なんであんな大見栄を張ってしまったのだろうかと、地味子は密かに後悔し始めていた。
よくよく考えてみれば自分の身体能力は中の下だし、何より存在感がない。見ろ、目の前にいるスクライドっぽい人はそばにいるだけで喉がカラカラに渇いて思わずコーラを一気飲みしたくなるくらい暑苦しいし、後ろにいるAKを持ったおっさんからは『ざわ・・・ざわ・・・』と何かヘンなオーラを醸し出している。
そして何より……
「お嬢さん! 私が気を失っている間、ずっと見守ってくれていたのですね!?
いやはや言わずとも分かります、この後頭部に残るほのかな女性の温もり、花のような優しい香りが全てを教えてくれましたからねェ。
どうして気を失っていたのかは常日頃から真実を最短距離で追い求める私にとって現時点でバーミューダ・トライアングルの謎に匹敵するほどのミステリィですが、今はそのことは保留しておきましょう。
それよりあなたのようなうら若き可憐な乙女がそのような物騒なものを手にしているのはあまりにも場違い! あまりにも頂けない!
何より私はあなたを守ると誓った英雄! H E R O ! なのですからどうかここは私に任せ、離れて見守って下さい!
そして勝利した私を笑顔で迎え入れてくだされば……幸いです」
フッ、とニヒルな笑顔で己の大きすぎる存在感を誇示するフリクリ署長。この人の存在感が異常な程にでかかった。
いや、その、ボクにも何か喋らせて……
地味子は口を開けようとしたが、状況がそれを許さなかった。
「いつまでもくっちゃべってんじゃねぇぞッ! い・く・ぜぇっ!」
「まずはそこの五月蝿い……貴様からだ」
「フフフ、私の『速さ』についてこれるかな……? 『ラディカルグッドスピード』! 脚部限定ッ!」
ピーキーガリバーで叩き潰そうとするエースと、AKを構えるダイナマイトアンデッド(面倒なので『ダイアン』と省略する。ジャイアンみたいでしょ?)を横目でチラリと見て笑うフリクリ署長(これも面倒だからフリクリでいいや)。彼が言葉を為し終えた時には、地面のいくらかがまるで消失したかのように削れ、虹色の光がフリクリの脚部を覆っていた。ついでにその衝撃で地味子が吹っ飛ばされる。
「何、アルター能力……」
エースの目がそれを捉え、脳が情報を認識したときには、既にフリクリの姿はそこになかった。
「遅い! 遅すぎる!」
後ろ――!
声が聞こえるが早いか、フリクリの蹴りがエースの背中に突き刺さる。威力は大したことはないが、空中で蹴られたが故バランスを崩し、地面に膝をついてしまう。
「全くだ」
AKの銃口が、エースの目の前に現れる。バランスの崩れたところを狙って、ダイアンが漁夫の利を得んとしていた。だが。
「俺をコケにしてんじゃ……ねぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
地面を裂いて現れる、マジシャンズレッドの轟炎。ほぼゼロ距離にも関わらず、畏れることなくエースが攻撃を繰り出す。だがそれはダイアンとて同じ。彼も、死を畏れてはいない。
逃げる素振りさえ見せず、ダイアンがAKを全弾、撃ち尽くす。そのいくらかはマジシャンズレッドの炎さえ貫き、エースに肉薄する。
「ぐっ!」
さらにそのいくらかはピーキーガリバーに当たって弾かれたものの、最後まで執念を見せた一発がエースの肩を掠る。一方、エースの放った炎は……
「……」
感情に任せて放たれたためか、全身を焼き尽くすことこそなかったものの、それは左腕をこれでもかと炙り、ついに消し炭にしてしまったのだった。
「へへ、ざまァねえな!」
「ぐ、ぐぐ……っ!」
よろよろと呻き、そのまま地面に尻餅をついてしまうダイアン。結果的に武器の差が勝負の明暗を分けてしまったのだ。止めを刺そうと、エースは即座に立ち上がりジャッカルのトリガーを引こうとするが。
「私をお忘れかな!?」
凄まじい速さで地を奔り、風を切りながらフリクリが拳を叩き込もうとする。
「はッ、忘れてなんかしねェよ!」
ジャッカルの銃口が向かった先はダイアンではなくフリクリだった。
人間とは思えない早業で、いや並みの人間には扱えない代物が火を吹いた。
「だがこれも遅い!」
驚異的な速度で反応し、フリクリはエースの頭上を飛び越え反転して迫ろうとするが、それもエースは読んでいた。
マジシャンズレッドのスタンドが、立ち塞がるようにして灼熱の炎を吐き出した。こればかりはフリクリも反応が出来ない。
アルター化した部分で炎を受け止めようとするが防ぎきれず、炎から来る熱風で吹き飛ばされ、体をしたたか木にぶつける。いくらフリクリが早かろうとも生身の部分を激しくぶつければダメージは免れない。この間に、エースは今度こそ止めを刺そうと再びジャッカルを構えようとした。
「!? いねェ!」
今までダイアンが倒れていたはずの場所。そこから忽然と彼の姿が消えていた。
