地獄紳士は大変な××を盗んでいきました(前編)


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「それそろいいんじゃない? 出てきても」
真夜中のたった一人の公演の後、彼女はぼそりと呟いた。
激戦に継ぐ激戦の末廃墟を越えて粉末と化した学校の上空。
唯でさえ地上にも何も無いのだから、その上空など無の集合体でしかない。
星々すら無くしたこの空に強いて有をあげるとするならば……無の闇そのもの。

『おやおや。何時から私がここにいると気付いたのかな?』

その闇が、何処か山彦のような遠さと共に音を立てた。
何も存在せぬ闇の空に、一段と濃いブラックホールのような闇が生まれる。
「だってねえ……タイトルで名前出してちゃ丸分かりじゃない。666ちゃん」
『ははは……確かに、これでは幾ら私でも奇襲的に登場は流石に無理だ。
 いや、私も君と同じ考えでね。最終的なことを考えて、この中央に陣取ることにしたんだよ』
「戦略とか戦術には興味が無いわん。私がお墓を作るのを待ってくれたのは素直にありがとうと言うけれど…
 私と貴女は多分初対面。まずは姿を現すのが礼儀というものじゃないかしらん?」
おどけた調子とは裏腹に、コロンビーヌは少しずつ少しずつ周囲にゾハナ虫が展開されていく。
『いやはや申し訳ない。今は少しばかりドレスアップ中でね? とてもじゃないが見せられたものじゃないんだ』
その闇から声はハッキリと聞こえるのだが、肝心の声の主はそこに引き籠ったまま姿を現さない。
『とりあえず、私が君に声をかけたのには二つの目的がある。
 まずは感謝の意を表明したい。君がギャグ将軍に私のことをぼかしてくれたおかげで、こうして自由に動き回ることが出来る』
嘘偽りの無い音調で地獄紳士はコロンビーヌに感謝の意を告げる。
言うまでも無く、将軍とコロンビーヌのチャットの内容及びデータ送信についてのことだった。
『いまこうしている現在も将軍の複製が攻撃をかけていてね。
 恥ずかしながら「今の」自分では手持ちのデバイスや機器を守るので精一杯なんだ。
 地図氏の電子戦が一点を集中して突破する槍だとするなら将軍の電子戦はまさに水だ。
 360度から染み入ろうとして、もし何処か一箇所でも穴が開けばそこから浸水してくる。
 もし将軍がもう少し私の情報を得ていれば確実に侵略されていただろうよ』
ギャグと電子戦というのはカテゴリ的に交わることはそう多くない。
だが、その融合系となった将軍の「いい電子戦」(ファミ通的な意味で)はいわば昭和の頃の科学の具現だった。
鉄腕アトムとか初期ドラえもんのような「なんでもできる科学」をベースとした将軍の攻撃はつかみどころが無い。
地獄紳士といえど、現在の状況をかんがみれば防壁を強固にし守勢に徹するよりなかった。

「あらあら、別に感謝される覚えはないわよん♪
 貴女の愛の形を見極めるまでは、私の知らないところでそれを消されるのは面白くないとおもっただけ」
『そうか……私の愛の形は見えたかな?』
「秘☆密。もう一つは何かしらん?」
『なに、私に肩入れしてくれるついでに、一つ頼みごとをしたいのだよ』

