BRAVE PHOENIX


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「なんですか、聞きたい事って」
「この際だしストレートに言うけどさ……」

煩悩寺には魔王のその言葉があたかも死刑宣告のように聞こえてならなかった。
次の言葉を聞けば、自分は終わる。
そんな気がしてならなかった。
だが煩悩寺に魔王の言葉を止める明確な理由は存在しなかった。
ただ黙って魔王の言葉を待つしかできないのである。
そして魔王の口が開く。

「ステルス、もうばれているよ」

一瞬の静寂。
煩悩寺は一瞬頭が真っ白になった。
目の前にいる魔王が何を言ったかきちんと理解できない。

「え、え、あ……」
「君がステルスしているのはとっくに分かっているんだ。
 おとなしく降参してくれるかな」

意味が分からなかった。
幻術『M・Yデザイア・ベルはティアナ・ランスターなのか?』によって地上の参加者全員に『エロスの鐘の煩悩寺≠魔法妖女デザイア・ベル』という認識が植えつけられているはずだ。
いままで多少怪しまれる事はあったが、なぜいきなり完全に看破されたのか理解不能だった。

「正直に言うと、会った時からな~んかおかしな感じはしていたんだよねえ。
 で、それが確信に変わったのはホテルでのイベントを終えてからだね。
 どうやらパワーアップした事で君よりランクがさらに上になったんだと思うよ」
「だ、だから、私の幻術が――」
「ああ、もう効かないよ。残念でした~」

煩悩寺を絶望が襲う。
もはや魔王は自分がデザイア・ベルだという事を完全に分かっている。
勝てない、エロス頂上決戦の時ですら敗北したのだ。
あの時ほどエロ力がない自分と、ホテルで強化イベントを遂げた魔王とでは全く勝負にならない。

「それにさ、最近僕もエロスの方面の研究には熱心でさ。この間なんかギリギリのところまでいっちゃったよ」
「え? 魔王さんってアニロワ2ndで最近そんな事……って、まさか!?」
「そのまさかさ。もう僕は自分の記憶が更新されている事も自分がどういう存在なのかもしっかり把握しているんだ。
 強化イベントを終えて此の方考察する時間はたっぷりあったからね。
 だから最近のロワの事もばっちり把握しているよ」

最悪の事態だ。
もう何もかもが魔王にはお見通しなのだ。
終わり。
そんな言葉が煩悩寺の頭をよぎる。
終わり、自分も何もかも終わり。
終局、終焉、終了、終末。
終わりの意味する単語が煩悩寺の頭を掻き乱す。

「さてと、じゃあ君には僕の推測が正しいのか判断してもらうよ」
「……いや――」

そこで魔王は煩悩寺の異常に気付いた。
煩悩寺は今にも崩れそうな身体を必死に繋ぎとめようと自分を両手で抱きしめている。
それだけならまだ理解できる。
それに加えてありえないほど震えているのだ。
まるでこの世の終わりが訪れたかのようだった。

「い、や……あ、あ、あ……ッ―――――ッ!!!!!」

次の瞬間、煩悩寺の姿は霧のように掻き消えた。
消える瞬間に『Optic Hide』という電子音が聞こえたので不可視状態になる幻術魔法を使用した事は分かった。
だがその魔法なら時間と運動で効果が薄れる事を思い出した魔王は周囲に注意しながら煩悩寺の動きを窺った。
30秒……1分……3分……5分……10分……
一向に動きがない事にさすがに魔王も疑問を抱いた。
姿を消したのはてっきり自分の不意を突いて亡き者とする策略だと踏んだのだが、それは魔王の杞憂に終わった。

