最後の刺客


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薄暗い部屋の中で、小刻みに紙の擦れる音がする。
時計が秒針を刻むよりは遅く、呼吸を一度するよりは早く部屋の中で音が累積する。
深く、深く、深深と奈落が詰まるように紙が擦れて行く。
老婆の悲鳴のような音を立てて扉が開き、その部屋に光が差し込んだ。
後光を受けながら現れた男の影……裸になってすぐアッー~殺意のqwglOGQwIk~ことガチホモは
背を向けて何かに没頭する人物を見ながら言った。

「テイルズロワの方でバトルマスター達の足止めが入りました。
 残る参加者が孤城の主に集中している今、あそこはがら空きです」

黒い外套を纏ったその人物は声に反応せず、
ひたすらそのカードらしき紙を束にしたり解いたりを繰り返している。

「サスペリアの要望を聞く代わりに介入権利の対価を得ました。
 触手汁も全て使い切った今、恐らくはこれが最後の介入になるでしょう。
 ついにこの瞬間が来ました……貴方の出番です。人外」

その一言で音の堆積が止んだ。後ろを向いていた人物、
人外アドベンチャー~OZbjG1JuJMのウォーゲーム~が椅子を回転させてガチホモのほうに向き直る。
ガチホモは険しい表情を崩さず、なるたけ抑揚の無い声で言った。

「孤城の主、そして666の暗躍……チャンスは今を置いてほかに無い。
 地図氏は消えて失せたようですが、依然として状況は予断を許しません。
 参加者の目がそちらに行っている内にこれは成しておかなければ。
 問題は移動手段ですが……こればかりはどうにも」
「私が行くよ、ガチホモさん」

ガチホモの前に伸びる、まるで沼のようにどろりとした影から愛媛が浮上する。
病床に飽いて飛び出てきた子供を相手にするような瞳で、ガチホモは困ったような顔をした。
それを察したのか、愛媛は子供らしい無理をした笑顔を見せた。

「貴女はまだ寝ているように言っておいたはずですが。いけない子ですね。
 男だったら掘ってる所です。……で、実際行けるんですか?」
「えへへ、ごめんなさい。でも大丈夫だよ。闇がある夜なら回復も早いし、
 熱血王子さんの残念が私の闇に流れ込んでくるから……
 それに、666さんがあの人に仕込んだエネルギーも、少し漏れてこっちに流れているみたい」
「ということは……やはり、あの人は真・驚きの黒さを使いこなせてない?」
「どっちかっていうと、これを蒐集した闇の書を使いこなせてないんじゃないかな」

視線をはずして二人は個別に思考し、同じ結論に至る。
殆ど完全無欠と言っていい666のかろうじて残っている弱点がそれだ。
闇の書は彼女のゲートオブバビロンからの財宝。
そしてGOBの財宝は“あくまて持っているだけ”なのだ。
制限による上方修正……カシオペアなどの本来使えないものが何とか使えるようになる補正の方に目が行きがちだが、
その裏で本来の制限である担い手でない故に真の力は引き出せないという枷は未だ機能している。
管制人格が一言も喋っていないのがその証拠。
適合者でも契約者でも無い666は闇の書を唯使っているだけなのだ。
無論、複数のアイテムを兼ねて使うことによる死角の無さこそがGOBの骨頂であり、
熱血王子や四神合体、ディスレヴなどの様々な要素を複合することによって弱点はフォローされている。
影の繋ぎ師が最強のスペシャリストならば、彼女は最強のジェネラリストだ。

「ですが闇の書を使いこなせてないとなるとやはり暴走の目が出てきますが、
 それまで自我が持ちますかね? いや、彼女にも今の私たちにももう関係ありませんか」

その全てを分かった上での天元突破狙いだ。そんな制限はもうすぐ完全に意味を成さなくなる。
そこに彼女の自我がどれだけ残るかの話。多かれ少なかれたいした違いは無い。

「あの小娘の下らん妄執など一々論評するだけ無意味だ。
 俺を呼んだのはそれが理由ではあるまい」

紙の束…カードをきっちり揃えて、人外はすくっと立った。
それを見てガチホモは苦笑し、愛媛に確認の目線を送る。

「で、どうなんです体調は? 動けませんでした、じゃ済みませんよ?」
「戦闘はまだ無理だけど……サポートなら全然だいじょぶだよ。
 それに、人外のお兄ちゃんが帰ってくる足が必要でしょ? 私のはるちゃんを喚ぶくらいならなんとか」