ニィという笑顔の歪曲の音が聞こえそうなほど、近くで囁かれた様な気がした。
この夜半の世界において闇との距離は零にも無限大にも近似できる。

「……聞くだけなら聞いてあげるわん」
『F6に赴き、そこにいる参加者達を排除して欲しい。君のスキルなら子供のお遣い程度の話さ』
「私が携帯電話を持っていると知った上での話しかしらん?」
コロンビーヌは顔を顰める。携帯電話を持っている彼女はある程度の予測を立てていた。
第三次放送時点で孤城の主にエントリーしていない書き手が、おそらくはいるはずだ。
そして当の携帯電話が今彼女の手元にあるという事実と将軍の動向からが、空白の時間を埋める。
消去法でホテル組…つまり相手はギャルゲロワ勢、いや、極論すればバトルマスターと蟹座氏だ。
「蟹座氏はともかく、バトルマスターには勝てっこないわん。それじゃ体のいい当て馬じゃない」
『なあに、第三放送の後から状況はそれなりに推移してね。彼の固有結界は残弾が残り少ない。
 私が決戦に望む前に削っておきたいのさ。
 あれは私と少々相性が悪いが、君のサバイバビリティならば使わせつつ生き残ることもできるだろう?
 あと、まだまだ孤城の主が続きそうだからイベントを提供したい、というのもあるがね』
―――もっとも、アインソフオウルの場合は君でも無理だがね……使わせれば一気に削れるから私としてはありがたいのだが。
666は最後の言葉だけは腹に溜めて、押し隠した。
バトルマスターの固有結改・アインソフオウルは言ってしまえば鬼札だ。
蘇生すらバトルとみなせるあの技は、不死の存在である666とて問答無用で圧殺できる可能性のある数少ない銃弾である。
彼の魔力を減耗させることでその危険を軽減したいというのが、666の狙いだった。
あと、後者の問題も結構切実だ。旅館組とホテル組の推移を知っている方ならばその意味が朧気に分かるだろう。

『さて、答えを聞かせてくれないかな? 元々ラヴハンターである君は私とバトルマスターを見極めようと動いていたはずだ。
 ならばこの提案は君の意とさほど相違が無いと信じているのだが』

無数の闇と無数の虫が宙を舞う中、しばしの沈黙があたりを包み込む。
しばらくの後、閉じた瞳を開いたコロンビーヌは淡々と言った。
「お 断 り だ わ ん」
その言葉を引き金としてあたりの空気が一気に引き締まる。闇はさらに濃密に、虫は大量にその存在を増していく。
『……一応理由を聞かせてもらえると助かるのだがね』
「とりあえず、私が紳士ちゃんの提案を蹴るのには二つの理由があるのよねん?
 一つは単純に、私を弄ぼうとする貴女が気に食わないということかしら。
 自由であってこそ愛の天使はあらゆる愛を育むの。だから私は誰よりも自由でありたいわ。
 それに誰かが言ったとは思うけど……何もかもが貴女の予定通りにことが進むというのは、あまり面白くないわよねん。
 愛とは様々な障害があってこそ燃えるもの。だからとりあえず、面白そうだから断っておくわん」
指をふってカラカラと笑うコロンビーヌ。666のプレッシャーは強烈であるが、そこに気後れは微塵も無い。
『な、る、ほ、ど。成程成程。愛に障害は付き物か……いやまったくその通りだ、返す言葉も無い』
闇の中からパンパンと乾いた拍手がした。だかそこには賞賛と意は欠片すら見当たらず、
どちらかといえば何か善くないものを闇の底から招き寄せるかのような印象の音だった。
『ともなれば、私もまたその障害を越えるための努力をする必要があるね……惜しみなくさせてもらうとするよ』
ズズズと音が聞こえそうなほどに闇が流動する。
コロンビーヌが自分の全周を蟲で囲む。皮膚から1ナノメートル先を埋め尽くすようにして展開されるゾハナ虫に隙間は無かった。
不意打ちに絶対の警戒を為して敵の出方を伺う彼女の前に出現したものは、彼女の予想を超えていた。

「……牛丼?」

闇が門を形成し、ゴゴゴと音を立てて広がる様はまるで王の宝物庫のようだった。
そこから現れたのは、プラスチックのパックだった。
プラスチックのフタがパカリとひとりでに開くと醤油のふんわりとした芳香があたりを包んだ。
少し脂身を落とした安物の肉はしっかりと煮込むことでくどめの味付けであることが香りで分かる。
そこに混じる、ほんのり甘い玉葱の香りと炊き立てのご飯の風味豊かな香りが三位一体となって食欲をそそる。
自動人形である彼女でなければ、唾の一つでも流しかねない香りの奔流。
一食一杯、一日三食、週七日。計21個の牛丼(特盛り)が整然と並び影から浮かんでいた。
666が持つ王の財宝と対を成すもう一つの混沌の宝物庫。
そこに封じられた物の一つ……葉鍵ロワ3にて川澄舞が支給された、一週間分の牛丼その全てである。
毒気を抜かれたコロンビーヌを嘲笑うかのように、闇よりウルトラミキサーが浮かんだ。
指を鳴らす音が聞こえると、ハーメルンの笛吹きに誘われたかのごとく牛丼が整然と列を成しウルトラミキサーに放り込まれていく。
あっという間に21人前の牛丼は容器の中に納まり、最後に添えつけの卵と紅生姜、
山椒も忘れずに投入。ダメ押しとばかりに支給された食料10人前も投入れされたのが確認されるとスイッチが入れられた。
ガガガと音が鳴り響く。肉の脂身もタンパク質も米も汁も区別無く平等に切断され粉砕され混在されて、自己と言う境界を失っていく。
そのいやな音が鳴り止んだとき、あれだけあった牛丼はその全てが液状と化して存在していた。

