惨劇『孤城への帰還』(中編)


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  • 撃鉄『錯綜ディセラレイト』

DIE/SOULはロリスキーと向かい合う自分に対し、少しばかりの嫌悪を抱いた。
さすがに涙目になった生娘の感情を間近でぶつけられるのはガッツとして少々辛いものがある。
(なんでこんなにマジになってんだか……ちょちょいと二、三回ぶった切らせてくれりゃそれで矛を収めるに決まってるだろが)
少しばかり興が乗りすぎたか、と思うが易々と剣を振り下ろす気にはなれない。
はいそうですかと簡単に取り下げるほど、自分の剣を安いとは見積もっていなかった。
地図氏がやった可能性は十分にある。剣を交えたことのあるダイソウは客観的に見てそう判断している。
気分屋のようにコロコロと思考を変える地図氏ならば心情的にもあり得ない話ではなく、物理的にもこの短時間で殺すだけの実力を地図氏は持っているのだから。
だが、その一方で明らかに怪しい666をマークから外すほど馬鹿にもなりきれない。
むしろ怪しさから言えば明らかに黒だ。アリバイがあるとはいえ、マダオがザ・ワールドを使えるのだからそんなものにどれ程の価値があるのか。
そこでダイソウが思ったのは……地図氏を合法的に斬りつけるいい機会だということだった。
幾ら他者に押し留められていても、彼が潜在的に持つ地図氏への懐疑・不満は蓄積し続けている。
一度どこかでガス抜きをしなければ、後々スッキリしないことになると判断していたのだ。
この状況はそんなダイソウにとって渡りに船だった。二三回ほど挽肉にしてしまえば鬱憤も晴れる。
マダオが教えてくれた、非常に簡単な理屈だった。
だからこそ、ロリスキーの空気の読めなさは少々面倒だ。まさか自分が地図氏を殺しつくすとでも思っているのだろうか。
(冗談抜かせ。本気で殺すならマダオが後ろでぼけっとしてる訳ねえだろが……
 大体、俺が本気で殺ると察したら、奴が殺されるまで黙って突っ立ってるようなタマかよ)
既に初期条件からして茶番のこの状況で、自体に本気でめり込んでいるのはロリスキーだけだ。こなたを思うあまり周りが見えなくなっているとしか思えない。
ドッキリカメラの看板を上げるタイミングを逸したきらいが否めない、そんなむず痒い不快感だった。
義手があればもう一本の手でロリスキーを払ってしまえばいいのだが……マダオめ、楽しんでやがるな。
そんなことを考えていた時、ロリスキーが自分から目を背けたことに気づいた。
釣られたように同じ方向を向いて、そこに何があったかを理解することができなかった。
ゆっくりと、そこに置かれた死体を見つめ直し、その衣服が同じものであることを理解するのに数秒。

「ウッカリデス!!」

八割を理解して、ダイソウが再び振り向いた時には彼の時すでに遅し。
ロリスキーは彼方の向こう、悪魔の許へと走っていた。



「彼らは書き手だ。どうしようもなく書き手だ。だからこそ、疑心暗鬼のフラグがどれほど脆く儚いか知っている。
 そして書き手だからこそ、それが無残に折ることが出来ない。路傍の儚い花を愛おしいと思うように見過ごすことができず、愛でてしまう。
 彼らは、分かっていてもこのフラグを無視することができないんだよ。安い疑心暗鬼だからこそ、彼らはより大事にそれを扱ってしまう」