「ここだ……間抜けめっ……!」
ざくっ、と腕を斬り付けられる感触。弾けるような鮮血の飛沫と共に、エースの手からジャッカルがドスンという音を立てて落ちる。
「バ、バカな!? 身体半分真っ黒コゲにしてやったはず……」
斬られた部分を押さえながら、エースはダイアンを見て狼狽する。確かに焼き尽くしたはずのダイアンの左腕は、まるで何事もなかったかのように元通りになっていた。
「クク……! 支給品に助けられたってとこかな……! 覚えておくんだな、勝負に……『絶対』はない、と」
高らかに笑うダイアンの足元には、何かのビンらしきものが落ちていた。
「むう! あのビンは!」
「知っているんですかピザさん!?」
「ああ……我がAAAロワの作品、ヴァルキリープロファイルに出てくる回復アイテムでな……『プライム・エリクサー』といって味方一人のDME……まあHPを回復するアイテムなのだが……まさか黒コゲになった腕まで元通りになるとは……」
「……」
「……」
「ボクたち、いてもいなくても同じだよね……」
「ああ……参加する暇がない……というか逃げても気付かないよな」
エース、フリクリ、ダイアンが激しく戦う様をぽつんと離れた場所から観戦する地味子とピザの一号。もう自己紹介までしている。過疎ロワ同士、気も合ったようでほのぼのと会話している。
「ところで、地味子さんの支給品はどうしたんだ?」
「あ、ボクね、存在感薄すぎて支給品貰えなかったんだ……このナイフはある人から貰ったというか……奪っちゃったというか……」
「そうなのか……」
「あの人とあの足の速い人のお陰で今も生きてるようなものなんだけどね、でも人を一人殺しちゃったんだ……地味に」
「は、はあ……」
「でもそれだけ。序盤くらいによくある話の一つだし、リーフシールドって能力も手に入れたんだけどね、これボクの体力に依存するみたいで、もう2回くらいしか使えないの。それに攻撃力も皆無だし……あんな人たちと張り合えるわけないんだよ……でも目立ちたい」
「それは俺も同感だ。過疎ロワでもやる時はやりたいっすよね!」
「大体今だって台詞ばっかりで描写とか全然ないし、そもそもボクどっかの誰かと口調が被ってる気がするんだよね……しかもその人ボクより萌えキャラだし」
「俺も特殊な能力なんてないからなぁ……最初の方で笑いはとったけど一発芸みたいな感じだしさ。支給品に頼ろうにもこれじゃあねえ……」
がっくりしたように、自らの支給品だった同人誌三冊を出す。一つは全年齢向け(百合だけど)、後の二つは腐女子向けの品である。どう考えてもハズレの品。
だが地味子の反応は違った。彼女は腐女子ではない。ただ知っていたのだ。この本の真の力を。彼女が葉鍵の書き手であるが故に。
「も、もしや、これは!?」
「知っているのか地味子さん!?」
「夜天の書……その源流は古代魔法世界に存在していた膨大な魔力……『BL』を司り、数々の文明とオタク界を崩壊させてきた、禁忌の書であり、その本の中には力を制御する精霊がいるという話です。契約を交した者にはあらゆるBL力が集い、いい男を食い尽くすほどの魔力を得られるとか……すごいじゃないですか! 大当たりですよ! いいなぁ……」
大はしゃぎする地味子だが、ピザの一号は複雑な表情で首を振る。
「いや、その、凄いのは分かったが、俺はノンケだし、そんな世界に足を踏み入れる気もないんだが……」
「あ、大丈夫だよ。これは自分がそんなことをするわけじゃないんだ。あくまでも使用者が力を制御して、BL力を他人にぶつけるんだって。見たくなかったら目を瞑ればいいし」
「いやでもそういう問題じゃ……」
「ピザの一号さん! 今がキミの目立つときなんだよ!? ボクたち過疎ロワ勢が、強者に立ち向かえるいい機会なんだよ!? ボクだってまだ力は弱いけどさ、それでも一生懸命頑張ってこの力を得たんだよ。もっと目立って、もっとアピールしなきゃ新規さんは来てくれないんだからね! そのチャンスをみすみす見逃してもいいの!?」
地味子の懸命な説得。同じような境遇であるが故の、嘘偽りのない真摯な気持ち。真っ直ぐな目。ピザの一号は、堅く口を真一文字に結ぶ。
「そうだな……俺は、早く帰ってAAAを完結させなければ……続きを読みたがってる住民のためにも、ここで退くわけにはいかない!」
ピザの一号はBL本の一冊を手に取ると、それを胸に抱える。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
まばゆいばかりの閃光が彼を包み込み、少しずつその姿を変えていく。
フリフリのスカート。可愛らしいリボン。まあかいつまんで言えば
ゴ ス ロ リ だ。
忘れてはならないが、彼はピザの一号である。男である。
つまり女装である。だがそれは雄雄しく、猛々しく、そしてキモかった。
「輝いてる……輝いてるよ! ピザさん!」
