読み手は大いに語り大いに決断を下す

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――殺し合い中の皆様にはご迷惑をおかけします。では、どうぞごゆるりとバトルロワイアルをお楽しみください。 会場中に響き渡る最後通告が皆に等しくある事実を知らせる。 それを放送し終えたwiki管理人は大役を終えた開放感から緊張を解いた。 感電氏に突きつけた猶予は後2時間。 それまでに戻って来なければロワ会場の崩壊が訪れる。 「さて、どうなるんでしょうね」 「こうなるように仕組んだのはあなたではないのですか、wiki管理人」 放送室の椅子に深々と腰を降ろしているのは紛れもなくwiki管理人。 ジョーカーは全て出払い、読み手も死亡した。 ならばwiki管理人の呟きに答えを返したのは誰であろうか。 「この世界から逃げるなら今のうちですよ――読み手さん」 そう、wiki管理人の後ろの佇んでいるのは先程かに玉(大蟹球フォーグラー)で死んだはずの読み手であった。 闇に飲み込まれ死体も残らなかったはずの読み手がなぜここにいるのか。 もしや隠された能力で窮地を脱したのだろうか。 だが、それにしても雰囲気が違い過ぎる。 覚醒とかそんな類ではなく、明らかに別人のように見える。 「逃げる? どこへですか? 虚構の存在である私達に帰る場所があるとでも。  それに少なくとも私は最後まで付き合いますよ。読み手として、このロワの結末を見届けたいですから。  ……それと確認ですが、先程の件は了承してくれるんですよね?」 「ええ、了承しましょう。確認ですが全部が正しいとは思わないでくださいね」 「分かっていますよ。別に自分が万能とは思っていませんから」 「それにしても早速代償として読み手を一人生贄に差し出すなんて、残酷ですね」 「構いません。私達は個にして群、群にして個。  先程の件が受け入れられるなら、生贄の一人ぐらい安いものです」 「全く恐ろしいですね。まあそのおかげで666にはちょっとした養分になったでしょう」 「最後に役に立てたのならあの読み手も本望でしょう。それでは私は行く所があるので、これにて失礼します」 「もう一度言います、逃げるならこれが最後の機会ですよ。これを逃したら――」 「何度も言わせないでください――」 読み手は部屋の扉に手を掛けつつ、その言葉をwiki管理人へと返した。 それこそが自分の存在理由であるかの如く、ごく自然に発して行った。 それを聞いてwiki管理人は読み手の覚悟に改めて気付かされるのだった。 ――私は読み手。なればこそ、この書き手ロワという物語の結末を見届ける義務があるんです。   そしてそれ以上に……見届けたいという強い願望があるんですよ。      ▼ 広々とした大ホールに置かれている円卓。 少し前まではジョーカーが会議を行う際に使用していたが、今ではジョーカーは全てかに玉の中にいる。 よってもうこの円卓が日の目を見る事はないと思われたが、然にあらず。 今この円卓には人影が2つ確認できた。 だがホールは暗く、その姿を窺い知れる事はできない。 唯一つ分かる事は2人の纏う空気が尋常ではないという事だ。 それは例えるならまさに一触触発と言えるだろう。 しかし、残念ながらこのホールにはそれに気を取られる者は誰一人としていなかった。 「さて、何をそんなに怒っているのですか」 「とぼけるな! なんだ、これは! 今の状況を分かっているのか貴様は!」 円卓に備えられている椅子。 その一つに腰を降ろしているのは先程まで放送室にいた読み手。 その斜め前に立っていて声を荒くして尋ねているのもまた読み手。 2人は共にどちらも『読み手』、オープニングの時にモニター越しに見物していた者である。 あの時モニター越しにいたのは全て読み手――つまり個にして群、群にして個である。 (※話の都合上、放送室にいた読み手をK.K.、もう一人をE.E.として話を進める) 「その様子だとだいぶ減ったみたいですね。やはりここにいない人は……」 「ああ、皆あの馬鹿げた悪魔に喰われちまったよ。立ち向かって行った奴もいたけど、あえなく吸収されちまった。  残っているのは俺と貴様と数人ぐらいだ」 「そうですか。虚構の存在とは言え、悲しいですね」 「貴っ様ぁぁぁ! 分かっているのか、いきなり前触れもなしに皆喰われたんだぞ!  wiki管理人のデビルガンダム――いや、今はデビルラピュタガンダムか。  まさか、貴様こうなる事が読めていたんじゃ……いや、読めていたはずだ。貴様だけは他の読み手にはない力があったんだからな。  だから、曲がりなりにも俺達のリーダーという事になったんだろ」 K.K.の持つ力――それは『あらゆる事象を読む力』、つまりは大抵の事がK.K.には読めるのだ。 その力がある故にK.K.は代わり映えのしない読み手の中でのリーダーを任される事になった。 「買いかぶらないでください、私とて限界があります。なんでも読める訳では――」 「空気を読んで敢えて読まないようにしているだけだろ。  で、今回の呼び出しはなんだ? 悪いが、他の奴が来られるか分からないぜ」 「ええ、実は皆さんに是非言っておきたい事があって呼び出したんです」 「は、なんだよ『言っておきたい事』ってのは――」 「このロワの目的です」 K.K.がそう言った瞬間、怒り心頭だったE.E.は驚きの声を上げた。 ロワの目的。 つまりはこのロワがロワとして始まった最初の一歩。 これがなければ、そもそもロワが始まる事などありえない。 その内容如何によってはロワの根幹を決定づけるほど重要な事柄だ。 しかしwiki管理人はそれを決して明かそうとはしなかったが、秘密にされると知りたがるのは世の常だ。 読み手達も例外ではなく、この書き手ロワの開催目的がなんであるか知りたかった。 それが分かったと目の前の読み手――K.K.は言うのだ。 「だけどこれはまだあくまで私の推論の域を出ていません。でも9割がた合っていると思います」 「ほう、聞かせてもらおうじゃないか。俺達のリーダーの推論とやらをな」 「はい、では結論から言いましょう。  このロワの目的――それは、このロワでの経験を現実の書き手にフィードバックさせる事です」 周知の通り、この書き手ロワに参戦している者はなりきりシステムとクローン技術による産物である。 改造されたダイダルゲートによって本物の書き手の記憶はこの地の書き手に常にダウンロードされ続けている。 これによりこの地にいる者は終盤になるまで自分達が本物の書き手であると信じ込んでいたのである。 「ああ、それは俺達とて例外じゃない。それで?」 「ではこの装置を逆に利用する事は出来ないでしょうか? できるでしょうね。改造されたダイダルゲートを使えば容易い事でしょう」 つまり、現実から書き手ロワではなく、書き手ロワから現実へ、である。 