自重の意味を知るRPG


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何もない荒涼とした大地D6。
生き物は殆ど見当たらず、大地そのものの生気も薄い。
太陽の熱を吹くんだ温い風が更に地面を乾かしていく。
そんな死せる大地に、その青年は居た。

「……これから何処へ行きましょうか…………」
銀髪を風に揺らしながら氷の剣士ヴェイグ――――――――ナナシは目を細めた。
先程まで辺りを走っていた恐るべき光の束、
テイルズでいうなら誰もが一度は聞いたことのあるマーダー・酢飯ことシャーリィの滄我砲のような一撃が
突如点に登り、荘厳な光の柱となっているのだ。
「あれほどの急激な方向転換……自然現象ではないですね」
そこには何者か誰かの明確な意図がある。つまり、あの光の柱の辺りには「複数の人間が密集している」だろう。
自分だけの身を守るだけならわざわざ弾道を逸らす必要がない。
言われなくてもスタコラサッサだぜぃと逃げるのが最も賢い選択だ。
それをせず、挙げ句島全域に自らの位置をアピールするかのような行為。
いや、それ以前にあの光を直角に曲げるだけの力を使って無事でいられるだろうか。
十中八九、逸らした書き手は後先は考えてない。残りの1、2は規格外のチート書き手が理不尽に曲げた可能性だが、
それは考えなくても良いだろう。
なぜなら既にこの砲撃そのものがチート級なのだから。

考えられる可能性は
「動けない誰かを守るために、誰かが後先考えずにあれを曲げた。曲げた本人も相当に消耗している可能性大」であることだ。
理屈っぽく何でも考えるテイルズ書き手らしい推論だった。
だが、それでもその動揺の無さはキャラとして、否、書き手としてあまりにも人間離れしすぎていた。
まるで感情を作る器官を失ってしまっているかのようだ。

「俺は、どうしたらいいんでしょうか……」
ナナシはぐぐもったような声を上げた。
それもそのはずだった。ナナシは本来心優しい書き手だ。
争いを好まず、和を尊んだテイルズロワの中でも一・二を争うほど出来た人間である。
このジョーカーとしての立ち位置にも、彼は消極的だ。出来ることなら誰一人殺したくない。静かに縁側で茶を啜っていたい。
「だけど……」
だが、ナナシはその欲求に従順な僕というわけではなかった。

「だけど……あんな拡声器に近いフラグを立てられたら……空気を読まないと不味いような……」

そう、ナナシは“空気を読む書き手”なのだ。
そこに材料が用意されていると分かっているのに、料理しない料理人もそうはいない。
書き手という料理人なら尚更だ。
殺したくない、でも空気を読まなきゃいけない。
そして、ジョーカーとして空気を読むと言うことは、ジョーカーの仕事と言うことは、「殺す」ということだ。

殺さない、空気を読む、殺すな、空気を読め、殺せ、殺さん。
殺し殺され殺し、もう一度殺す。

本編で味わったような究極の二択を前に、ヴェイグの姿をしたナナシは苦悶する。

殺し殺さない殺さずに生かさない、半死のまま全殺し、血液を循環させたまま心臓を止める。
一割を残しながら110%を壊滅させ、餓死しかけた胃袋を食物で破裂させる。
脳死させながら内臓破壊、生命を讃えるように窒息死、左の頬を打たれたら眉間に拳銃。
殺して生かして殺して生かして殺して生かさず交互に殺す。

俺はどうすればいいんですかですかですかですかディスカ。

消極的なジョーカー、その構造だけでナナシの心は矛盾に満たされていた。

<そろそろですかね。ナナシさん、聞こえてます? おーい、現場のナナシさーん?>

どちらを選べばいい? 俺の心と空気。どちらを、対主催とマーダー。どちら、陰と陽。熱血と鬱。

<あー、もう聞こえてないわコレ。やっぱ急いで派遣したからなあ。
 伝説のネオアームストロングサイクロンジェットアームストロングナナシ完成度低いなオイ>

ああ、脳裏にあの記憶が蘇る。ナナシとしてではない、ヴェイグとして味わったあの選択のキヲクヲ

<いいんじゃないですか? ニコニコの皆さんも撤退したようですし。此方も潮時ですよ>

ニア「殺す」ニア「殺す」 ニア「殺す」ニア「殺す」ニア「殺す」 ニア「殺す」ニア「殺す」ニア「殺す」ニア「殺す」ニア「殺す」ニア「殺す」ニア「殺す」
ニア「殺さない」ニア「殺さない」ニア「殺さない」ニア「殺さない」 ニア「殺さない」ニア「殺さない」ニア「殺さない」ギリ「殺さない」