しばし勘案した後、ガチホモは仕方なしと大きなため息をついてから二人を見た。
次の敵は間違いなく最強の一角。人外だけでは逆に返り討ちにあう可能性も否定できない。

「分かりました。無茶だけはしないでくださいよ……愛媛さん。
 では、お任せしますよ。人外。
 ここまで耐えに耐えて出番を待った貴方の力、存分に発揮してください」

ガチホモが扉への道を譲る。人外は不適に笑って、その一歩を踏み出した。

「ふぅん…まかせておけ。このローブを解き放ったとき、俺のロードを止められる者はいなくなるのだからな…… 」


× × ×

闇に輝く真円の月。その下にて一人の人物が座っていた。
コーヒーを飲みながらその傑物……ギャグ将軍は横目でそれを見た。
月の光に影を伸ばすのは地面に突き刺さり十字となった銃剣。
怪人としての責務を全うし死体も残さずに散った熱血怪人へのせめてもの墓標だった。
それをじっと眺めながら、コーヒーをすする将軍。
仮面越しからでもその複雑な感情がそのまま漏れ出している。

「いかんな……話し相手もいないとなると無駄にシリアスになってしまう」

意識的にスイッチを切り替えてぐいっとコーヒーを飲み干した将軍は
テーブルに置かれたノートパソコンに向かい直った。
あの一件から壊れない程度に何度か弄り回してみたが、どんなルートを経由しても弾かれてしまう。

「結局のところ全ての道はローマ…もとい、パスワードに集約されると言うわけか」

さらに調べなおして新たに見つけた項目を注視する。
そのカテゴリはズバリ地図及び参加者の現在位置データ。
こちらはパスワードなど無く閲覧でき、これは拾い物と幸いに調べてみた。
そこには驚くべき事実があった。注釈を信じるならば更新はタイムリリース制。
自分の行動半径から鑑みて、これは第三放送時点のものだろう。

「参加者個別個別の位置が分からんというのは不便だのう」

厄介なのは、これには生存者の位置しか分からないと言う点だ。
上級管理者……即ち地図氏のパスがあればリアルタイム更新や参加者個別の情報も入手可能らしいが、
現段階ではどうしようもない。
だが、それでもこの地図には大きな意味があった。

「しかしこれは……」
「どうかしましたか、将軍」

驚きに目を見開いている将軍に声がかけられる。
このエリアに残った命の残り。速筆魔王LXである。
その手には技術手袋が装備されており、首輪の残骸が握り締められている。

「その様子だと上手く行ったようだな?」
「ええ、自分の分も外せました。生きた人間の首輪も死体の首輪も大差ないですね」
「拍子抜けだのう……ライダーロワの書き手が言っても説得力が無いか」
「ははは……盲点と言えば盲点でしたけどね」

肩をすくめる将軍に、苦笑する魔王。
そのまま躊躇することなく将軍の首輪に手をかけて解体を始める。
考えてみれば首輪で書き手を殺すなどと主催側も本意ではないだろう。
書き手と言う特性上、無意味に複雑にする必要も無いのだ。

「iPodも直しました。それは後で聞くとして……そっちの首尾はどうです?」
「一進一退と言ったところだな。例のパスワードは分からん。
 新しい情報ソースとしては……やはりこれか」
「地図、ですか……しかしこれは……不味いですかね?」

魔王がスクリーンを覗き見て呆れたような困ったような声を出した。
今現状がどうなっているかははっきりとしないが、
第三放送時点ではっきりと残存勢力が集結し始めている。
細部の地理まで望めば提示してくれるこの地図に従えば……ラブホテル・この旅館・そして病院。
参加者は望む望まずに関わらずこの3つのうち何れかに関与している。

「特に病院が酷い。これだけ集まってしまうとどこをどうしたって人が死ぬ」
「やはりそう思うか。放送から既に数時間は経過してしまった。既に死人が出ているかも知れん」

婉曲に言葉を濁す将軍だが、魔王はそれを誤らず了解していた。
かも知れない、じゃない。間違いなく死んでいる。
なぜならここは書き手ロワイアルであり、自分が書き手ならまず間違いなく数人殺す段取りを立てるからだ。

「魔王よ、余はそろそろ動くべきかと思う。首輪の解除という最大の目的は達した。
 このままここに立て篭もった所で得られるのはあの熱血王子のような敵だけだ」
「確かに、対主催が集まるにここは適していますが守るには薄い。
 ここにやってくる人間が期待できない以上、能動的に動くしかないですね」

