ニコニコ削除祭は大変なセーラーふくをもってった結果がこれだよ!

「……ちゃん、クーちゃん!」
「……ん…。ちぃちゃん?」
「よかった、気が付いてくれて…。」

ロリスキーが目を覚ますと、目の前には爆弾の顔があった。

「本当によかったよ…。このまま目を覚まさなかったらどうしようかと…。」
「大げさなんだから、もう…。まあ、心配されて悪い気はしないけどね。
 ところで、ここどこ?さっきまでいたところじゃないみたいだけど。」
「さあ、私にもさっぱり…。」

二人がそんな会話をしていると、どこからともなく誰かの歌が聞こえてきた。

高く吼え 高い塔で 高く泣け 高く声をあげ…♪

歌声と共に階段を上がってきたのは、全身黒ずくめの少女。
爆弾たちはここで初めて、自分たちがいるのが何かの建造物の屋上だと気づく。

「あなたは…?」
「初めまして、になるのかな。私はニコロワの愛媛の0RbUzIT0Toは大変な演説をしていきました。
 いわゆるジョーカーだよ。」
「ジョーカー…。ってことは、私たちの敵だね。」

自己紹介を聞き、戦闘態勢を整える爆弾とロリスキー。それを見て、愛媛は悲しげな表情を浮かべる。

「よりによって一番戦いたくない人たちが、私の持ち場であるこの塔に来ちゃうなんてなあ…。
 同じ属性を持つ者同士は引かれあう、ってことなのかな。
 お姉ちゃんたちを傷つけたくはないけど、しょうがないよね。私たちは敵同士なんだから。」
「待て、愛媛。」
「え?」

突然、女性しかいないはずのこの場に男性の声が響く。
その直後、愛媛の少し後ろの空間にいきなりドアが出現し、そこから龍を模した仮面を付けた青年が姿を現した。

「この二人相手に、お前では全力を出せまい。下がっていろ、代わりに俺がやる。」

彼こそは対主催を分断した張本人、人外である。

「人外お兄ちゃん…。」
「ちょっと、アンタどこから出てきてるのよ!」

驚愕の色を見せる愛媛をよそに、ロリスキーは人外の行動にツッコミを入れる。

「ふぅん。どこでも谷口ドアを使っただけだ。ニコニコ的に何ら問題はない。」

しかし、ツッコミを入れられても人外は不敵。自分のペースを崩さない。

「さて、それでは始めようか、地図氏にロリスキーよ。
 ガチホモのやつが貴様らに借りを返したがっていたが、どうやら貴様らの首を取るのは俺になりそうだな。
 フハハハハハハ!!」

高笑いと共に、人外は手にした虎竹刀をかざす。

「いくぞ、デュエル開始だ!人外のウォーゲーム、心おきなく楽しめ!」

人外の宣言により、虎竹刀から固有結界が発動。周囲を包み込んでいく。

「これって…。何が始まるのよ…。」

不安を隠せないロリスキー。その手を、爆弾がぎゅっと握りしめる。

「大丈夫だよ、クーちゃん。あいつの戦闘スタイルは、魔王様から聞いてる。
 それに、何があってもクーちゃんは私が守るから。」
「ちぃちゃん…。」
「ふぅん。仲の良さを見せつけている余裕があるなら、攻撃に備えておいたらどうだ?
 俺のターン、ドロー!」

人外が、自分のデッキからカードを一枚引く。

「手札より永続魔法『ずっと俺のターン!』を発動!
 このカードの効果により、俺は好きな時にカードを発動させることができる!」
「待て、それもはやターン制の意味ねー!」
「ナイスツッコミ。やっぱりクーちゃんは、ボケよりツッコミの時の方が活き活きしてるね!」
「んなこと言ってる場合かー!」
「いいなあ、仲良さそうで…。」

爆弾たちの夫婦漫才を、羨ましそうに見つめる愛媛。
そんなgdgdになりかけな状況の中で、人外は動じずにゲームを進めていく。

「ふぅん。俺はこの二体を攻撃表示で召喚する!」

手札から二枚のカードを抜き出し、デュエルディスクにセットする人外。
ちなみに本来のルールでは1ターンにつき1体しかモンスターを召喚できないのだが、その辺はずっと俺の(ryでうやむやになっている。

