを叩きつける。

「切り札だから。切り札が強いのは当然のこと。理屈ではない。」

返答に対し、一瞬言葉を失う将軍。だが、すぐに高笑いを始める。

「フハハハハハハ!!そうであったな!
 必殺技に理屈を求めるなど無粋!余としたことがうっかりしておったわ!」

ひとしきり笑うと、将軍は剣を構え直した。

「だが、理屈無用のバトルなら我らが特撮が最も得意とするところ!
 こちらの土俵を持ち出したこと、後悔するがいいわ!」

ダメージなどまったく感じさせぬ動きで、将軍が駆ける。
振るわれる剣は、一見がむしゃらのようでいて実は的確。
すれ違うニコロワの猛者たちを、次々と沈めていく。

「やるな、将軍!俺も負けていられないぜ!」

将軍の奮闘に勇気づけられた繋ぎ師も、ニコロワ軍団へ反撃を開始する。
一般人を中心に、ニコロワ軍団はどんどんとその数を減らしていった。

「所詮戦いなど、勢いのある方が勝つのだ!先程は主導権を握られ不覚を取ったが、もはやそう上手くはいかんぞ!」

一人、また一人と、将軍の剣が敵をしとめていく。

「あまり調子に乗らない方がいい。」

超展開の指示で、神人が再び腕を振り下ろす。将軍は後ろに大きく飛翔し、それを回避。
だが、その攻撃はおとりだった。
本命の攻撃、ジアースのビーム砲が、将軍を捉える。

「将軍!!」

目の前にいた敵を払いのけ、繋ぎ師は将軍の元に駆け寄る。
だがそこにあったのは、消し炭と化した将軍の姿だった。いくら将軍でも、この状態で生きているとはとても思えない。

「くそっ…!」

がっくりと肩を落とす繋ぎ師。しかしその直後、彼は気づく。
将軍の背中部分が、大きく開いていることに。

「これは……着ぐるみ?」

あっけにとられる繋ぎ師。その前方に、銀色の物体が着地する。

「まったく…。着ぐるみがダメになってしまいましたの。」

その銀色の物体は、徐々に明確な輪郭を帯びていく。
そして、色もだんだんと変化していく。
変化が一段落ついた時、そこに立っていたのは…。

耳としっぽがピカチュウで、背中に触手が生えていて、声が草薙素子のタイガーアンデッドという、やたらカオスな怪人だった。

「しょ、将軍……?」
「ええ、紛れもなく私はギャグ将軍ですの。まさか着ぐるみを捨てる羽目になるとは思いませんでしたの。」

困惑する繋ぎ師に対し、将軍を名乗る怪人は落ち着いた口調で答える。

「姿が変わったところで、同じこと。死ぬのが少し伸びただけ。」

対峙する超展開もまた、その口調は淡々としていた。

「やって。」

命令を受け、今度こそ将軍を殺害すべく、神人とジアースが同時に攻撃をしかける。

「何もわかってませんのね。正体を現した幹部は強くなるのが定石ですの。
 そもそも、何も変わらなければ姿を変える意味がありませんわ。」

おのれに死をもたらすであろうふたつの鉄槌を前にしても、将軍が見せるのは余裕。
そして、その余裕には確かな裏打ちがあった。

「10万ボルト。」

静かに、将軍は技名を呟く。次の瞬間、将軍の両手から発せられた電撃が、一瞬にしてふたつの鉄槌を消し炭に変えた。

「いや、将軍…。10万ボルトってレベルじゃないと思うんですが…。」
「あなたが言っても説得力がありませんの。」

繋ぎ師のツッコミを軽く流し、将軍は次のアクションに移る。
物理法則を無視したようなすさまじいジャンプで一気にジアースのコクピットに迫ると、猛スピードで拳の連打を叩き込み中のコイヅカごと粉砕。
さらにジアースのボディーを蹴って跳ぶと、神人の肩に着地。
そこにいたハルヒに電気ショックを浴びせて撃破する。
ニコロワが誇る巨大戦力2体は、ほんの数十秒で無力化されていた。

「嘘…。」

かすかにその表情をゆがませる超展開。そうこうしているうちに、nice boat.までもが将軍の手によって撃墜されていた。
地上の残存勢力も、繋ぎ師によってすべて倒されている。

