蟻地獄な僕たち

「それじゃあ、また6時間後にお会いしましょう!」


大切な、本当に大切だったはずの誰かの名前が呼ばれた気がする。
……いや、違う。大切に思えたかもしれない誰か、だ。
あの人は、こんな俺にまでも愛を注いでくれた。
あの人の愛が、かっての俺を救ってくれた。
でも、そんなあの人は、もう居ない。
俺が、殺したから。この手で、殺したから。
許してほしくて、殺したから。

あれ、だったらいったい誰が俺を救ってくれるんだろう?
ただ一人、愛してくれて、俺も愛せたかもしれない人が死んだのなら、
他の誰が俺を許してくれるのですか?

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

痛い、わからない、苦しい、助けて。

豚が、低能、捨て駒、下っ端、ザコ、ゴミめ、うわあああ、来るな、
許さない、役立たず、無能、よくも、殺してやる、仇め、復讐、人殺し、
罪人め、断罪する、クズが、呪ってやる、償え、罰を受けろ、用無し、
あっち行け、痛い、空気、サラマンダー、敵、マーダー、ズガン、
死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね
死ね 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね死ね 死ね 死ね 死ね 死ね死ね 死ね 死ね
死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね
死ね 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね死ね 死ね 死ね 死ね 死ね死ね 死ね 死ね
死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね
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殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ
殺せ 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ 殺せ 殺せ
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殺せ 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ 殺せ 殺せ
殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ
殺せ 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ 殺せ 殺せ
殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ
殺せ 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ 殺せ 殺せ
殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ 殺せ
殺せ 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ 殺せ 殺せ


「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」

あああああああああ!!
死ねない。死んだら、誰にも許してもらえなくなるから。
だから、殺す。殺し尽せば、救われる。




ああ、神様、俺の罪はいつ許されるのですか?
教えて下さい、俺は後何回人を殺せばいいのですか?








日は既に落ち、夜が始まろうとしていた。
ホテル『キャッスル・満漢全席』。

「あ、あはは、嘘だよね?嘘だっ!て言ってよししょー。あは、あはは」

蟹座氏にとってバトルマスターがいつか超えたい壁であり頼れる師匠であるならば、
お姉さまはライバルであり親友だった。
同じギャルゲロワ出身の書き手にして、弄られキャラ。
互いに競い、慰め、メールし、相談し、たまに一方的に蟹座氏がお姉さまを弄る。
そんな誰が見ても仲のいい友達だった。
その、お姉さまが、死んだ。

「う、あ、うわあああああああああああああああああああああ!!」

認めたくなかった。
今すぐにでも飛び出して、お姉さまを探しに行きたかった。
あの人お得意の誤字脱字か何かで、主催者にまで勘違いされたんだって思い込んでいたかった。
でも、現実は残酷だ。
ボクにお姉さまの死を認めざるを得ない証拠を突きつけてくるのだから。
影の繋ぎ師がもたらしてくれた情報の一部。
ディーから聞いたっていうお姉さまが死んだという話と一致するのだ。
そして何よりボク自身の心が不思議と受け入れているのだ、お姉さまの死を。
まるで本人とのお別れを既に済ませたかのように。

もっとお姉さまに甘えたかった。もっとお姉さまのSSを読みたかった。
もっとお姉さまを困らせたかった。もっとお姉さまと話したかった。

けど、そんな未来は、もう来ない。

ししょーは強い。自分も悲しいはずなのに、さっきからボクをずっと抱きしめてくれている。
影の繋ぎ師も同じだ。誰よりも悔しいはずなのに正しい怒りを抱き続けていられる。
二人とも涙の代わりに強い意志を瞳に宿らせている。

それに比べてボクはただ泣いてばかりで、逃げてばかりで。
優勝することからも、脱出することからも逃げ続けて、結局何一つ手に入りはしなかった。

「蟹座氏さん、バトルマスターさん。まずはここから離れましょう!
 まだ時間があるとはいえ、禁止エリアになる場所に居座り続けるのは危険です」
「そうですね。あえて時間ぎりぎりまでいるのも手ですが、ロワでは何が起こるわかりませんし。
 蟹座氏、歩けますか?聞きたいこともありますので孔明が戻り次第ここを離れます」

