ここは死者スレ……


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どこまでもどこまでも広く――、とてもとても静かな――場所。ここは死者スレ――……。


 ◆ ◆ ◆


間接照明だけで薄暗く、格子状に仕切られた小さな箱が立ち並ぶひっそりとした部屋。
そう。静寂でも静謐でもなく――ひっそり、程度。時折、遠慮がちに抑えられた囁き声が箱より漏れてくる。そんな場所。
黒く塗られた木の板で囲われる箱の中には、遠い場所を映す鏡が一枚。そしてそれを覗く人間が一人か二人、入っていた。

まぁ、簡単な言い方をすれば――ネカフェ。それを模した部屋が死者スレのどこか、つまりはここにあるのだ。
死者スレ住人が利用する分には何時間でも無料。なにせこいつらときたら、三途の渡し賃すら貰って来ていない。
で、目の前にある鏡(PC)で彼らが何を覗いているかと言えば、もちろん贔屓としている生者達だ。

別に、生者が活躍する本スレはこのネカフェでしか見れない訳ではない。
蝶巨大ディスプレイを擁したパーティ会場でも、それぞれの控え室や、談話室などに設置されたTVでも見れる。
ここに来ている者は、なんとなく落ち着くとか、静かに一人で見たいとか、そういう理由を持つ者達だ。

ちなみに、ここはネカフェであるので、各ロワで元ネタとなった漫画やアニメDVD。ゲームにそれらの設定資料集。
PCの中には、それぞれのロワのログやらまとめサイト、ここ専用の掲示板なども用意されている。
さらには、飲み物や軽食にお菓子。簡易ではあるものの、シャワーや日焼けマシーン。何故かコスプレ衣装まで完備。
どこの誰がどうしてこんな物を用意したのかは不明だが、その居心地のよさに控え室ではなくここを根城しているものも一部いる。
そう言えば、そうそう。このネカフェにあるPCを使ってロワの執筆作業を進める――そんな書き手までいたりするのだ。

それで、このネットカフェ『黒縄地獄』(書き手ロワ2nd-死者スレ店)。今回のお話は――?


 ◆ ◆ ◆


「……――どう? 残念? それとも悔しい?」

牛革風に仕立てられた安物の二人がけソファ。その片側にお尻を乗せている少女が、もう片方の男に尋ねた。
下ろせば膝裏まで達する金色のツインテール。細身の身体を仕事着に包む少女の名前は――ボマー。

「いえ、……どうしてです? 喜ばしいことじゃあないですか」

彼女の質問に、男は視線をディスプレイから動かすことなく答える。
襟無しシャツの上に着物と袴という書生風の姿。真っ赤に尖った威嚇的な仮面の男の名前は――マスク・ザ・ドS。

彼女と彼。二人が一緒に見ているのは、それぞれが気をかけていたある少女の道行き。
見守られる少女の名前はコ・ホンブック。絶望少女ではあったが、その彼女は二人の前で今救われた。

「あれぇ? 少しは悔しがると思ったんだけどな。さっきの今の話よ。コレ」

恐れる少女を不幸な少女に、不幸な少女を絶望少女に仕上げきった男の態度に、爆弾魔は首をかしげる。
これが通常のロワならば、『ちょw 一話でマーダー改心かよ』と毒吐きスレで愚痴られてもおかしくない展開。
それが、絶望少女を手塩にかけて丹念に作り上げた男ならば、さぞかし無念であろう――と彼女は思ったのだ。

「なぜですか? 私の大好きな少女が幸せになる――なんら不満に思うところはないと思いますが?」

男はディスプレイの中にいる、白とピンクの少女を愛しげに見つめながら再度答える。
その眼差し。例えるならば、娘の活躍を見に運動会へと来たお父さん。そんな優しさがあった。
ドSと名乗り、ロワの会場内を引っ掻き回していた頃には一度足りと見せなかった表情である。

「とても、マスク・ザ・ドSの発言とは思えないんだけど……」

自分を謀の道具にし、首を祭壇に上げる供物の一つとした目の前の男。
爆弾魔としてシンパシーを覚えた、書き手ロワ2nd内-S度ランキングトップ(死者スレ調べ)の、この男。
まさか、死んで憑き物が落ちた? と、ボマーは心配(?)になるが――……。

「こんなことを言うと、また変態じみているなどと言われそうですが……」

絶望の男はそこで一旦句切り、微笑む。そしてその先をあの時の様に、歌うように続けた。

「……私は不幸な少女が。惨めな少女が。憐れな少女が。可哀相な少女が。痛ましい少女が、大好きです。
 不幸な少女を惨めと罵り、憐れで可哀相な少女を徹底的に痛めつけるのが――大好きです。
 少女を愛し、愛を伝える手段は選ばず。愛を伝える道具は厳選し。愛を伝える場所を作り上げる。
 愛しい彼女の道を絶ち、望みを絶ち、光を絶ち、そして新しい靴を履かせ、往く先を与え、火を齎す。
 徹底的に徹底を徹底し、絶対的に絶対を絶対とし、完膚なきまでに愛し、無残なまでに愛す。
 だからこそ、そこまでするからにこそ――!

 私は私以外の誰かが彼女を愛する事を赦さない。愛していいのは私だけ」

お前を殺すのは俺だぜ的な、ツンデレストーカーライバル(例:ベジータ)――みたいなものですよ。と、
絶望の男はやはりディスプレイの中の少女から目を放すことなく言い切った。
好きなんだから幸せになるのは喜ばしい。ただ、私のやり方は私だけのものだと……。

「……あー。……まぁ、うん。私の勘違いだったようだわ。よかったよかった(?)」

歪んでいるなぁ……と、自分を心の収納棚の一番上に上げつつ少女は安堵(?)の溜息をつく。
同時に喉がカラカラになっている事にも気付いた。死んだ時の事を思い出したからだろうか、身体が緊張していたようだ。
先に描写があった様にこのネカフェは全サービスが無料。ボマーはソファから腰を浮かせ戸に手をかける。

「飲み物のおかわり取ってくるけど、どうする?」「コーラ……いや、暖かい紅茶をお願いします」

ストレートでね。と言う、注文を受け取りボマーは箱の外、薄暗くひそやかな廊下を歩いてゆく。
手続きも、部屋の指定もなかったので二人は最奥の一番広い席を選んだ。ゆえに、自販機までは一番遠い。
しかし……、機械は自販機のそれだが、完全無料。それは販売機というのだろうか? 否販機?

とりとめのないことを考えながら爆弾魔の少女は廊下を歩く。
死者スレには朝も昼も夜もあったりなかったりだ。時間は限りなく無限に近い。期限を心配する必要もない。
だから、今はゆっくりと――……。


 ◆ ◆ ◆


……余談ではあるが、このネカフェにボマーとドSの二人が入り浸るようになってから利用者が少し減った。
タイマーの壊れた鬱展の時限爆弾と、洒落に為らないレベルの絶望先生。そんなのがつるんでいると聞けば、ねぇ?w
壁を隔てて漏れ聞こえてくる鬱展談義や、ドSの眼差し、ボマーの舌なめずり……etc. まぁ、仕方のないことである。




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