マダオは走るロリスキーと、その向こうのルルーシュを見ながら疑問を提示せざるを得なかった。
ダイソウとは違い、あのルルーシュがウッカリデスとは別人の、悪意ある誰かであることはすぐに見当がついた。
もともと彼はこの状況下においてもっとも客観的な視点を有しており、過熱した結果不慮のアクシデントが起きぬよう見に回っていたのだ。
状況に対し、彼はほぼダイソウと同じ認識といって差支えない。ダイソウよりも666を疑っていたほどだ。
同じアーカードとしての立場に立てば、ウッカリデスは地図氏にとって愛でるべき種ではあっても殺すに値する資格を有してはいない。
ハッキリいって、殺す動機は殺すモチベーションがなければアーカードは動かない。オーダーが下されれば別ではあろうが。
そんなマダオがこの状況を、鬱フラグの消化及び結束の強化の機会と捉えた。
5人もの大規模パーティでありながら、地図氏とロリスキー・自分とダイソウ・そしてその中間で橋を渡すウッカリデスという構図。
組織内に隔たるこの壁は、いずれ壊さなければ完全なる熱血展開には運べないと思っていた。
そしてウッカリデスが死んでしまった今、このままでは彼らは橋を失い完全に隔絶してしまう。
そうなる前に一度ぶつかり、仲間の結束を高めなければならないと判断したマダオは、666が仕掛けた状況を奇貨とした。
ウッカリデスを軽視するわけではないが、まだこのパーティは戦力を維持している。
しかしそれが空中分解してしまえば、熱血どころではない。個別に鬱展開を仕掛けられて、圧殺されるだろう。
ならばこの比較的安全な疑心暗鬼フラグをあえて素早く消化することで、
余計な茶々が入らない今の内に立て直しを図る……それがマダオの策略だった。
だからこそマダオはかがみを煽りながらも、周囲に気を配り介入に警戒していたのだ。
吸血鬼であるマダオは既に第三の眼にて何者かが周囲を窺っていることには気づいていた。
そして、予想通りノコノコ現れた所を蹂躙して一件落着させるつもりだったのだが、
ステルスを解除して現れた人物の姿だけは、予想できなかった。


(何故だ。なぜ敢えてウッカリデスに化ける。既にここに死体があるのだぞ?
 ステルスで踏み込むにしてももっと上手い化け方があるはずだ。ならば一体?)
今ついさっき出来た目の前の死体の人物に化けるステルスなど聞いたことがない。
ましてやロリスキーは不死者であり吸血姫。三人が攻撃に転じる僅かな時間に殺し切ることなど出来はしない。
奇想天外な一手にマダオは脳裏を揺さぶられ、まったく別の疑心暗鬼へと落ちる。
むろん、アーカードであるマダオの耐性はずば抜けており、数秒の時を経て直ぐに答えを得た。
しかしその数秒こそが明暗を大きく隔てるのもまた事実。
「不味い! 地図氏、あのルルーシュを潰せ!! 666の狙いはウッカリデスではなくロリスキーだ!!」
これは完全にミスだったと言っていいだろう。自分がザ・ワールドを使ってしまえば鏖殺は瞬く間に完了したはずだ。
だが、熱血をベースとする漫画ロワのマダオは、この状況において最高の熱血展開を希求してしまった。
ロリスキーを間一髪で救う地図氏という、一番熱い手段を。
だが、それだけならばミスにはなり得ない。あの地図氏ならば自分が至った結論にとっくに至っているはずだし、
スーパーキョンタイムで十分に阻止する時間があるはずだ。だが、

「だめ…………いかないで、かがみん……」

まるで処女のような鳴き声を響かせながら、『彼女』の幼い声帯は大きく震えている。
マダオがその地図氏らしからぬ様を見惚れるように目が離せない。
その間にもロリスキーはルルーシュの腕に収まり、彼女の頭部はすっぽりと彼の右手の射程内に収まっていた。


「種だけでよかったんだよ。優秀な書き手たちの傍で蒔けば、例えどんな実が成ろうと確実に良いものが生るからね。
 そして、草加である彼がその果実を見逃すはずがない。万が一見逃された時は、首根っこ捕まえて飛ばせば済むんだからねえ……」


