残されたもの(相棒)



ギャグ将軍とダイソウの敗因。
それは名無しがテイルズロワの人間だということに囚われ過ぎ、柳桜をエターナルソードの代用としてしか捉えていなかったことだ。
特にダイソウは一度ナナシに襲撃されたこともあり、冷静さを失っていたのかもしれない。

オヤシロバリヤー。
そんなふざけた名前の技が、名無しを守り、ダイソウ達へとロケット弾を跳ね返した現象の正体。
効果は一言でいえば鏡面反射。
真正面からの攻撃をそっくりそのまま跳ね返す神の力。
厳密には羽入の力なため、奥義直後の硬直という制限に引っ掛かることなく発動できたのだ。

帯びていた紫の光が消えた刀を手に、名無しが詰まらなそうにこの戦いの結果たる惨状へと目を移す。
爆発の規模でいえば名無しの不意を打ったニアデス・ハピネスよりやや大きい程度。
所詮は一度反射された弾丸だ。弾速が落ちていたことが幸いし、威力はその程度で済んだ。
だが、あの時の名無しとは違い、ダイソウは防御する間も無く隙だらけの状態で攻撃を受けた。

結果は見ての通り。立っているだけでも精一杯といった状態だ。

「ち、くしょおお……」

無残な有様だった。右脇腹の大部分が抉り取られている。
正直ガッツの巨体でなければ上下が分かたれ即死だっただろう。
せっかくのパニッシャーも、鈍器としてでも、銃器としてでもなく、杖代わりだ。

「しっかりせい、ダイソウ!」

幸いと言えばもう一つ。
パロロワ名物、やけに頑丈なデイパックに入れられていた為か、はたまたダイソウがとっさに投げ捨てたからか、
ギャグ将軍が憑依したPCは無傷でダイソウから遠く離れた位置に転がっていた。
とはいえ今の一人で動けない将軍にとってはほんの少し死期が伸びたに過ぎない。
結局、結果は変わらないのだ。
ダイソウは、殺される。ギャグ将軍も壊される。この、名無しの手で。

(どうせ放っておいてもあの傷では長くは無いか。なら、確実に仕留められる方から殺す。騒がれるのも気に障るからな)

まずは将軍からだと、歩き出そうとして、瀕死の男とPC以外のものが視界に入る。
黒い、黒い、黒い、蝶。
なるほど、服がぼろぼろで気付かなかったが、よく見ればダイソウは未だにパピヨンスーツなままだ。
ブレイズオブグローリーの方は回復に回しつつも、牽制の手を緩める気は無いらしい。
芸の無いことに先程と同様、一触爆発な陣形を維持し、こちらを睨みつけている。
強い瞳だ。死にかけとは思えないほど強い、思いを秘めた瞳。

「やらせは、しねえ。俺は、もう二度と――を、失いたくはねえ……」

馬鹿な奴だ。二つの核鉄をともに回復に使っていれば、あと少しは戦えただろうに。
将軍を壊しているときが、殺人に快楽を得る薬中クレスの隙を突ける最後のチャンスだったというのに。
勝つことは無理でも、逃げることならうまくいく見込みもあったのに。
仲間だから。
息絶え絶えに発せられた言葉だった為、完全には聞き取れなかったが、大方そんな理由がダイソウを動かしたのだろう。

(くだらない)

心の中で名無しは吐き捨てる。
クレスの言葉を借りるなら、今ここにいる名無しにとって書き手とは“筆”だ。
全てを始め、繋ぎ、書ききる為の存在だ。
主義も、主張も、信念も、全部要らない。
だからこそ彼らは名乗らない。
名誉も、批判も、批評も、感想も。
与えられるべきは個人にでは無い。彼らが紡ぐテイルズロワという物語にだけこそ相応しい。

『俺達は、流れにだけ従う。対主催ルートなら参加者を全滅させるし、優勝ルートならお前達と同じく共に滅ぶ……それだけだ』

それこそが、魔人と畏怖された彼らの唯一にして至高の信念。
個人の感情の一切を廃し、ただあるべき流れを紡ぐことのみを求める人の身を捨てた者達。
仲間が欠ければ悼みはする。けれどもそれ以上に優先すべきは流れを絶やさないこと。テイルズという道を否定しないこと。

だというのに目の前の敵は己が流れを否定して他者を庇う。
個人の感情に流されて共倒れの道を選んび、大局を見失っていた。
それでは、駄目だ。
自分がこうしたいから、このキャラが好きだからとわがままを通せば、リレーは直ぐに破綻してしまう。
彼らも書き手なら痛いほど理解しているはずなのに。

