オーダーイズオンリーワン。『ロワ完結』。オーバー。

「ところで俺、思ったんだけどよ」
「なんですかー?」
「はあ……はあ……」
 リヤカーを引いて息も荒くルシオは進む。
 その上に乗ってのんびり食事しつつ、可憐なロリっ子であるクマのプー太と会話する転。
 まさに王と奴隷、格差社会の縮図である。
 ちなみにそのリヤカーの底で、気絶中のまま引きずられているシルベストリは、どういう階級なのかは触れないでおく。

「スパロワの書き手って、もう俺しか生き残ってないじゃん」
「そーですね」
「ぜえ……ぜえ……」

「で、俺は帰ってそのスパロワを完結させなきゃならんわけよ」
「うーん、私は読んでませんけど頑張ってくださいね」
「ふう……ふう……」

「だが、脱出しようにもロワが終わらなきゃここから出られないくさいときた」
「やっぱり、目指せ完結!ですね」
「はあ……はあ……」

「なあ、ルシオ。止まれ。もういいぞ」
「はい……え?……もういいって?」

 汗だくになった顔を上げる元気もなく、俯き気味の姿勢でルシオは転の方に振り向く。
 気まずそうに頭をかいて、苦笑いする転。
 いつも傲岸不遜極まりない彼がそんな顔をするので、ルシオは軽く驚く。
 だが、その口から発せられた転の言葉は、驚くどころか理解不能だった。




「お前には悪いんだけどよ。俺、対主催やめるわ」




 その言葉と同時だった。
 ルシオが返答する間もなく転がその手をかざすと、その手の甲からぼこりと光輝く球体が現れたのだ。
 目もくらむような光がその球体から発せられた。
 その眩しさにルシオは思わず目をつむる。
 だが、その目が開くことは二度となかった。


 ――何故ならその光によって、彼の上半身は跡形もなく消え去っていたからだ。


  ◇  ◇  ◇


「……これで全部だな」

 ルシオの荷物をまとめ終わった転は、独り言をつぶやきながら、プー太をその腕に抱えて待機するヒュッケバインの元へ歩いていく。
 その転のそばに放置された下半身だけのルシオの死体は、ブスブスと焦げ臭いにおいを発していた。
 だが、すでにそれを省みることはない。
 転の最優先事項は、スパロワの完結。
 そのために一刻も早く帰還すること。
自分以外のスパロワ書き手が全滅し、この空間から主催者を倒さず自分だけ脱出するのが至難とわかった時点で、彼が対主催である理由はなくなった。
 だから一刻も早くこの馬鹿らしいゲームを完結させる。
 優勝だろうと脱出だろうと構わない。
 だから余計な参加者は自分のできる範囲でサクサク殺す。
 もちろん脱出できる可能性がある参加者と接触できたのなら、そいつらに協力するのもやぶさかではない。
 だが、第一放送で24人、第二放送で17人。
 このペースが続くようなら、しばらく傍観者に徹すればいい。
 わりと近いうちに最終盤までもつれ込む可能性が高いからだ。
 それまでは、首輪が外れたメリットを生かして禁止エリアでのんびりするのも策のひとつだが。
 レーダーには、自分と同じく温泉に向かう参加者が複数写っている。
 優勝狙いにせよ、脱出狙いにせよ、情報は必要だ。
 温泉で接触してみるのもいいだろう。
 有用な情報があれば聞き出したいし、対主催として使える奴等ならば首輪を外してやってもいい。
 だがそうでなければ殺す。マーダーでも襲ってくるなら殺す。

「さて……使える駒であればいいがな。ああ、そうだこいつも始末しておくか。
 気絶が長生きフラグなどという最近のロワの風潮など、俺のような古参ロワの住人が知ったことか」