「食べ物で遊んじゃいけないってパパママに言われなかったかしらん?
 ただでさえLSの書き手なんだから子供への影響考えなさいよ」
『うちのロワには詮の無い忠告だが受け取っておくよ。それに安心したまえ、これはスタッフが後で美味しく頂くから』

そう666が言うが遅いか、見えざる糸が切れたかのように牛丼液入りのウルトラミキサーが落ちていく。
あわや地面に墜落し、牛丼をブチ撒けろ状態になるかという刹那それが急停止する。
ミキサーを掴んだ手の先には、真っ黒な隊員服を着た血の気の無い男の姿。
「熱血王子、貴男地獄紳士とつるんでたのね……でも一体何をするつもり……ってまさか、貴女」
『漫画ロワの君になら分かるだろう……さ、熱血王子よ、飲むんだ』
「……ハイ、天使サマ……」
愛媛が彼にとって祟神だとすれば、地獄紳士は崇神だった。
ぼそりとうわ言の様に信仰の対象の名を捧げ、熱血王子は躊躇いも無く繋ぎの水も併せて10リットル以上あるそれを飲み始めた。

遥か上空まで聞こえてくるずず……ぐびぐびーっという牛丼を「飲む」音を聞きながらコロンビーヌは人形ながらに青褪めていた。
「まさか……バキの……」
『そう、奇蹟が起こる』

真・驚きの黒さという猛毒に侵され極限まで衰弱しきった少年の精神。
そこへ影の繋ぎ師や熱血怪人、漆黒の龍によって与えられたチートライダーダメージによって更なる負担が加わり、
守護騎士システムとクレイジーダイヤモンドで無理矢理再構成された身体にエネルギーなど残っているはずも無く、
人体最後のエネルギー貯蔵庫である肝臓のグリコーゲンもリンカーコアの魔力も底をついていた。
僅か6時間足らずの間に行われた酷使に継ぐ酷使……もはや破壊されつくした彼の身体組織達。
黒さからの感染を受けた彼等は細胞一つ一つが怨念を以って復讐を誓っていた。
次なる酷使に対する復讐。
つまり今後もし 同じような戦闘が起こったなら…………必ず……

「力……? コレガ俺ノ本当ノ……力……許サレルタメノ…力!!」
必ず独力で乗り越えて、あの変態ライダー達を戮殺し許しを得ると!

もはや人ならぬ神域に達した地獄紳士が創造りたもうた肉体。
神の誓いし復讐に手加減も過失もありえない!
今、闇の囚人熱血王子の身体に空前の

超 回 復 が 起 こ ろ う と し て い た ! !

「まさか、漫画ロワでもない貴女が……」
『矢張り漫画ロワの書き手を回復させるのは漫画の手法ということだよコロンビーヌ君。
 15キロに達する牛丼汁……糖によって甘く味付けられた牛丼が滅びかかった彼の身体を復元させる。
 ましてやこの期間あれほど肉体を酷使してきたのだからね。おそらくは彼の身体は以前より当然……』
呆然とするコロンビーヌと、未だ姿を現さぬままほくそ笑む666。
熱血王子の身体から魔力と生命エネルギーの混ざり合った黒き霧がムンムンと放出され天へと立ち上っていた。
湯気を立ち上らせ見る間に皮膚に艶を取り戻していく熱血王子は懐から何かを取り出す。
それは白い仮面だった。
般若のような意匠を持ち、顔の上半分をみつしりと覆うことのできるその仮面を顔に装着する王子。
「!?」
コロンビーヌが驚くよりも早く、異変の進行は進んだ。
ヒュッケバインボクサーと脳細胞レベルで融合し、そして敗北によって剥がされた熱血王子の露出した半欠けの脳。
執念と闇の経線だけでシナプスと人の形を支えてきたそれを補完する様に仮面から伸びる無数の繰糸が埋め込まれる。
その度に王子の喉奥から喜悦に近い奇妙な声が漏れて、涎をたらしながら身体を小刻みに痙攣させていた。
『当然レプリカだが……いやはや、ギャルゲロワは恐ろしい。主催陣営とはいえこんなものを末端にまで支給するのだから』
時間にして、僅か数秒程度の出来事。
全ての脳細胞と首より上の神経筋骨全てに掛けて無数に突き刺さった針、即座に黒く染まった異形の仮面。
カオス宝物庫の中に収められたギャルゲロワの財宝……ハクオロの仮面を元にディーが作りし悪魔の仮面。
それを装備した熱血王子はまさしく正真正銘の『悪魔』だった。