「出でよ…。GR版最速の人!マスク・ザ・ドS!」
『ええっ!?』

人外が口にした名前に、爆弾とロリスキーは声をシンクロさせて驚く。
彼女たちの目の前に、ふたつの人影が実体化していく。

ふんどし一丁のハクオロ ―GR版最速の人―
仮面を身につけた糸色望 ―マスク・ザ・ドS―

「さらに魔法カード、『万華鏡―華麗なる分身―』をドSに使用する!」

ドSの体が黒いオーラに包まれ、そのオーラが彼の体を離れて人の形になっていく。
やがてそれは、風浦可符香と木津千里の姿になった。

「また戦いにくい相手を召喚してくれたね。クーちゃん、大丈…クーちゃん?」
「あ、あああああああ…。」

意味のない言葉を発し、ロリスキーはがたがたと震える。
乗り越えたはずだった。しかし目の前に出てこられたことで、彼女の心の傷が再び開き始めていた。
光の宿らぬ瞳が、自分を責めているように見える。自分は死んだというのに、なぜお前は生きながらえているのだ、と。

「いや…いやぁ…。」
「クーちゃん、しっかり!あれは最速氏なんかじゃない!ただのそっくりに作られた偽物だよ!」

愛する者の声も、今のロリスキーには届いていない。

「ふぅん。過去の記憶に引きずられ、物事の本質が見えていない。心弱き者は実に哀れだな。
 最速、ロリスキーに攻撃!ドSは地図氏に攻撃だ!」

主の命令を受け、最速とドSたちは眼前の敵に向かって突進する。

「くっ!」

ドSを無視して、爆弾は最速に向かっていく。今のロリスキーでは、まともに戦えるはずがない。
ならば、自分が盾となるしかない。
だが爆弾の足は、強引に止められる。影渡りで背後を取ったドS(可符香)が、彼女を羽交い締めにしたのだ。

「しまった!HA☆NA☆SE!」

必死にもがいてドS(可符香)をふりほどく爆弾。だが、すぐに飛んできたドS(望)の鋼糸が再び彼女を拘束する。

(間に合わない…。クーちゃん!)

敵意を持った存在が近づいてきても、ロリスキーは防御も回避もしない。
無防備な顔面に、最速は躊躇なく鉄扇を叩きつける。

「クーちゃああああああん!!」

爆弾の絶叫をBGMに、ロリスキーの体が崩れ落ちる。
床に叩きつけられた彼女の額から、血がしたたり落ちた。

「他人の心配などしている余裕はないぞ、地図氏!まだドSの攻撃は終了してないZE!」

残っていたドS(千里)が、ぱちんぱちんと指を鳴らす。
それによって発生した衝撃波が、爆弾の両腕を切り落とした。

「グゥ…!」

「とどめは刺せなかったか…。まあ、1ターンでこれだけダメージを与えられれば上出来…。」

得意げに呟いていた人外の言葉が、途中で止まる。
彼の視線の先にあるのは、目を怪しく光らせドS(可符香)にかぶりつく爆弾の姿。

「偽物でも、血は吸えるんだね。おかげで助かったよ。まずかったけど。」

血を吸い尽くされ力尽きたドS(可符香)は、光となって消滅する。
吸い取った分の血を両腕の再生に回した爆弾は、体に巻き付いていた鋼糸を強引に引きちぎった。

「こっからは私のターンってことでいいんだよね!!」

野獣の如き瞬発力で、爆弾が跳ぶ。
あっという間にドS(望)の眼前にまで迫ると、容赦なく右手をその胸に叩き込んで粉砕する。

「まだまだぁ!」

消滅しつつあるドS(望)を払いのけ、爆弾はドS(千里)に向かって跳躍した。
勢いそのままに振るわれた左腕は、敵の首から上を粉々に破壊する。

「次は…。」
「おっと、そこまでだ、地図氏。1ターンに許される攻撃は一人1回まで。
 ドSは三人で一人の扱いだからここまでの攻撃は許されたが、すでにお前のターンは終了している!」
「そっちが決めたルールなんて知るもんか!」