「さて…。あなたの兵隊さんたちは全滅ですの。どうしますの?」

すたりと超展開の前に着地する将軍。圧倒的優勢に立とうとも、その心に慢心はない。
チェックメイト。客観的に判断すれば、そう思えることだろう。
だが超展開の顔に、未だ諦観の意は浮かんでいなかった。

「保険をかけておいてよかった…。」
「保険…? 何のこと…。」

問いかけの言葉は、途中で止まる。全身の力が抜け、膝が崩れ落ちる。

「何ですの……? 体が…。」

わずかだが、動揺を見せる将軍。振り向くと、繋ぎ師も同じように膝をついている。

「私のなりきり対象…八意永琳が持つのは『あらゆる薬を作れる程度の能力』。
 それを応用して、この空間には戦闘前に無味無臭の毒薬をガスにして充満させておいた。
 もちろん、すでに私自身には解毒剤を投与してある。」
「ほう…。」
「これはあくまで私の軍勢で倒しきれなかった時のための保険だった。
 身体的に一般人の蟹座氏ならともかく、他の参加者相手では毒なんて気休めにしかならない。
 けど、今回はその気休めに救われた。」
「姑息ですが…悪の手先の作戦としては悪くないですわね。」
「褒め言葉と受け取っておく。」

体を動かせぬ将軍の眼前で、超展開は弓を引く。

「させるか!」

攻撃を止めようと、繋ぎ師が走る。チートの塊・SRXは、バイオライダーの解毒能力も兼ね備えている。
すでに、彼の体内の毒素は浄化されていた。

「させないのはこっち。ニコニコトラップ『釣り動画』。」

超展開の宣言と同時に、あっという間に距離を詰めていた繋ぎ師の前に一本の釣り糸が出現する。

「こんな餌に俺が釣られクマー!」

いかに繋ぎ師と言えど、そのトラップから逃れることは出来なかった。
無意識のうちに釣り糸をくわえさせられ、繋ぎ師の体は空高く持ち上げられてしまった。

「繋ぎ師!」
「じゃあ…さようなら。」

無表情で、超展開が矢を放つ。至近距離から放たれた矢は、将軍の眉間に深々と突き刺さった。

「次は、繋ぎ師…。」

未だ空中にいるもう一人の敵をしとめるため、超展開は新たな矢を弓につがえる。
そして矢を放とうとした、その時。

「フハハハハハハ!甘いな!」
「え?」
「着ぐるみが一枚だけと誰が言った!」

タイガーアンデッドの、背中が割れる。
そこから飛び出してきたのは、1羽の小さなペンギン。

「ポチャー!」

「中の人のさらに中!?」

驚愕のあまり、珍しく大声を上げる超展開。
その隙を逃すまいと、将軍は宙を駆け突進する。
その技の名はゴッドバード。鳥ポケモンのみが使える大技である。
え? ポッチャマはそんな技使えない? そんなもんノリだ、ノリ!

「貴様の負けだ、ジョーカーよ!」

巨大な弾丸と化した将軍が、超展開の腹にめり込む。
そして、そのまま貫通した。

「………!」

口と貫かれた腹から血を噴き出させ、超展開は倒れ込む。
彼女が倒れると同時に異空間は消滅し、一同は元の採石場に戻ってきていた。

「将軍!」

地に足をつけた繋ぎ師は、すぐさま将軍の元に駆け寄る。

「お見事です!まさかこんな切り札があったとは…。」
「ふふ、ガチバトルは余の得意とするところではないが、このぐらいは朝飯前よ。
 しかし、さすがに毒を受けた状態での大技はきつかったの。」
「ああ、ちょっと待ってください。今、解毒を…。」

将軍の体から毒素を取り除こうと、繋ぎ師が手を伸ばす。そして、その手がペンギンの頭に触れ…

ドスッ!