<既に参加者とのフラグは立てましたし。はい、はい。じゃあそのように。じゃあナナシさん、手筈通りに>

ニア「殺す」ニア「殺さない」ギシ「殺す」ニア「殺さない」ニア「殺す」ニア「殺さない」ニア「殺す」ニア「殺さない」ニア「殺す」ニア「殺さない」
ニア「殺さない」ニア「殺す」ニア「殺さない」ニア「殺す」ニア「殺さない」ミシ「殺す」ニア「殺さない」ニア「殺す」ニア「殺さない」ニア「殺す」


ニア「   <死んでください。まずは挨拶代わりの惨劇を>     」


ザク、っという音がした。肉の切れると言うよりは、寧ろ果実を切ったような爽やかな音だった。
「選べま、せん、俺には、選、べなひで、ぷ」
その手に持たれていたのは、邪剣ファフニール。
短剣ほどに短いその刀身はまるで血を吸える面積をより多く増やしたいかのように、その身をくねらせている。
LSロワでも登場した、人を殺す度に自らの攻撃力を増す魔装備である。
喉を三回貫いた。
肺が空気を往復させる度に、紅い泡が蟹のように噴き出た。しかし明らかに萌とも燃えともかけ離れたものだった。

(ああ、こうすれば良かったんですね……)


その間もエチュードは続く。
まず脚を解体することにした。腿の肉筋を丁寧に絶ち、肉をグズグズになるまで揉んで軟らかくする。
頭の脳細胞一つ一つが小さく弾けるようなビジョンを感じたが、直ぐに万を超えて混ざり全部真っ白になった。
つまんで引っ張って直ぐに千切れるまで柔らかくなったら捨てて、露出した骨を握る。
分厚い手袋のままザラザラと骨をさすり、手頃な所で強く握った。
そして一気に凍らせた股関節を壊して外す。
ガクリ、と鳴って、ナナシが文字通り腰を抜かした。
気を取り直して反対側も同じ手順を踏もうか。
殺すことと、殺さないこと、2つを同時に成立させるスバラシイ理屈。
“自分を殺せばそれで終わるじゃないか”

(殺すとか、殺さないとか、関係無い……)

腿だけ骨が露出した二本の脚は放置して、次は左腕を切り落とす。
先の方から丁寧に関節を崩し、創意と工夫を以て知恵の輪のように解体していく。
腰から下と同じように、直ぐに凍結して失血死を防ぐ。
普通なら有り得ない、一人解体ショーを、一人の観客も居ない舞台で完遂しきる。

笑いながらそれを成す“ナナシだった何か”は、確かに道化として存在している。

(死んでしまえば、矛盾なんて、なくなるんだから)

胸の骨を残った腕でこじ開け、蔵の中に納められた内臓がてらてらと鈍く光った所で、その演劇は幕を閉じることになった。
凍らせながらもなお広がる血の海は、まるでカーテンコールの紅幕のようにゆっくりと広がっていく。
握られた短剣は、勿体ないとばかりに血の中で蠢き続ける。すでにその手にはなんの動きもなかった。

ここに、道化の芝居は完全に幕を閉じた―――真っ赤に、いつまでも真っ赤に冷え切った、まるでヴェイグのような血の幕で。

ずずず~~~~~~~~~~~。
それは血のような紅……とは少し離れた赤色だった。
トマトの鮮やかな赤はニンニクや白ワインと混ざり、少し濁っている。
ずずずずず~~~~~~~~~~~。
しかし、それよりもその赤を渾然とさせているのはそれら調味料側ではなく、
アサリ、イカ、エビ、ホタテ等ふんだんに盛り込まれた海の幸のエキスだった。
ずずずずずずず~~~~~~~~~~~。
上にトッピングとしてのったバターをかき混ぜて、更にコクを足す。うーんマイルド。
味に飽きが来ないように、タバスコと粉チーズを適度に振りかけ直す。
「まるで雪と血の赤のようですね。そういや最後の惨劇は雪の上だった? ……流石にこれはサムいか」