人外の言葉を無視して、最速に襲いかかろうとする爆弾。
だがその行く手を、「右!左!A!B!」という弾幕がふさぐ。

「駄目だよ、こなちゃん。ルールとマナーを守って楽しくデュエルしなきゃ。」

弾幕を放った本人である愛媛が、爆弾に忠告する。

「そっちは俺ルールを適用してるくせに、都合のいいことを…!」

殺意に満ちた視線を、ジョーカー二人に送る爆弾。
人外は鼻で笑って受け流すが、愛媛は心の底からとも思える落胆の色を見せる。

「せいぜい吠えるがいい!俺のターン!最速でロリスキーに攻撃!」

再度の攻撃命令を受け、最速は倒れるロリスキーに向かって再び鉄扇を構える。
それを、ロリスキーは他人事のようにぼんやりと見つめていた。

(ああ、私殺されるのかな…。でも、しょうがないよね。私は最速さんを死なせちゃったんだから…。)
(そうやって、よけいなことまで背負い込んで死ぬつもり? だからアンタはアホなのよ!)
(え?)

突如頭の中に響いてくる、自分なのに自分ではない声。
ロリスキーがとまどっている間に、体が勝手に反応して最速の攻撃を回避する。

(ちょっと、どうなってるの?頭打ったせいで、私どうにかしちゃった?)
(違うわよ、バカ。もっとしっかりしなさい!)
(気軽にひとのことバカとかアホとか言うな!…ってあれ、こんなこと、前にもあったような…。)

ロリスキーの脳裏に、数時間前の出来事が蘇る。
仮面ライダー書き手に食われ、死んだはずの自分。しかし気が付くと、無傷で病院の地下に横たわっていた。
そう、確かにあの時も…。

(ひょっとして、あの時の『もう一人の私』…?)
(そう。元々今のアンタの体は九割方私の体がベースだからね。少しぐらいなら動かせるし、こうして話しかけることもできる。)

「避けただと…? この短い時間で、どうやって立ち直った?」

何が起きているのかわからない人外は、思わず疑問を口にする。
そんな敵の様子などお構いなしに、ロリスキーともう一人のかがみ…スーパーかがみんとの会話は続く。

(とにかく、私がこうやって話しかけた理由はただ一つ!
 うだうだしてないでさっさと戦いなさいよ、こののろま!)
(い、いきなりそんなこと言われても…。無理だよ…。だって、最速さんは私のせいで…。)
(だからアホだって言ってんでしょうが、このすっとこどっこいがー!)
(悪口ばっかり言うなー!)
(そりゃ言いたくもなるわよ!あれは単に最速のデータを再現してるだけ!
 本当の最速とは完全に別人なのよ!
 考えても見なさい!「外見がかがみだから攻撃できませんでした」でこなたが殺されたら、アンタ納得できる?)
(……できない!)
(でしょう? 今の最速が、その状況なのよ。本当に彼のことを大切に思ってるなら、あの偽物を倒しなさい!)
(わかったわ!)

決意を固め、それを誇示するアクションとして拳を握る。
息を大きく吸い込み、ロリスキーは叫んだ。

「私のターン…!最速に…攻撃ぃぃぃぃ!!」

両の手を前に突き出し、ロリスキーは衝撃波を放つ。
衝撃波は最速の体を巻き込み、木っ端微塵に粉砕した。

「はあ、はあ…。」
(お疲れ様。アンタもやればできる子なんだから、もっとしっかりしなさいね?)
(うん…。)
(さてと、私はもう退散するわ。おそらく、もうこうやって話しかけることもないでしょうね。)
(え…? まさか、これで力を使い果たしちゃったとか…。)
(いや、死者介入はほどほどにしておかないと叩かれるし。)
(メタ的な都合かい!)

たまらずツッコミを入れるロリスキーだが、それに対するリアクションは帰ってこない。

(ありゃ、もう行っちゃったか…。)