おそらくwiki管理人は昨今の円熟期に突入したと思われるパロロワ界を見て危機感を抱いたのではないだろうか。 長い歴史を紐解くと、円熟期の次に来るのは須らく衰退期の可能性が高い。 でも中にはそれとは別の道を歩む歴史も存在したが、大部分は衰退の道からは逃れる事は出来なかった。 書き手に期待されるレベルも日に日に上がっている。 このままではパロロワが肥大化する一方でいつの日か破綻してしまうかもしれない。 それを回避するためにはどうすればいいか。 wiki管理人の脳裏には或る答えが浮かんだ――書き手が進化すればいい。 分かりやすく言うなら書き手としてのレベルを上げるという事だ。 こうすれば質も量も自然と向上して、パロロワ界の繁栄は約束されたも同然である。 だが簡単に言うが、これを行うのは大変な事である。 第一にどうやって書き手のレベルを上げるのか? レベル上げなどそれこそ膨大な時間と労力を使って初めて成るものである。 そんな時間は残念ながら足りないし、皆のレベルを等しく一斉に上げるなど通常の方法では不可能だ。 「しかし、それなら通常ではない方法を取ればいいだけの話です」 「それがこの書き手ロワという事か」 ある意味打ち切り同然の終結を見た書き手ロワ1st。 wiki管理人はこれを見て今回の計画を思い付いたに違いない。 経験は何よりにも勝るものがある。 どれだけ知識を詰め込んで頭で理解しても、生で体験する事とはまた別次元だ。 Q:では書き手を進化に導く経験とは?――A:もちろん実際にバトルロワイアルを体験する事だ。 だが1stはそれを持ち出して破綻した、ならばどうするか。 ――欲しいのは経験だけ。ならばロワを実際に行った者から経験を抽出して現実の書き手に送れば……問題はほぼ解決である。 ロワがどのような結末を迎えるにせよ、ラストにまで至ればそこにある経験という名の宝は比類無きものになっているだろう。 優勝エンド、脱出エンド、全滅エンド、どれになろうと全てが終われば残るのは『ロワの完結』という事象のみだ。 目指すのは『殺し合いとしてのロワの完結』ではなく『企画としてのロワの完結』である。 ロワにて書き手が体験した事象を経験という名のデータとして改造されたダイダルゲートで随時収集して蓄積していく。 そしてロワが終われば現実の書き手にそれをフィードバックさせる。 フィードバックにより全ての書き手が等しく濃密な経験を得れば、皆等しく進化する。 これがwiki管理人の計画の骨子だ。 「ここまでがwiki管理人がロワを開催した理由だと思われます」 「……分からない事がある。質問してもいいか」 「ええ、どうぞ。もしかして『真の対主催』の事でしょうか」 「そうだ。その解答はあるのか?」 「ええ、では今から述べましょう。  何故『真の対主催』はわざわざロワの早期終結を目指すのか」 彼らの活躍は今までWikiで見てきたから二人とも知っている。 そしてもちろんwiki管理人も当然彼らの事は知っている。 なぜならこの書き手ロワで行われた事は全てSSとして逐一wiki管理人の元に来るようになっているからだ。 つまりwiki管理人にとって表の監視システムなど本当は必要なかったのである。 地球破壊爆弾No.V-7、マスク・ザ・ドS、管理人・したらば孔明、そして感電氏――彼らが名乗るには『真の対主催』というらしい。 彼らが言うには『真の対主催』の目的は書き手ロワの早期完結。 なぜ彼らはそのような行動に出たのか。 wiki管理人の目的も知らずに行動しているというのは腑に落ちない。寧ろ知っているからこそ行動しているのだろう。 「おそらく彼らは知っていたのでしょう。この計画に内包されている最大のリスクを……」 この計画が実行され書き手が経験を得れば、それはパロロワ界にとって大きくプラスになるところである。 だが、ここに大きな問題がある。 ――果たしてそれだけのものを脳に収めて、書き手は耐えられるかという事だ。 ロワ内での経験を全て収集するならば、その量は膨大なものとなるだろう。 ましてやこれだけのカオスを多分に含んだロワだ、中身も相当濃いものだろう。 それこそ人の一生を遥かに超えるぐらいの経験、それも数十人分だ。 通常の人では自身の容量を超え、精神に何らかの異常を来す事は目に見えている。 それは書き手と言えども例外ではないだろう。 だがwiki管理人もそれぐらい覚悟の上での行動だろう。 書き手の全てが耐えられるなどという幻想など抱いてはいない。 それでもwiki管理人は一を捨てて十を拾う事を選んだ。 「でもその見通しは甘いですね。私の読みでは1割残るだけで奇跡だと思います」 「1割だと!? ほとんどの書き手が再起不能になるじゃねえか! 正気かwiki管理人は!!」 「『真の対主催』はそう考えたからこそ行動を起こしたんです」 そのような事はwiki管理人の独り善がりの勝手な横暴だと彼らは断じた。故にそのような事態を避けるために行動を起こした。 第1方針――書き手ロワを早期に終わらせて、書き手へのフィードバックによる負担を減らす。 ズガンや大量虐殺を続ければ、無理ではない事だった。 だが、誤算があった。 ロワが始まった直後は空気を読んでズガンや大量虐殺を躊躇ってしまったのだ。 そうは言ってもしっかりと目的を果たすべく行動していた。 爆弾ならアーカードとして闘争を仕掛けていた。 ドSならその責めによって悪魔軍神ことコ・ホンブックと空気王こと予約被りに定評のあるtu4氏という二人のチート級のマーダーを生み出した。 孔明ならその知略によって策謀を巡らしていた。 しかし彼らの必死の行動にも関わらず書き手ロワの早期終結は叶わなかった。 控えていた感電氏さえも一時は導入したのにそれでも結果は変わらなかった。 第2方針――wiki管理人の打破、及びダイダルゲートの完全破壊。さらにこの世界と現実世界との完全隔離。 よくあるような対主催ルートだが、やる事はかなり厳しい。 残存戦力でマーダー、ジョーカー、主催者これら全てをクリアして、尚且つその後は一切現実世界との交流を経つ。 下手に交流を残すと、いらぬ感情が生じる可能性があるからだ。 明らかに難易度がMAXである。 現状はこれで行動していると思われる。 大切な人ができたからこそ最後の瞬間までこの方針でいくのだろう――但し感電氏がどう思っているのかは定かではないが。 そして最終手段――『地球破壊爆弾』の使用。 爆弾は以前自分の地球破壊爆弾としての力を使えばこのロワを終わらせる事が出来ると言っている。 地球破壊爆弾、それも地図氏というトップクラスの書き手の力も加われば、その威力は想像を絶するものだろう。 そう、その威力はロワの存在自体を消滅させるほどのものだろう。 ロワの存在そのものがなくなれば、当然得られる経験もなくなりwiki管理人の計画は破綻する。 