…る直前、超展開が直接手に持った矢が、背後から将軍の胸を貫いた。

「え…?」
「何……だと……。」
「今度は甘く見たのはそっち。制限がなければ、永琳は不死身…。」

腹を貫かれているとは思えないほどはっきりした声で、超展開は言う。

「ふふ、なるほどの…。超展開の名は伊達ではない、といったところか。」

こちらもやはり死にかけとは思えぬ声で、将軍が言う。

「貴様ぁぁぁぁぁぁ!!」

一番ダメージが少ないはずの繋ぎ師が、この場で一番取り乱していた。
ありったけの怒りを込めたシャドービームで、超展開の体を焼き尽くす。
いかに不死の体と言っても、原形をとどめぬまでに破壊されれば再生は不可能。
と言うか、ロワの性質上そうでなくてはいろいろ困る。

(ここまで、か。まあいい。今度こそ、十分に時間は稼げた。)

いつもの無表情のまま、C.M.超展開はデフォなのか?は逝った。

「将軍!しっかりしてください!」

敵を滅ぼしたことを確認した繋ぎ師は、急いで将軍の体を抱き寄せる。
だが、小動物となった今の将軍にとって、矢で貫かれたダメージはあまりに大きい。
さすがのチート王も、すでに手の施しようがなかった。

「繋ぎ師よ……。誰かに伝えておきたい話がある。聞いてくれるか……。」
「何ですか!」
「あれは余が1971歳の時だった…。ある日余が散歩をしていると、なぜか頭にカレーライスを載せた男が歩いていたのだ。」
「それで……?」
「どうしても気になった余は、その男に尋ねたのだ。どうしてそんなものを頭に乗せているのかと。
 すると、返ってきた答えはこうだった……。」
「………。」
「………。」
「将軍?」
「………。」
「将軍、どうしたんですか!最後まで話してくださいよ!マナー違反ですよ、途中で話をやめるなんて…。」

繋ぎ師の目からしたたり落ちる滴が、将軍の顔を濡らす。だが、将軍は何の反応も示さない。

「しょおぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!」

繋ぎ師の絶叫が、むなしく採石場にこだまし…。

「それは私の名前がカレクックだからだ。」

ガクッ

「はい?」

唖然とする繋ぎ師。その腕の中で、将軍は満足げにほほえんでいた。


【C.M.超展開はデフォなのか?@ニコロワ 死亡】
【ギャグ将軍@ライダーロワ 死亡】


【二日目・深夜】【D-7 大蟹球フォーグラー内部・採石場エリア】
【影の繋ぎ師@ライダーロワ】
【状態】:ネオバスク修復完了、結構ボロボロ、WIKI管理人への天元突破級のぶっちぎりな激しい怒り、深い悲しみ
【装備】:サタンサーベル@ライダーロワ カラオケマイク@現実
【道具】:支給品一式×3、 ワルキューレ@スパロワ、ドラグブラッカー、写真付き名簿、放火セット(燃料、松明、マッチ)、ナイフ、不明支給品×1(確認)、BL本、首輪×2、パロロワ衣服詰め合わせ、
      お徳用原作パロロワ全生首セット(目玉セット他に換装可能)&原作パロロワ全手首詰め合わせ※今なら腕も付いてくる!
ノートパソコン、フライングアタッカー(中破)@仮面ライダー555
【思考・行動】
 基本:殺し合いには乗らない。自分のSSへと戻る。それでも俺は俺として ぶ っ ち ぎ る ぜ  !!
 1:WIKI管理人を倒す。
 2:本物の煩悩寺さんはどこへ?

ふむ、余もここでリタイアか…。結局、新生クライシス帝国建設の夢は叶わなかったのう。

あら、まだ諦めるのは早いんじゃなくて?

おお、コロンビーヌか。出迎えご苦労。

こんにちは、おじさま。ねえ、今度は死者スレで帝国建設を狙ってみるのはどう?
仲間もみんな揃ってるから、きっと出来るわよ。

なるほど、それも悪くないの。

でしょ?

だがその前に…コーヒーが飲みたい。

オッケー。おすすめの喫茶店を紹介してあげるわ。

余の舌は厳しいぞ? 果たして余を満足させられるコーヒーを出せるかな?

うふふ、それは飲んでみないとわからないわねえ。

………



283:残されたもの(希望) 投下順に読む 285:誓いを新たに
283:残されたもの(希望) 時系列順に読む 285:誓いを新たに
283:残されたもの(希望) ギャグ将軍
279:終末への扉(5) C.M.超展開はデフォなのか?
280:ニコニコ削除祭は大変なセーラーふくをもってった結果がこれだよ!完結編 影の繋ぎ師 287:D(前編)
279:終末への扉(5) 裸になってすぐアッー~殺意のqwglOGQwIk~ 287:D(前編)

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最終更新:2008年07月24日 13:49
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