「……行ってくるよ。そしてありがとう! 行くぞ俺! BLの限りッ!」
D-5ルート随一の『乙女』こと観月マナの持つなんだかよくわからんボーイズラブパワー、通称『NYBLP』による波動を放射しながら、ピザは戦いの渦中へと飛び込んでいく。
「そして、コスプレっ!」
夜天の書のもう一つの力。芳賀玲子の得意とする『変身』能力。それは文字通り彼の所属であるAAAロワの参加者に変身し、その能力を得られるというものであった。彼が選択したのは、不死者の王と呼ばれる『奴』だ。
「……ん?」
「何だァ!?」
「これは……アンビリーバボォー……」
激しい戦いを続けていた三人が、思わずぎょっとしてピザの一号……いや『ブラムス』を凝視する。
「……ヅラだな」
「……ヅラじゃねェか」
「ウィッグ、ですねェ」
いや正確には『ブラムス』の頭……明らかに『カツラ』となっている部分を。
「ああ、その通りだ……お前達も知ってるだろ? かの国民的に有名なお茶の間アニメの人物の、カツラだ」
訂正しておこう。ピザの一号が変身したのは『ブラムス』ではなく――
「波平のカツラを被った『ブラムス』……通称『ヅラムス』だ。笑いも戦闘力も兼ね備えた俺の実力……見せてやる! そしてそこの漫画ロワ書き手二人! 盛況ロワだからっていい気になるなよ! サービスカットだのホモヤローだの、そんなにいい男が好きならくそみそにしてやるぜ! BLの力、受けてみやがれ!」
戦いは、佳境を迎える――
さぁ~て、次回の書き手ロワ2ndは?
「地味子です。はりきってピザさんを送り出したはいいけど、これでボクは本格的に解説役になるしかないよね。でもいいや、葉鍵ネタ解説できるし。さて次回は
- エース、戦いの果てに見た世界は?
- ダイアン、ヘンな呼称にキレる
- フリクリ、いい男の世界に興味を持つ
の三本です」
次回もまた見てくださいねー、じゃーんけんぽんっ!ウフフッ
【朝】【C-9 森】
【ピザの1号(◆wKs3a28q6Q)@AAAロワ】
【状態】変身っ!ヅラムス!
【装備】夜天の書(BL本)
【所持品】BL本一冊、GL(全年齢)一冊
【思考・行動】
1・BLの力を見せてやる!
2・そのためにもダイナマイトアンデッドとエースに立ち向かう!
3・脱出してロワを完結させる!
4・でも俺はノンケです。…本当だぞ!
※BL力を手に入れました。観月マナのNYBLP(なんだかよくわからんボーイズラブパワー。なんだかよくわからん力でバリアを張ったりいい男の世界に引きずりこめます)
と芳賀玲子のコスプレ(変身能力。所属しているロワに出てきた参加者になれる。ただしネタのあるキャラに限る。能力は本物同然)
※今の見た目はゴスロリで波平のカツラをかぶったブラムスことヅラムスです。
【地味子@葉鍵3】
【装備:ナイフ】
【所持品:なし】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:フリクリ署長とピザの一号を応援
2:頑張って目立ちたい!
※CLANNADの制服を着用
※葉鍵の迎撃(リーフシールド)
周囲の木の葉を風で巻き起こし、強力なシールドを張り巡らせる。使用回数は体力に依存。今のところ後二回が限度。攻撃力は皆無
※その他の設定は後続に任せます
【フリクリ署長@アニロワ1st】
【装備:不明】
【所持品:支給品一式、サングラス(クーガー仕様)】
【状態:ちょっと背中が痛い】
【思考・行動】
1:地味子とピザの1号を守る
2:騎士道精神に準じて行動(要するにか弱い女性を助ける)
ラディカル・グッドスピードが使えます。ほぼ原作と同じレベルです
※容姿はサングラスをかけていること以外お任せ
※声もお任せ
【ダイナマイトアンデッド@漫画ロワ】
【装備:AK-74(残り68発)】
【所持品:基本支給品一式、朝倉涼子のアーミーナイフ、
AK-74の予備弾(残り200発)、プライム・エリクサー(後何個かあるみたい)】
【状態:割と完全回復】
【思考・行動】
基本行動方針:殺し合いに乗る。
1:目の前の四人を全員殺す
2:出来るだけ多くの人を殺す。そして優勝。
3:死んじまったら…ま、いいか…
※容姿や性格はアカギに近い感じです。(あごが若干長く、白髪です。)
※死を恐れていません。よって致命傷を受けても反撃してくる可能性があります。
【エース@漫画ロワ】
【装備:ピーキーガリバー マジシャンズレッドのスタンドディスク ジャッカル】
【所持品:支給品一式×2】
【状態:左腕を大怪我】
【思考・行動】
基本行動方針:最強のストライカーと成る為、何者だろうとブチのめす!
1:どいつもこいつも俺のこの手で叩き潰してやる!
【備考】
※外見はカズマさん!です
※シェルブリット、進化の言葉が使えるかは不明です
ジャッカルは足元に落ちてます
最終更新:2008年04月05日 23:54