これなら『真の対主催』の目的は完遂されるのだが、それなら最初からこれをやればいいのではないか。 既に自分が本物の書き手でない事は知っているなら、躊躇う必要などないはずだ。 「おそらくこれは現実の地図氏本人にも何らかの影響が出るほど危険な手段なのでしょう。  推定される威力からすれば当然でしょう」 「そんな事が……」 「ああ、もちろん最初にも言いましたがこれは私の推論です。間違っている可能性もありますし、そんなに気にしなくてもいいですよ」 K.K.はにこやかにそう言い終えると、E.E.の反応を待った。 暫しの間、ホールには沈黙の帳が下りる事となる。      ▼ 「疑問がある」 「なんでしょう」 確かに一連の推論は驚かされた。 ああ、驚愕させられたさ。 だからこそ疑問に思うところは聞いておこうと思った。 それによっては俺も身の振り方を考えないといけなくなるからな。 「wiki管理人の目的がそうなら、なんで今になって2時間なんて制限を付けて皆を急かすような真似をするんだ。  貴様の説だとロワは長期になればなるほど経験は収集されていくはずだ。  それをわざわざ狭めるような事を言う理由が何かあるのか、そこらへんはどうなんだ」 そう、それが解せなかった。 敢えて期間を区切ってタイムリミットを設置する理由。 そんな事をする理由なんてあるのだろうか。 「おそらく時間がないんだと思います」 「どういう事だ?」 「宇宙の崩壊、それがロワの会場にも影響が出始めているんだと思います。  既に学校爆破やエンジェル・アームなど会場のダメージは相当なものです。  それに加えて宇宙空間の崩壊。その余波を受けてこの会場を維持するのも限界になっているんでしょう」 な!? つまり感電氏がどうしようとwiki管理人は2時間――いや、実際もう少し猶予はあるか――でこのロワを本気で終わらせるつもりなのか。 なら俺達もみんな道連れ……いや、もう既にヤバい状況だ。 とにかく何とかしないと。 「さらに今のパロロワの現状ですね。  正直これ以上長引かせるよりも強引にでも終わらせて早くフィードバックさせるべきだと考えたのでしょう。  既に十分すぎる程の量は集まっていますし、後は最終決戦のものを収集すれば完了ですね」 「おい、決着がつかなかったら会場が崩壊して何も残らないんじゃないか」 「いいえ、たぶん決着がつかない時はその時点で収集したものでフィードバックが実行されると思います」 今のパロロワの状況は一応把握している。 ロワの肥大化による弊害。 書き手と読み手の軋轢。 その他にも様々な問題が表や裏で出ている。 これが全てだとは言わないが、このような状況にあるロワがある事も事実。 wiki管理人が焦るのも分かるが、焦った故にリスクを考えないとは危険だ。 これで書き手の大半が再起不能となれば本末転倒、書き手1stの二の舞だ。 「貴様はそれでいいのかよ。このままだと書き手が――」 「ええ、構いませんよ。私はwiki管理人と取引をしましたから」 「取引だ?」 なんだ取引って? もしかして自分だけ逃げる算段を付けたのか!? だからこんなに余裕なのか。一人だけ逃れようなんていい度胸じゃないか。 「一人だけ逃げる気か」 「勘違いしないでください。  私達は読み手です。ならばこのロワの結末を見届けるのは当然です。  逃げるなんてそんな考え毛頭ありません」 「じゃあ取引の内容は何なんだ!」 「幾つかこちらが条件を飲む代わりに、wiki管理人が行おうとしているフィードバックを読み手にもしてもらうように取り計らったんです」 「なに!? おい待て! 書き手でさえ1割なら読み手は……」 「もっと低いかもしれませんね。でも大丈夫です。きっと皆さん何もかも終わったらお互い良い関係になれますよ」 じ、冗談だろ……狂ってるこいつ…… 毒吐きでの過剰な展開予想や、作品への利己的な難癖、文句や修正要求etcetc…… 確かに最近読み手様なんて言われる暴走した奴がちらほらいるが、それは極一部だ。 大多数の読み手は書き手が投下する作品にwktkして、感想を付け、雑談で盛り上がる。 それが本来あるべき読み手の姿、読み手の心得のはずだ。 「貴様……どうなるか分かっているのか」 「ええ、読み手にもフィードバックされれば、きっと今よりももっとパロロワ界は過ごしやすくなるはずです。  私は正します、今の間違った方向に進みかけている読み手に道を示してあげるんです。  書き手ロワの表の主催者として!」 椅子から立ち上がってこちらに正面を向けながら、いかにも自分の決意が尊いとでも言うように話しかけてくる。 ダメだ……完全に陶酔してやがる。 話し合うだけ無駄だ。 俺はそんな事には賛同できない。 書き手や読み手の大半に危険が及ぶと知って平気な顔なんてしていられるか。 止める! 俺がそんな狂った計画を止めてやる! 「あなたも協力して――」 「死ねェェェエエエ!!!」 懐から取り出すのはロワではよく見かける銃器、デザートイーグル。 しかもこれは素人でも撃てるように反動が少なくなるように改造された優れ物だ。 構えて狙いを定めるまで1秒も要らない。 なぜなら相手は正面にいるのだから銃口は前に向けるだけで十分だ。 ふ、無防備に身体を晒してやがる。 何の感情も無しに放たれる一発の銃声と共に弾丸が発射される。 着弾まで瞬きする間に終わっているだろう。 ほら、瞬きしたら目の前には胸から血を出して倒れている狂った奴の死体が―― 「へ?」 あれ、おかしいぜ……目の前にいるはずの奴がいない…… しかもなんだ、この俺の胸から噴き出している赤い液体は……血? あ、今度は首? 場所的に頸動脈か。 ああ、なんだか身体が重く……というか、いつのまにか俺倒れている。 しかもいつのまにか血溜りまでできてやがる。 「忘れたんですか。私はあらゆるものを読む事が出来るんですよ。  あなたが取る行動を読んで、銃口を読む事ぐらいはできます」 「くっ――」 「それにしても残念でした。あなたまで逆らうなんて。  本当は仲間なんて殺したくなかったんですけど、仕方ないですね。  これがwiki管理人との取引――読み手で邪魔をする人がいれば私が始末するように言われたんです」 「な、に!? じゃあ、まさか――」 「ええ、あの一番表に出ていた読み手には死んでいただきました。何かと対主催寄りな行動が多かったですから。  ああ、手にかけたのは私じゃありませんよ。私はただ送り出しただけ――」 「こ、の、馬鹿女……――ッ!!」 仲間を殺して願いを叶えてもらうだと!? ふざけるのもいい加減にしてほしいぜ。 確かに俺達は本物ではない、代用品で偽物だ。 だが、もうそんな事は言ってもいられないのではないか。 このロワが開始されて1日が経った。 その間にいろいろな事があった。 それらを体験してきた俺達はもう元になった人と本物か偽物か、造り物かそうでないかを語る事などもう意味はほとんど無いのではないか。 