(もういい)

下らない下らない下らない下らない愚かしい愚かしい愚かしい愚かしい馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ馬鹿だ許せない許せない許せない許せない
殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね


「とっとと、死ね」

殺意が、全てを上回った。




トンっ。

一瞬、将軍には何が起こったのかがわからなかった。

目の前には何故か一人血飛沫を上げるDIE/SOUL。
あれだけの怪我をしていたのだ。
今更出血の一つや二つは珍しくは無い。
ダイソウは幾度もの激戦を乗り越えてきたのだ。
かに玉突入以前の傷が開いたとしてもおかしくはない。

それらのことを考慮して尚、将軍が今見ている光景はあまりにも異常だった。

トンっ。

ダイソウの右二の腕から鮮血が吹き出す。

トンっ。

ダイソウの左太股が口を開みたいに割れ、赤い涎をこぼす。

トンっ。

ダイソウの首の動脈血が行き場を失い外へと逃げる。

トンっ。

ダイソウの左肩が。

トンっ。

ダイソウの右足首が。

トンっ。

ダイソウの小指が。

トンっ、トンっ、トンっ、トンっ、トンっ、トンっ、トンっ、トンっ。

軽快な音に合わせてダイソウの至る場所から赤い花が咲く。

トントントントントントントントントントントントントントントントン
トントントントントントントントントントントントントントントントン
トントントントントントントントントントントントントントントントン
トントントントントントントントントントントントントントントントン、
トン。

あたかもダイソウという大木を彩るように、赤い、赤い、赤い、彼岸の華が咲き誇る。
それはなんて地獄絵図。
地の花を咲かす人の樹に群がるかのように飛び続ける黒い蝶。

そう、蝶だ。
ダイソウが仕掛けた幾百もの蝶は、ただの一匹も爆発していないのだ。
そもそも、ずっとダイソウの方を向いていた将軍からしても、ダイソウが独りでに傷ついていっているようにしか見えなかった。
名無しは死を告げた後一歩も動かず、

トンっ。

否、その場で縄跳びでもするかのように跳んでは着地を繰り返している。

トントントントントントントントントントントントントントントントン
トントントントントントントントントントントントントントントントン
トトトントトトントトトントトトントトトントトトントトトントトトン
トトトントトトントトトントトトントトトントトトントトトントトトン、
トン。

そしてその音にやや先んじて花々は開花していく。
間違いない、この不可解な現象は名無しの仕業だと、将軍は確信する。
あるのは状況証拠だけだが、それ以外には考えられない。
では、一体名無しはどのようにしてダイソウを攻撃しているのか。
自由に動けぬ体がもどかしいと思いながらも名無しをじっと凝視する。
果たして彼は何の為にステップを踏んでいるのか?そこに必ず理由はあるはずだと。
凝視し、凝視し、凝視し、凝視し、気付いた。
名無しは、跳躍→着地を繰り返しているのではなかった。
ただ、延々と着地のみを繰り返していたのだ。
まるでそう、消えては現れるかのように。

「馬鹿な……」

狼狽する心とは別に将軍の脳裏で一つの推測が形作られていく。

(名無しは、蝶の合間を縫うように、空間転移でダイソウを攻撃している?)

我ながら馬鹿げた考えだと思う。
ダイソウはその空間転移を封じる為に、どこに名無しが現れても蝶に触れるよう満遍なく設置したのだ。
とはいえそれは念密な計算に基づいての設置では無い。
ならば蝶の位置を完全に把握し、自身の体を割り込める隙間さえ見つけたとしたら。
蝶に触れきるよりも早く元の安全地点に転移しなおせれば。
この奇跡的な間隙を突く攻撃も可能なのではないか?

将軍を今日何度目かわからない戦慄が襲う。

(勝てぬのか?余は、また部下を失うのか?ならぬ、そのようなこと断じて許してはならぬ!)