ボクは、弱い。だから見つけた逃げ道に全力で縋ってしまう。

「ねえ、ししょー。あのロリも、連れてくの?」

あのロリ、したらば孔明。
てっきりししょーがかどわかしたのかと思っていたが、
影の繋ぎ師からもたらされた情報がボクの考えを大きく変えた。

したらば孔明は危険人物だという。
しかもディーが主催者たちと並び称したことからジョーカーに類する可能性が高い。
なら実はたぶらかしたのは孔明の方であって、ししょーはその色気にホイホイと釣られたのではないか?
どっちにしろししょーがロリコンでヘタレなことに変わりは無いが、
全体的な意味は大きく変わってくることになる。

「ああ。彼女は悪い人間には見えない。さっきも言ったが私を何度も助けてくれた。
 きっと何かわけがあるに違いない」

ししょーは、やっぱり駄目だ。完全にあの女の毒牙にかかってる。
だって思いだしてよししょー。影の繋ぎ師から聞いた事実を。
彼が孔明を危険人物だと言った時、ししょーが反論した話。
そのししょーを危機に陥れた人間の一人が誰だったのかを。

「……初めっから計算してのことだったら?」
「蟹座、氏?」

心のどこかで信じていた、ギャルゲロワのみんなはこんな殺し合いに乗りはしないって。
だからこそ苦しんだ。人殺しのボクは、もうみんなの所には帰れないって。
なのに、なのに、なのに!よりによってその仲間の一人が主催者だったなんて!
ボク達に殺し合いをさせた元凶だったなんて、そんなの、ないよ。

「予約被りに定評のあるtu4氏に襲われたんだよね?主催者側同士で、組んでいたんじゃないかな♪かな♪」
「そ、それは……」

ししょーが言い返せず口ごもる。そうだ、思い出せ。
tu4氏は最初っから殺し合いを許容していたようではないか。
ならきっとグルになってししょーを罠に嵌めたのだ。
ししょーは強い。ガチバトルに限れば無敵と言って過言ではない。
全快状態なら一人でアーカードすら殺しきれるかもしれない。
故に孔明はししょーを懐柔し騙し討ちで殺そうとしたんだ。

「固有結界『闘争制覇者-Battle Master』。不意打ちや毒殺にはとても弱いんだよね?」
「し、しかし私を殺したいだけなら、放っておけば良かった!」
「ダメだよししょー。また忘れてる。ボク達が殺し合うように仕向けたのは誰?
 あはは、おかしいよね。誤解の種をまいた上、ボク達二人を置いたまま帰ってこないんだよ?」

当てが外れたからに決まってる。
あいつはししょーを利用してボクと相打ちさせようとしたんだ。
いや必ずしもボクとじゃなくてもいい。
ししょーをうまく誘導して他の誰かを殺そうとしたのに決まってる。

そうだ、敵なんだ。あの女は殺されて当然なんだ。
ししょーが殺さないというのなら、ボクが殺せばいい。
この手は既に血に染まっているんだし、問題ない。
それにあいつにはカニハラされた恨みもある。
ボクを弄っていいのはギャルゲロワのみんなだけなのに。
あいつ?『あいつ』!そうだ、ボクに蟹を出産させたのも、あいつのせいに違いない。
孔明の罠だ!

鉈を強く握りしめる。
傍らには幾匹もの愛し子達。
この子達がどこまでも着いてきてくれるなら、地獄でも寂しくは無いだろう。

「待つんだ蟹座氏!落ちついてくれ!」

大丈夫、落ち着いてるよ、ししょー。
ししょーや繋ぎ師さんを間違って傷つけないよう、
ボクと隔てるようカニパニーのみんなには言いつけているから。

あは♪優しいね、二人とも。
やろうと思えば蹴散らせるのに、蟹相手でも躊躇しちゃうなんて。
うん、そういうところが、大好きなんだよ。だから。

「バイバイ、ししょー。影の繋ぎ師さん」

汚れ役はボク一人でいい。さあ、あの女を殺しに――


グサッ

え?
あれ?
ボク、ドアを開けようと取っ手に手をかけたんだよね?
なのになんでドアは閉まったままで、赤い槍が生えているんだろう。
魔槍ゲイボルグ。
ギャルゲロワ2参戦作品の一つであるFateにも登場する武器だ。
見間違うはずがない。つまりは扉ごと刺されたのだ。
犯人は考えるまでも無い。