「偽物だから、造り物だから、殺していいって思っているのか。貴様ら身勝手だな」 「なんと言われようとも構いません。これが私の選んだ道です」 なんだろうな。 死に際だからか、妙に頭が冴えてくる。 まあ、もうすぐ死ぬからあまり関係ないけどな。 でもそのおかげで俺にも少し読めるものができたようだ。 「貴様、諦めているだろ」 「……どういう意味ですか、それ」 「貴様は今の読み手に幻滅しちまっている。だからそんな破滅的な願望を抱いたんじゃないのか。  確かに今の状況がいいとは俺も思わないさ。  けどな、まだそこまで幻滅するところじゃねえ」 「甘いですね。あなたのように甘い考えの人がいるから安易な対主催ルートに持って行こうとする人が現れるんです。  書き手も元を辿れば私達と同じ読み手。  ロワに触れて関心を持ち、そしてそれが昇華されると書き手として関わろうと思うんです。  だから、読み手の時にそんな安っぽいヒーローみたいな幻想を抱いていると書き手になった時に間違うんですよ。  序盤での対主催の合流、マーダーの脱落、対主催への厨性能な道具の支給etcetc……  なんですか、スーパーヒーロータイムでも見たいんですか? 読み手も読み手でそれを煽りますよね。  ロワの一面はカタスロトフィ、基本的にロワは無常で救われない、絶望を抱くものなんです」 「確かにそれもロワの一面だ……だけど、それだけじゃないはずだ……」 仲間を失っても尚立ち上がる姿が、決死の覚悟で立ち向かっていく姿が、諦めずに前に進む姿が、どれほど尊く眩しいものか。 そんなSSを書ける書き手もいれば、別の方面を書く書き手もいる。 そんな様々な思惑が重なってロワは紡がれていく。 だからと言って、安易な対主催展開が良いとは俺も決して思わない。 でも、たまにはそんな子供の頃に誰もが一度は憧れたそんな展開を夢見てもいいんじゃないのか。 「まだ絶望するには早いぜ、最後まで諦めるなよ。足掻いて――ッ!!」 「ではどうしろと? 書き手が織りなすこの物語、読み手である私がどうしろと言うのですか?」 最後に刃が俺の中に入る感触がした。 死の瞬間は一瞬で通り過ぎた。 目に映る最後の景色は、俺を冷え冷えと見下ろす読み手の姿だった。 そして、どことなく彼女がかわいそうだなと思えた。      ▼ もう言葉を発しないE.E.の胸には一振りの刀が深々と突き刺さっている。 息が絶えている事を確認するとK.K.は刀を引き抜いて、血を払った。 死者に一切の感慨を持たずに落ちているデザートイーグルを拾うと、近くに落ちていたE.E.の持っていたデイパックに入れておく。 K.K.が先程やった事は説明すれば単純な事だ。 E.E.の銃撃を避けて擦れ違い様に刀で一閃、さらに首の頸動脈も斬った、それだけだ。 無論これを他の人がやろうとしてもおいそれと真似できるものでない事もまた確かだ。 K.K.があらゆるものを読めるからこそできた事だ。 「――ッ!!」 不意にK.K.は顔を後ろへ向け、鋭い眼光を飛ばした。 同時にホールに二発目の銃声が響き渡った。 その視線と銃口の先には誰もいなかった。 当然と言えば当然だ。 もうこの城の残っている者はほとんどいないのだから。 「気のせいですか。誰かいた気がしたんですけど」 そんな事を言いつつもK.K.はE.E.の言葉を思い出していた。 ――諦め。 確かにK.K.は今のパロロワの現状にいささか絶望して、そして諦めの感情を抱いていた。 絶えない諍い、純粋なバトルロワイアルからの乖離。 そんな感情を持つところはwiki管理人と一緒のはずだ。。 だからこそwiki管理人の考えに賛同したのだ。 「まだ推論ですけど私は自分の考えを信じています。だから――」 K.K.はそこでE.E.の死体に一瞬だけだが目を向けた。 そこから何か読み取れないかとも思ったが、結局何も読み取れなかった。 「――すいません。やっぱり私は今の状況を変えたい。  強引だとしても誰かがやらないといけない事だと思うんです。  それが例え許されない事だとしても、もう止められません」 そしてK.K.はその手の中の刀――核鉄『シークレットトレイル』を一振りする。 『シークレットトレイル』の能力によってK.K.の前に亜空間への入口ができる。 K.K.はそこで全てを見届ける気でいた。 このロワに結末が訪れるその時を、K.K.――読み手は待ち望んでいた。 &color(red){【読み手(E.E.) 死亡確認】} 【2日目 深夜】【デビルラピュタガンダム 放送室】 【書き手ロワ2ndwiki管理人@書き手ロワ2nd】 【状態】:健康 【装備】:ミニサスペリア、??? 【道具】:??? 【思考】:  基本:???  1:???  ※容姿は執事服を着た稲田瑞穂@バトルロワイヤルです  ※ミニサスペリアはGR2ndのtu4氏なあの人の思念から生まれた存在でした。   GR2ndの属性であるカニバリズムを司っています。ある程度の空気力と煩悩寺の吸収によりエロスも使えます。   姿はクリーチャーとアニロワ2ndをかけてデビルガンダムです。ラピュタとほぼ同化しています。  ※数時間後、ミニサスペリアと融合してゼスト@スパロワになれます。外見がどう変化するかは不明。 【2日目 深夜】【亜空間内】 【読み手(K.K.)@書き手ロワ2nd】 【状態】:健康 【装備】:核鉄『シークレットトレイル』@武装錬金、IMIデザートイーグル(8/10+1)@ギャルゲロワ1st 【道具】:IMIデザートイーグルの予備マガジン×5、??? 【思考】:  基本:wiki管理人に協力する。  1:最後までロワの表の主催者としてロワの結末を見届ける。  2:自分の考察を信じて、wiki管理人との取引を履行する。 ※あらゆる事象を読む事ができます(でも空気を読んでその時に応じて読んだり読まなかったりします) ※――読み手の考察――  wiki管理人の目的はこの書き手ロワでの経験を現実の書き手にフィードバックさせる事である。  『真の対主催』はフィードバックによって起こり得る書き手への被害を阻止するために行動している。 ※wiki管理人との取引とは『最終的に行われるフィードバックを読み手にも適用させてもらう代わりに、この世界の読み手が障害となり得る場合は全力で排除する』です。 ※ラピュタ内の生き残りの読み手数人の生死は不明です。 |280:[[ニコニコ削除祭は大変なセーラーふくをもってった結果がこれだよ!完結編]]|投下順に読む|282:[[全ては我が戯言なり]]| |280:[[ニコニコ削除祭は大変なセーラーふくをもってった結果がこれだよ!完結編]]|時系列順に読む|282:[[全ては我が戯言なり]]| |279:[[終末への扉(5)]]|wiki管理人|| |279:[[終末への扉(5)]]|読み手|285:[[誓いを新たに]]|
