激戦地を避け、西へと歩き始めた速筆魔王。姿こそたった一人だが、彼の手には二つの意思持ち支給品がある。
「あの、お恥ずかしながら、病院は……」
右脇に抱えられたまま控えめな声で伺いを立てるみwikiに、魔王は首を振った。
「今の状態で激戦に巻き込まれて流れ弾で死亡っていうのは一番避けたいパターンなんだよね。まずは足場固めをしてから、ってとこかな」
足場固めの必要もないほどにまっさらな旅館跡を踏みしめ、彼は進む。既に戦いの準備を固め切った勢力もあるかも知れない。焦りは禁物といえ、遅れをとるわけにはいかない。
考えを巡らせる魔王の左脇に抱え込まれたノートパソコンからは、おっさんがなにやら歌う声が漏れて来る。魔王は苦笑とともに呟いた。
「切り換え早いですね、将軍。しかしレパートリー豊富なことで」
「いや、このPCにはかなりのMP3が入っておるのでな。聞きながら歌っておる」
所々歌詞が曖昧だったり、音がずれていたりするのはそういうことか。たとえ音がずれていても楽しそうなその様子に、速筆魔王はふと首を傾げた。
「へえ。僕もちょっと気晴らしに聞いてみようかな」
自分もここらで一つ気分転換をしたくなった、というのもある。魔王は立ち止まってその場に腰を下ろすと、荷物からコードを取り出してiPodをパソコンと同期させた。
「っと、これで完了か」
iPodの容量をほぼ使い切った所を見ると、将軍の言う通り、よほどの数の音楽が入っていたらしい。
接続を切ってブラウズ画面を見ると、そこにはーーーー。
上機嫌で手拍子を叩くギャグ将軍がいた。
「……将軍、なにしてるんですか」
「音楽を聴いておる。見て解らぬか」
「これ、iPodですよ?」
む?と大文字で効果音がつけられたような動きで、将軍が辺りを見回す。
「このアルミの質感、明度の高い液晶、なにより音質……なるほど、これはたしかにiPod!」
驚き方が大げさになったのは二次元の存在になってしまったからか。確かめるようにパソコンに目を移すと、そこでも将軍が鼻歌を歌っている。
二つの画面を幾度となく見比べてから、速筆魔王は呟いた。
「これは、ひょっとして、ひょっとするかな」
デジタルデータの特徴は、複製が容易なことだ。そして何よりデータを別のメディアに移動させた時、元のファイルが残る所がアナログデータと違う。
つまり、iPodをパソコンと同期させたせいで、音楽データだけでなくギャグ将軍自体もiPodの中に複製されたーーーー冷静に考えれば、そういう結論になる。
速筆魔王はiPodのイヤホンを片耳だけつっこんで訊ねた。
「ねえ将軍。パソコンやiPodの中ってどんな感じですか?」
「ちと狭いが、悪くはないぞ。暖房も効いておるしな」
将軍が言っているのはCPUの発熱のことかもしれない。状況を想像しながら、魔王は更に問う。
「じゃあ、その中でも……戦えそうですか」
「無論。むしろ身が軽くなった気すらするわ」
将軍の手が修復された腹部をポンと叩く。振動こそ伝わって来なかったが、そこには見事な輝きを取り戻した黄金色の腹筋がある。
「ただし残念ながら、ここには相手がおらぬが」
「相手が出て来たら戦える。そうなんですね」
「うむ」
軽くシャドーボクシングなどしてみせるギャグ将軍の姿を、魔王は滑稽とは見ない。むしろ、真面目な顔で訊ねる。
「ねえ将軍、サイバーパンクって知ってます?」
「生憎、まだ食ったことはない」
おごそかな返答に、魔王は苦笑する。
「攻殻機動隊って見たことないですか」
「カニ道楽の競合店か?」
「ノリ突っ込みはしませんよ、僕は」
将軍のボケをさらりとかわして、魔王はメーラーを立ち上げた。
I thought what I'd do was, I'd pretend I was one of those deaf-mutes.