「良い心がけです。死にゆく前に別れを済ませるのは。ですが安心して下さい。
 きっちりご友人もまとめてあの世に送らせてもらいますから」
「したらば孔明ええええええーーーーーーーーー!!」

ドアを蹴り飛ばし、姿を現した人物の名を、ボクは怨嗟を込めて叫んでいた。





目の前で繰り広げられた光景が信じられなかった。
自分と繋ぎ師を残し、寂しげな笑みを浮かべ鉈を手に部屋を出ていこうとした蟹座氏が突如崩れ落ちたのだ。
先程まで自分たちを取り囲んでいた蟹達は即座に蟹座氏の元に向かい守るかの様に陣取っている。
いや、様にではなく、守ろうとしているのだろう。
そして幾重もの甲殻類に睨みつけられているのは一人の少女。
自分の知る口調とも雰囲気とも一致しないが、外見だけはどこまでも自分の知る少女そのものだった。

「孔、明?」
「は、はわわ、駄目ですよ、ご主人様。ある程度回復したとはいえ病み上がりなんですから寝ていないと」

あまりにもいつも通りに返事をする孔明と、血濡れた槍がうまく結び付いてくれない。
わからない、わからない、わからない。いや、わかりたくないだけだ。
悲しいことに答えはもう、蟹座氏が出している。
それでも、それでも信じていたかったのに、

「だって起きていられたら殺すのに一苦労じゃないですか」

彼女は決定的な一言を口にしてしまった。

「変、身!!」

瞬間、影の繋ぎ手が独自のポーズをとり姿を変える。
黒きボディに銀の強化装甲を身に纏った戦士――仮面ライダーBLACKSRXに!

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

紫色の光で覆われていた部屋を、更に強い白光が照らす。
それだけではない。照らされた部屋の壁という壁が光を帯び輝きだす。

なんのつもりだ?
そんなバトルマスターの当然の疑問の答えは一瞬で返ってくることとなる。

ズドンッ!!

轟音とともに建物が大きく揺れる。
超人であるバトルマスターをしてバランスを崩してしまうほどの激しい揺れであった。

誰かが現地調達で鉄球クレーン車でも現地調達でもしたか?
もしもバトルマスターが他のギャルゲロワ出身の書き手であったらそう考えただろう。
だが幸か不幸かバトルマスターには事実を見極めるだけの動体視力がぎりぎり備わっていた。

あれは、踏み込みだ。孔明に肘打ちをする為の前座。ただ其れだけでホテル一つを揺るがしたのだ!

なんて、力だ。

バトルマスターの手は震えていた。
ギャルゲロワ最強たる彼からしても影の繋ぎ師の力は圧倒的すぎるのだ。
あの速度からの攻撃では、固有結界を発動する暇もなく先手を許すことになるだろう。
そしてその一撃だけで、どれほどの傷を負わされることやら。考えたくも無い。
最初に放った光は、恐らく繋ぎ師の力に耐えれるようホテルそのものの耐久力を上げる為のものだったに違いない。
そうでなければ今頃ホテルは倒壊し全員お陀仏になっていたはずだ。
その位とてつもないチートなのだ、影の繋ぎ師は。
当然あの速度と力からの攻撃を受ければ無事では済むまい。
事実繋ぎ師が踏み込んだ向かいの壁は、ぽっかりと人一人分の穴を延々と空け続けている。
明らかに、孔明とは違う体格の人物型の穴を。

バトルマスター達が未だに知らないメタモルフォーゼを発動しマッチョボディで、
繋ぎ師の一撃を受け止めたからか?無駄だ、その程度の力で受け切れる一撃では無かった。
だからこれは見たまんま別人の形。