見解を同じくした二人。ならばコーヒーセットを片付けようか、そう思ったときだった。


「その必要は無い。既に病院に向かったところで間に合わんからな」

魔王と将軍が同じタイミングで突如聞こえた三人目の声の方を向く。
そこには風も無いのにローブの裾を靡かせる黒マントがいた。

「……コーヒーの匂いに惹かれてやってきた客人、という訳ではなさそうだの」
「あっちゃあ……将軍、多分あれはジョーカーですね」
「知っているのか魔王!」
「とりあえず雷電乙と言っておきます。同系統の理不尽な襲撃者に心当たりがありましてね。
 その立ち位置は掴めませんでしたが、まあ主催者側の手駒と考えてよろしいかと」

軽口を叩きながらも二人はじりじりと距離を開けて目の前の異物を観察する。
いったい何処から風を受けているのか、黒ローブが風に煽られて下半身のズボンが露出していた。
全身黒ずくめの外見も十分に異質だが、何よりもそれを異物たらしめていたのは、
マント越しにもハッキリと分かるその強烈なオーラ。決して雑魚の類ではない。

「将軍、あれをどう見ますか」
「ギャグオーラだ。だがそれだけではないな。熱血、シリアスが高次元で纏まった上級のオーラと呼べるだろう」
「ふぅん。ジジィ、どうやら人を見抜く目はあるようだな。
 その通り。俺の決闘者としての波動は常に闘いの風を生み出している」

いや、何がその通りなのかさっぱり分からないのだが。
と速筆魔王が突っ込もうとしたが、ギャグ将軍が不適に笑い返す様を見てやめた。
意思疎通が出来ているのであればいうこともないだろう。

「で、いったい何をしに来たのかな? 
 この前の奴みたいに空気を読まないことをするんだったら、同じ目にあってもらうよ」
「何、些細なコトだ。愛媛が作った木偶人形がどれほどのものか検分に来たが、
 その哀れな墓標を見る限りでは、どうやらその価値も無かったらしいな。
 凡骨は爆砕するのが世の常、これも当然の結果だ!!」

黒ずくめが振り向いた先には交差する銃剣の墓。命を賭して一人の男の罪を許そうとした男の果てがあった。
そしてその命を奪った黒き男にも悲痛なまでの許しを請う願いがあった。
その両方に対して鼻を鳴らして嘲る男を前にして、二人が紳士的に振舞うのにも限界がある。

「今の余は少々ナイーブだ……小僧、その命欠片も残らんぞ」
「ほう、やるかジジィ。老骨は大人しく臥して死ぬのを待つが身の為だぞ、ククク……」
「さてさて、死ぬのはどちらだろうねえ」

速筆魔王の殺気と共にあたりに黒き闇が広がっていく。
千年リング&虎竹刀によって闇のゲームが展開される前兆であった。

「賭けの対象は決まってる。互いの存在そのものがチップだ……さあて、選ばれるゲームは……?」

その時魔王は2つの違和感に気づいた。一つは、直ぐに決定される闇のゲームがまだ決まっていないということ。
そしてもう一つは、この最興のアイテムを前にして目の前の男があえて自分たちを挑発してきたということ。
大いなる意思の結果とはいえ、彼らは一度このゲームにてジョーカーの一人を失っている。
それを承知であえて彼は現れた。まるで、闇のゲームをあえて誘うかのように……!!

「まさか……」
「ようやく気付いたか。そのアクセサリの決定的な弱点に」
「弱点とは? 魔王よ、それは一体!!」
「簡単なことだジジィ。その非ィ科学的なアイテムは賭けの対象こそ任意に選べるが、ゲームの内容は選べん。
 だがそこにそのゲームにふさわしい人物が現れれば、ゲームの内容に指向性を与えることが可能だ!!
 ここで俺の特殊能力発動!! 俺の名を掲げることで、このゲームの選択権は俺が得ることができる!!」

闘いの風がその男のマントを一瞬で吹き飛ばす。
その瞬間に、温泉へと流れるはずの源泉が突如地面から噴出しあたりが湯気に覆われた。
飛沫に目をやられないように二人が目を腕で覆い、その男の姿が再び隠れる。
しかし隠しようもないほど濃密な臨戦闘気が、周りの激闘など無縁といった静けさの温泉に湯気と共に立ち上った。

「……千年リングが反応していた。嫌な予感が当たっちゃったかな……」
「俺の名は人外。人外アドベンチャー~OZbjG1JuJMのウォーゲーム~……ニコニコロワの最後の一人だ」

腕を組みながら、男は不敵に自分の名前を告げる。
そして終に、月の光がその人物の姿を鮮明にした。
白きマントと後ろの長い髪無風のはずの旅館で強くはためいている。
そして月光に白く輝くのは、白き龍を模したかのようなヘルメッツ。
その姿はまさに正義の味方、僕らの愛した社長の化身・カイバーマン!!