挫けそうになる心を鼓舞しギャグ将軍は諦めない。
そんな彼の不屈の意思に答えるかのように、かちりと、待ち望んだ時が遂に訪れた。




将軍の読みは的を射ていた。
名無し。
彼の書き手としての真の特筆はその化け物じみた把握能力の高さを置いて他に無い。
フラグ把握の面倒さで定評のあるテイルズロワに、第6クール途中から参戦した新人であるということが何よりの証拠だ。
投下早撃ちもその把握能力あればこそ猛威を振るえる。
その把握能力を用いれば、爆破網の穴を見つけることは朝飯前だった。

(頃合いだな……)

血桜が舞うのに合わせ、滅びの蝶は散って行く。
ダイソウの意識がが出血過多から混濁し始め、闘志を維持できなくなってきているのだ。
既に名無しの動きを制限するには遠く及ばない数まで蝶の数は減っていた。

(そこまで死にたいのなら、お前の方から殺してやろう)

改めてダイソウの前にまで歩み寄る。
やかましい静止の声がPCから聞こえたが無視。
のろのろと振るわれるドラゴン殺しを獅子戦孔で弾き飛ばす。
一層けたたましくなる声を鬱陶しいと思いつつも刀を振り上げる。

(せいぜい何もできぬ己を呪いつつ、仲間が殺される様を見届けろ。……どうせすぐに後を追わせてや『……おや!?』!?!?)

神社に似合わないやけにナレーションじみた声にぴくりと名無しの動きが止まる。
訝しげに辺りを見回すとちかちかと画面を点滅させるPCの姿が。
何事かと覗き見た名無しを待っていましたと言わんばかりに、続く文が音声付で表示される!

『パソコンしょうぐんの ようすが……!』

(こ、この文章は!!)

覚えのある表示だった。
恐らく現在日本人の1/3くらいは見覚えがあるはずだ。

(ポケモンが進化する時の!!)

が、次のセリフでずっこけた。

「パソコン将軍ワープ進化ーーー!!」
「ちょっと待て、それはポケモンじゃなくてデジモンだろ!」

思わずノリツッコミを入れてしまった名無しを余所にどこからか効果音を引き連れてPCへと光が降り注ぐ。
目を焼く閃光の中から現れるは、ギャグ将軍の戦闘形体!
黄金に輝く鎧を纏い、大剣を掲げ、一対の角を生やした最強怪人!名を――

「ギャーグミドラ!!」

『おめでとう! パソコンしょうぐんは
ギャーグミドラに しんかした!』

復活したギャグ将軍が名を高らかに告げ、ファンファーレが流れ出す。
ちなみにこのナレーションやらBGM、ギャグ将軍が腹話術やらアカペラやらで流してたりする。
多才すぎだろ、将軍!

『ギャーグミドラ なんでもあり かきて ひっさつわざは ボルテッカー だ!』
「って、必殺だけテッカマンかよ!」
「ふはははは!魔王達がやりおったようだな!余が体を取り戻したからには貴様なぞ一捻りよ!」

続くデジモン風味な解説にもやはり突っ込んでしまう名無し。
伊達に参加者把握に力を割いてはいない。テイルズロワ以外のネタにもこの通り反応できるのだ!
もはやその姿は、おやじギャグ好きな本来のクレスとしては許容できても、シリアスマーダーな薬中クレスには程遠い。
故に、ぶれる。なりきりが、殺意がぶれ、禁断症状という形で現れる。

(ドウシテ…アナタ…コロスノ……)

名無しがこれまで殺してきたキャラが彼を責め立てる。
何故自分達をあそこで殺したのか、何故誰も彼もを生かさなかったのか。
良心を一時的に取り戻してしまった名無しが、呻き声を上げながら硬直する。
ぎょろぎょろと動く眼だけがやけに印象的だった。

その千載一遇のチャンスを、新生クライシス帝国の大統領は見逃さない。

「喰らうがよい、ボルテッカー!!」
「……あ、ぐぐぐ、は、羽入!!」

命の危機を前に漸く冷静さを取り戻す名無し。
今の精神状態では集中力を欠き転移はできないととっさに判断し、羽入にバリアーを張らせる。
しかし、彼しは一つ誤解していた。
『ボルテッカー』とは実に紛らわしいが、テッカマンの『ボルテッカ』のことではない。
特性的にはむしろボルテックイントルードに近い、最近のポケモンに登場するピカチューの最強技のことなのだ!

惜しむべくはニコロワでボルテッカーが使われなかったことか。
馬鹿正直に真っ直ぐ将軍が飛んでいくはずもなく、あっさり障壁を迂回。
電撃を身に纏った将軍の渾身の体当たりを今度こそ名無しは無防備に受け、地に沈んだ。


(情けねえ……)

覚束ない思考の海で、ダイソウは自嘲する。
敵と己の能力を見極め、最善の手、最善の場、最善の機を模索したつもりだった。
己が持つことのできる、力、知恵、武器、全てを用いて闘った。
それで、この様だ。

(もしもあいつがいたら今の俺になんて言うだろうなあ)