「っけ、これだから貴様のような対主催チートは困んだよ。
 やれやれ三国無双verですら見切れもしねえ。
 だからよう、ちいっと盾を使わせてもらったぜい?」
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」

影の繋ぎ師が踏み込む瞬間に孔明の影から現れ、
身代りにエルボートリガーの一撃を受けた熱血王子の人型であった。


「熱血王子いいいいいいいいいいいいい!!」

マイティアイ改と繋ぎ手としての能力の併用により、
一瞬にして名前ごと正体を見抜いた影の繋ぎ師が声を上げる!
対する熱血王子は場外に吹き飛ばされた距離を取り返そうと影を渡り繋ぎ師の前に姿を現す。
焼け爛れた顔、闇よりも黒い服と肌、ぽっかりと開いた左目の空洞、ありえない向きの右目。

「っな!?」

晒された異形に思わず見せてしまったバトルマスターの動揺を笑うかのように、孔明の声が再び響く。

「どうですか、すごいと思いませんか?あ、そうそう、お姉さまを殺したのも彼なんですよ?
 だから、仲良くあなた達も殺されてください。……さようなら、ご主人様」

この男がお姉さまを!?
迷うことなく冥加を抜刀する。
お姉さまの仇ならば容赦する必要はない。

熱血王子と呼ばれた男も剣を抜く。
大丈夫だ。バトルで私が負けはしない。

左足を引き、右足を前に出し、駆け出そうとする彼の前に一人の影が割り込む。

「ここは任せて、行ってください、バトルマスターさん!」
「影の繋ぎ師!?」
「俺は孔明さんのことはよく知りません。でも一つだけ言えることがあります」

両の剣を構えた繋ぎ師の胸を過るのは一つの願い。
シャドームーンを仮面ライダーに。
かってライダーロワに於いて光太郎やライダーマン、
何人かの読み手と書き手が望んだ幻想を。
叶うことのなかったその夢を、別の形でバトルマスターに託す。

「形はどうあれ信彦と光太郎は今俺の中で共に戦ってくれています。
 だからバトルマスターさん。諦めないでください。
 あなたはきっと孔明さんを連れ戻してきてください!」

なんて簡単に言ってくれるのだろう。

バトルマスターは笑っていた。

影の繋ぎ師、君は確かに切り裂いたよ、私の――俺の闇を。
ありがとう。でもここからは俺の番だ。
光は君に頼ることなく、俺の手で掴み取ってみせる。

迷うことなんて無かったのだ。
かってゲームに乗ったtu4氏を救おうとしたように、孔明を助けだせば良かったのだ。
繋ぎ師に言われるまでも無い。
出会ってまだ間もないけれど、彼女のことはよく知っていると自負できる。

したらば孔明は喜んで仲間を殺すような人間ではない。
彼女が見せてくれた笑顔は、決して偽物なんかじゃない。
別れの声が寂しそうに聞こえたのも気のせいなんかじゃない。

それだけで十分だ。
アセリアを対主催にしたのは誰だ?
圭一に仲間を信じさせ続けたのは誰だ?

「任せろ!バトルマスターに負けは無い!」

そうとも。救ってみせるさ。
自分も死なず、蟹座氏にも殺させず、孔明も連れ戻す。
目指すは今まで書いてきたどんなキャラクターもが成し遂げられなかった完全無欠のハッピーエンド!
無茶?無謀?よろしい、ならば見せましょう。
このバトルマスターが、ロワの無情に戦いを挑み、勝利するところを!!






影の繋ぎ師による暴露事件に対し、孔明は即座に策を巡らせるも何一つ良案が浮かんでこなかった。
同情を買う泣き落としをしようにも、自分を警戒している蟹座氏には通じず、
逃げ出したとしても超絶チートの影の繋ぎ師にすぐに追いつかれると判断したからだ。
そこで孔明が藁にもすがる思いで頼ったのが『柿テロ猥・R2‐ND』であった。