「っ……マズいわ」
携帯電話によって熱血王子の能力を知っていたコロンビーヌはその不味さを即座に悟り蟲を王子の下へ送り込む。
そう、熱血王子は烈海王式回復術とディーの仮面によって「基礎ポテンシャルのみ」を底上げして悪魔の域に達したのだ。
既に存在する更なる段階においてのステータスを強化するために。
「力、もっと力、もっともっとチカラもっともっとおおおオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」
涎を撒き散らしながら吼える彼の両の手に嵌った指輪。そこに付きしは黒く染まった鷲巣麻雀牌とレイジングハート。
コロンビーヌは悪い予感を確信に変えて蟲を急がせる。
『言っただろう? 努力はさせて貰うと……虚栄の闇を払い、真実なる姿現せ。あるがままに……アルテマ!』
熱血王子とゾハナ虫の間に純粋な魔力が集まり、蒼きスフィアとなって爆散する。
闇の中で唱えた地獄紳士のアルテマが、先頭集団の虫達を駆逐し勢いを散らす。
「……アルテマとは豪勢ねん」
『何、未だ解析不十分なのでラムザのへっぴりアルテマしか撃てぬが、時間稼ぎには十分だよ』
コロンビーヌは内心で舌を打った。
ゾハナ虫は効果範囲十字五マス程度のアルテマなどでは駆逐できるはずも無いが、勢いを殺がれてしまった。
故に僅か無さで間に合わない。そう、悪魔が行う悪魔になるための変身を止められない。

「変身ッッ!!」

ゾハナ虫が殺到し、熱血王子を取り囲むようにして到着した順次爆破が行われていく。
濛々と煙が上がり生きとし生けるものなどありはしないといえそうな大爆発を見ながらもコロンビーヌは笑みを浮かべられなかった。
ゾハナ虫が集まるより一手早く、麻雀牌とレイジングハートが重なり合う様を見てしまったから。

「殺ス……許サレル……タメニ…殺ス!!」

爆風が風に煽られて消えうせ、そこに人影があった。
本来ならば声が赤木しげるで身体はウルトラマンレオになるはずの変身は、今までと異なっていた。
ウルトラリングによって変身した熱血王子の姿は、仮面をつけた高町なのは指導教官そのものだったのだ。
黒化によって裏返った成長を果たしたウルトラリング。
そして「川澄舞」に支給された牛丼一週間分と、ディーが作りし「般若」似の面。
陰と陰、2つの田村ゆかり要素に熱血王子の体内のなのはさん成分の何か。
憎悪と悲哀によって脳から分泌された脳内麻薬か、
あるいは闇の中でせせら笑う地獄紳士が与えた負の無限力によってもたらされた多幸感。
そしてその昂ぶりから形造られてしまった化学物質か、
あるいはそれら全てが彼の内部で出会ってしまい化学反応を起こしスパークしたとしか考えられない現象だった。
田村ゆかり分が追加されたことによって、
変身時の熱血王子を構成するウルトラマンレオ・赤木しげる・なのはさんの三均衡が崩れなのはさんが完全に主体となった変身。
その証拠と言わんばかりに、熱血王子の背中にはウルトラマンレオがウルトラマンキングに授けられた黒きウルトラマントが、
熱血王子の両の手には鷲巣麻雀に必須の黒手袋が装着されていた。
黒きウルトラリングを崩壊させてまでの無理な変身。既に熱血王子に退路という概念は無かった。
ウルトラマンの成分がほぼ払拭されたことによって2分30秒という変身時間の壁をぶっちぎり、
中盤あたりから殆ど終始変身後はなのはさんとだけ認識されてきた彼は名実共になのはさんへと進化した。
そう、つまり……、