自分で言っていて恥ずかしくなったのか、マントの人間は汁を啜るのを止めて、フォークでそれを突き刺す。
ぐり、ぐり、グリグリグリ、内臓をかき混ぜるように抉り込むように、それを回す。
そうして一気に引き抜いて、そのホカホカのそれを口元へ……

「おい……なにをしてる」
ブス。

「おちゃ痛っちゃ熱ゥあ痛熱やっっあまむぅきゅゥゥゥゥゥ!!!!!」

突如後ろから掛けられた声に黒いマントは驚き、口元まで運んでいたフォークを鼻に向けて入れてしまう。
勿論人間は鼻から飯を食えるようには出来ていない。
深皿に、鼻血を垂らしながら黒マントはタバスコ混じりのそれを鼻に直撃させた傷みに数分悶えることになった。
「……一体何をしてるんだお前ら?」
部屋に入ってきた銀髪の剣士は、そういって無事な残り二人の黒マントに訪ねた。
その内の一人麺をずずっと啜りきってから、答えた。

「見たら分かるじゃないですか。ペスカトーレ喰ってたんですよ、ナナシさん」

粘膜をやられまくった一人は未だ悶えのたうち回っていた。きっと涙のせいで、そのスパゲッティは少し塩味が効くだろう。

「……つまり、昼飯を食っていた、と?」
ナナシは大きな釜から自分の分量のスパゲッティを取りながら訪ねた。
おさげを編むほどに長く束ねられた銀髪に、特徴的な檜山ボイスは紛れもなくヴェイグ=リュングベルそのものだった。
先程確かに死んだ、ヴェイグだった。
ただ一つ違うところと言えば、彼は左の目を布で覆っていた。そこにあるべき左目が失われている。
「はい。なんか主催の本拠地を守る戦闘員達はスパゲッティを食べなきゃいけないらしいんですよ。変わってますよね」
そういってカラカラと笑いながら手際良くスープとスパゲッティを交互に食べていくのは名無しだった。
黒マントに包まれて誰かも分からないが、その料理の手前から見てテイルズキャラのようだ。
料理スキルはテイルズキャラには必須科目である。忙しいときは戦闘一回につき料理を作るのだから。
もっとも、声口調もその状態もマントを脱ぐまでは当てにならないのだが。

「それで、俺を殺したのはなぜだ? 七氏」
ナナシはフォークを手に持ちながら睨んだ。その向こうには七氏が鼻を摘みながら涙を堪えている。
「痛~~~。あ、ああ、それですか。あの人が出撃しちゃったんで、ルール違反になる前に手を打つする必要があったんですよ」
七氏はようやく涙を拭って再びフォークを握った。

「そうか……で、あいつはどうした……やはりまだ俺たちの事を恨んで……」
ナナシはしんみりしたような口調で言った。かつての記憶が脳内で揺り起こされる。
しかし、それを語ることはない。
それは既に終わってしまった話だ。そして、

「それを判断することはできません。あの人の消失が確認されましたから」

「……何?」
ナナシは疑問符が見えるほどに大きく目を見開いた。
「回収する前に反応がロストしたんですよ。座標も不明です。多分閉鎖空間系能力の仕業ですね」
ナナシはペスカトーレを見続けながら黙ってしまう。
「とりあえずこのまま静観しましょう。我々がこれ以上介入すると確実に因果律に揺り戻し……KYの力が働きます」
「nanasinnさんはどうします?」
「これも静観ですね。その内戻ってきますよ。あの能力は時間さえあればなんでも出来ますから」
「一体何になって帰ってきますかね。もうグリッドの原型なかったりして」
誰も一笑もしなかった。充分想像できる事態だったからだ。