「またの名をモンスターの味方ジンガーマン! この闇の決闘は俺のウォーゲームにて行われる!!」

その言葉と共に人外の腕に決闘盤……海馬コーポレーションの粋を集めたソリッドビジョンシステム搭載の、
正直金と技術の無駄遣いと言わざるを得ないカードゲーム機が出現した。
人外の手に握られたデッキが決闘盤に装填され、彼の戦闘準備が完了する。

「このウォーゲームはアンティルールを採用している。
 闇の罰ゲームとは別に、勝負の決着時に敗者は一つアイテムを失ってもらうぞ……」
「それはいいけど、そちらには僕を満足させるアイテムが無い様だけど? ああ、その変なオモチャはいらないよ。
 いくら高性能でも、ダサいのは遠慮する」

魔王は笑みを絶やさないように勤めたが、うっすらと湧き上がる冷や汗は温泉の湯気ですら隠し切れなかった。
ギャグ将軍だけはそれに気付き、この勝負の不利を薄々悟る。
あのキャラの固有能力だけではない何かが、まだ控えているはずなのだ。

「ふぅん。その発言、貴様の寿命を縮めたぞ。
 ……確かに貴様に渡す物は一つとて無い。だが、貴様たちが欲するものは一つ用意してある。愛媛ェ! 出て来い!!」

人外の大声に弾かれた様にして愛媛がずぶずぶと人外の影から出現する。
その手は若干水に濡れており、微妙に不快そうな顔をしていた。
実は先ほど人外の登場にあわせて温泉が吹き出たのは偶然ではない。
地下の源泉の路をあのタイミングで愛媛が少し破壊しただけなのだ。
その理由はたった一つ。人外が「今更この俺が普通に登場などできるものか!」と言ったからだ。

「……あの~、一応私も病人なんだけど……」
「すでに仮面ライダー書き手は死亡が確認されている。
 そして先ほど言った通り、お前たちの仲間を手にかけた木偶はこの愛媛の力によって呪縛されている。
 分かるか? この小娘だけがお仲間の凡骨の願いを叶えられるのだ」

驚きの黒さといってもベースは柊つかさ。愛媛のさり気ない糾弾は当然人外の耳に入ることは無く、
人外の一方的な言葉が綴られていく。
しかしその言葉は将軍たちには途轍もなく重要な意味を持っていた。
熱血王子の呪縛を解くことが可能なのは、現段階ではその統制者である愛媛しかいない。
そしてそれは、熱血怪人がギャグ将軍に願った最後の言葉である。

「あの時の話を知っているとなれば……どうやら、あの小童が貴様の眷属であることは疑いないようだのう」
「お兄ちゃん……私を無視して話決めないでほしいなあ……」
「案ずることなど欠片もない! 俺が勝てば何も問題ないのだからな」
「……それもそうだよね。うん、じゃあいいよ。人外のお兄ちゃんに勝てたら、熱血王子さんを許してあげる」
「二言は許さんぞ。よかろう……魔王よ、この闘い余も参陣しよう」
「それは有難いですが、油断はしないでくださいよ将軍」

どうにもイニシアチブを取られっぱなしのまま進行する状況に砂を噛んだような感覚を覚えながら魔王は首肯した。
あの愛媛の余裕からして、これは圧倒的に向こうの方が有利なゲーム。
どのようなゲームになるかは分からないが、戦力は大いに越したことはない。

「じゃあ、私が磯野役(審判)します。黒いからだよ。
 基本は通常の戦闘。ただしお兄ちゃんはDM『風』に戦うので、モンスターを倒してもダメージを与えられるよ。
 お兄ちゃん側は積み込み・ドロー以外の手札補充はありだけど一応ルールとマナーを守って楽しくデュエルしてね。
 まあ、後は戦闘しながらノリでってことで……それじゃ、決闘開始!!」

愛媛の奥の闇から「開始!!」弾幕が張られ、遂に人外のウォーゲームが開始された。

「俺のターン! ドロー!! 俺は人外のキャラを書くのを得意としている。故に、俺が出すのはこれだ!」

先攻後攻を決める間もなく、速攻で山札からカードを引き抜く人外。
もっとも、相手側は開始時点で臨戦態勢なので実際後攻である。
決闘盤にカードを入れて、モンスターを出現させる。