ウッカリデスに自らを偽装した仮面ライダー書き手は、
自らの計略にものの見事にはまっていく有象無象を見て、内心歓喜に打ち震えていた。
wikiによりかれらの因果関係はハッキリしている。
そこから地図氏&ロリスキーとマダオ&ダイソウの二極対立の構造を理解した彼が選んだのは、
対立の原因であるウッカリデスの死を無意味にすることだった。
S級の戦闘スキル持ち複数相手に長々とステルスをするのは自殺行為。
だから一瞬のインパクトを重視する。一瞬でも隙を作ることができれば、ロリスキーは自分を確かめにくるはずだ。
ウッカリデスの死さえなければ、彼等の関係は維持される。地図氏への糾弾が収まる。
ダイソウとマダオから追い詰められたロリスキーが、その甘い幻想に縋らない筈がない。
(計画通り……!!)
そうして吸血姫は毒蛾の繭にかかり、ベルデの掌中に収まった。
仮初のハッピーエンドの中でロリスキーの泣きじゃくる声が聞こえる。
餓鬼の泣き声の鬱陶しさによる不快とコ・ホンブック同様自分を慕ってくれているような快が綯い交ぜになった感情を持ちながら、
ベルデはそっとロリスキーの顎を上げさせ、指でそっと涙を拭ってやる。
救いを仰ぎ見るような純粋少女を前にして、ベルデの右手は優しく彼女を愛でる様に撫でる。

「仮面ライダー書き手が命じる。クールなロリスキー」
不死者同士は名を偽ってはならない。
その不死者の制約に臆することもなく、本名にて宣誓を告げた。
さながらあのルルーシュのギアスと同じように。
最後の一呼吸の前に、ベルデは地図氏を見る。
とても孔明が警告したような人物に思えないほどに、その表情には苦悶の感情が吹き溢れていた。
ようやく意を決したのか踏み出せない最初の一歩を持ち上げた地図氏を目の前にして、ベルデは最高のタイミングを確信した。

「だめ! かがみん、いっちゃやだッ!!」
「全力で喰われろッ!!」
「出でよ、覇龍―――――」

ベルデが、その宣言をした一瞬のことだった。劈くような平野ボイスが響いた瞬間だった。
全長30mにも届くかという巨大な龍が、病院を縦に潰したのは。

「轟覇、機神拳!!」


  • 空気『フォルカ無双』

病院の屋上に降り立った予約被りに定評のあるtu4は自身の空気ステルスによって確実に誰一人とて悟られることなく侵入した。
「皮肉っちゃ皮肉よね……あんたがいたらこんなステルスシェードは出来なかったわ。
 目立つあんたがいないとなったら、速攻で空気を利用するなんて……少し厭な女かもね」
そういいながら自嘲するtu4。脳内補完の死を悼む一方で、
脳内補完がいなくなったら持ち前のステルスを十全に生かす自分の冷徹さ。笑いたくなるもの人情だ。
一歩一歩進む中で、彼女は下から言いようのない空気を感じていた。
アーカードが発する、特有の気配。そして、それに混じる入り乱れた感情の混線。
この階下にて、何か大きな祭りの匂いが充満しているのは間違いなかった。
それに介入するというのは、実に目立てる。さらにアーカードの首級を獲ろうものなら倍率ドンさらに倍。
確率変動でフィーバー間違いなしである。逆に言えば、これで空気になるならもうオワタ確定ということでもあるが。
エレベータ死亡フラグの基本法則に則り、階段を降りるtu4。
後何階降りなきゃいけないのだろうか、考えたくもなかった。
そろそろイライラしてエレベータ使っちまうか、と考え出したとき、隣にいたスーパーかがみんが突如実体化した。
「まっずいわ!! 急いでとっとと下に降りなさいよ!! べ、別に私が急ぎたい訳じゃないんだからモルスァ」
「だまらっしゃいこの浮遊キャラが!
 ここでエレベータ使ったら今まで「ありのまま(ry」バリに階段を何段も下りてきた私のふくらはぎと
 足の裏の痛みの立場ないじゃない!! せめて湿布を差出しエロマッサージするくらいの心意気を見せなさい!!」
迷わず親指と人差し指の間をかがみの眉間に打ち付けるtu4。ヤンデレってやっぱ怖い。
「いだいいだい虎口拳決めないで虎口拳決めないで。って、そんな馬鹿なことやってる場合じゃないの!!
 かがみが、かがみが大変なの……ってイタい奴見るような目ェすんな! 私じゃないっての。
 かがみになりきってる参加者がいるのよ、そいつがやばいの!!」
スーパーかがみんを落ち着かせて(主に性的な意味で)、彼女は大体の事を簡潔に聞いた。
要するに同じのがいるから助けてほしいと、そういうことか。
「か、勘違いしないでよね。私が殺すんだから、そんな簡単に死なれちゃ困るってだけなんだから!」
うわー、こいつべジータ系のツンデレも完備かよ。
「そんなの私に頼まなくても自分でさっさと行けばいいじゃない。あんた何のためのアルターだっての」
「駄目なのよ。その傍になんかこなたがいるっぽくて、私の、その、触手とかスタンドとか、見せるの恥ずかしいっていうか……」
「死ね」
「ああッ! サミングは反則反則ゥ!!」