「失敗だったなあ。もう少し穏便に済ませようと思っていたのに……仕方ない。
 将軍達に合流するか」

魔王は将軍達と合流するため病院方面への道を急いだ。

魔王は知らなかったが、あの時煩悩寺はミッド式の幻術魔法『オプティックハイド』と同時にエロ妄想魔法『いけない透明人間』も発動させていたのだ。
効果が似たような魔法の二重使用によって煩悩寺は魔王に気付かれる事なくその場からの離脱に成功していた。
だが離脱には成功しても煩悩寺の心はもう見る影もなくボロボロだった。

(……いや、いやだ……私……私って……何もない……
 無力……情けない……いや、こんな自分が、いや……もう、どうでもいい……)

煩悩寺は亡霊のように当てもなく彷徨い歩いていく。


          ▼


「ロリスキーさん」
「……こなた、本物なの……」

そこにいたのは大切な、とても大切な人だった。
ずっと一緒にいたいと願った――世界中で誰よりも愛する人だった。

「うん、本物だよ」

そんな事は言われなくても分かっていた。
私がこなたを、地球破壊爆弾No.V-7を見間違えるはずなんてない。
だけど、それでも、目の前の光景が信じられないで、ただ息を飲むしかなかった。
こなたも同じようだった。
二人が静かに見つめ合う――その距離……ほんの数メートル。
永遠に別れたと思ったその距離は今ではもうほんの少し。
歩み寄れば、手を伸ばせば、届く――そんな距離。

だけどその距離を自分から縮めようとはしなかった。

身体が石になったかのように動かない。
手を伸ばせない、足が進まない。
理由は分かっていた。
怖いからだ。

「ロリスキーさ――」
「――来ないでッ!」

近づこうとするこなたを拒絶の意思で止める。
今度近づいてきたら、本当に今度こそこなたを殺してしまう。
私は厄病神、だからみんなを殺してしまう。

――本当は誰も殺したくなんかないのに。

「…………」

こなたがひどく悲しそうな表情でこちらを見ている。
その視線が少し痛い。
でもダメだ。
近づけさせてはダメだ。
それに……許されるはずない。
私はこなたを殺しかけた。
信じてくれたこなたを、私の中のかがみは、容赦なく蹂躙した。
マダオ、DIE/SOUL、ネコミミスト。
傷つけた、傷つけてしまった。
とても自分勝手な理屈で自分を弁護して傷つけた。
こんな自分が許されるなんて虫が良すぎる。

「こなた……さよな――」

だから別れの言葉を告げようとした。
これ以上ここにいたら自分でも何を仕出かすか分からないから。
もうみんなに迷惑かけたくなかった。
だからここからいなくなろうと思ったのに――

「――!?」

言葉は最後まで紡ぐ事を許されなかった。
目の前にあるのは世界で一番愛する人の顔。
それが少し恥ずかしかった。
気づいたら二人の距離は0になっていた。
私の口はこなたの口で塞がれていた。

一瞬とも永遠とも言える触れ合いは本当に温かなものだった。

「ロリスキーさん」

こなたが私の名前を呼ぶ。
すごく嬉しかった。
もう流れきったと思った涙がまた溢れてくる。

「さよならなんて……絶対に許さないよ」

こなたも泣いていた。
なんでこなたが泣くんだろう。
私はあんなにひどい事したのに……嫌われても仕方ないのに……


「一緒に生きてほしい……ずっと隣にいてほしい……」
「え、あ、わ、私は……」
「私……分かったんだ……」

もう永遠に失ったと思っていた温もり。
それが私の心を優しく包み込む。
あれほどあった負の感情はいつのまにかちっぽけなものになっていた。

「泉こなたの50%……アーカードの30%……長門有希の10%……レヴィの5%……地球破壊爆弾やキングゲイナーの4.9%……」
「…………」
「……そして残りの0.1%……合わせて100%、ちぐはぐな100%だけど――」