『復ッ活ッ』
『熱血王子復活ッッ』『熱血王子復活ッッ』『熱血王子復活ッッ』『熱血王子復活ッッ』
『熱血王子復活ッッ』『熱血王子復活ッッ』『熱血王子復活ッッ』『熱血王子復活ッッ』
『熱血王子復活ッッ』『熱血王子復活ッッ』『熱血王子復活ッッ』『熱血王子復活ッッ』
『熱血王子復活ッッ』『熱血王子復活ッッ』『熱血王子復活ッッ』『熱血王子復活ッッ』

それを讃えるかのように闇のあちらこちらから地獄紳士の声がする。
残響反射拡散ドップラー効果、あらゆる音の相が絶えず変化する中でマントをはためかせる熱血王子。
ウリだったツインテールで整った銀髪も、仮面の奥の瞳も、そのバリアジャケットも全てが黒一色で染め抜かれている。

「って、バリアジャケットぉん!?」
コロンビーヌはそのクリッとした丸い瞳を更に丸くして驚きを露にした。
そう、いままでは体がウルトラマンだった為気にする必要もなかったのだが彼はもともと魔術師よりの能力者ではない。
なのはさんとなったからとはいえ、その形態はタイトにスーツを着こなした指導教官スタイルであるはずだ。
それが「バリアジャケットをもっている」ということが意味することをコロンビーヌが理解する前に、ゾハナ虫の第二波が王子を襲う。

「ということは、あるのね……デバイスが」
『まさか熱血王子がミニ八卦炉を手中に収めたことに因果が無いと思っていたのかい?
 アレは我がロワにてなのはがやりたい放題する際に用いた殲滅兵器。
 既にレイジングハートは指輪として今まで存在していたし……最早なのはに相応しい兵装はコレしかあるまいよ』
熱血王子の右手にあるアカギ手袋。その手甲部分には宝石が鎮座していた。
金色の台座に乗った三角形の宝石。本来金の色をしているはずのそれは、やはり例に漏れず真っ黒に染まってしまっているが、
それは紛れも無く、あのデバイスに相違なかった。
高町なのはの嫁(諸説在り)であり朋友、フェイト=テスタロッサの持つ最強デバイスの一角にして、
アニロワ1stに於いてホテル大乱戦の折り高町なのはがるるるのルイズと激戦を繰り広げた際の得物。
黒い雷光を放ちながら待機モードを解き、熱血王子の手のひらの上で戦闘形態へと変じていく汚染されたソレ。

惰弱な闇を貫く雷神の黒槍、夜を切り裂き真なる無明へと誘う闇光の戦斧。
カオスバビロンがアニロワ1の財宝、みさえの支給品・バルディッシュ=アサルトのブラックカスタムヴァージョン。

(当然分かってると思うけど……散々666さんに迷惑かけて、挙句何度も何度も負けて…
 ここまでやってまともに仕事も出来なかったら、今まで殺した数なんて無意味なんだからね?
 他の人は一回きりで死んじゃうのに、3度目の生と力なんて熱血王子さんみたいなグズマーダーには勿体無いんだから…
 絶対、絶対にゆるされないよ? 恨まれて疎まれて虫けらの様な終わり方だよ? ケタケタケタケタケタケタ)
あああああッ!! ごめんなさい! ゴメンナサイ! ごめんなさい!!
ちゃんとやりますから、絶対、絶対殺しますから見捨てないでッ! 俺を赦してッ!!

「殺ス、全員、殺スゥ!!」

幻聴か、はたまた本当の声か、地獄紳士の飴によるつかの間の安堵は、愛媛の鞭によって一気に引き絞られる。
L5に近い強迫観念に押され、遂に得た飛行能力で空の闇を影渡りも絡めて縦横無尽に翔ける熱血王子。
破損しかけた青龍偃月刀、ルルゥの斧、ディーヴァの剣に鳳凰寺風の弓矢……
宝石の金色すら闇黒に染まった黒化に加え、槍・斧・剣・飛び道具。
即ち武具の基礎四形態を司る4つの武装と共にウルトラミキサーされることで
バルディッシュは熱血王子同様本来のものよりも一回り巨大化し、基礎スペックを遥かに向上させていた。
バーサーカーよろしく言語機能すらをも捨てて機能向上したバルディッシュの力は凄まじいものだった。
アサルトフォームから繰り出される黒い雷とダークシューターは虫を焼き払い、
ハーケンフォームから繰り出される鎌の一撃は死神のように虫の命を刈り取り、
ザンバーフォームから繰り出される斬馬の一振りは虫ごと大地すら斬りかねない。