――殺し合い中の皆様にはご迷惑をおかけします。では、どうぞごゆるりとバトルロワイアルをお楽しみください。 会場中に響き渡る最後通告が皆に等しくある事実を知らせる。 それを放送し終えたwiki管理人は大役を終えた開放感から緊張を解いた。 感電氏に突きつけた猶予は後2時間。 それまでに戻って来なければロワ会場の崩壊が訪れる。 「さて、どうなるんでしょうね」 「こうなるように仕組んだのはあなたではないのですか、wiki管理人」 放送室の椅子に深々と腰を降ろしているのは紛れもなくwiki管理人。 ジョーカーは全て出払い、読み手も死亡した。 ならばwiki管理人の呟きに答えを返したのは誰であろうか。 「この世界から逃げるなら今のうちですよ――読み手さん」 そう、wiki管理人の後ろの佇んでいるのは先程かに玉(大蟹球フォーグラー)で死んだはずの読み手であった。 闇に飲み込まれ死体も残らなかったはずの読み手がなぜここにいるのか。 もしや隠された能力で窮地を脱したのだろうか。 だが、それにしても雰囲気が違い過ぎる。 覚醒とかそんな類ではなく、明らかに別人のように見える。 「逃げる? どこへですか? 虚構の存在である私達に帰る場所があるとでも。  それに少なくとも私は最後まで付き合いますよ。読み手として、このロワの結末を見届けたいですから。  ……それと確認ですが、先程の件は了承してくれるんですよね?」 「ええ、了承しましょう。確認ですが全部が正しいとは思わないでくださいね」 「分かっていますよ。別に自分が万能とは思っていませんから」 「それにしても早速代償として読み手を一人生贄に差し出すなんて、残酷ですね」 「構いません。私達は個にして群、群にして個。  先程の件が受け入れられるなら、生贄の一人ぐらい安いものです」 「全く恐ろしいですね。まあそのおかげで666にはちょっとした養分になったでしょう」 「最後に役に立てたのならあの読み手も本望でしょう。それでは私は行く所があるので、これにて失礼します」 「もう一度言います、逃げるならこれが最後の機会ですよ。これを逃したら――」 「何度も言わせないでください――」 読み手は部屋の扉に手を掛けつつ、その言葉をwiki管理人へと返した。 それこそが自分の存在理由であるかの如く、ごく自然に発して行った。 それを聞いてwiki管理人は読み手の覚悟に改めて気付かされるのだった。 ――私は読み手。なればこそ、この書き手ロワという物語の結末を見届ける義務があるんです。   そしてそれ以上に……見届けたいという強い願望があるんですよ。      ▼ 広々とした大ホールに置かれている円卓。 少し前まではジョーカーが会議を行う際に使用していたが、今ではジョーカーは全てかに玉の中にいる。 よってもうこの円卓が日の目を見る事はないと思われたが、然にあらず。 今この円卓には人影が2つ確認できた。 だがホールは暗く、その姿を窺い知れる事はできない。 唯一つ分かる事は2人の纏う空気が尋常ではないという事だ。 それは例えるならまさに一触触発と言えるだろう。 しかし、残念ながらこのホールにはそれに気を取られる者は誰一人としていなかった。 「さて、何をそんなに怒っているのですか」 「とぼけるな! なんだ、これは! 今の状況を分かっているのか貴様は!」 円卓に備えられている椅子。 その一つに腰を降ろしているのは先程まで放送室にいた読み手。 その斜め前に立っていて声を荒くして尋ねているのもまた読み手。 2人は共にどちらも『読み手』、オープニングの時にモニター越しに見物していた者である。 あの時モニター越しにいたのは全て読み手――つまり個にして群、群にして個である。 (※話の都合上、放送室にいた読み手をK.K.、もう一人をE.E.として話を進める) 「その様子だとだいぶ減ったみたいですね。やはりここにいない人は……」 「ああ、皆あの馬鹿げた悪魔に喰われちまったよ。立ち向かって行った奴もいたけど、あえなく吸収されちまった。  残っているのは俺と貴様と数人ぐらいだ」 「そうですか。虚構の存在とは言え、悲しいですね」 「貴っ様ぁぁぁ! 分かっているのか、いきなり前触れもなしに皆喰われたんだぞ!  wiki管理人のデビルガンダム――いや、今はデビルラピュタガンダムか。  まさか、貴様こうなる事が読めていたんじゃ……いや、読めていたはずだ。貴様だけは他の読み手にはない力があったんだからな。  だから、曲がりなりにも俺達のリーダーという事になったんだろ」 K.K.の持つ力――それは『あらゆる事象を読む力』、つまりは大抵の事がK.K.には読めるのだ。 その力がある故にK.K.は代わり映えのしない読み手の中でのリーダーを任される事になった。 「買いかぶらないでください、私とて限界があります。なんでも読める訳では――」 「空気を読んで敢えて読まないようにしているだけだろ。  で、今回の呼び出しはなんだ? 悪いが、他の奴が来られるか分からないぜ」 「ええ、実は皆さんに是非言っておきたい事があって呼び出したんです」 「は、なんだよ『言っておきたい事』ってのは――」 「このロワの目的です」 K.K.がそう言った瞬間、怒り心頭だったE.E.は驚きの声を上げた。 ロワの目的。 つまりはこのロワがロワとして始まった最初の一歩。 これがなければ、そもそもロワが始まる事などありえない。 その内容如何によってはロワの根幹を決定づけるほど重要な事柄だ。 しかしwiki管理人はそれを決して明かそうとはしなかったが、秘密にされると知りたがるのは世の常だ。 読み手達も例外ではなく、この書き手ロワの開催目的がなんであるか知りたかった。 それが分かったと目の前の読み手――K.K.は言うのだ。 「だけどこれはまだあくまで私の推論の域を出ていません。でも9割がた合っていると思います」 「ほう、聞かせてもらおうじゃないか。俺達のリーダーの推論とやらをな」 「はい、では結論から言いましょう。  このロワの目的――それは、このロワでの経験を現実の書き手にフィードバックさせる事です」 周知の通り、この書き手ロワに参戦している者はなりきりシステムとクローン技術による産物である。 改造されたダイダルゲートによって本物の書き手の記憶はこの地の書き手に常にダウンロードされ続けている。 これによりこの地にいる者は終盤になるまで自分達が本物の書き手であると信じ込んでいたのである。 「ああ、それは俺達とて例外じゃない。それで?」 「ではこの装置を逆に利用する事は出来ないでしょうか? できるでしょうね。改造されたダイダルゲートを使えば容易い事でしょう」 つまり、現実から書き手ロワではなく、書き手ロワから現実へ、である。 おそらくwiki管理人は昨今の円熟期に突入したと思われるパロロワ界を見て危機感を抱いたのではないだろうか。 