複雑な気持ちを込めて、溜め息をひとつ付くロリスキー。
そこへ、爆弾が駆け寄ってくる。

「クーちゃあああああああああん!!」
「ちぃちゃん!!」

爆弾の小さな体を、しっかりと受け止めるロリスキー。そのまま、二人は強く抱き合う。

「クーちゃん…。よかった、無事で…。」
「大げさねえ…。何も泣かなくても…。」
「そういうクーちゃんだって泣いてるじゃん!」
「あれ、本当だ…。」

すっかりピンクのオーラに包まれる二人。しかし…

「貴様らぁぁぁぁぁ!!まだデュエルが終わっていないのに、俺を無視してイチャイチャするなー!!」

人外の怒号が、ラブラブムードを吹き飛ばす。

「ここまで虚仮にされるとは思っていなかったぞ…。これだけは使いたくなかったが、仕方ない。
 貴様らに神(笑)を拝ませてやる!」

1枚のカードを手にする人外。そのカードをのぞき見て、愛媛の顔色が変わる。

「だ、駄目だよお兄ちゃん!そのカードだけは!」
「黙れ、愛媛!俺はこのカードで、勝利へのロードをつかんでみせる!」

愛媛の忠告にも耳を貸さず、人外はカードをデュエルディスクにセットする。

「儀式魔法…『神(笑)の儀式』発動!」

宣言と同時に、カードから黒い霧があふれ出す。やがてそれは、塔全体を包み込んだ。

「んー、いよいよ真打ち登場ってところかな?」
「そんなところだ…。」

爆弾の問いに、人外は狂気をはらんだ笑みを浮かべながら答える。

「このカードはフィールドか手札から、☆の合計が8になるようモンスターを墓地に送ることで発動する。
 この場合の☆とはキルマークのこと。俺は手札からデビルシャリダム、熱血王子、アルレッキーノを墓地に送る。」

名前を呼ばれた三人の姿が、人外の前に実体化する。
だが、彼らはこのまま戦いに繰り出されるわけではない。
これから始まる儀式の、哀れな生け贄だ。

「彼らを生け贄にし…降臨せよ、鬼超神聖究極世界魔帝王全知全能唯一神(アルティメットワールドインテリジェントデーモンエンプレス・ゴッドカーニバルアトランティス)HAL!」

 けひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!!

耳障りな笑い声と共に、闇の中から一人の少女が姿を現す。
それは、涼宮ハルヒ。否、涼宮ハルヒ「だったもの」。
ニコロワの彼女は、すでに人間をやめてしまっている。だからこそ、人外も彼女を召喚するためのカードをデッキに入れておいたのだ。
地に降り立った鬼超神(ryは、無造作にデビルシャリダムに手を伸ばす。そして、

喰った。

バリバリ、ボリボリ、という音と共に、シャリダムがHALの口にねじ込まれていく。
やがてその体を完食すると、HALは熱血王子に食らいつく。彼もHALの胃の中に収まり、最後に残されたアルレッキーノも同じ運命をたどる。

「召喚、完了だ…。」

食事を終え完全に実体化したHALを見て、人外はにやりと笑う。

「うーん、なかなかに壮絶…。クーちゃんは大丈夫だった?」
「まあ、自分が同じことやってなきゃ耐えられない光景だったわね。」

一部始終を見ていた爆弾たちは、冷や汗を浮かべつつ言葉を交わした。

「さあ、ここからが本番だ…。HAL、爆弾とロリスキーを攻撃しろ!」
「はあ? ちょっと待ってよ!1ターンに攻撃できるのは1回だけじゃなかったの?」
「その通りだ。だが俺のフィールドには、『ずっと俺のターン!』が存在している。
 これが有れば、1ターンに何度でも攻撃宣言ができる。今までやらなかったのはただのお遊びだ!」
「ちょ、どんだけ俺ルールですか!」

抗議にはいっさいの反応を見せず、HALは二人に襲いかかる。
元からHALが使えるなのはの魔法、うどんげの弾幕、長門の情報改変、古泉の超能力、水銀燈の羽根。
それに加えてたった今吸収したシャリダムの触手、熱血王子の光線、アルレッキーノの炎が一斉に二人に向かって放たれた。

「いやいやいや、カオスってレベルじゃないよね、これ!」
「とりあえずあれ、ハルヒじゃないよね!私は認めないよ、あれがハルヒとか!」

わめき散らしながら、逃げまどう二人。
衝撃波やレヴァ剣での迎撃は行っているものの、いくら処理してもさらに攻撃が繰り出される。

「きりがないよ、ちぃちゃん!やっぱり、こっちから打って出ないと!」
「それはわかってるんだけどねえ…。この攻撃の嵐じゃ遠距離攻撃は届かないし、接近戦もできないし…。」

ロリスキーの提案に対し、愚痴る爆弾。そこに、一瞬の気のゆるみが生まれる。

「しまっ…!」

爆弾の足を、触手が絡め取った。動きが止まった彼女に、カオス弾幕が迫る。

(うわ…。さすがにこれは、私でもやばくない?)