「ま、気にしても仕方ありません。ファーストアタックは概ね成功しましたし、ポジティブに行きましょう」
七氏が手を合わせてごちそうさまのポーズを取る。
「人間一人使ってあれだけの印を付けたんですから、まあ、多少なりとも目を引きます。
 テイルズロワの存在を示し、全滅の可能性を見せつけました。
 あの支給品、チャネリングもあのナナシさんの袋に未だ入っている。この状況下でチャネリングという見せ札に彼らがどう反応を示すか?
 無視するか、電波を遡って進軍するか、それとも敢えて泳がせてくるか。手並みを拝見です。それに、私達の力は終盤入ってからがナンボですし。
 もっとも、その前に全滅しても毎日人類滅亡のニコニコほどとは行かないまでもまあテイルズロワ的にはアリでしょう」
「個人的にはLSかAAAの人たちのリアクション気になりますよねえ。あ、漫画もか」
七氏は茶を啜りながら淡々と言った。名無しも適当な相づちを打つ。
ナナシは、漫画ロワと言う単語であの二人を思い出した。
ミスターマダオ、そしてアニロワ1stの神行太保のDIE/SOUL。自分の偶像(アナザー)とはいえその顛末は自らにダイレクトリンクされている。
彼らとの再会も、ありうるかもしれない。いきのこっていれば、だが。
もうこれ以上は彼らも何もしないつもりなのだろう。ターンを終了して、次のフェイズを譲ってしまった。
次に手を打ってくるとすれば、それは相手のフェイズが終わった後。彼らは駒を指して遊ぶ凶人達なのだ。


「それにしても……あのアナザーナナシさん、凄かったですね。本物そっくりでしたよ」
名無しが思い出すように言った。
そう、まだ根本的な謎が残っている。ここにいるナナシがナナシなら、一体会場で死んだナナシは何者なのか。
「まあ、急いで拵えたにしては外見は作られていましたがね……インディグネイションが使えたり言語機能も少しバグがみられました。
 やはり、アナザールート(平行世界)が完成していない以上、あれは本物のナナシさんにはなり得ないということです」

そう、テイルズロワの世界は2つ存在する。彼らはその未完成の世界から因子を集め、ナナシのクローンを作り上げたのだった。
「でも無理でしたね~~。因子が足りない……ってやつですか。しかも、もう新しいクローンを作るだけの因子は残っていない、と」
「お前ら……平行世界の俺とは言え少しは人の身にもなれ…あれだけの惨劇を身内にやられるというのは堪った物じゃ……」
そう言いかけてナナシは止めた。自然と笑いがこみ上げていく。

全滅を敢行してしまった俺たちにそんなことをいう資格はない。
ナナシはスパゲッティを口に入れた。これだけの惨劇の後に、俺たちは平気で飯を食える。
名無しがにへらと笑った。
「まあ仕方ないですよ。だって俺ら……テイルズロワですし♪」


しかも俺たちは、対「対主催」なのだから。

【昼】【不明-テイルズロワ勢控え室】



【ナナシ@テイルズロワ】
【状態】:健康 (ただし左眼がない)
【装備】:なし
【道具】:不明
【思考】:
 基本:主催者側の人間として活動。参加者の抹殺
 1:とりあえず、ペスカトーレ食う
 2:次の出番まで縁側で茶を飲む
 3:出会った二人とは生き残っていればもう一度戦う?

 ※容姿はヴェイグ=リュングベル

【七氏@テイルズロワ】
【状態】:健康
【装備】:なし
【道具】:不明
【思考】:
 基本:主催者側の人間として活動。参加者の抹殺
 1:とりあえず、茶を飲みながら出番待ち
 2:チャネリングに対する反応を見る

 ※容姿やその能力は未だ不明

【名無し@テイルズロワ】
【状態】:健康
【装備】:なし
【道具】:不明
【思考】:
 基本:主催者側の人間として活動。参加者の抹殺
 1:とりあえず次の出番まで茶を飲む

 ※容姿やその能力は未だ不明。


 ※D6にナナシ(アナザー)の惨殺死体と邪剣ファフニール@テイルズロワ、チャネリング@テイルズロワがあります
 ※アナザー体の精製はもう出来ません

176:残酷な天使の紅茶 投下順に読む 178:シリアスの次に来るのがシリアスとは限らない
176:残酷な天使の紅茶 時系列順に読む 178:シリアスの次に来るのがシリアスとは限らない
142:黄昏、来まくって 名無し 237:White Trick
142:黄昏、来まくって 七氏 237:White Trick
165:氷の青年 ナナシ 210:エロス頂上決戦開始
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