本文にただ一行書き入れ、BCCにアドレスブックに含まれていたすべてのアドレスを突っ込む。
「何をしておる」
ウインドウを小さくしてずらすと、出来た隙間から将軍が覗き込むようにして訊ねた。
「この世界に存在しているあらゆる電子機器に、貴方を送り込みます」
「……ほう?」
「正確には、貴方の複製を、ですけどね」
作成中のメールににドラッグされた将軍が「おっとっと」てな感じで軽くたたらを踏む。指を離し、メールの中に金ぴかハゲのアイコンが浮かび上がっていることを確認すると、魔王は満足げに伸びをした。
「つまり、余に電脳世界を征服してこい、と?」
横からメール作成ウィンドウを覗き込む将軍のハゲ頭の上でカーソルをすべらせると、何かを磨くような効果音が鳴る。
「誰がどこで何をしているか。それが解るだけでも大きな前進になります。ついでに主催者や他の参加者の企みが解れば儲け物、妨害でもできれば万々歳って感じかな」
ハゲ頭をクリックするとぺしぺし、と間抜けな効果音がして、将軍が不機嫌に手で追い払う仕草を見せた。
「少なくとも、最終決戦までの時間稼ぎにはなるでしょう。その間に、他の参加者と合流して対策を立て直します」
念のため、無線LANの状況を確認する。辺りにはなにもないのに、電波の受信具合は良好だ。流石はインターネット掲示板を母胎とする世界……いや、単に皆「ゆんゆん」なだけか。
「なるほど」
ギャグ将軍が軽くウィンドウを叩いた。その手には、いつの間にか標準装備だった金の杖が握られている。
「そちが肉体労働、余は電脳労働、と」
「そして頂くものは同じ、ってね」
魔王はぽん、とボタンを押した。最強怪人と言う名のウィルスを乗せたメールが、ネットの彼方へ向けて流れて行く。
ディスプレイの中に残されたオリジナルの将軍が書類らしきものを手ににやりと口元を歪めるのを見て、彼はノートパソコンを閉じた。iPodの中の将軍は、いつのまにやら現れたコーヒーカップを片手にご機嫌で歌っている。
速筆魔王はイヤホンをつけると、将軍と一緒に鼻歌を歌い始めた。
♪一人でいても複数形 性別なんてないけれど 書き手マンズは正義の味方 書き手マンズは平和のあかし……
【夜中】
【G8・旅館跡】
【速筆魔王LX@アニロワ2nd】
【状態】健康 首輪解除 心機一転
【装備】斬鉄剣@ルパン三世、技術手袋@アニロワ1st
【道具】支給品一式×8、みWiki@らき☆すた?、分解済みの首輪(素晴らしきフラグビルド)
首輪×3(地味子、◆wKs3a28q6Q、永遠のうっかり侍)、iPod
コーヒーセット一式@スパロワ、コーカサスブレス&ゼクター@ライダーロワ、
ジャーク将軍のマント@ライダーロワ、ノートパソコン 杖@ライダーロワ、王者のマント@FFDQロワ
バヨネット×2、核鉄「バルキリースカート」、ジャッカル(5/6)
銀河ヒッチハイクガイド、咎人の剣「神を斬獲せし者」@AAAロワ、ドラゴン殺し@アニロワ1st、他にまだあるかも
【思考・行動】
1:将軍を元に戻す為とりあえず新しい出会いを
2:熱血怪人の遺志を継ぐ
2:iPodとノートパソコンの中身を分析する
3:将軍の電子戦にちょっと期待
4:『白猫』って誰? あと『黒猫』?
5:対主催陣を探し、ゲームに乗った強敵を撃破していく。
6:みWiki?まあ、気が向いたらね。
7:あの連中には借りを返す
※主催者陣営に裏切り者がいるのでは、と考えています。
※首輪の構造を理解しました。
※夢の内容ははっきり覚えていますが、どうでもいいと思っています。
※みwikiが一段階強化されました。意思持ち支給品として近くの参加者と会話できます
【パソコンの中&iPodの中】
【ギャグ将軍@ライダーロワ】
【状態】:首輪解除 腹部にダメージ(治療中) 電脳空間に幽閉 心機一転 増えた
【装備】:電脳空間なのでない、はずですが……
【道具】:顔写真付き参加者名簿 支給品一覧(パスワードによりロック中) 地図
【思考】:
基本:新生クライシス帝国の結成。
1:閉じ込められたついでに電脳世界を征服してくれよう!
2:熱血怪人の遺志を継ぎ、仮面ライダー書き手と熱血王子を救う
2:『白猫』を探し出してくれよう!
3:同胞を冒涜したあの連中は裁きにかける
4:ついでに飲み友達を集める。
5:コーカサスゼクターの資格者を探し、コーヒーを飲む。
6:紅茶を飲むかどうかは保留。
7:対主催の仲間を集める
※なんか増えました。すべてのコピーが同じ能力を持っているのか、実体化出来るのかは不明です。
※一時的に実体(きぐるみ)を失っているため、キャラに何らかの変化があるかもしれません。
※制限がライダーロワ基準だと思い込んでいます。
※特殊能力:「書き手界の良心」に目覚めました。
本気の一喝を放つことにより、悪ノリし過ぎている者に自重を強いることができます。
ただし、ギャグ将軍の性格上、あまり多用されることはありません。
真剣な人生相談に乗ることも可能。なお、発動中はピンク色がかかった女言葉になります。
※背中に謎のチャックを確認。ギャグ将軍曰く、開けると「大変なこと」になるそうです。詳細は不明です。
※固有結界「コーヒーブレイク」
優雅なリネン一式の備わったテーブルと人数分の椅子を造り出し、皆でコーヒーを飲んで和みます。
それ以上の効果は確かめられていません。
コーヒーセット自体が発動させている可能性があります。
※ノートパソコンの中に、顔写真付き参加者名簿と支給品一覧(パスワードが設定されている)のデータが確認されました。
また地図を確認。参加者の区別が付かない第三放送時の参加者分布を知ることが出来ます。上級パスでさらに詳しく?
※書き手ロワ2ndに存在するすべての「アドレス」に向けて、データ化されたギャグ将軍が送信されました。
最終更新:2008年05月01日 18:47