珍しく焦りを見せる爆弾。だがカオス弾幕が彼女に炸裂しようとしたそのとき、別のものが彼女の視界を遮った。
それは、「こなあああああああああゆきいいいいいいいいい」という弾幕だった。

「え…?」

予想外の事態に、爆弾もロリスキーも驚く。そして、弾幕を張った張本人でさえも自分の行動に驚いていた。

「あ、あれ…? 私、なんで…。」
「愛媛ぇぇぇぇぇ!何をやっている!なぜ貴様が俺の攻撃を邪魔するのだ!」
「ご、ごめんなさい!なんだか、体が勝手に動いて…。」

人外に怒鳴られ、愛媛は半泣きでぺこぺこと頭を下げる。

(どういうことだ。愛媛の様子があまりにもおかしい。
 だいたい、先程から驚きの黒さがかけらも発揮されていないではないか。
 待てよ…まさか……。)

人外は、一つの可能性に思い当たる。
そもそもニコロワにおいてつかさが驚きの黒さに染まったのは、姉であるかがみが死んだのがきっかけだ。
だが今、愛媛の前にはかがみ=ロリスキーがいる。
原因がなければ結果もない。ロリスキーの存在が、驚きの黒さを押さえ込んでいるのでは?
その結果としてつかさ本来の人格が強く愛媛を支配し、こなたとかがみを助けようと無意識に考えているとしたら…。

「愛媛!貴様はいったんここから…。」
「愛媛さん!」

愛媛に撤退を促そうとした人外の声を、ロリスキーの声が遮った。

「愛媛さん、あなた本当は、私たちと戦いたくないんじゃないの?
 だったら、力を貸してよ!私たちが戦う理由なんて何もないじゃない!
 一緒に行こうよ!主催者と戦おうよ!」
「お姉…ちゃん……。私は………私は……。」
「何をぐらついている、愛媛!今更我々が主催者を裏切れると思っているのか!
 改心しかけた熱血王子を闇に落としたのは誰だ? 貴様だろう!
 なのに貴様があっさり寝返る? 虫がいいにも程があるわ!」
「ああ……あああ………!」

人外の言葉が、愛媛の心を抉る。
そうだ。自分は熱血王子を闇に引きずり込んだ。
また改心しようものなら、それを阻止しようとまで考えていた。
自分がいなければ、お姉さまは死ななかったかもしれない。
したらば孔明も、熱血怪人も、孤高の黒き書き手も、漆黒の龍も…。
熱血王子が殺した参加者たちは、自分が殺したも同然だ。
そんな自分が、今更主催者を裏切って対主催につく?
そんな都合のいい話、許されるはずがない。

「駄目……駄目なの……。私はもう、罪に汚れてる……。」

愛媛の心が、黒さを取り戻していく。視覚的な変化はないが、彼女の周りの空気が重くなっていることはその場の全員が感じ取れた。

「負けないで、愛媛さん!罪なら私にもちぃちゃんにもある!
 言い訳なんてできない罪が!でも、それは永久に許されない訳じゃない!
 きっとやり直せるよ!罪滅ぼしはできるよ!」

「罪滅ぼし……。」

ロリスキーが口にしたフレーズに、愛媛の心は激しく揺さぶられる。

殺し合いに乗った罪が許されると書いたのは誰か。
仲間を信じられずに殺してしまった罪が許されると書いたのは誰か。
紛れもなく自分だ!

「辛かったら誰かに頼っていい!泣いてもいい!奈落にだって、花は咲くよ!」
「騙されるな、愛媛!やつは単に味方を増やしたいだけ!貴様のことなど考えてはいない!」

「わ、わ、私は…私は………。」

愛媛の体が、ガクガクと激しく痙攣し始める。
柊つかさとしての思考。ニコロワ書き手としての思考。書き手ロワのキャラとしての思考。
それらが、彼女の中で反発しあっていた。
このままでは彼女の存在そのものが保てなくなり、精神はおろか肉体まで破壊されかねない。