決まってる、きっと笑顔でこんな風に激励するのだ。

『どうした、ヒューマン?その程度では化け物は倒せないぞ! さあ立ち上がれ! HURRY! HURRY! HURRY!』

んでもって立ち上がって勝ったら勝ったでしてやったりと

『いい燃え展開だったぞ!』

って吸血鬼としては似つかわしくない爽やかな笑みを浮かべて言い放つに違いない。
あいつはそういう奴だった。
暑苦しくて無茶苦茶で、やたらと人を振り回す奴だった。
大体なんで俺はあいつと一緒にいたのだろう。
アニロワで実現しなかったアーカードVSガッツの実現が第一目標だったはずなのに、気づけばWアーカードと仲良こよし。
あれか。俺まで 友情! 努力! 勝利! に染まっちまったのか?
まあ確かに手を抜かれまくったとはいえどっちとも拳で語り合いはしたが。

(ったく。焼きが回ったもんだな、俺も)

ふと、無性にあいつの快活な笑顔が見たくなった。
何でかはわからない。ただ、あのアホ面を見ればこの鬱憤とした気分も晴れる気がしたのだ。
それともう一つ。

「傷は浅くは無いかも知れぬが根性で何とかせい、ダイソウ!そちも余の部下であろう!」

ゆさゆさと金ぴか禿が体を揺する。
俺の努力はなんだったんだああ!!という勢いで名無しを倒したギャグ将軍だ。
全く以てギャグ展開とは何でもありだ。

ただ、今の状況はよろしくない。
金ぴか禿オヤジがおたおたしながら大の男を介抱するという珍事が、では無い。
なんというかここまで慌てられるとかなり悪い気がしてしまう。
かくいうギャグ将軍自身も無傷ではないのだ。
ボルテッカーはその莫大な威力の代償として使用者に与えたダメージの1/3が返る。
人より数倍も頑丈な体とはいえ、久しぶりの生身で、更には戻った途端の大技だ。
その実かなりガタがきていてもおかしくはない。

「せめて、相……いや、そう、か」
「む?どうしたのだ、ダイソウよ! 余の胸毛でパフパフでもしてほしいのか?」
「死んでも、御免だ……」

口に出しかけた言葉を押し留める。
なるほど、そういうことか。
俺にとってあいつは……。

続く言葉を再び呑み込む。
認めるのが癪だったからでは無い。
将軍がいつの間にかまた姿を変えていたからだ。

「……集気法」

枝分かれした刃を握った殺人鬼、否、闘神がその二本の足でしっかりと大地を貫いていた。
しかし、名無しの姿は将軍の攻撃が確実に決まったことを物語っていた。
白い鎧は完全に砕け散り、肌に密着した黒地の布は高圧電流に焼かれ炭と化していた。
何よりも怪人一匹の全身を使った激突を受けた胴は明らかに陥没していた。
表情からはダメージを図りようもないが、確実に体内にはダメージが蓄積されていると判断するのに十分だった。
集気法程度の回復技ではまさに焼け石に水である。
右手に輝く指輪――幸運を吸い取り装備者を生きながらえさせるレジュームリングも力を使い果たし沈黙している。

「雑魚扱いした非礼は詫びる」

その言葉に、ダイソウは少し面を喰らった。傍らの将軍もだ。
そこには今まで言葉の端々に滲んでいた嘲りが一切無くなっていたからだ。

「だが、対主催は邪魔だ。出し惜しみせず、誠心誠意を賭けた、とっておきの一刀で殺す」
「態度が改まってもあくまでジョーカーだってか」
「ふざけるでない! 余は、もう誰一人余の部下を殺させはしない!」

名無しが神剣を持ち上げる。その所作はスムーズで、ダメージをほとんど感じさせない。
対する将軍も再び雷を吐き出す。

「二度も同じ手を食らうと思っているのか?」
「食らってくれるよう打つのが余の戦い方よ!」

そうか。にやりと笑い名無しが両手で握った魔剣を腰溜に構えた。
その余裕にダイソウは確信する―――今から繰り出される一撃は名無しの切り札だと。

(まずい。名無しの切り札もそうだが、将軍にボルテッカーを乱発させるわけにもいかねえ)

ダイソウはデイパックへと手を伸ばし、それを二人に気付かれないよう起動させる。





「ピイイイイイイカアアアアアアーーーー!!」
「祈れ。せめて塵一つ、この世に残せることを!!」

将軍と名無しが同時に駆け出し相手へと突撃する。

全身に電撃を纏う将軍とは逆に、名無しは自身に纏うべき闘気を剣に回し、蒼破斬で鞘のように魔剣を包む。
そのまま剣を振るうことなく接敵。
将軍とぶつかるあわや手前で剣のみを将軍が今いる位置からコンマ二桁正面へと転移する!
これこそがテイルズロワにおけるクレスの最果て。
エターナルブレード同様、三種の時空剣技を掛け合わせた究極奥義!!
次元斬の最大の弱点である小回りの利かなさと広すぎる範囲による威力の霧散。
それを補うために虚空蒼破斬の闘気で次元斬を“圧縮”。
常続的なコーティングと似て非なる納刀は、超短距離の転移によって抜刀され、
一切の欠損なく開放されるエネルギーは、地面すら削り殺してドーム上の半球ですらない“球”を解放する零距離次元斬!!