こなたの目が、声が、言葉が、想いが、願いが、私に向けられる。
それは本当に痛いくらいに私に届いてくる。

「それでも私はロリスキーさんの事が世界中の誰よりも大好きです」

こなたはそう告げた。
その顔は泣いていたが――今まで見た中で一番の笑顔だと思った。
本当に嬉しかった。

「……わ、私は……」

私の声はどうしようもなく震えていた。
怖かった。
私はこなたを、マダオを、DIE/SOULを、ネコミミストを傷つけた。
いまさら許してもらうなどできるはずがない。

「私はそんな言葉をかけられる資格なんてない。
 私は……みんなを傷つけた……
 自分勝手な理屈を押し付けて被害者ぶって……最低だわ……
 だからこなた、もういいの……私なんかに近づいたら今度こそ……
 私は厄病神だから……もう許される事もない……
 だから殺して――」
「そんな事ない」

こなたの声が私の言葉を断ち切る。
その言葉は優しくて、ともすれば救われそうで。
でもそんな都合よく許されていいはずない。

「確かにロリスキーさんは間違えたのかもしれない。
 でも、私はロリスキーさんを許す。みんなだってきっとそうするはずだよ。
 だって……ロリスキーさんは仲間だから」
「……仲間」

仲間。
なぜかひどく心が落ち着く単語だ。
皮肉ね。
さっきまで一人になろうとしていたはずなのに。

「罪は罪でしかない。
 だけど、ロリスキーさんは後悔しているよね」

こなたの言葉にゆっくりと頷く。
本当は嫌だった。
でもどうしようもなかった。
自分の気持が、身体が、暴走する。
でもこんなものただの虫のいい言い訳でしかない。
どれだけ取り繕うとも私は――

「後悔しているならそこからやり直せばいいよ。
 私は……ロリスキーさんを許す。
 ずっとそばにいて支え合いたいから。
 だから……」

こなたの手が伸ばされる。
その手は何なのだろうか。
掴めばどうなるのだろうか。
……とっくに自分では分かっているくせに。
……こなた、私じゃその手は掴めないよ。
ごめんね、こなた。私やっぱり――


「私はずっとロリスキーさんと一緒にいたい。
 いつまでも隣にいて、一緒に楽しい事も苦しい事も二人で分かち合いたい。
 だからロリスキーさん! 手を繋いで!
 私はロリスキーさんの事を精一杯愛する。
 本物じゃないのかもしれない、でも! 私はロリスキーさんが世界で一番大好きだから!
 答えて、ロリスキーさん!
 ロリスキーさんの本当の気持ちを言って!」

私の本当の気持ち……それはずっと前から決まっている。
でも今の自分にそれを貫くだけの資格があるのか不安だった。
資格……そんなもの、言い訳なのかな。
私は……本当はどうしたいのだろう。
分かっている、ちゃんと分かっている。
ただ勇気がないだけだ。
この一歩がどうしても踏み出せないんだ。
私は……私は……私は――

――ドクンッ

「――ッ!?」
「!? ロリスキーさん――」
「ダメッ!! 来ないでぇぇぇ!!!」

ああ、私の中の『柊かがみ』が、行き場を失ってざわめいている。
ニコロワのやるせなさと、アニロワ2ndの殺意と諦観と、漫画ロワの恐怖と、カオスロワの悪夢が混濁する。
ダメだ。
このままじゃまたみんなを殺してしまう。
早く、早く、ここから立ち去らないと――

「え?」

私は自分の身体を押さえつけるので必死だった。
そんな身体を誰かが優しく包み込んでくれた。
私を抱きしめてくれた彼女はとても温かくて優しくて――

「離れてよ、こなた。でないと、また私はこなたを――」
「私はロリスキーさんを信じているから」
「…………」
「ロリスキーさん言ってくれたよね。
 私が100%愛せないなら、100%以上で私を愛するって……
 だったらさ、ロリスキーさん。
 柊かがみに飲み込まれないで! ロリスキーさんはロリスキーさん!
 柊かがみでもかがみんでもない! 私が大好きなのは漫画ロワの書き手、クールなロリスキーさん!
 私はずっとロリスキーさんを信じているから――だから!!!」