「むう、これはちょっとまずいねえ。仕方ない、荒療治でいくか!」

状況を静観していた爆弾は、そう呟くとデイパックから1冊の本を取り出した。
そして、それを上空へ放り投げる。

「みWikiさん、カモーン!」

PON!という音と共に、本は空中で可憐な美少女へと姿を変える。
そして優雅に着地……とはいかず、顔面から床に叩きつけられた。

「あわわ…メガネメガネ、メガネはどこですかー?」
「うーん、このシリアスな空気でもやってくれる…。さすがはドジっ子だね!」
「んなこと言ってる場合か!」

爆弾の頭に、ロリスキーのツッコミチョップが炸裂する。

「で、みゆきを呼んでどうするの?彼女にも説得に参加してもらうわけ?」
「んにゃ。さっき言ったじゃん、荒療治だって。ちょっと支給品借りるよ、クーちゃん。」

爆弾は無遠慮にロリスキーのデイパックへ手を突っ込み、一本の杖を取り出した。
それは「カードキャプターさくら」出典、さくらの杖。
しかもさくらカード全種類付きという、大当たりアイテムである。
これの存在をついさっきまでロリスキーが忘れていたというのは、もったいないの一言に尽きる。
しかし爆弾は、別にこの支給品の能力そのものを使いたいわけではない。
彼女が欲していたのは、「魔法使いの杖」というアイコンなのだ。
さらに彼女は、自分の着替えの中からメイド服を取り出す。
そこ、「このロワ、メイド服何着出てくるんだよ」とか言わない。

「みWikiさんにメイド服とさくらの杖を装備!これによりみWikiさんは、魔女っ子メイドみWikiさんにレベルアップする!」

爆弾の宣言と共に、彼女の両手にあった杖とメイド服が光となってみWikiに吸い込まれる。
そしてみWikiは、フリフリでピンクなコスチュームを身に纏った魔法少女へと変身を遂げた。

「な、なんじゃこりゃあああああああ!!」
「こほん、解説させていただきます。」

いきなりの意味不明な展開を前にして絶叫するロリスキーに対し、みWikiはメガネをくいっと押し上げながら解説を始める。

「魔女っ子メイド。元ネタはらき☆すたの小説版第2巻、『らき☆すたオンライン』において私の元キャラであるみゆきさんがレアアイテムの力で変身した『魔女っ子メイドみゆきさん』です。」
「そういえばそんなのもあった気が…。で、それがこの状況となんの関係が?」
「魔女っ子メイドが使える魔法が、ここで役に立つのだよ。じゃあみWikiさん、お願い。」
「わかりました、こなたさん。」

爆弾の指示を受け、みWikiは呪文の詠唱に入る。

「らきらき☆るきるき☆すたたたたーん
 みゅっきー☆りっぷで
 お嬢様、愛と正義の魔法のお時間です~」

あまりに雰囲気ぶちこわしな呪文に、脱力するロリスキー。
しかし発動した魔法の壮大さに、そんな気分も吹き飛ぶ。
杖から発生する、無数の星。それらが寄り集まり、光り輝く巨大な鳥となる。

「攻撃目標はつかささん!行きなさい!」

みWikiの攻撃宣言と共に、光の鳥が飛翔する。

「む……!HAL!攻撃を阻止しろ!」

気が付けば蚊帳の外におかれていた人外だが、攻撃を阻止すべく手持ちぶさたになっていたHALに指示を出す。
だが、時すでに遅し。光の鳥はあっという間にHALの横をすり抜け、愛媛を捉えた。

「うにゃあああああああ!!」

間の抜けた悲鳴と共に、まばゆいという表現では生ぬるいほどの光が発生する。
思わず目を閉じるロリスキー。しばらくして彼女が目を開けると、そこには都合よく彼女の前に吹き飛ばされた愛媛の姿があった。

「愛媛さん!……って、あれ? これって…。」

ロリスキーは、すぐに愛媛の異変に気づく。
藤色の髪に黄色いリボン。ピンクと白のセーラー服。
それはまさに、ロリスキーが知る柊つかさの姿そのものだ。
しかし、それはつかさの姿であり愛媛の姿ではない。
愛媛の姿は、「全身黒ずくめの柊つかさ」なのだから。

「これが、今の魔法の効果です。すなわち、黒いものを白く塗りつぶす。
 原作では、暗黒騎士ななこ先生を聖騎士に強制クラスチェンジさせています。」
「なるほど、驚きの黒さを浄化するにはうってつけだったわけね。」