適当にぶん殴ってからtu4は足元の床を見た。こいつの頼みは別にしても、いい加減階段を下りるのも飽きた。
このまま降りていってもずっとポルナレフループな可能性も否めない。
ならば、とっとと降りてしまったほうがいい。
「じゃあ早速エレベータに……って、なんで床のほうばっか向いてるの?」
「めんどいから、直接降りるわ」
そういいながら、tu4は軽く深呼吸して気をためた。
両目の開眼とともに、足元に亀裂が走る。
「フォルカ……新たなる修羅王としての力、この私の中で存分に振るいなさい……奥義・闘鬼転生!!」
そういって、彼女は気を蓄えた拳を地面に打ち付けた。
最後の空気王たる彼女の中に含まれる、フォルカ・アルバーグ。
機体・システム的にも反則な彼だが、そんなものは序の口である。
OG外伝では日の目を見ることはなかったが、スパロワにて知っている人は知っているだろう。
代々の修羅王にのみ使うことの出来る、究極奥義『闘鬼転生』。
自身が心に刻み付けた戦士達のその力を体現化する究極の奥義。
敵キャラが使えば「ああ、再生怪人の量産ね」で済むが、これを味方側が使うなら大層なインチキである。
実際スパロワでは死んだ参加者約60人の懐かしメドレーが繰り広げられていた。
tu4によって発動したこの技によって、ひとつの影が浮かび上がる。
スパロワフォルカにあやかって空気王としての能力を拡大解釈しありとあらゆる空気キャラを出現させてもよかったのだが、
大半の空気キャラというのはやはりどうしても弱く、出てきたところでフォルカ級の猛者は少ない。
(それに、なーんかこの手合いの能力につい最近誰か覚醒したような気がするのよねー。
 二番煎じになっても、それはそれで空気技になりかねないわ)
それに覚醒したのが自分が闘った同門のバトルマスターであることなど露知らず、
tu4はあくまで通常の闘鬼転生を展開し『心に刻んだ仲間』をここに召還する。
彼女の心に去来するのはつい先ほどの死闘。
最後まで自分を愛し、血路を切り開いてくれたこの世界での唯一といってもいい戦友。
(あんたも、ここで暴れたかったのよね……その願い、私が叶えてあげる)
「出なさい! King of 脳内補完!!」
強烈な光の中から現れたのは、巨大なギャラドスだった。
そしてその頭部に接続された上半身は、首輪こそ無いものの紛れも無く彼そのもの。
彼女の願いに呼応しここに現出された脳内補完は、彼女が刻んだ心象……つまりギャラドスとの合成verだった。
脳内補完は無言のまま、彼女と見つめあった。
能力の性質上脳内補完は喋ることも出来ないが、その瞳はこの手の能力にありがちな死んだ眼をしていない。
まだ闘える。まだ共に戦場へと飛ぶことが出来ると雄弁に語っていた。
その全てを了解し、彼女が右手を脳内補完に差し出すと龍は再び光の粒となって腕を包み、
再び現れたそこには、轟級ヤルダバオトの如き龍の手甲が装備されていた。
一々何度も召還するよりも、自らのフォルカ装備として武器と変えたほうが効率がよい。
それに何よりも、これならば常に共に闘える。
「いくわよ、脳内補完……残りの階全部ぶち抜いて体当たりよ!!」
tu4が声と共に右手を大きく突き上げると、彼女の周りを青い闘気がそこから迸る。

「出でよ、覇龍!!」

その言葉と共に右手よりギャラドスの形を模した龍の気が現われ、天井をぶち抜く。
そして十分な高さを確保した瞬間、反転してギャラドスが垂直に病院へと舞い降りる。

「轟覇、機神拳!!」

ヤルダバオトの奥の手が今、空気王の名の下に病院へと下された。


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