長い歴史を紐解くと、円熟期の次に来るのは須らく衰退期の可能性が高い。 でも中にはそれとは別の道を歩む歴史も存在したが、大部分は衰退の道からは逃れる事は出来なかった。 書き手に期待されるレベルも日に日に上がっている。 このままではパロロワが肥大化する一方でいつの日か破綻してしまうかもしれない。 それを回避するためにはどうすればいいか。 wiki管理人の脳裏には或る答えが浮かんだ――書き手が進化すればいい。 分かりやすく言うなら書き手としてのレベルを上げるという事だ。 こうすれば質も量も自然と向上して、パロロワ界の繁栄は約束されたも同然である。 だが簡単に言うが、これを行うのは大変な事である。 第一にどうやって書き手のレベルを上げるのか? レベル上げなどそれこそ膨大な時間と労力を使って初めて成るものである。 そんな時間は残念ながら足りないし、皆のレベルを等しく一斉に上げるなど通常の方法では不可能だ。 「しかし、それなら通常ではない方法を取ればいいだけの話です」 「それがこの書き手ロワという事か」 ある意味打ち切り同然の終結を見た書き手ロワ1st。 wiki管理人はこれを見て今回の計画を思い付いたに違いない。 経験は何よりにも勝るものがある。 どれだけ知識を詰め込んで頭で理解しても、生で体験する事とはまた別次元だ。 Q:では書き手を進化に導く経験とは?――A:もちろん実際にバトルロワイアルを体験する事だ。 だが1stはそれを持ち出して破綻した、ならばどうするか。 ――欲しいのは経験だけ。ならばロワを実際に行った者から経験を抽出して現実の書き手に送れば……問題はほぼ解決である。 ロワがどのような結末を迎えるにせよ、ラストにまで至ればそこにある経験という名の宝は比類無きものになっているだろう。 優勝エンド、脱出エンド、全滅エンド、どれになろうと全てが終われば残るのは『ロワの完結』という事象のみだ。 目指すのは『殺し合いとしてのロワの完結』ではなく『企画としてのロワの完結』である。 ロワにて書き手が体験した事象を経験という名のデータとして改造されたダイダルゲートで随時収集して蓄積していく。 そしてロワが終われば現実の書き手にそれをフィードバックさせる。 フィードバックにより全ての書き手が等しく濃密な経験を得れば、皆等しく進化する。 これがwiki管理人の計画の骨子だ。 「ここまでがwiki管理人がロワを開催した理由だと思われます」 「……分からない事がある。質問してもいいか」 「ええ、どうぞ。もしかして『真の対主催』の事でしょうか」 「そうだ。その解答はあるのか?」 「ええ、では今から述べましょう。  何故『真の対主催』はわざわざロワの早期終結を目指すのか」 彼らの活躍は今までWikiで見てきたから二人とも知っている。 そしてもちろんwiki管理人も当然彼らの事は知っている。 なぜならこの書き手ロワで行われた事は全てSSとして逐一wiki管理人の元に来るようになっているからだ。 つまりwiki管理人にとって表の監視システムなど本当は必要なかったのである。 地球破壊爆弾No.V-7、マスク・ザ・ドS、管理人・したらば孔明、そして感電氏――彼らが名乗るには『真の対主催』というらしい。 彼らが言うには『真の対主催』の目的は書き手ロワの早期完結。 なぜ彼らはそのような行動に出たのか。 wiki管理人の目的も知らずに行動しているというのは腑に落ちない。寧ろ知っているからこそ行動しているのだろう。 「おそらく彼らは知っていたのでしょう。この計画に内包されている最大のリスクを……」 この計画が実行され書き手が経験を得れば、それはパロロワ界にとって大きくプラスになるところである。 だが、ここに大きな問題がある。 ――果たしてそれだけのものを脳に収めて、書き手は耐えられるかという事だ。 ロワ内での経験を全て収集するならば、その量は膨大なものとなるだろう。 ましてやこれだけのカオスを多分に含んだロワだ、中身も相当濃いものだろう。 それこそ人の一生を遥かに超えるぐらいの経験、それも数十人分だ。 通常の人では自身の容量を超え、精神に何らかの異常を来す事は目に見えている。 それは書き手と言えども例外ではないだろう。 だがwiki管理人もそれぐらい覚悟の上での行動だろう。 書き手の全てが耐えられるなどという幻想など抱いてはいない。 それでもwiki管理人は一を捨てて十を拾う事を選んだ。 「でもその見通しは甘いですね。私の読みでは1割残るだけで奇跡だと思います」 「1割だと!? ほとんどの書き手が再起不能になるじゃねえか! 正気かwiki管理人は!!」 「『真の対主催』はそう考えたからこそ行動を起こしたんです」 そのような事はwiki管理人の独り善がりの勝手な横暴だと彼らは断じた。故にそのような事態を避けるために行動を起こした。 第1方針――書き手ロワを早期に終わらせて、書き手へのフィードバックによる負担を減らす。 ズガンや大量虐殺を続ければ、無理ではない事だった。 だが、誤算があった。 ロワが始まった直後は空気を読んでズガンや大量虐殺を躊躇ってしまったのだ。 そうは言ってもしっかりと目的を果たすべく行動していた。 爆弾ならアーカードとして闘争を仕掛けていた。 ドSならその責めによって悪魔軍神ことコ・ホンブックと空気王こと予約被りに定評のあるtu4氏という二人のチート級のマーダーを生み出した。 孔明ならその知略によって策謀を巡らしていた。 しかし彼らの必死の行動にも関わらず書き手ロワの早期終結は叶わなかった。 控えていた感電氏さえも一時は導入したのにそれでも結果は変わらなかった。 第2方針――wiki管理人の打破、及びダイダルゲートの完全破壊。さらにこの世界と現実世界との完全隔離。 よくあるような対主催ルートだが、やる事はかなり厳しい。 残存戦力でマーダー、ジョーカー、主催者これら全てをクリアして、尚且つその後は一切現実世界との交流を経つ。 下手に交流を残すと、いらぬ感情が生じる可能性があるからだ。 明らかに難易度がMAXである。 現状はこれで行動していると思われる。 大切な人ができたからこそ最後の瞬間までこの方針でいくのだろう――但し感電氏がどう思っているのかは定かではないが。 そして最終手段――『地球破壊爆弾』の使用。 爆弾は以前自分の地球破壊爆弾としての力を使えばこのロワを終わらせる事が出来ると言っている。 地球破壊爆弾、それも地図氏というトップクラスの書き手の力も加われば、その威力は想像を絶するものだろう。 そう、その威力はロワの存在自体を消滅させるほどのものだろう。 ロワの存在そのものがなくなれば、当然得られる経験もなくなりwiki管理人の計画は破綻する。 これなら『真の対主催』の目的は完遂されるのだが、それなら最初からこれをやればいいのではないか。 既に自分が本物の書き手でない事は知っているなら、躊躇う必要などないはずだ。 