そうこうしているうちに、愛媛が目を覚ます。

「ん、私は…。」
「気が付いたわね、愛媛さん。気分はどう?」
「えーと、なんだかすごくすっきりしてる…。まるで憑き物が落ちたみたいな…。」

そう語る愛媛に、黒さは微塵も感じられない。原作におけるつかさにより近づいた状態だ。
よかったよかった、と和む一同。しかし、一人面白くないのは人外だ。

「ええい、なんだこの超展開は!HALが圧倒的な強さで奴らをたたきのめすはずが、なぜこんなことに…。
 もういい…。HAL!愛媛もろとも奴らを粉砕!玉砕!大喝采!してやれ!」

怒り心頭の人外の命令を受け、HALが再び攻撃を開始する。
触手が、アクセルシューターが、座薬が、炎が、羽根が、ふもっふが、レオビームが、一斉に4人に襲いかかる。

「また来たわよ、ちぃちゃん!どうするの?」
「みんな、力を貸して。」

ロリスキーに対しそう答えると、爆弾はおもむろに手を前に突き出す。

「何をする気…?」
「今、私たちの中のらき☆すた因子は最大限に活性化している。これを集めて放出すれば、あの攻撃も跳ね返せる!」
「でも、それって愛媛さんの力も借りるってこと?」
「私は……。」

愛媛の顔に宿るのは、明らかな迷い。
驚きの黒さは浄化されても、彼女のジョーカーという立場まで消えたわけではないのだ。

「愛媛さん…今だけでいいから、力を貸して。
 このままだと自分も死ぬ。理由はそれでもいいから。」

真摯な表情で、愛媛を説得する爆弾。
すでに、ロリスキーとみWikiは爆弾を同じように腕を突き出している。
あとは愛媛だけだ。

「私は……。」

カオス弾幕が、4人の目前にまで迫る。

「私は……!」

愛媛が、スッと手を伸ばす。

「ごめん、人外お兄ちゃん、ニコロワのみんな……。私は……この人たちを死なせられない!」

4人の手が、揃った。

「キターーーーーーーー!!行くよ!」

爆弾が、腹の底から叫ぶ。


「らき☆すた流究極奥義………もってけ!セーラーふく!!」


4人の手から放たれるのは、セーラー服をかたどった巨大なオーラ。
それはカオス弾幕を片っ端からはじき飛ばし、前進していく。
やがてオーラはHAL本体に接触し、瞬く間にその体を蒸発させた。

「なっ……!!」

あまりにあっけないHALの最後に、唖然とする人外。
しかし、状況がいつまでもそうしていることを許さない。
HALを倒したセーラー服オーラが、そのまま人外に向かってきたのである。

「くっ、この俺が、こんな巫山戯た技にやられるわけには…!」

必死に手札を探る人外だが、この状況を打破できそうなカードはない。
結局、何も手を打つことができぬうちに、オーラは人外に命中した。

「ぐあああああああああ!!」

雄叫びを残し、人外は塔の下へと落下していった。

「人外お兄ちゃん、ごめんね…。」

涙を流し、その場に座り込む愛媛。
他のメンバーは、そんな彼女にうかつに声をかけられない。
これまでずっと一緒にいた相手を裏切ったのだ。
元キャラに深いつながりがあるとはいえ、たった今出会った自分たちに何ができるというのか。

(本当に人間関係をややこしくするね、なりきりシステムは…。
 まあ、今回はそれに助けられたんだけどさ。)

それでも愛媛の心を少しでも楽にしてやろうと、爆弾が彼女に話しかけようとしたそのとき。
異変は、起きた。

「ちょっと、何よこの揺れは!」
「じじじ地震でしょうか? でも、ここってたしか巨大メカの中では?」
「うーん、見事に揺れてるねえ。」
「みゆきの胸見ながら言うな!セクハラ親父か、アンタは!」

相変わらずのゆるゆるトークの中、愛媛だけが顔を青くする。

「これは…フォーグラーの内部が作り替えられている?でも、こんなことができるのは人外お兄ちゃんのカードだけのはず…。」
「危ない!」

思考にふける愛媛は、爆弾の発した警告への反応が一瞬遅れた。
そして、その一瞬が命取りとなった。愛媛の真下の床が崩れ、彼女の体はそこへ吸い込まれていく。

「愛媛さん!!」

叫びながら、とっさに手を伸ばすロリスキー。
愛媛も、それをつかもうとする。

あと30㎝、20㎝、10㎝…。

じゅっ

「え……?」

ロリスキーも愛媛も、何が起きたのかすぐにはわからなかった。
下から飛んできた光の矢が愛媛の腕を消し飛ばしたのだと二人が理解できたのは、彼女が血をまき散らしながら闇の中に落ちていってからであった。