虫にもあるだろう五分の魂を刈り取ることに一片の呵責すら見せずゾハナ虫を駆逐するなのはさん。
黒い天使の鎌を以って冥府へと送る白い悪魔。その光景はまさしく黒い悪魔そのものだった。

「wikiで見てたよりも大分能力が変わっちゃってるわねえ……
 でも、わたしのかわいい虫ちゃんはそんな玩具よりずっと凄いんだから。相性が悪かったと思って諦めなさい」
しかし、相手は世界を笑いの病に覆うほどの力を持った極小の自動人形。
密に集まったそれを蹴散らすことは出来ても、疎に散ったそれを滅ぼすことはバルディッシュでは叶わない。
プロテクションとバリアジャケットで爆発や集合攻撃は防がれているが、形勢は若干コロンビーヌに傾いていた。
だがその状況を正確に分析した上で、地獄紳士は姿無きまま哂った。
『確かに、相性が悪かったね。“ゾハナ虫を退かせ給えコロンビーヌ”。君の虫を潰すのは本意ではない』
「そ――――――」

それはどういう意味かしらん―――そうコロンビーヌが言おうとしたときだった。

「バルディッシュ……ブレイカーフォォォォォォムゥ!!!」
 <Breaker Form>

熱血王子が叫ぶと共に、バルディッシュの宝石部分に文字が浮かぶ。
バルディッシュ・アサルトには搭載されていない形態。
StSのライオットだろうか、否、アニ1出展ならばA’s仕様のはずである、つまりコレは……
『ミキサーにて融合させたのは後二つ。一つは凛の宝石6個、そして彼の最愛の得物だ』
リボルバー式のカートリッジシステムが発動し、ガシャコンと音が鳴り撃鉄が作動する。
膨大な魔力が一気に膨れ上がり、熱血王子の身体を覆う。
魔力そのものはラインとディスレヴを通じ十二分に供給されているが魔術師として未熟な熱血王子。
その素質を補うため、地獄紳士はある英断を下した。
一つは、カートリッジの弾丸。手持ちの5個と熱血王子の1個、計六個を全て加工し六連装リボルバーの弾丸六発へと変えたのだ。
これと666による「一時間にわたる熱心な教育」によって即席でありながら熱血王子は叩き上げの一級魔術師となった。

そしてもう一つは、熱血王子の能力を最大限に生かす新たなる形態の構築。彼の最良の奥義をスムーズに運用するため、地獄紳士はアレをバルディッシュに合成した。
そう、その名は勿論【破棄すべき全ての手】。バルディッシュ=アサルトBCに搭載された「宝具発動形態」である。
迸る魔力と共に、黒き魔力刃はその形を歪なものへと変える。そこに浮かんだのはまるで巨大なルールブレイカーだった。
「破棄す百節!」
それを振るい、無数の連撃が目にも見えぬほどのゾハナ虫……昆虫の「節」を切り刻んでいく。
手首・首・関節切断能力……宝具としての特性を全て継承したこの形態。
武器・身体共にスペックが向上したことでリミットをほぼ超越した彼にとってもはやジョイントブレイカーの痛みなど意味が無かった。
身体が物理的に動けなくなるほどの傷でもない限り、彼にとって痛みなど懺悔の前では無意味なのだから。
百連撃が終わった時、約四割のゾハナ虫がその存在が確認できぬまま死骸と化した。
コロンビーヌはごくりと唾をならす。もし666の忠告を聞き入れず虫を可能な限り下げなければ恐らくは7割が朽ちていただろう。

『これで分かっただろう? 悲しいかな、君と熱血王子では絶望的に相性が悪すぎる。
 ましてやこの月はおろか星すら失せた大暗黒の天。闇を閨とし闇黒に呼吸する彼を相手取るには地の利天の利が無い。
 どうか、私のお願いを聞いてはいただけないだろうか?』


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