「おそらくこれは現実の地図氏本人にも何らかの影響が出るほど危険な手段なのでしょう。  推定される威力からすれば当然でしょう」 「そんな事が……」 「ああ、もちろん最初にも言いましたがこれは私の推論です。間違っている可能性もありますし、そんなに気にしなくてもいいですよ」 K.K.はにこやかにそう言い終えると、E.E.の反応を待った。 暫しの間、ホールには沈黙の帳が下りる事となる。      ▼ 「疑問がある」 「なんでしょう」 確かに一連の推論は驚かされた。 ああ、驚愕させられたさ。 だからこそ疑問に思うところは聞いておこうと思った。 それによっては俺も身の振り方を考えないといけなくなるからな。 「wiki管理人の目的がそうなら、なんで今になって2時間なんて制限を付けて皆を急かすような真似をするんだ。  貴様の説だとロワは長期になればなるほど経験は収集されていくはずだ。  それをわざわざ狭めるような事を言う理由が何かあるのか、そこらへんはどうなんだ」 そう、それが解せなかった。 敢えて期間を区切ってタイムリミットを設置する理由。 そんな事をする理由なんてあるのだろうか。 「おそらく時間がないんだと思います」 「どういう事だ?」 「宇宙の崩壊、それがロワの会場にも影響が出始めているんだと思います。  既に学校爆破やエンジェル・アームなど会場のダメージは相当なものです。  それに加えて宇宙空間の崩壊。その余波を受けてこの会場を維持するのも限界になっているんでしょう」 な!? つまり感電氏がどうしようとwiki管理人は2時間――いや、実際もう少し猶予はあるか――でこのロワを本気で終わらせるつもりなのか。 なら俺達もみんな道連れ……いや、もう既にヤバい状況だ。 とにかく何とかしないと。 「さらに今のパロロワの現状ですね。  正直これ以上長引かせるよりも強引にでも終わらせて早くフィードバックさせるべきだと考えたのでしょう。  既に十分すぎる程の量は集まっていますし、後は最終決戦のものを収集すれば完了ですね」 「おい、決着がつかなかったら会場が崩壊して何も残らないんじゃないか」 「いいえ、たぶん決着がつかない時はその時点で収集したものでフィードバックが実行されると思います」 今のパロロワの状況は一応把握している。 ロワの肥大化による弊害。 書き手と読み手の軋轢。 その他にも様々な問題が表や裏で出ている。 これが全てだとは言わないが、このような状況にあるロワがある事も事実。 wiki管理人が焦るのも分かるが、焦った故にリスクを考えないとは危険だ。 これで書き手の大半が再起不能となれば本末転倒、書き手1stの二の舞だ。 「貴様はそれでいいのかよ。このままだと書き手が――」 「ええ、構いませんよ。私はwiki管理人と取引をしましたから」 「取引だ?」 なんだ取引って? もしかして自分だけ逃げる算段を付けたのか!? だからこんなに余裕なのか。一人だけ逃れようなんていい度胸じゃないか。 「一人だけ逃げる気か」 「勘違いしないでください。  私達は読み手です。ならばこのロワの結末を見届けるのは当然です。  逃げるなんてそんな考え毛頭ありません」 「じゃあ取引の内容は何なんだ!」 「幾つかこちらが条件を飲む代わりに、wiki管理人が行おうとしているフィードバックを読み手にもしてもらうように取り計らったんです」 「なに!? おい待て! 書き手でさえ1割なら読み手は……」 「もっと低いかもしれませんね。でも大丈夫です。きっと皆さん何もかも終わったらお互い良い関係になれますよ」 じ、冗談だろ……狂ってるこいつ…… 毒吐きでの過剰な展開予想や、作品への利己的な難癖、文句や修正要求etcetc…… 確かに最近読み手様なんて言われる暴走した奴がちらほらいるが、それは極一部だ。 大多数の読み手は書き手が投下する作品にwktkして、感想を付け、雑談で盛り上がる。 それが本来あるべき読み手の姿、読み手の心得のはずだ。 「貴様……どうなるか分かっているのか」 「ええ、読み手にもフィードバックされれば、きっと今よりももっとパロロワ界は過ごしやすくなるはずです。  私は正します、今の間違った方向に進みかけている読み手に道を示してあげるんです。  書き手ロワの表の主催者として!」 椅子から立ち上がってこちらに正面を向けながら、いかにも自分の決意が尊いとでも言うように話しかけてくる。 ダメだ……完全に陶酔してやがる。 話し合うだけ無駄だ。 俺はそんな事には賛同できない。 書き手や読み手の大半に危険が及ぶと知って平気な顔なんてしていられるか。 止める! 俺がそんな狂った計画を止めてやる! 「あなたも協力して――」 「死ねェェェエエエ!!!」 懐から取り出すのはロワではよく見かける銃器、デザートイーグル。 しかもこれは素人でも撃てるように反動が少なくなるように改造された優れ物だ。 構えて狙いを定めるまで1秒も要らない。 なぜなら相手は正面にいるのだから銃口は前に向けるだけで十分だ。 ふ、無防備に身体を晒してやがる。 何の感情も無しに放たれる一発の銃声と共に弾丸が発射される。 着弾まで瞬きする間に終わっているだろう。 ほら、瞬きしたら目の前には胸から血を出して倒れている狂った奴の死体が―― 「へ?」 あれ、おかしいぜ……目の前にいるはずの奴がいない…… しかもなんだ、この俺の胸から噴き出している赤い液体は……血? あ、今度は首? 場所的に頸動脈か。 ああ、なんだか身体が重く……というか、いつのまにか俺倒れている。 しかもいつのまにか血溜りまでできてやがる。 「忘れたんですか。私はあらゆるものを読む事が出来るんですよ。  あなたが取る行動を読んで、銃口を読む事ぐらいはできます」 「くっ――」 「それにしても残念でした。あなたまで逆らうなんて。  本当は仲間なんて殺したくなかったんですけど、仕方ないですね。  これがwiki管理人との取引――読み手で邪魔をする人がいれば私が始末するように言われたんです」 「な、に!? じゃあ、まさか――」 「ええ、あの一番表に出ていた読み手には死んでいただきました。何かと対主催寄りな行動が多かったですから。  ああ、手にかけたのは私じゃありませんよ。私はただ送り出しただけ――」 「こ、の、馬鹿女……――ッ!!」 仲間を殺して願いを叶えてもらうだと!? ふざけるのもいい加減にしてほしいぜ。 確かに俺達は本物ではない、代用品で偽物だ。 だが、もうそんな事は言ってもいられないのではないか。 このロワが開始されて1日が経った。 その間にいろいろな事があった。 それらを体験してきた俺達はもう元になった人と本物か偽物か、造り物かそうでないかを語る事などもう意味はほとんど無いのではないか。 「偽物だから、造り物だから、殺していいって思っているのか。貴様ら身勝手だな」 「なんと言われようとも構いません。