「とくと味わえ!!」

転移した刹那、蒼破斬は消失し魔剣の中から黒にまで煮詰められた紫の光が放たれる。
でんきだまを装備しておらず、最高攻撃力の半分しか出せないボルテッカーでは叶うはずも無い威光。
名無しの神速の振り抜きが将軍を襲い、

仙豆で動けるようになり、フライングアタッカーとニアデスハピネスの併用による超速飛翔で割り込んだダイソウを切り裂いた。

将軍は驚愕に目を見開く。
待て、と。何をやっておるのだと。

「わりい、将軍。あんたが仲間を二度と失いたくないように……」

アルターで速さを得た腕で一瞬でフライングアタッカーをパージ。

「俺ももう二度と相棒を失いたくないんだ」

そのまま笑って将軍へとぶつける。

「認めぬぞ! 余は、余はこのような笑えぬオチは!!」

アタッカーの推進力に押されぐんぐんと遠ざかっていく将軍。
目前に迫るは世界を惨殺する刃。
獲物が一人逃げたにも関わらず名無しは笑いながら叫ぶ。

「――――――零次元斬」

全ての殺意を練り上げるようにして、巨大な光の弾が二人の眼前に生み落とさる。
だが、ダイソウもむざむざ一人で死ぬつもりはない。

(そうだ。まだ俺は、全てを賭けきっちゃいなかった。こんな奴に、負けてたまるかぁぁぁああああああ!!)

「輝け、俺の武装錬金!!」

ブレイズオブグローリーを発動し、体を炎へと変える。
業!! っと世界に炎が拡散し、合わせて背のニアデスハピネスを羽ばたかせる。
舞うは炎、舞うは蝶。
限界までに炎たる体で世界を満たし、爆薬たる蝶を世界に飛ばし、

ダイソウは、デイパックから取り出したダイナマイトを含めた、全ての爆薬を、自身の体で、着火、させた。

ブレイズオブグローリーは、燃えれば燃えるほど攻撃力が上がる武装錬金だ。
単体では5100度が限界だが、他の何かで炎の威力を上げることもできる。
アニメで、エアリアル=オペレーターで生み出された酸素により燃焼効率を上げたように、だ。
ダイソウが選んだのは爆炎。無数の爆薬が生み出した業火を吸収することによるパワーアップ!!
爆風で逆に炎が吹き飛ばされることが数秒後には決まっているほんの数秒だけの力。

その“全てを賭けた”赤き力が膨れ上がろうとする蒼き球体を抑え込もうとし、
解放された刃の圧倒的エネルギーに削られていく。
十分だ。
少なくとも、一瞬とはいえ、あれを防げるのなら。
名無しを倒す時間さえ与えてくれるのなら!

(俺は爆弾の野郎のように姿を変えることによる『なりきり』の行使はできねえ。けど……!)

『これは考察していて気づいたことなんだがな……』

にやりと、どこか子どもが悪戯を企んでいるような笑みを浮かべながらあいつが言ったことを思い出す。

「てめえの顔は見飽きたぜええええええええええええええええええ!!」
『私達は不完全な存在だ。口調や性格がころころ変わりうるほどのな。だが……』

まさかそれが最後になるとは思わなかったあの時。
あいつからこのロワに関する驚くべき考察を明かされた時に。

『だからこそ、そっくりなキャラへのなりきりなら、わざわざ変身しないでもシステムの方を誤認させ得る』
「奥義、」

吹き飛ばされたドラゴン殺しの代わりに振るう斬馬刀に光が集い、唸りを上げる!!
ガッツの弱点である決定力不足を、AAAロワに出ていた大火力キャラ――アリューゼへのなりきりで補う最後の策!!
炎と共に消え逝く身体を押して、名無しへと剣を振るう。

速く、速く、速く、誰よりも速く!!
叩ききれ、奴を!!

「ファイナリティイイイ!! ブラストオオオオオオオオオ!!」

行くぜ、相棒!!


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