「場に一枚のリバースカードを置き、フシギダネを攻撃表示で召還! ターンエンドだ!!」

出現したのは、背中に背負った大きな種が特徴のフシギダネ。
その後ろに一枚のカードも出現し、人外は動きを止める。どうやら本気で相手の出方を見るらしい。

「魔王よ。此度の闘い一見ギャグに見えるが、今までと比べ物にならぬガチバトルになる可能性がある。
 これに打ち勝つには仲間の協力という熱血展開の王道が必須。この戦、一切の指示を貴様に委ねる。
 奴が人外の化生を操って攻めるとなれば、お前も見事余を運用して見せるがよい!!」
「将軍……分かりました。貴方の命、僕が預かります。攻撃です、狙いは……人外!」
「承知!」

将軍が杖を掲げ、裁きの雷撃を放つは人外本人。
しかし、発せられるビームの先には既にフシギダネが先回りしていた。

「愚かな……場にモンスターが出ている状態で俺にダイレクトアタックなど原則不可能。
 嫌でも我が僕と戦ってもらうぞ。トラップカード発動『六亡星の呪縛』! 
 相手の攻撃でこのカードは発動し、攻撃力を下げつつ相手の行動を封じる!!」
「将軍! 右へ飛んで!!」

魔王の言葉に弾かれたように将軍が右へ素早くサイドステップで飛びのく。
一瞬遅れて黒き六亡星がギャグ将軍がいた場所へ出現するが時既に遅く、
呪縛は将軍のマントを僅かに捕捉しただけで、力で千切られてしまった。

(どうやら実際のDMと違って罠や魔法は気合で凌げるらしいな……)
「呪縛を逃れても安心は早いぞ! 六亡星が掠った分のギャグ将軍の攻撃力は減衰!
 フシギダネの攻撃、【葉符「はっぱカッター」】!!」

人外の攻撃命令とともにフシギダネから無数の葉っぱが舞って乱れる。
葉の刃は一度空中をひらひら停滞したかと思えば、瞬時に軌道様々なものへと変化させる。
直線・3WAY・螺旋拡散……無数の弾丸が描く軌跡は正しく弾幕ごっこそのもの。
弾幕の作り方を覚えたニコロワ仕様のフシギダネの攻撃を前にしても魔王は怯むことなく、一瞬でそれを見極めた。

「将軍! 右に6歩、前に3歩。そこから動かないで」
「なんじゃと? 停止すれば鴨撃ちに……いや、何も言うまい。今更疑うものか、余は貴様を信じる!!」

あの目を奪われそうになる弾幕を前にして動かないというのは自殺行為。
だが将軍はその命令を放つ魔王の眼を見て、その全てを改めて信じた。
素早く目的の位置に到達すると眼前に百を超えるはっぱカッターが動き回るが、ギャグ将軍の威光に怯んだかのように離れていく。

「どうやら余のカリスマも捨てたものではないのう……植物にまで通じるとは」
「そんな訳ないでしょう。その位置から一歩も動かずに、フシギダネにビーム連発してください!!」

いくら弾幕といえど、フシギダネ自身のわざを少しアレンジして連発してるだけの攻撃のため、穴は多い。
一瞬の交錯でその法則性を見極めた速筆魔王は絶対に弾が届かない地帯を発見し、そこにギャグ将軍を誘導した。
鴨撃ちとなったのは逆にフシギダネの方である。
ダ、ダネ~という断末魔とともにフシギダネが砕け、決闘盤の墓地に送られる。

「……まさか、たった数秒で安地を見つけるとはな。やはり貴様は俺と戦うに相応しい決闘者だ」

フシギダネが敗北したことによるダメージを負いながらも人外は不敵に笑った。
魔王も同様に、一時の勝利などに気を弛緩させるなどといったことも見られなかった。
両者ともに理解しているのだ。今の戦いは互いに小手調べだということを。
速筆魔王はこの戦いのおける魔法・罠カードの強制力を、人外は根本的な力量を見計らったのだ。
モンスターがやられるのを見て、愛媛が不安そうな表情を人外に向けた。
それを察したのか、人外がふぅんと鼻を鳴らす。