第三回の放送と同時に更新されたWIKIに掲載された新情報はどれも眼を見張るものであった。
特に孔明の眼を引いたのが愛媛によって堕ちた熱血王子の項目だった。
彼ならば影の繋ぎ師を足止めできるのではないか?
ネコミミストとChain-情という二大正当対主催書き手が、
C.M.超展開はデフォなのか?の固有結界に引きずり込まれ一時的にこの世界から姿を消した今、
熱血王子の標的たる真白き心の持ち主として影の繋ぎ師ほどぶっちぎってる存在はいない。
加えて自分はどう考えても黒。対主催と兼任して危険なステルスマーダーでもある。
愛媛の刷り込みにより少数派の自分は守ってくれると考えて危険を冒したが、
予想以上のベストタイミングで現れてくれて大助かりだ。

とはいえ相手があの影の繋ぎ師ではそう長くはもつまい。
現に先ほどから断続的にホテルは揺れ続け、気のせいか爆発音までしている始末だ。
もうあまり猶予はない。

「まあ計算通りではあるのですが」

エレベーターを使うなどという死亡フラグが立ちそうな愚行は犯さず、
ガチムチモードでひたすら階段を駆け降りる孔明の手には一つの道具が握られていた。
黒い王蛇のカードデッキ。
熱血王子が吹き飛ばされる刹那の隙に彼から掠め取った支給品でだ。
WIKIを通した使い方に従い、オールオーバーの刃を鏡代わりに変身する。

「変身」
筋肉質な体を蛇を模した紫の鎧が包み込む。
これで水滸伝と三国無双の孔明の力に加え仮面ライダー王蛇の能力も手に入れたことになる。
内二つが時間制限つきだったり反動があったりするのが難点だが、背に腹は代えられない。
何よりも王蛇への変身の本来の目的は身体能力の向上ではない。
目的のカードを取り出しベノバイザーにベントインする。

―ADVENT―

顕現するは蛇とサイと蝙蝠がモチーフの三体のミラーモンスター。
オーダーイズワン。

「コ・ホンブックの足止め、お願いします」

新たにやってきた『二人』の客人に応対すると言いくるめ監視室に置いてきたものの、
モニターに映った私の凶行に彼女はパニックに陥っているに違いない。
最悪こちらの邪魔をしにかかる可能性すらある。
それだけは避けたかった。
無論ライダー書き手との約束もあり、個人的に人体錬成への興味もある為、
彼女を殺すつもりはない。
武装は全部譲渡されているとはいえビッグ承のプロテクトシェードは健在で、
ブック本人も錬金術が使えるのだ。
手加減させたミラーモンスター如きに殺されはしまい。
事後処理も完璧だ。
まず間違いなく生き残る影の繋ぎ師なら、彼女を保護し守り続けてくれるだろう。
顔が割れた自分では無理だが、お人好しを騙す事などライダー書き手には造作も無い。
いつでも取り返せる最も安全な相手に預けると考えれば最善の策だ。



「どうやら、ここまでは計算通りのようですね」

最大の警戒対象たる影の繋ぎ師にはそれなりのチートを充てた。
バトルマスター対策はゲストの『二人』に一任してある。
コ・ホンブックに至ってはアフターケア込みでばっちりだ。
故に残るはただ一人。

ようやく降り立った一階エントランスホールの中心に一人の少女がいた。
千余りの蟹々を従え、自身も蟹を模した金色の鎧を二重に纏った人蟹姫。
無音性を重視して真名を開放しなかったのだ、生きていたとしてもおかしくない。

「貴方も存外しぶといお方だ、蟹座氏!」

疾走しつつオールオーバーを引き抜き切りつける!

対する蟹座氏が振るうのは専用の鉈!
ギャルゲロワ陣営には効果は抜群な武器ではあるが、所詮はただの刃物。
仮面ライダー剣中屈指の力を誇る適役の武器を受け止めるには役不足だ。

「蟹座じゃないもん!」

だが蟹座氏の言霊はその事実すら覆す。
言霊『蟹座じゃないもん』発動 対象:蟹沢きぬ 検索事項:竜宮レナ 
蟹座氏の鉈にエンチャント。是、蟹座氏の鉄塊鉈(でっかいなた)!!

