ここは危険度特A級の殺戮地帯。
人間をはるかに超えた連中が跋扈し、あるものは隙を伺い、あるものはその力を以って容赦なく他者の命を刈り取る。
書き手バトルロワイアルの会場。
そしてそこに召喚された、とある二人の人間はビルの一室で……ゲームをしていた。
「いやーまさかヒューゴがここで出てくるとはねー」
「むう、まだ機神猛撃拳は使えないのか」
モニターの前でゲームに興じているのはピンクの髪の少女。
そしてその傍らで興味深そうに眺める隻腕の老人。
スパロワの書き手『闇その1』と『差』である。
隻腕ではプレイできない『差』はほぼ見物役だが。
まず最初にこの場所で出会った二人は自己紹介の後、さっそく至急品の確認にとりかかった。ロワの基本だね!
そこで出てきたアイテムとは……
PS2ソフト「スーパーロボット大戦OG外伝」
PS2本体
二人は顔を見合わせる。
「……これはつまり」
「ゲームをしろってことか?ギャルゲとかアニ1みたいにクリアすると何かあるとか」
「モニターがないぞ」
「そこらへんの設備から調達すればいいじゃないか」
彼らのいる部屋は、元は企業のオフィスといった風情であり、PCも机ごとに一台完備されている。
この分なら電源も問題ないだろう。
というわけで――、
「お、宇宙ルートが追加されてるぞ」
「前作の2.5をプレイした人への配慮だろう」
「本当にラミア死んだのかな……」
「不思議パワーで生き返って終盤で復活に1000ペリカ」
「アクセルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」
「アルフィミィィィィィィィィィィ!!!!」
(しばらくお待ちください)
「いやーあっという間にこんな時間か。あ、もうそろそろ放送だから一区切りしようか」
「ああ……ところでな」
「ん?何だ」
スパロワ書き手だけに楽しくてしょうがないといった表情の『闇その1』。
だがそんな彼女とは対照的に『差』は、何か思いつめたような表情だ。
「――――俺、そろそろ死ぬから」
「……え?」
「いや俺、全身火傷で片腕無いし。ここに来た時点で寿命だったんだよ」
「そんな……」
「おいおい、そんな顔するなよ。楽しかったぜ?少なくとも残り少ない命で、誰かを道連れにするために暴れまわるよりかは、な」
「お前……」
夜明けの太陽を浴びた『差』その顔は、後悔とかそういった感情ではない、澄み切った表情を浮かべていた。
だがそれだけに『闇その1』には、それが痛々しくてたまらなかったのだ。
「じゃあな。最後に外伝をプレイできて……楽しかった……ぜ……」
「『差』ぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁああああ!!!!」
◆ ◆ ◆
どのくらい泣いただろうか。
『闇その1』は涙で晴れた眦を手でこすり、立ち上がった。
いつまでも悲しみに浸ってなんかいられない。
そろそろ第一回の放送が始まる時間だ。
こうなったら『差』の無念を晴らすためにも、主催者の奴らに一泡吹かせてやる。
次元の壁を超え、核ミサイルすらものともしないスパロワ書き手の力というものを思い知らせてやる。
私たちを敵に回した愚行を、最終地獄を百回繰り返しても飽き足らない程の罰を与えて後悔させてやる。
「見ていてくれ、『差』。お前の仇は必ず討ってみせる」
地平線から登る太陽に向かって誓う。
だが彼女は大切なことに気付いていなかった。
スパロワ住人なら気付けたはずだった。
だが、キャラクターは必ずしもロワ内において最適な行動をとるわけではない。
彼女の判断ミス――それは『差』の死体から速やかに離れなかったこと。
彼の体は東方腐敗。
その死体はただの死体ではない。
もっとおぞましい何かだ。
その死体と二人っきりになることは死を意味する。
そうスパロワ本編の――トウマ・カノウのように。
ずる…………。
(いるよ……)
ず……ずる……。
(来るよ……)
ずり……ずり……。
(あなたの後ろに……)
「―――――え?」
こきゃ。
【早朝】【D-4 ビルの中】
【差@スパロワ】死亡
【闇その1@スパロワ】死亡
※どこかのビルに【OG外伝@現実】と【PS2本体@現実】および支給品一式×2(未確認支給品あり。数は不明)が放置されています。
最終更新:2008年09月06日 21:40