「そんな心配そうな顔をするな。
 そして黙って見ているがいい。貴様の闇は確かに深いが、俺の決闘はその深さすら凌駕する!!
 俺のターン! ドロー!!」

山札からカードを取り出す様を見ながら、人外と魔王は呼吸を整えていた。
場のモンスターがいないのだから攻めればよかろうと、将軍はこの待ちの姿勢にいささか不満があったが、魔王がそれを制する。
確かにモンスターを倒して、相手が次のモンスターを呼ぶまでには若干の隙がある。
ゲームを無視して襲いかかるのも一つの手ではあるが、これが闇のゲームであるという以上それはペナルティになりかねない。
そして、それを行えば今は大人しくしている愛媛というもう一つの脅威を同時に相手取る必要性が出てくるかもしれない。
ここはしばらくゲームに付き合い、人外の力を削いでから一気に二人を倒しに行くのが上策だと考えていた。

「で、魔王よ。貴様奴の能力をどう見る?」
「……カードからニコニコロワのモンスターを召喚し、使役する能力…」
「だけとも思ってはおるまい」
「ええ、それだけでは僕たちを倒す手札としては弱い。まだ何かあると見るべきでしょう……来ますよ」

戦略を決めたのだろうか、人外がマスク越しに強烈な敵意を二人に叩きつける。

「作戦会議は終わったか…? 
 ならば行くぞ。俺は場に二枚のリバースカードを置いて、ヨッシーを攻撃表示で召喚する!!」

召喚されるでっていう……もといヨッシー。
その口元は油とテリヤキのタレでギトギトになっていた。てめえハンバーガー食ってたな。
しかも攻撃表示だというのに手を枕にしてスヤスヤと寝ている。
誰もが呆れそうになりたくもなるこの状況下で、たった二人だけ緊張を高めている人物がいた。
ヨッシーを召喚した人外本人と、速筆魔王その人である。
魔王にとってあのふざけたヨッシーはすでに眼中になく、問題なのはあの二つのリバースカード。
移動専門のヨッシーを攻撃表示であからさまに囮にするということは、明らかにあのカードは罠だ。
しかし、速筆魔王にはそれを承知で攻めるしかない。

「ふぅん。俺のリバースカードに恐れを為したか魔王。
 このまま何もしないならばこのターン、エンドと解釈しさらに俺にターンが来ることになるがどうする?」

人外の挑発に奥歯を噛む魔王。挑発そのものを不快に思っているのではない。
あからさまな挑発をされてもなお、その思惑に乗らなければならない自分に対しての苛立ちである。
罠を警戒してターンを進めれば、奴はさらにモンスターを出現させて陣容を厚くしてくるに違いない。
そうなってくると、ギャグ将軍と自分以外に戦力を召喚できない自分たちは数の利に潰されてしまう。
それだけならばまだいい。だが、生贄にされて高いランクのモンスターを出されてしまえばそれこそ手がつけられなくなる。
つまり自分たちは罠と分かっていてもヨッシーを撃破し、生贄もモンスター追加も阻止しなければならないのだ。

「魔王よ。恐れるな」
「将軍……」
「余は貴様の全てを信じた。だから貴様も余を信じよ。
 余を誰だと思っておる! 彼奴の下らん策略など、新生クライシス帝国への覇道の前には路傍の石と同じよ!!」

戦術の狭間で押し潰されそうになる魔王を救ったのは、ギャグ将軍の言葉だった。
発動せずとも滲み出る書き手界の良心は、魔王の心を強く打ち迷いを打ち払う。

「そうですね。ありがとうございます、と今は言っておきます。
 ついでと言ってはなんだけど戦略が出来ました。嫌とは言わせませんよ」
「ほう、一端の口を利くようになったではないか。下らん小細工ならば厳罰に処すぞ!!」
「言われなくとも! 攻撃開始、対象はでっていう!!」

ギャグ将軍の雷撃がでっていうに働けと言わんばかりの威力で下される。
しかし、でっていうは未だ夢の中。人外が別の手を発動させる。

「恐れずに一歩を踏み出したお前たちの胆力は誉めてやろう……だが、もう遅い。勝利は既に俺のシチューに収まった。
 リバース発動! 罠カード『聖なるバリア・ミラーフォース』!!
 このカードは相手の攻撃を全て跳ね返し、ダメージを与える! 自らのビームによって苦しむがよいわ!!」

ヨッシーを守るようにして突如現れたバリアが将軍のビームを反射し、ギャグ将軍自身に襲いかかる。

「その手は読んでいたよ。 ギャグ将軍の特殊能力発動!!
 ギャグ将軍は変身宣言と共に最強怪人ギャークミドラに変身することができる!」
「何だと!?」
「もう遅いわ。最強の怪人の力……とくと目に焼き付けるがいい!!」