「え……愛媛さぁぁぁぁぁん!!」

悲痛な叫び声を上げ、自分も飛び降りようとするロリスキー。
だが、爆弾が背後からしがみついてそれを止める。

「駄目だよ、クーちゃん!」
「離して、ちぃちゃん!つかさが、愛媛さんが!」
「この塔そのものが崩れてる状態じゃ、危険すぎる!それに、下に敵がいるかもしれないんだよ?」
「でも…でも!見捨てられないよ!」
「くっ…!みWikiさん、力貸して!いったんここから離れるよ!」
「は、はい~!」
「愛媛さぁぁぁぁぁん!!」

なおも叫ぶロリスキーを強引に連れて、爆弾はその場から移動を開始した。


【2日目・深夜】【D-7 大蟹球フォーグラー内部・塔エリア】

【地球破壊爆弾No.V-7@アニロワ1st】
【状態】:泉こなたの姿
【装備】:激戦@漫画ロワ、レヴァンティン@アニロワ1st、マジシャンズレッドのDISC、巫女服(鷹宮神社)@らき☆すた
【道具】:支給品一式、着替え用の衣装(複数)、アダルトグッズ(大量)、泉こなたのスクール水着@漫画ロワ、みWiki@らき☆すた
【思考】:
 基本:クールなロリスキーと共にある。
 1:打倒主催者でハッピーエンド!
 2:クーちゃんには悪いけど、いったんここを離れるよ。
 3:はぐれた仲間との合流。
 4:そういえば、感電ちゃんはどうしよう。
 5:いざとなったら『地球破壊爆弾』使うしかないのかな。


※基本的に中身はアーカードで、CVは平野綾です。
※変化する姿に7つのバリエーションがあるらしいです。
【1:地球破壊爆弾】【2:アーカード】【3:長門有希】【4:泉こなた】
【5:銃撃女ラジカル・レヴィさん】【6:キングゲイナー】【7:1~6とか目じゃないよ?びびるよ、まじで】
※クーガーの早口台詞が言えます!
※鎖鎌、鳳凰寺風の剣、ソード・カトラス、ノートPCの投影が可能です。
【スーパーキョンタイム】
 地図氏以外の者はゆっくりとしか動けなくなります。一度使うとそれなりの時間使用不可能です。
【地図氏の地図】
 参加者の位置、生死を含めた地図を投影できます(※長門有希の状態でのみ可能)
 使いすぎるとアレなので、毎晩0時にのみ使う事にします。



【クールなロリスキー@漫画ロワ】
【状態】:不死者、吸血姫、スーパーかがみんと融合、パニック
【装備】:巫女服(鷹宮神社)@らき☆すた
【道具】:支給品一式、カードデッキ(龍騎)、AK-74(残り28発)、未定支給品(0~1・ロリスキー確認済み)、
     着替え用の衣装(複数)、『村雨健二』の衣装、キュートなシルク仕様の裸エプロン、日焼け止めクリーム(大量)、GL本
【思考】:
 基本:地球破壊爆弾No.V-7と共にある。
 1:愛媛さぁぁぁぁぁん!!
 2:はぐれた仲間と合流。
 3:もう迷わない。
 4:ちぃちゃんの支えになる。



※容姿は柊かがみ@らき☆すたです(翼と尾が任意で顕現します)
 柊かがみの髪の色をしたドラゴンにもなれます。
 ヴァルセーレの剣の刃でできた羽を三対六翼持っています。尻尾はマリンデビモンの触手が変化して8つです。
※スーパーかがみんと融合し、彼女の記憶と能力を継承しました。
 柊かがみがその時点で使った事のあるあらゆる力、アイテムを使用できます。

【みWiki@書き手ロワ2nd】
【状態】:魔女っ子メイドみWikiさん
【装備】:メイド服、さくらの杖(さくらカード全種類付き)@LSロワ
【道具】:なし
【思考】:
 1:地球破壊爆弾に従う。


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最終更新:2008年07月10日 19:01
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