 そう言って手をかざす。
 ルシオを殺した光が再び発せられ、今度はリヤカーを包み込む。
 そこにシルベストリがいることは、レーダーですでに把握していた。
 その光の一瞬後、そこあったリヤカーは跡形もなく消し飛んでいた。
 もちろんシルベストリごと。
 そのことに一片の興味をしめすことなく、ガンナーユニットの部分に器用にまたがり、リモコンを手に取る転。
 ちなみにリモコンはPS2のコントローラーの形をしており、操作はA.C.E3方式である。

「ところで……お前はどうするんだプー太」
「……どうする、ってなんですか?」
「とぼけるな。ドSロリコン変態紳士だらけのパロロワ書き手の殺し合いだぞ?
 支給品扱いとはいえ、お前のような奴が何の力もないままここにくるなど、進んで生贄になるようなものだ。
 おおかた主催者側の監視役か何かだろう。さっさと本性をあらわせ」
「……なるほど。流石ですねえ。でも私はあなたの邪魔をするつもりはありません……といっても信用できませんかね、えへ」
「……当然だ」
「じゃあ、さみしいけどさよならです。でも私はね、主催者側ではあるけど本当に主催者打倒でも構わないんですよ。
 このロワを楽しくスムーズに進行させるのが私の役目でしたから。
 でも皆さんのおかげで予想以上に順調だったので、結局何もしませんでしたけど」
「――待て、どういうことだ?」

 突込みどころが山ほどあるプー太の言葉に、思わず転の口調が鋭くなる。
 だが、すでにその姿は空間転移によって消えかけていた。

「秘密です。えへへ、頑張ってくださいねー♪」

 無邪気な笑顔。何を頑張れというのか。
 殺し合いの場で、そのお気楽な言い方はあまりに不似合いだった。
 それにルシオやシルベストリを殺しても何も言わない。
 所詮、絵師さんもロワ住人と言えばそれまでだが……。

「……気に入らんな、ちっ」

 苛々がつのり思わず舌打ちする。
 色々と考えるべきことはあるが今の段階では何もわからない。

「ひとまずは温泉で休むか。行け、ヒュッケバイン!」

 転を乗せ、その操作に答えて、紺色のパーソナルトルーパーは空へと飛び立った。


【◆MJ.H0/MJQ@AAAロワ:死亡】
【シルベストリ@漫画ロワ:死亡】


【午後】 【G-7 市街地上空を南へ移動中】
【転@スパロワ】
【装備:ヒュッケバインMk-Ⅲガンナー(人間サイズ・リモコン式)@スパロワ】
【所持品:支給品一式×3(食事一食分消費)、転ばし屋、首輪×3(内一つ破壊)、高性能探索機能つき扇風機、チェーンソー@サガ1、えいゆうのたて@FF6ほか未確認】
【状態:健康】人格反転中
【思考・行動】このロワを完結させて一刻も早く生還し、スパロワを完結させる。優勝か脱出狙い。
1:とりあえず温泉で一休み。
2:他の対主催を働かせる。無能なクズはさっさと排除。
【備考】
※容姿は秋津マサト及び木原マサキ
※転ばし屋はトリップ名でしか動きません
※生死に関わらず、第三回放送で転の死亡は放送されます。
※首輪の解除方法を会得しました。道具がなくても外せます。
※えいゆうのたてにはアルテマ×10、つまり通算で10話以上所持しているとアルテマが習得できます。魔力っぽいステータスや、触媒があれば使用可能です。
※ヒュッケバインはビッグ承、結のディストラと融合することで、三神、四神モードにパワーアップします。
 それぞれ三機合体、四機合体の機体に変化。二機合体ではSSサイズ(人間大)ですが、サイズも大きくなっていきます。
※クマのプー太氏は主催者の本拠地に帰還しました。

212:FC版書き手ロワイアル 投下順に読む 214:人蟹姫
207:蟹座の爪の悪夢 時系列順に読む 214:人蟹姫
205:働け対主催! 俺?俺に働けって? ◆MJv.H0/MJQ
205:働け対主催! 俺?俺に働けって? 219:Blitzkrieg――電撃戦 (前編)
205:働け対主催! 俺?俺に働けって? シルベストリ





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最終更新:2008年04月06日 23:37
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