マントを取り払い角を伸ばし、ギャーグミドラへと変身するギャグ将軍。
彼の手には今までの杖ではなく、大きなサーベルが握られていた。
その攻撃力は、今までのビームの比ではない。即ち今自らを灼こうとする光など恐れるに足らないということ。
剣の腹で襲いかかるビームを拡散させたギャグ将軍は一直線に切り抜け、ミラーフォースを切り裂いてヨッシーを一刀両断にする。

「どうだジョーカーとやら! 貴様の従える有象無象など、余の敵ではないと知れ!!」
「ほざけジジィ。そのしょぼくれた眼ではわかるまい。今貴様らは、完全に俺の罠に嵌ったのだと!!」
「何、だと?」

周囲を見渡すギャグ将軍。しかし、既に場にモンスターは存在せず、残るのはミラーフォースの破片だけ。
そう、無数の鏡の破片が今このフィールドに舞い散っているのだ。

「ヨッシーの特殊能力発動! ヨッシーは墓地に自ら叩き落とすことによって、山札から任意の一枚を場に出すことができる!!」
「まさか……奴の能力は」

頭だけになったヨッシーがその長い舌で山札から一枚のカードを抜き取った。
人外はそれを手にして悪魔のような笑みを見せ、死刑宣告を下す瞬間の閻魔の如くそのカードを発動させる。

「魔法カード『王蛇のカードデッキ』!! 
 フィールドに鏡効果が発生しているとき、このカードの効果によって三体の契約モンスターが出現する!!
 鏡の世界より来たれ! 三匹の僕よ!!」

人外の号令と共に舞い散る破片から出現するのは、ベノスネーカー、エビルダイバー、メタルゲラスの三種。
仮面ライダー王蛇の正統なミラーモンスターたちである。

「ば、馬鹿な……なぜニコニコの書き手である貴様らがそれを使える! 否、技を使うだけならまだしも、使役するだと!?」

将軍の言葉はもっともだった。ニコニコロワの書き手は動画に存在する所縁の技を使うことができる。
平成ライダーだってちょっと検索すればすぐに見つかるだろう。
だが、あくまでも技が使えるだけで使役することなどできないはずだ。
ありえないルール破りを前にして、速筆魔王だけが冷静に、この恐るべき事態を正確に分析していた。

「いえ、可能ですよ……だとすれば最悪だな。一応聞いておくけどそのカード、何処から精製したんだい?」
「ふぅん。その看破能力、流石だと褒めてやろう。ガチホモの能力は動画化。
 愛媛の能力は弾幕。そして俺の能力は動画データのダウンロード!!
 貴様らが作ったニコニコに存在するパロロワのMAD……その全てをお気に入りに登録しデータを集め、
 交流所でもネタにされたカードゲームをベースに、俺のウォーゲームとして変化させたのだ!!」

カードゲームのロワがしたいという妄想から始まり、なぜかねじれにねじれて
「いっそパロロワのカードゲーム作ればいいんじゃね?」という話になってほんの僅かに話題になったネタ。
それがパロロワカードゲームである。アニ1デッキがバランス型、漫画は熱血型、LSが鬱型と始まり話題が波及した。
その中でニコロワの扱いは結構不当であった。そのカオス過ぎる内容故に、大会ならば禁止カードになるだろうと。
ならば、その禁止能力を存分に奮ってくれようでなないか。
さらにMADとなったロワのデータから営々と作り上げたカードで構成された人外のデッキは正しくオールスターである。

「ククク……自分達が作ったMADが自らを脅かすとは夢にも思わなかっただろう……
 だが、まだ悪夢は終わりではないぞ!! ここでもう一枚のリバースカードを発動!
 魔法カード『融合』!! この三種のモンスターを融合し、出でよ、最強のミラーモンスター!!」

三匹が空間にねじり込まれる様にして混ざり、その中から一つの巨大な影が現れる。
エイの翼、蛇の尾、そして犀の大角を全て備えた様はキマイラそのもの。
本来ならばユナイトベントによってのみ完成するモンスターが、未知の要素を取り入れてここに現界する。

「ここに爆誕! 獣帝ジェノサイダー!!」

殺戮の名を冠した破壊神が降臨し、周囲を強烈な気が吹き抜ける。
その威圧感はもはや蛇に睨まれた蛙どころではない。蛇を睨み殺す悪魔の化身だ。
ミラーフォースを破らせることによって完成するこのコンボに二人は息を飲むしかなかった。