「はああああああああああ!!」
「あはははははははははは!!」

ギインっと巨大化した鉈とオールオーバーが激突し鈍く響く音を鳴らす。
互いに武器に振り回されるかのように勢いを殺すことなく返す刃を放つも、
共に相手に当たることなく鍔迫り合いへと移行する。

「成程、ゲイボルグの傷も大方舞や亜沙先輩の力でも行使して治したということですか!
 ころころと他人の力ばっかり借りてて恥ずかしくはねえのかよお、おい!」
「あはははは、人のことは言えないよ、孔明♪口調、体格共にころころ変わってくれちゃって。
 しかもボクとは違って自前だもんね。あははは、あはははははははははは♪」

くるくると、くるくると、回転しながら打ち合い続ける二人の戦士。
どちらも応用性には富むものの、決定打には欠ける二人だ。
一対一の戦いでは決着は着かなかったかもしれない。
されど忘れることなかれ。この戦いは一対一にあらず。一対一+千だということを!

「っく!!」

蟹が宙を舞い、蟹が地を駆け回る。
何の冗談かと思う光景だが、これこそがバッド・カニパニーの編み出した戦術。
横にしか歩けないという蟹の限界を超える為の空中殺法。
変幻自在の隊列は離れて見ればまるで赤い鎖の如し。
攻撃力こそ痛い体当たり程度だが、積み重ねは侮れない。
移動範囲を狭められるのもきつい。何よりもとにかく硬いのだ。

「蟹如き、何故一撃で倒せない!?強さは蟹では無かったのかよお!」

『強さは蟹です』。
もしも孔明がテイルズロワ出身の書き手であったらなら、
カニパニーの説明文のこの一文に大いに警戒したであろう。
何故ならテイルズオブファンタジアにおいて、
カニとは平たく言えば倒しても得しないメタルキングみたいな隠しザコ敵なのだから。

「がはっ」

度重なる蟹座氏とカニパニーの連携攻撃に遂に孔明が膝を着く。
不死者とはいえ蓄積した痛みと疲労は孔明を大きく蝕んでいた。
カニパニーはあらかた真・無双乱舞で吹き飛ばしたものの、
攻撃が当たりそうになるとカニパニーが割って入って盾となった為、
蟹座氏には傷一つ負わすことができなかったのだ。

「ボクの勝ちだよ、孔明」
「寝言は寝てから言って下さいよ!」

やぶれかぶれにコーエーの決戦2の孔明の力により炎を発現させる。
ゲーム上の赤壁の戦いのイベントにおいて、
「東南の風要らねえーーー!!」と絶賛(?)されるほどの威力を誇る攻撃である。
ぶっちゃけ曹操の艦隊を一撃で焼き払うというとんでも魔法だ。


されど忘れることなかれ、孔明の策略は一瞬で戦況を引っくり返すということを。

「焼き払えええええ!!」

炎が放たれ空気を焦がしつつ蟹座氏へと迫る。
だが蟹座氏は余裕を崩すことなく避けもせずに身構える。
確かに威力は高いがクリスタルウォールで跳ね返せないほどではない。
自らの技で焼け死ぬのがこの魔女にはお似合いだとキャンサーの黄金聖衣から、
アリエスのムウの力を引き出しにかかる。
唱えるはいつも通りの一つの呪文。

「蟹座じゃ……」

その慢心こそが孔明の狙っていた隙だとは思いもしないで。

「マホトーン!!」
「…………!?」

蟹座氏の言霊が途中で途切れる。
それだけでは無い。声を出しているはずなのに喉からは何一つ音が発せられない。
蟹座じゃないもんは言霊だ。
定型句として成立しなければ効果が発動することはない。
目の前には迫りくる業火。

熱い。熱い。熱い。
蟹座じゃないもん、蟹座じゃないもん、蟹座じゃないもん!