これが私の選んだ道です」 なんだろうな。 死に際だからか、妙に頭が冴えてくる。 まあ、もうすぐ死ぬからあまり関係ないけどな。 でもそのおかげで俺にも少し読めるものができたようだ。 「貴様、諦めているだろ」 「……どういう意味ですか、それ」 「貴様は今の読み手に幻滅しちまっている。だからそんな破滅的な願望を抱いたんじゃないのか。  確かに今の状況がいいとは俺も思わないさ。  けどな、まだそこまで幻滅するところじゃねえ」 「甘いですね。あなたのように甘い考えの人がいるから安易な対主催ルートに持って行こうとする人が現れるんです。  書き手も元を辿れば私達と同じ読み手。  ロワに触れて関心を持ち、そしてそれが昇華されると書き手として関わろうと思うんです。  だから、読み手の時にそんな安っぽいヒーローみたいな幻想を抱いていると書き手になった時に間違うんですよ。  序盤での対主催の合流、マーダーの脱落、対主催への厨性能な道具の支給etcetc……  なんですか、スーパーヒーロータイムでも見たいんですか? 読み手も読み手でそれを煽りますよね。  ロワの一面はカタスロトフィ、基本的にロワは無常で救われない、絶望を抱くものなんです」 「確かにそれもロワの一面だ……だけど、それだけじゃないはずだ……」 仲間を失っても尚立ち上がる姿が、決死の覚悟で立ち向かっていく姿が、諦めずに前に進む姿が、どれほど尊く眩しいものか。 そんなSSを書ける書き手もいれば、別の方面を書く書き手もいる。 そんな様々な思惑が重なってロワは紡がれていく。 だからと言って、安易な対主催展開が良いとは俺も決して思わない。 でも、たまにはそんな子供の頃に誰もが一度は憧れたそんな展開を夢見てもいいんじゃないのか。 「まだ絶望するには早いぜ、最後まで諦めるなよ。足掻いて――ッ!!」 「ではどうしろと? 書き手が織りなすこの物語、読み手である私がどうしろと言うのですか?」 最後に刃が俺の中に入る感触がした。 死の瞬間は一瞬で通り過ぎた。 目に映る最後の景色は、俺を冷え冷えと見下ろす読み手の姿だった。 そして、どことなく彼女がかわいそうだなと思えた。      ▼ もう言葉を発しないE.E.の胸には一振りの刀が深々と突き刺さっている。 息が絶えている事を確認するとK.K.は刀を引き抜いて、血を払った。 死者に一切の感慨を持たずに落ちているデザートイーグルを拾うと、近くに落ちていたE.E.の持っていたデイパックに入れておく。 K.K.が先程やった事は説明すれば単純な事だ。 E.E.の銃撃を避けて擦れ違い様に刀で一閃、さらに首の頸動脈も斬った、それだけだ。 無論これを他の人がやろうとしてもおいそれと真似できるものでない事もまた確かだ。 K.K.があらゆるものを読めるからこそできた事だ。 「――ッ!!」 不意にK.K.は顔を後ろへ向け、鋭い眼光を飛ばした。 同時にホールに二発目の銃声が響き渡った。 その視線と銃口の先には誰もいなかった。 当然と言えば当然だ。 もうこの城の残っている者はほとんどいないのだから。 「気のせいですか。誰かいた気がしたんですけど」 そんな事を言いつつもK.K.はE.E.の言葉を思い出していた。 ――諦め。 確かにK.K.は今のパロロワの現状にいささか絶望して、そして諦めの感情を抱いていた。 絶えない諍い、純粋なバトルロワイアルからの乖離。 そんな感情を持つところはwiki管理人と一緒のはずだ。。 だからこそwiki管理人の考えに賛同したのだ。 「まだ推論ですけど私は自分の考えを信じています。だから――」 K.K.はそこでE.E.の死体に一瞬だけだが目を向けた。 そこから何か読み取れないかとも思ったが、結局何も読み取れなかった。 「――すいません。やっぱり私は今の状況を変えたい。  強引だとしても誰かがやらないといけない事だと思うんです。  それが例え許されない事だとしても、もう止められません」 そしてK.K.はその手の中の刀――核鉄『シークレットトレイル』を一振りする。 『シークレットトレイル』の能力によってK.K.の前に亜空間への入口ができる。 K.K.はそこで全てを見届ける気でいた。 このロワに結末が訪れるその時を、K.K.――読み手は待ち望んでいた。 &color(red){【読み手(E.E.) 死亡確認】} 【2日目 深夜】【デビルラピュタガンダム 放送室】 【書き手ロワ2ndwiki管理人@書き手ロワ2nd】 【状態】:健康 【装備】:ミニサスペリア、??? 【道具】:??? 【思考】:  基本:???  1:???  ※容姿は執事服を着た稲田瑞穂@バトルロワイヤルです  ※ミニサスペリアはGR2ndのtu4氏なあの人の思念から生まれた存在でした。   GR2ndの属性であるカニバリズムを司っています。ある程度の空気力と煩悩寺の吸収によりエロスも使えます。   姿はクリーチャーとアニロワ2ndをかけてデビルガンダムです。ラピュタとほぼ同化しています。  ※数時間後、ミニサスペリアと融合してゼスト@スパロワになれます。外見がどう変化するかは不明。 【2日目 深夜】【亜空間内】 【読み手(K.K.)@書き手ロワ2nd】 【状態】:健康 【装備】:核鉄『シークレットトレイル』@武装錬金、IMIデザートイーグル(8/10+1)@ギャルゲロワ1st 【道具】:IMIデザートイーグルの予備マガジン×5、??? 【思考】:  基本:wiki管理人に協力する。  1:最後までロワの表の主催者としてロワの結末を見届ける。  2:自分の考察を信じて、wiki管理人との取引を履行する。 ※あらゆる事象を読む事ができます(でも空気を読んでその時に応じて読んだり読まなかったりします) ※――読み手の考察――  wiki管理人の目的はこの書き手ロワでの経験を現実の書き手にフィードバックさせる事である。  『真の対主催』はフィードバックによって起こり得る書き手への被害を阻止するために行動している。 ※wiki管理人との取引とは『最終的に行われるフィードバックを読み手にも適用させてもらう代わりに、この世界の読み手が障害となり得る場合は全力で排除する』です。 ※ラピュタ内の生き残りの読み手数人の生死は不明です。 |280:[[ニコニコ削除祭は大変なセーラーふくをもってった結果がこれだよ!完結編]]|投下順に読む|282:[[全ては我が戯言なり]]| |280:[[ニコニコ削除祭は大変なセーラーふくをもってった結果がこれだよ!完結編]]|時系列順に読む|282:[[全ては我が戯言なり]]| |279:[[終末への扉(5)]]|wiki管理人|296:[[無限の欲望]]| |279:[[終末への扉(5)]]|読み手|285:[[誓いを新たに]]|

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