「将軍……ライダーロワの人間である貴方に念のため聞いておきたいんですが、あれはどのくらいの強さです?」
「AP7000……設定だけで言うなら、ゴルドフェニックスの次に強い掛け値無しの強力モンスターだ。
 結論からいうと、余では良くて相撃ちが限界だのう」

その言葉に愕然とする暇はない。ただのゲームならば将軍を墓地に送ることも考えて戦略を立てる手もあるが、
死者蘇生系の能力が無いこちらは、墓地送り即GAMEOVER! に等しい。

「融合によって出現したモンスターはその攻撃不可能……俺のターンエンドだ。
 もっとも、山札の無い貴様らには即席の奇跡など舞い降りんがな……」

本家遊戯王ならばここで山札から引いたカードが状況の打開につながるのだろうが、彼らにはその山札が存在しない。
手持ちのアイテムだけでこの凶獣を相手にしなければいかないのだ。
魔王は口を手で覆い、沈黙を続けるばかり。

「ワハハー!! どうやら碌に手も思い浮かばんらしいな!! 俺のターン、ドロー!!
 場に一枚リバースカードを置き、獣帝ジェノサイダーからギャグ将軍へ攻撃! 波動弾!!」

ジェノサイダーの口元にエネルギーが集まる。
そのエネルギーの収縮度合からして、ギャグ将軍の速度では逃げ切れないことは明白だった。
だが、魔王はその手で覆った口元を開きニィっと笑った。

「嫁を持ち出すまでもない……ジジィ、貴様のロワの怪物にて粉砕!玉砕!大喝采!!してくれるわ!」
「残念だけど、そうはいかないなあ」
「何?」
「そっちばかりが好き放題するってのは癪だろ? 僕たちもそのウォーゲームを利用させてもらう。
 支給品から「コーヒーセット」を使用! 魔法「コーヒーブレイク」を使うことで、
 敵フィールドのモンスターは敵プレイヤーがコーヒーを飲む3ターンの間、攻撃が出来ない!!」

魔王の宣誓とともに先ほどまでギャグ将軍が使っていたテーブルと椅子が人外の周囲に展開し、
いつの間にかコーヒーを飲む準備が完成している。
そして、狙いを定める前だったジェノザウラーの一撃はその時点で命令を封鎖され、
その結果波動弾はあらぬ方へ飛び、ギャグ将軍へは当たらない。

「なるほど、それっぽい効果を宣誓すれば支給品を使えるわけだ」
「余の神聖なるアイテムをあんな小童に使わせなければならんとはな……」
「ほう……面白い手を使うではないか。いいだろう、スパロボ換算で3ターン。3分間だけ待ってやる!!
 命拾いしたな、魔王。だがそれも無駄な足掻き。この短い時間で貴様らに獣帝を退ける妙手などあろうはずもないわ!!」

そういって本当にコーヒーを飲み始める人外。
普通にギャグにも見えなくはない光景だが、二人にしてみればそれどころではない。
この3ターンの間に突破口を開かなければ、待つのは死だけである。
かろうじて首を繋いだ魔王は、息つく間もなく将軍に訪ねた。

「時間がないんで単刀直入に聞きます。敵のモンスター、ファイナルベントは使えると思いますか?」
「通常攻撃では、ありえんな。
 あのリバースカードがファイナルベントのカードだった場合は別だが、それならば恐らく先ほどの攻撃で使っておろう」
「じゃあもうひとつ。コーカサス……変身できます?」
「無理だ。この期に及んでもどうやら余を認める気がないらしい」

幽かに舌打ちをして、魔王は脳内で手札を見極める。
相撃ちすら許されないこの状況で確実にジェノサイダーを上回るには、コーカサスの力が必須だ。
それが出来ないとなると不味い。ピンチの状況で自分の処に来ないあたり、自分もどうやら認められていないらしい。

「ふぅん。1ターン経過だ……ドローだけはさせてもらうぞ」

自信満々に茶を啜りながら人外は一枚カードを引く。
気がつけば愛媛もちゃっかり座って、無理したようにブラックを飲んでいた。

「参ったなあ……あと使えるとしたら「神を斬獲せし者」かドラゴン殺しでの装備強化……
 だめだ。確実性に欠ける……やはりコーカサスが……」
『あ、あの~~』
「いや、兎に角時間を稼ぐために僕がバルキリースカートで時間を稼ぐか?
 無理だ、せめてあと一人、熱血怪人が生きててくれたら……」
『あの! すみませーん!!』


「空 気 読 め っ て 言 わ な か っ た か」

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