何度唱えても声は出ず、水晶の壁は現れない。
避けようにももう遅い。とてもじゃないが逃げられない。

ごめんね、みんな。生き続けるには、この世界は辛すぎるよ。

怒りも、悲しみも、嘆きも、狂気も。
全てを飲み込み、炎が蹂躙した。






「うおおおおおおおおおお!?こっちくんなああああああ!!」

かっこいいことを言って、熱血王子を繋ぎ師に任せ、
孔明と重症のはずなのに何時の間にか姿を消した蟹座氏を探し求めいたバトルマスターは、
予想外の大ピンチに立たされていた。

「ああ、カズキ。恥ずかしがることはない。さあ、私と一緒にエロスの海に身を委ねようじゃないか!」
「さあ聞くといい、エロスの鐘を!そして解放しなさい、その淫らな本能を!ああん♪」
「はっはっは、エロスの鐘の、興奮したね?今自分が言った淫らという言葉に興奮したね?
 ああ、わたしもしたさ!猥ら。なんて素敵な響きか!君もそう思うだろう、カズキ!」
「清純なショタを襲う逆レイプの快感に負けず劣らずの初な強者を屈服させる快感。
 たまらない、堪らないわね、エロ師匠。危険を冒してきた甲斐があったわ!」

スパイセットを影の繋ぎ師に破壊され、途方に暮れていた二人だが、
影の繋ぎ師がド派手にホテルの方に向ったのを目にし、勝負に出たのである。
一瞬とはいえ垣間見た影の繋ぎ師のチート技能の前には孔明も涙目だろう。
付け入る隙も出てくるはずだ。
事実ホテルに忍び込んだ二人に孔明は自分からコンタクトを取りに来て、
あれやこれやの交渉の挙句、バトルマスターを二人掛かりで襲える権利を勝ち取ったのだ。
孔明が珍しく本気で渋った末に折れたことからも、対等な取引と言って過言は無い。

「や、やめろおおおお!?人の股間をそんな目で見んなぁぁぁああああ!」
「はっはっは、股間を見ないで何を見ろというんだい?
 それとも君はお尻の穴に突っ込んでほしいタイプかい?安心し給え、カズキ!
 私の一物は天をも突くランスだ!!」

逃げ惑いつつ斬撃を繰り出してくるバトルマスターにエロ師匠はサンライトハートで応戦する。
したらば孔明から資料として提示された一連のバトルマスターが登場するSSから、
三人はバトルマスターが典型的な良識人で、エロ展開に弱いと判断した。
そんなギャルゲロワ出身とは思えない初さに、エロ師匠と煩悩寺の嗜虐心はますますくすぐられる。

「エロスの鐘が56式、ルパンダ~~イブ!ばーとますちゃん、身ぐるみと童貞置いてけええ!!」
「勝手に童貞だって決め付けんなああああああ!!」

ちなみにこんなふざけた戦いではあるが、本人達は至って真剣である。
エロスの鐘の音により精神攻撃を仕掛ける煩悩寺、
自身の心象世界である闘争制覇者を敢えて前面に押し出すことにより欲望に抗い続けるバトルマスター、
バトルマスターの重い攻撃が煩悩寺に届かないようガードしつつセクハラを試みるエロ師匠。

現状ではバトルとエロスが奇跡的に均衡しギャグ展開で済んではいるが、
少しでもどちらかに比重が傾けばたちまちエロスかバトルに持ち込まれ勝敗は決する。

245:イマ賭ける、コノ命 投下順に読む 246:君の言葉を聞かせて欲しい
245:イマ賭ける、コノ命 時系列順に読む 246:君の言葉を聞かせて欲しい
242:ギャルゲロワのなく頃に 想託し編 バトルマスター 246:君の言葉を聞かせて欲しい
242:ギャルゲロワのなく頃に 想託し編 蟹座氏 246:君の言葉を聞かせて欲しい
242:ギャルゲロワのなく頃に 想託し編 管理人・したらば孔明 246:君の言葉を聞かせて欲しい
242:ギャルゲロワのなく頃に 想託し編 コ・ホンブック 246:君の言葉を聞かせて欲しい
242:ギャルゲロワのなく頃に 想託し編 影の繋ぎ師 246:君の言葉を聞かせて欲しい
237:そのチートに賭ける!! エロスの鐘の煩悩寺 246:君の言葉を聞かせて欲しい
237:そのチートに賭ける!! エロ師匠 246:君の言葉を聞かせて欲しい
237:―――&Black Joker 熱血王子 246:君の言葉を聞かせて欲しい

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最終更新:2008年04月07日 07:22
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