こなた……でも、もう私は……
背中に顕現しているマリンデビモンの触手の尾が獲物を求めて暴れだす。
同じく背中のヴァルセーレの刃の羽より蓄積されているエネルギーが溢れだす。
二人を中心に赤い炎と衝撃波がコンチェルトを演出する。
下手したら本当に今度こそこなたが死んでしまう。

「いやよ、そんなの」

もう会えないと思っていた。
会えると思っていなかった。
そう、答えなど当の昔から決まっていたではないか。
資格とかそんなものはこの際後から考えよう。
だから今は……今だけは……

ロリスキーを中心とした乱舞が終局を迎える。
中心にはクールなロリスキーと地球破壊爆弾No.V-7――どちらも目立った傷はない。
周囲には触手が突き刺さっていたり地面が抉れていたりするが、二人は無事だった。

「はあぁ……はあぁ……こなた、私は一緒にいて……こなたの事、好きでいていいのかな」

ロリスキーはギリギリのところで自分の中のかがみの力と折り合いをつける事が出来た。
だから震える声で改めて聞く。
本当に自分がこなたの隣にいていいのか、と。


「もちろんだよ」

こなたの答えは聞く前からもう分かっていた。
こんな私でも許されるのなら、抱きしめられるなら、その手を掴みたい。
ゆっくりと手を伸ばす。
30㎝……20……10…………5…………届いた。
しっかりと互いの手を握り締める。
掌からこなたの温かさが伝わってくる。

そしていつしかその手は相手を抱きしめていた。
互いの温もりが心地いい。
触れ合った場所から伝わるものが私のささくれていた心を癒してくれる。

私とこなたの目が合う。
綺麗な瞳。
しばらく互いに見つめ合う。
そして――

――どちらともなく唇を合わせる。

「――……ん」

それは一瞬のようで永遠のような触れ合い。
互いが互いを求めあい、互いが互いをからめ合う。
心と心が触れ合う。

「――……ふう」

そしてどちらともなく離れてまた見つめる。
もう大丈夫。
これから新しい一歩を踏み出していく。
こなたと二人で。
仲間と一緒に。

「ロリスキーさん、言っておきたい事があるんだ」
「なによ?」
「私はロリスキーさんの事が世界中の誰よりも好き、これは偽りのない私の気持ちだよ。
 でもね、同時に『地図氏』としてwiki管理人に勝利したいとも思うんだ。
 だから、その、もしかしたらロリスキーさんを危険な目に遭わせるかもしれない――」
「えいっ」

こなたの頭にチョップを叩き込む。
痛がっているみたいだけど、演技よね絶対。
全く何を言い出すかと思ったら……

「いい、こなた。
 そりゃあ、こなたの方が強いのは確かだけど、私だって自分の身ぐらい自分でなんとかするわよ。
 それに、信頼できる仲間もいるしね。
 だから、やりたい事やりなさい。こなたがやろうとする事だし、できる限り応援するわ」
「ロリスキーさん……」
「ただし、無茶だけは禁止よ。分かった?」

結局、こなたは渋々といった具合で頷いてくれた。
本当、放っておいたら一人で抱え込んでいそうな感じがあるし、そこがちょっと心配だ。
私が支えられるのはもちろん、私もこなたを支えたいと思っている。
そんな関係をこれから改めて築いていきたい。

「これからもよろしくね、こなた――地球破壊爆弾No.V-7」
「こちらこそ、かがみん――クールなロリスキー」

――今は共に燃やした焔を明日への灯にして 震えてもいいからぐっと前を見よう この胸に小さな勇気と 奇跡を……

「ところでさ、かがみん」
「なによ、こなた」
「そろそろ服着よっか。風邪引くよ」
「へ?…………きゃ///」

そういえば……起きてからずっと裸だったんだあ……


          ▼


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